2008年 12月 06日

利益偏重は悪か?

ビジネス教育 金融危機の教訓 利益変偏重の風潮見直し
「ビジネススクールにとって今回の金融危機は極めて教訓が多い。経営学を大きく変えることになるだろう。まず我々を含めて、利益を重視し過ぎる風潮があった。株主は『他社がもうけているのだからウチももっと資金を借りて、もっともうけろ』と金融機関などに圧力をかけ、マスコミも利益率ばかりに注目した。こうした風潮からは脱する必要がある。」(MITスローン経営大学院長 デイビッド・シュミッタライン氏)
(日本経済新聞2008年12月6日9面 世界を語る)
【CFOならこう読む】
経営における利益や利益率の重要性は今後も変わることはないと思います。我々はこれに代わるツールを持っていません。大事なことは、リスクテークについて、きちんとマネジメントされることです。なぜならリスクテークこそがもうけの源泉だからです。

ですが、会計は、リスクについて何も語らないことを知ることは重要です。この点、ブラック・ショールズモデルでノーベル賞を受賞したロバート・マートンは、「金融技術革新と金融機関の経営および規制」という論文の中で次のように論じています。
「枠組みとしての会計は、価値の分配に向けられている。この次元では、会計は効果的である。ここでの問題は、会計システムが基本的に価値の分配にのみ注目しているということなので、それが取得原価であるのか、時価であるのかを区別する必要はない。それゆえ、会計システムは、リスク配分を識別するには非効果的な枠組みとなる」

「システミック・エクスポージャーについて適切な相対比較を行うことは、短期的には主要な計測の問題である。長期的には、すでに示したように、財務会計は、根本的な修正を必要としており、「リスク会計」と呼ばれる特別の新しい分野が創造されなければなりません」
しかし、優秀なマネジメントは自社のリスクについて十分に理解しているのが普通です。「リスク会計」を利用できるなら、それにこしたことはありませんが、なければ経営できないということもないはずです。

大事なことは、マネジメントが、自社を巡るリスクをよく知り、分散化すべきリスクとそうではないリスクを仕訳し、受容すべきリスクを判断し、その範囲内で利益や利益率の最大化を目指すことだと私は思います。

【リンク】

金融技術革命
Robert C. Merton

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# by yasukiyoshi | 2008-12-06 11:33 | 業績評価
2008年 12月 05日

資本政策詳解-エス・ディー・エス バイオテック

【CFOならこう読む】

エス・ディー・エス バイオテックの株式上場の概要は次の通りです。

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エス・ディー・エス バイオテックは、農薬の有効成分(原体)や、原体と補助成分を混ぜ合わせてさまざまな剤型(粉、顆粒(かりゅう)、液など)にした農薬(製剤)の研究開発、製造、販売を手掛けている会社です。昭和電工の子会社でしたが、2005年3月にみずほキャピタルパートナーズ系ファンド(エムエイチキャピタルパートナーズツーエルピー)の支援を受け、MBOにて独立しました。

公募価格は750円、2008年12月期見込みEPSが78.05円なのでPER9.6倍という水準での株式公開となります。

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エス・ディー・エス バイオテックの主な資本政策は (表2)の通りです。

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表にはありませんが、2008年1月31日及び2月14日にエムエイチキャピタルパートナーズからフマキラー、丸善薬品、大塚化学等へ合計1,196,000株の株式移動が行われています。このときの移動価格は1,150円、類似会社比準方式によって算出した価格を参考として、当事者間で協議により決定したものです。今回の公募価格が750円なので、結果論ではありますが、1,150円という価格は妥当ではなかったということになるのかもしれません。

また、当社新株予約権の取得事由に基づき、会社は、平成20年7月22日開催の取締役会の決議により、白井社長他役員・従業員の新株予約権の一部を取得し、平成20年8月6日をもって新株予約権を44,800個消却しています。

(表3)はエス・ディー・エス バイオテックの株主構成です。

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筆頭株主は、エムエイチキャピタルパートナーズですが、同ファンドの運用期間は平成15年11月11日から平成25年11月11日まで(ただし、平成27年11月11日までの延長の可能性があります。)と限定されており、当該ファンドの所有する株式は、原則同期間内に売却されることになります。

なお、エス・ディー・エス バイオテックの自己資本比率は11.3%と非常に低い水準となっています。MBOの常ではありますが、良くも悪くもこの会社の命運はみずほグループが握っていると言えます。

【リンク】
株式会社エス・ディー・エス バイオテック 企業概要
http://www.sdsbio.co.jp/company/profile/


# by yasukiyoshi | 2008-12-05 12:27 | IPO
2008年 12月 04日

TOBにおける資金証明書-シャルレのケース

TOBにおける資金証明書
大証二部に上場しているシャルレのTOBが迷走している。TOBに対するシャルレ取締役会の賛同表明の不適切なプロセスが問題になった。さらに買収資金を融資する意向を示していた銀行が、融資をしないことを決定するという事態も発生した。
(日本経済新聞2008年12月4日17面 大機小機)
【CFOならこう読む】
シャルレのTOBの公開買付者は、有限会社サザンイーグルと有限会社オットーです。
「公開買付者らは、いずれもニューヨーク証券取引所上場会社であるMorgan Stanleyを頂点とするモルガン・スタンレーグループのアジア地域におけるプライベート・エクイティ部門であるMorgan StanleyPrivate Equity Asia(以下「MSPEA」といい、MSPEA並びにMSPEAがファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンド及び会社等を総称して「MSPEAグループ」といいます。)がファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンドが直接又は間接に支配し、本公開買付けのために設立されたTomorrowが、本日現在において、直接又は間接に発行済株式の100%を保有する特例有限会社です。」
(平成20年9月19日 公開買付けに関する賛同意見表明)
金商法は、公開買付者が十分な決済資金を有することを公開届出書に開示することと、これを証明する書類を公開買付届出書の添付書類とすることを要求しています。

シャルレのケースでは、Tomorrowが、MSPETHから最大33億円の出資を行う用意がある旨の証明書を、また株式会社三菱東京UFJ銀行から最大116億円の融資を行う用意がある旨の証明書(平成20年11月末日までが期限)を取得していました。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は次のようなものでした。
「               融資証明書

弊社は、貴社に対し、現在貴社が計画中である株式会社テン・アローズ(現シャルレ:筆者注)の発行済普通株式に対する金融商品証券取引法(原文通り:筆者注)及び関連法令に基づく公開買付における株式買付資金及びその付帯費用として、融資条件に基づき116億円を限度として融資を行う用意のあることを証明致します。

なお、融資条件の詳細(時期、融資実行の条件、方法、利率及び担保等)については、貴社と当行との間で誠実に協議のうえ決定されます。

なお、この証明の有効期限は2008年11月末日までとし、有効期限経過により自動的に失効するものとします。
                                   以上」
ところが、「平成20年11月19日、株式会社三菱東京UFJ銀行から当該証明書の期限を延長せず、融資を行わないことを決定した旨の連絡を受け」(平成20年12月3日 公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について)、現在までのところ資金調達の目途が立っていません。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は、実務上極めて一般的なものですが、このケースからもわかるように融資の実行を法的に約束するものではありません。

今日の大機小機は、この点について次のような改善案を提示しています。
「シャルレのTOBは不成立の可能性が高そうだ。しかし市場関係者はこれを契機に資金証明書に関する実務の妥当性を検証すべきである。買付者の負担を考慮する必要もあるがより確実な資金証明書の提出を義務付けることは、成功の見込みの薄い公開買付を仕掛けて経営者をどう喝する濫用的買収者へのけん制にもなる。決済資金の公開買付代理人への預託や、国内に拠点を有する金融機関による決済保証の義務付けなども検討されるべきであろう。」
【リンク】
平成20年9月19日「当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」株式会社テン・アローズ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20080919-1.pdf
平成20年12月3日「公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について」会 社 名 株式会社シャルレ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20081203-1.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-04 09:20 | TOB
2008年 12月 03日

オリックス公募CB 利率1%

オリックスCB利率1%
オリックスは2日、17日に発行するCBの利率が年間1%に決まったと発表した。国内で発行される公募CBは今年初めて。同社は「CBの利率はゼロが多いなか1%に設定するなど、個人投資家の買いやすさに配慮した」と話している。
(日本経済新聞2008年12月3日17面)
【CFOならこう読む】
昨日に引き続き今日もCBのお話しです。

新聞記事の中に次の記述があります。
「同社の企業の信用リスクをやり取りするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、5年物)の水準は10%超で、利率が低いとの見方もある。この点については「株価の変動率を考慮すると、CBの株式に転換する権利の価値は高く、利率は適正な水準」(同社)としている。」
(前掲紙)
CBというのは社債とオプションの複合金融商品です。オプションを売っている以上、オプション料の授受があるはずですが、CBではこの部分だけを取り出して売り買いすることがありません。このことがある意味CBの価格付けを不透明にしています。

例えば額面100円(=払込金額)のCBのオプション料が10円と評価されるなら、社債は90円で割引発行され、これとは別にオプション料10円の受取りがあると考えられるのですが、これが明示的に区分されません。明示的に区分するなら、社債は90円で割引発行され、90円と100円との差額は社債利息だということになります。

CBの金利が適正であるかどうかは、この部分を考慮しないと判断できません。

「利率が低い」との見方に対し、会社は、”オプションのボラティリティが高く、オプションの価値が高くなっている。だから社債は相当に額面を割った価額での発行となっていて、実質的な利回りは適正である”と反論しているということを、前掲の新聞記事は報じているのです。

12月2日現在のオリックス株式の90日間ボラティリティは、108.221%と高い水準にあります。
(ブルームバーグ銘柄概要 
http://www.bloomberg.com/apps/quote?T=jpquote.wm&ticker=8591:JP

【リンク】
平成20年12月2日「第3 回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行条件等の決定に関するお知らせ」オリックス株式会社
http://www.orix.co.jp/grp/content/081202_BondsJ.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-03 09:13
2008年 12月 02日

野村ホールディングス 劣後CB発行

劣後調達 最大4100億円 株式転換付1100億円 個人向け3000億円
野村ホールディングスは1日、劣後資金の調達による資本増強策を発表した。第一生命保険と信金中央金庫向けに発行する劣後特約付転換社債(劣後CB)1100億円に加え、個人向けを中心に最大3000億円の劣後債を発行する。金融危機や米リーマン・ブラザーズの部門買収に伴う費用負担で今期は赤字になる公算が大きく、最大4100億円の劣後調達で財政基盤を拡充する。
(日本経済新聞2008年12月2日7面)
【CFOならこう読む】
劣後CBとは、次の証券を言います。
「劣後債に株式転換権を付けた証券。劣後債は普通社債に比べて元利金の返済順位が低く、資本金などの「中核的資本(Tier1)」に次いで資本性の高い「補完的項目(Tier2)」として自己資本規制比率の計算に組み入れることができる。劣後CBはこの劣後債に株式転換権が付いており、株価が転換価格よりも上昇すれば、投資家が普通株に転換することで当初のTier2からTier1に全額が振り替えられる。普通社債に株式転換権が付いた通常のCBよりも、より資本性が強い資金調達手法といえる。」
(前掲紙)
本CBの転換価額は745円(12月1日終値678円を約10%上回る)、2009年1月5日から満期の2014年3月25日まで、いつでも株式に転換できます。

希薄化懸念について会社は次のように説明しています。
「本新株予約権付社債が転換された場合の希薄化は、現時点の発行済株式総数に対し、7.5%であることから、本新株予約権付社債の発行金額は市場に過度の影響を与える規模ではないと判断しました。」
なお既存株主への配慮及び資本政策の裁量を確保するため、発行から2年後以降、20連続取引日において株価が転換価額の120%以上であった場合、残存する本新株予約権付社債の全部を額面100円につき100円で償還することができる任意繰上償還条項(120%コールオプション条項)が付されています。

【リンク】
平成20年12月1日「第1回期限前償還条件付無担保社債(劣後特約付)並びに第三者割当による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行について」野村ホールディングス株式会社
http://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/holdings/20081201/20081201_a.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-12-02 09:14 | 資金調達
2008年 12月 01日

カネボウ元CFO嶋田賢三郎の小説 「責任に時効なし」

トップとの対決、検察との闘い、苦悩の日々…。
著者は日本を代表する名門企業の常務として巨額粉飾事件に遭遇し、逮捕された。しかし、粉飾に異を唱えていたことが判明、不起訴となり釈放された。その体験をもとに3年かけ、長編小説として本書を綴った。企業崩壊をもたらした組織的粉飾とは何か? 粉飾を長年放置してきたにも拘わらず、時効の壁によって不問に付された歴代の経営者たちの責任はどうするのか? 法的告発には時効があっても、「責任に時効はない」と著者は訴える。
【CFOならこう読む】
この週末、カネボウの元CFO嶋田賢三郎が書いた内幕暴露小説「責任に時効なし」を読みました。

この小説は、基本的に嶋田氏がカネボウで体験した事実に基づき書かれています。カネボウの粉飾の長年に渡る粉飾の実態及び会計士の関与、2003年末一旦花王への化粧品事業売却を決めながら、これを撤回し産業再生機構に支援を要請した経緯、逮捕後の検察官とのやりとり等が克明に描写されていて、一気に読んでしまいまいました。

嶋田氏と言えば、産業再生機構に支援を決めた際に、「評価の厳しい花王のデューデリジェンスであれだけの金額がついた。公的機関の再生機構は割引率なども緩くなり、事業価値が相当上がると考えるのが一般常識」(日経産業新聞2004年2月18日)と発言したことが印象深く記憶されています。これが再生機構を逆の意味で刺激し、その後機構は一貫して厳しい姿勢でカネボウと対峙して行くことになるのです。

嶋田氏が何故このような発言をしたのかその経緯について、本の中では触れられていません。ただ次のような記述があるだけです。
「日本企業再建機構の最高幹部の一人がリップサービスのつもりか、しかし自信を持ってこう言い切った。「きっとわれわれ公的機関が評価すると、まちがいなくクレセントさんが評価した金額よりも高くなるでしょう」誰しも化粧品事業の評価価額には関心を寄せていたので、その大幹部が明確に言い切った台詞には強烈な響きがあった。
ところがその後2週間も過ぎないうちに、再建機構はクレセントの提示した4400億円よりも低い価額3800億円あたりで評価していると番匠に内々に伝えてきた。その理由として、以前と状況が変わった。まだこの価格でも少し高いぐらいだ、という。まったく人を食った話である。「事業算定価額を抑えろ」との財務省の意向を再建機構が忖度したためであるとの情報が水面下で流れた。どう考えてみても、この低い価額は再建機構が化粧品事業を売却するときのエグジットの価額を意識して算段した値づけであるとしか思えない。」
番匠というのが嶋田氏その人です。どうやら割引率云々という自らの発言の重さを全く認識しておられないようです。この本は、自分は粉飾を強要された犠牲者であり、責任の根幹は伊藤淳二氏を始めとする旧経営陣にあることを繰り返し主張しています。

一方元CFOとして一般株主へ謝罪の言葉は全くありません。CFOとしてのこの人の仕事は、ただカネボウという会社を存続させ、経営陣のポストと雇用を守ることにあり、株主価値創造などとは無縁であったことが本を読むとよくわかります。そして良い悪いではなく、これが多くの上場会社の現実です。

我々がコーポレートガバナンスを議論するときに、この現実を忘れてはいけないと、私は思います。

【リンク】

責任に時効なし―小説 巨額粉飾
嶋田 賢三郎

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# by yasukiyoshi | 2008-12-01 09:56 | コーポレートガバナンス
2008年 11月 29日

サイゼリヤのデリバティブ評価損 140億円

「シンガポールに新拠点」サイゼリヤ社長 豪州依存減らす
11月21日にBNPパリバ証券とのデリバティブ契約で140億円の評価損を計上する見通しと発表したサイゼリヤの正垣泰彦社長は28日、日本経済新聞社に2010年の稼動を目標に、シンガポールに新たな食材加工工場を建設する意向を明らかにした。原材料調達で豪州の依存度を減らし、為替リスクを分散させる。
(日本経済新聞2008年11月29日9面)
【CFOならこう読む】
「評価損が見込まれる主なデリバティブ契約は、サイゼリヤがBNPパリバと契約した2本の「FX参照型豪ドルクーポンスワップ」。オーストラリア事業のコスト軽減を図るために行った同取引では、円がオーストラリア・ドルに対して円安に進めば、支払い金額の軽減につながるはずだった。」
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003015&sid=aFtKHUUi2G48&refer=jp_europe
クーポンスワップは、ヘッジ手段としては一般的な金融商品です。サイゼリヤの会計方針のデリバティブの項にもヘッジ手段として、通貨スワップを利用している旨記載があります。損失が発生したクーポンスワップは、ヘッジ会計を適用していなかったものであるわけですが、その理由が開示資料を見る限りよくわかりません。契約期間が長すぎたのか、実需とマッチングしていなかったのか…。

実需とマッチングしていて、そもそも会社はヘッジ目的で行った取引であるが、会計士がヘッジ会計を認めなかったということなら、そんなに大騒ぎするようなことではないと思います。しかし実需とアンマッチな投機的な取引であったなら、責任問題になるでしょう。正垣社長は、「責任の所在についてもはっきりさせる」と言明しています(前掲紙)。

取締役財務管理室長は正垣和彦氏。正垣社長の実兄です。

【リンク】
「第36期 有価証券報告書」株式会社サイゼリヤ
http://www.saizeriya.co.jp/ir_info/jp/pdf_jp/valuable/valuable_036.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-29 10:48
2008年 11月 28日

エルピーダ、台湾合弁会社を子会社化 純資産を増やすため?

エルピーダメモリ、台湾合弁を子会社化 生産調整などで主導権
エルピーダメモリは2009年3月末までに、台湾の合弁生産会社を連結子会社化する方針を固めた。合弁相手の力晶半導体が保有する株式を一部取得し、出資比率を52%程度に引き上げ経営権を握る。半導体市況の急激な悪化に対応、需要動向に応じた生産調整や投資をエルピーダ主導で実施できるようにし、グループの経営安定化につなげる。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2700C%2027112008&g=S1&d=20081127
【CFOならこう読む】
子会社化の狙いは、純資産を増やすことにあるのではと今日の新聞に書かれています。

「一方、財務面に視点を移すと、子会社化には別の意味がある。エルピーダは9月末時点で3000億円強の有利子負債があり、このうち800億円に純資産維持に関する「財務制限条項」が付く。10月に融資枠を使って借り入れた1100億円にも同様の条項があり、いずれも期末の純資産額が1年前の75%を下回ると条項に抵触する。「抵触しても銀行が即座に返済を求めることはない」(エルピーダ)が、財務の安定性は低下する。
前期末の純資産は3478億円で、この75%は2608億円。今期の最終赤字額は900億円を超えそうなため、純資産額が大幅に目減りし、条項に抵触する可能性が高まっていた。子会社化で連結純資産が600億円程度増えるため、今期は条項抵触を回避できそうだ。」(日本経済新聞2008年11月28日11面)。
エルピーダの台湾合弁会社レックスチップエレクトロニクスに対する出資比率は48.8%。同社はエルピーダの持分法適用会社です。これを合弁相手から株式の一部譲渡を受けることにより、出資比率を52%まで高めるとのことです。

キャッシュで株式を取得するということは、対象会社の純資産をキャッシュで買うことを意味し、等価交換であるので連結上純資産の増加はないように思えます。

それでは上記記事の「子会社化で連結純資産が600億円程度増える」とは何のことを言っているのでしょうか?持分法適用会社から連結子会社になることで何が変わるかを考えてみればその答えがわかります。

その答えは少数株主持分です。連結子会社になることで合弁相手の純資産に対する持分が、少数株主持分として純資産の部に計上されるのです。

少数株主持分が純資産の部に計上されるようになったのは「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(2005年12月9日公表)施行以降で、それ以前は負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示されていました。これが純資産の部に表示されるようになったことから、連結子会社が増えれば少数株主持分の分だけ純資産が増えることになったのです。

もっとも少数株主持分は親会社に帰属するのではなく、だから株主資本以外の項目として表示されるわけで、財務制限条項で縛るべきは純資産ではなく株主資本とすべきかもしれませんね。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-28 10:04 | 会計
2008年 11月 27日

三洋・パナソニック


三洋電機の買収を巡り、パナソニックと米ゴールドマン・サックス(GS)グループなど三洋の大株主三社の交渉が難航している。パナソニックが1株120円の買収価格を24日に提示したのに対し、200円台後半を主張するGSは25日に交渉打ち切りを通告した。パナソニックは他の2社が合意すればGS抜きでもTOBを実施する構えで厳しいせめぎ合いが続きそう。
(日本経済新聞2008年11月26日11面)
【CFOならこう読む】
「パナソニックの提示額は現在の株価(25日終値は156円)を下回る120円。GSは三洋の企業価値からかけ離れていると判断。25日に三洋を通じ、交渉の打ち切りをパナソニック側に通告した。」
(前掲紙)
現在の株価が優先株の希薄化を織り込んでいると考えるか、織り込んでいないと考えるかでフェア・バリューは異なります。

この点11月5日の当ブログで、株価は優先株の希薄化効果を一部織り込んでいないと考えられることをお話しました。
http://cfonews.exblog.jp/8900738/

2009年3月13日までは、GS他が議決権ベースで34%の保有義務があることから、この分の希薄化効果は現在の株価に織り込まれていないと考えることができます。

そう考えると、パナソニックの120円という価格も説明がつきそうです。

ただし、GSが了解しないままTOBを実行に移すことは考えづらく、これからの交渉如何では価格の引き上げもあり得るとは思います。いずれにしても三洋のスタンド・アローンバリューをどう見るかという点で、売り手・買い手が合意するまでもう少し時間がかかるかもしれませんね。

【リンク】

 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-27 10:09 | M&A
2008年 11月 26日

社外取締役 導入企業、5割に迫る

昨年度776社 透明性向上狙う
東証一部上場企業のうち社外取締役を導入した企業の割合が2007年度に45%強に上昇し、5割に迫ったことが日本経済新聞社の調べで分かった。株主によるコーポレートガバナンス(企業統治)を機能させる代表的な仕組みが日本でも日常化してきたことを示す。ただ、買収防衛策導入に伴って制度を取り入れる企業もあり、一時的要因で増えた面もある。
(日本経済新聞2008年11月26日19面)
【CFOならこう読む】
一部上場企業1718社のうち776社が導入したということです。これをコーポレートガバナンスに対する意識の向上の結果と見るか、機関投資家の要請や買収防衛策導入のために仕方なく社外取締役の導入に踏み切る会社が増えたということなのか、解釈が難しいところです。

海外の機関投資家の多くが社外取締役の指名を投資対象会社に求めています。また、今年5月にカルパースやハーミーズ等欧米の有力年金基金や機関投資家が日本企業のコーポレートガバナンスの向上を求める提言をし、そこでは社外取締役最低3人指名することが謳われています。

その理由を英ハーミーズ・ファンド・マネジャーズのシニアアド バイザー、マイケル・コナーズ氏は次のように話しています。
――なぜ社外取締役は最低3人必要なのですか。

米国でも英国でも半数以上を独立取締役にする決まりだ。社外取締役として発言力を確保するには、1人や2人では多勢に無勢だろうと考えた。提言に参加した個々の機関投資家が3人という基準を持っているわけではない。よく適任者がいないと聞くが、いくらでもいる。多くの企業では長年務めた社員のなかから1人だけが社長になり、残り は経営能力があるのにうずもれていく。人材の無駄遣いであり、社外取締役として他企業でどんどん活躍できるようにすればいい」
3名でも多勢に無勢でしょう(笑)。

取締役会が経営者を選任し、監督する責務があることがコーポレートガバナンスの要であることを経営者自身が理解しないと、結局社長のお友達を社外取締役として3人並べてそれでおわり、ということになるでしょう。

HOYAの鈴木社長のように、取締役会が自らをクビに出来ることが経営の規律付けのために重要であると経営者自らが認識し、取締役会の過半数を社外取締役が占めるように機関設計をした会社を、投資家が良い会社であると評価し、株価に反映するようになって始めて、そういう会社が増えてくるのだと思います。

そしてそういう傾向が少しずつ現れてきているというのが今日のニュースであると、私としては思いたいところです。

【リンク】
「日本企業の社外取締役、最低3人必要 英運用会社幹部に聞く(08/5/18)」
http://www.acga-asia.org/public/files/(2008-05-18)Mike%20Connors%20interview%20on%20White%20Paper%20(Nikkei%20Veritas).pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-26 14:51 | コーポレートガバナンス
2008年 11月 25日

資本政策詳解-シイエム・シイ

【CFOならこう読む】
シイエム・シイの株式上場の概要は次の通りです。

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シイエム・シイは、販売促進のための従業員研修やイベント運営、取扱説明書作成などのマーケティング事業と、システム開発事業を展開している昭和37年設立の会社です。名古屋に本社があり、トヨタとの取引が全体の41.4%を占めています。

公募価額は未定ですが、仮条件の下限1900円を仮定すると、2009年9月期見込みEPSが362.17円なのでPER5.2倍という水準での株式公開となります。

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シイエム・シイの主な資本政策は (表2)の通りです。

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創業者である林幹治氏はすでに社長を降り、代表権のない会長となっています。2006年9月に現社長である龍山真澄氏等を割当先とする第三者割当増資を行っています。また、2006年10月1日付で一部門を新設分割により子会社化し、株式会社CMCSolutions設立しています(同社の2007年9月期売上実績19億2041万円)

(表3)はシイエム・シイの株主構成です。

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株主名簿の上位に、ずらりと親族が並ぶ典型的な相続銘柄です。龍山社長の持株比率は潜在ベースで8%にすぎず、創業家の顔色を伺いながらの経営となりそうです。

シイエム・シイは、過去ジャスダックが山のように上場させてきたタイプの会社で、ジャスダックは本当に魅力ある市場に生まれ変わる気があるのか疑問に思います。

従業員のインセンティブは従業員持株会によっており、11.74%とかなり大きな持分を有しています。

【リンク】
株式会社 シイエム・シイ 企業概要
http://www.cmc.co.jp/02/02.html


# by yasukiyoshi | 2008-11-25 12:24
2008年 11月 22日

フジタ上場廃止へ

フジタ信用不安回避へ先手
準大手ゼネコンのフジタへの親会社によるTOBが17日に終了し、東京証券取引所第二部を上場廃止となる。支援企業による上場廃止という異例の事態の背景には、優先株の普通株への転換による一株利益の希薄化や不動産市況悪化を懸念した株安への危機感がある。このまま放置すれば信用不安を招くと判断。株式市場からの退場を自ら選択した。
(日本経済新聞2008年11月22日14面)
【CFOならこう読む】
「フジタは旧フジタの建設部門が分離して2002年10月に設立。2005年9月にフジタHDを引受先に第三者割当増資を実施。普通株と優先株の発行で410億円調達した結果、フジタHDはフジタの発行済み普通株の44.8%と優先株すべてを保有する。フジタが憂慮するのは約889万株にのぼる優先株の存在。すべてを転換すると普通株数は約3億7700万株と現在の約12倍に膨らむ。一株利益の希薄化や需給悪化から「短期的に株価が下落する恐れがある」(上田社長)。
(前掲紙)
もとをたどると2002年10月の分割スキームがまずかったのかもしれません。

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優良事業と思われた建設事業を分離するに当たり、分割会社が過半数の株式を保有するスキームを選択したため(みなし配当を回避するためと言われています)、その後の資本戦略に制約が生じるであろうことが、当時から指摘されていました。

その後、2005年9月にGS系投資会社フジタHDから410億円の出資を受ける際に、90%の無償減資、10:1の株式併合といった処理をせざるをないことになってしまいました。

そして今回の上場廃止です。2002年10月のときに中途半端な処理をしたばかりに、無駄に遠回りしてしまったと私には思えます。

【リンク】
平成17年6月8日「「新中期経営計画」の一部修正とスポンサーの決定について」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/00034423.pdf

平成20年9月25日「非上場の親会社である有限会社フジタ・ホールディングスによる当社株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/20080925160442.pdf

平成20年11月18日「非上場の親会社である有限会社フジタ・ホールディングスによる当社株券等に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/20081118163583.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-22 11:22 | M&A
2008年 11月 21日

海外子会社の配当課税

企業の海外利益還流策、政府税調案に明記へ 来年度税制改正
政府税制調査会(首相の諮問機関)の2009年度税制改正答申の原案が20日分かった。日本企業が海外で稼いだ利益を国内に戻しやすくする税制の創設などを盛り込む。消費税については、社会保障の財源として引き上げの必要性を明記した昨年の答申をほぼ踏襲。政府・与党が消費税を含めた税制改革に向けた「中期プログラム」を作成する方針を決めたことを前向きに評価する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081121AT3S2002A20112008.html
【CFOならこう読む】
この問題、今日の新聞の17面でもとりあげられています。
「現在は税率20%の国で稼いだ利益を日本に戻すと、日本の税率(約40%)との差の20%を追加で課税される。海外に置いておけば20%で済むので、稼いだ利益を海外の再投資に回すのは自然な流れだ。積み上がった海外利益は2006年度末で17兆円に上る。」
(日本経済新聞2008年11月21日17面)
海外の未分配利益にかかる繰延税金負債の金額が大きい企業は次の通りです。

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この繰延税金負債の金額は、有価証券報告書の財務諸表の注記、「繰延税金資産および負債の主な内訳」に記載があります(例えば、トヨタの2007年度有価証券報告書108ページを参照してください)。

具体例で説明しましょう。海外子会社の利益80億円を日本に還流させると、追加的に20億円の課税があるとすると、連結財務諸表上次の通り処理されます。
法人税等調整額(P/L) 20 / 繰延税金負債(B/S) 20
海外配当子会社の配当が非課税になった場合、税金は支払われないので、繰延税金負債を取り崩す必要があります。たまった繰延税金負債が100億円あるなら、これが次のように処理されます。
繰延税金負債(B/S) 100 / 法人税等調整額(P/L) 100
新聞記事に書かれている、「損益計算書の法人税等調整の項目でプラスに作用するだろう」(大手監査法人)とは、このことを言っているのです。

そうなると、その分だけ株主価値が増加するので株価の上昇要因となります。また将来に渡りEPSやROEが押し上げられることになります。この税制改正は、今まで海外展開することを躊躇していた会社の背中を押すことになるかもしれません。

一方、日本の空洞化がもう一段推し進められることによる、国内経済へのマイナスの影響も危惧されるところです。

【リンク】
「2007年度有価証券報告書 第5 【経理の状況】」トヨタ自動車株式会社
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/library/negotiable/2008_3/finance.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-21 11:02 | 税制
2008年 11月 20日

製作委員会方式によるアニメ制作

委員会方式で取り分減る 版権確保模索も
アニメやゲーム、漫画。日本の文化が世界で存在感を高めている。だが追い風のわりに関連する上場企業の業績は伸び悩んでいるのが実情だ。クール・ジャパンの憂鬱ー構造を探ってみた。
(日本経済新聞2008年11月20日 14面 クール・ジャパンの憂鬱)
【CFOならこう読む】
記事はコンテンツ制作会社の業績が伸びないひとつの理由に「製作委員会方式」を挙げ、次のように指摘しています。

「従来、アニメはテレビ局や玩具メーカーの資金で制作され、制作会社も多いときには権利の半分以上を持った。ところが広がる「委員会」方式のもと、現在は広告代理店や出版社などへと出資企業の幅が拡大。制作会社の出資力の制約などもあって、持っている権利は、全体の10%前後に落ちているとみられる。」
クール・ジャパンが世界でどれだけ評価されようと、現場が疲弊するような構造では発展が望めません。メジャースタジオ以外の米国の映画製作の場合、「ネガティブピックアップ」により資金調達をするのが一般的です。
「インディペンデント映画の製作者たちはスタジオから100%資金調達を受けないので、自分達で資金調達します。北米での配給権の「ネガティブピックアップ」とメジャーな地域の「プリセール」の組み合わせで、配給契約を担保に金融機関から借り入れして、完成保証ボンドをつけるのが従来の形です。」
(「コンテンツ・ファイナンス」(松田政行著 日刊工業社)
ネガティブピックアップとは次のようなものです。
「ネガティブピックアップとは、完成保証による完成リスクのヘッジと、MG(MinimumGuarantee)による興行リスクのヘッジを組み合わせてデットファイナンスを行う一種のストラクチャードファイナンスであり、欧米ではスタジオに属さないインディペンデントプロデューサーによる映画製作資金の調達において用いられている。なお、MGとは、配給会社等の販売会社が映画製作者に支払う分配金に最低保証額を設定するものであり、映画製作者の観点からはMGの範囲において興行リスクをヘッジする機能がある。また、配給契約の締結時においてMGに相当する金額が配給会社等から映画製作者に支払われるケースもあるが、ここで想定するのは原則として映画の完成、引渡しを条件として、MGに相当する金額が支払われるケースである。
典型的なネガティブピックアップでは、インディペンデントプロデューサーは映画の完成を前提とした配給契約を配給会社と締結する。契約において配給会社は、完成された映画の引渡時に、プロデューサーに対する映画の配給からの分配金として一定の金額を前払いすることが定められている。この前払い額がMGに相当するが、欧米では映画の完成に必要なコストとして見積られた金額がMGとして設定されることが多い。
そしてプロデューサーはこのような配給契約を担保として、銀行やその他の債権者から資金調達し、映画を製作することが可能となる。プロデューサーに対する債権は配給契約において定められた前払い金によって返済される。」  (「日本型映画完成保証に関する調査研究報告書」 独立行政法人経済産業研究所)
つまりネガティブピックアップの前提として完成保証会社から完成保証を受けることが不可欠なのです。日本では、完成保証の法的位置付けが不明確であること、完成保証会社の役割は、単なる保証を行うだけでなく、予算コントロール、製作の引継ぎ等多岐に渡るため、適当な担い手が見つからない、といった理由から完成保証をつけるという実務が定着していません。

私は、前職が映像ディレクターということもあり、人一倍この分野には関心があるのですが、制作サイドに正当な報酬が落ちるスキームを構築するのに苦慮している、というのが実情です。

【リンク】
図解コンテンツ・ファイナンス―「著作権信託」で資金調達が変わる
松田 政行

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# by yasukiyoshi | 2008-11-20 10:10 | 資金調達
2008年 11月 19日

スキーム・オブ・アレンジメント キリンの買収提案 豪コカコーラ(CCA)拒否

豪コカ・コーラ、キリンの買収提案拒否 条件見直し検討へ
【シドニー=高佐知宏】オーストラリアの飲料大手コカ・コーラ・アマティル(CCA)はキリンホールディングス傘下の豪ビール大手ライオンネイサンからの買収提案を拒否した。買収額の約80億豪ドル(約4985億円)は「当社の価値を反映していない」(CCA)のが理由。キリンHDは「理解を得られるよう交渉を続ける」として今後、買収金額引き上げなど条件見直しの検討に入るとみられる。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D1807Z%2018112008&g=S1&d=20081118
【CFOならこう読む】
キリンの買収価額が「当社の価値を反映していない」(CCA)という理由で、CCA取締役会は買収交渉打ち切りを決めました。14日終値に対し31%のプレミアムを付した買収価格では安すぎる、ということでしょう。

今回の買収はスキーム・オブ・アレンジメントによることを、キリンHDはプレスリリースの中で公表しています。

スキーム・オブ・アレンジメントとは、
「英国法上の買収手続き。1)買収対象会社の取締役会決議を経たうえで、被買収企業の株主総会で参加株主の過半数かつ議決権で七五%の賛成による承認(2)英国裁判所の審問による承認(3)関連地域の競争法当局による承認――が必要。」
(日本経済新聞2007年3月9日)
日本板硝子の英ピルキントン買収、JTの英ガラハー買収の際にも同手続きが取られました。

つまり取締役会がYESと言わないかぎり、事は進まないということです。

ただし日本のどこかの会社のように濫用的買収者云々ということではなく、価格が問題だということなので、勝負はバリュエーションのコンテストで決します。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-19 11:11 | M&A
2008年 11月 18日

キリンHD 豪コカコーラ(CCA)買収

キリンHD、豪コカ・コーラに買収提案 4880億円投入
キリンホールディングス(HD)は17日、豪清涼飲料大手コカ・コーラ・アマティル(CCA)に買収提案したと発表した。傘下のオーストラリアのビール大手ライオンネイサンを通じた買収総額は80億豪ドル(約4880億円)で、国内食品会社による海外企業の買収では過去最大。少子高齢化などを背景に国内市場が縮小するのに対応し、海外での営業基盤を一気に拡大する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F1700O%2017112008&g=S1&d=20081117
【CFOならこう読む】
本件の概要は次の通りです。
・ LN社が提示したCCA社買収金額は、総額約80億豪ドル(約4,880億円)。

・ CCA社株主に対する対価の支払いは、現金、LN社株式、現金とLN社株式の組み合わせのいずれか選択可能。

・ LN社は、CCA社株主の受取対価として、約45億豪ドル(約2,745億円)の現金およびLN社株式約346百万株を提示。

・ 買収対価のうち現金部分の調達は以下を予定:

LN社の株主総会における承認に基づく、KH社を引受先とする総額37.6億豪ドル(約2,294億円)の第三者割当増資により、大部分の現金を調達予定。この取引によりKHはLN社の普通株327百万株を取得予定。一部についてはLN社の負債による調達を予定。

・ 本件は、LN社およびCCA社の株主総会における承認、豪州およびニュージーランドの公正取引委員会、ならびに、外国投資審査委員会等の審査を含む規制当局の承認を必要とする。

・ なお、本件はLN社とCCA社間での統合であり、KH社の他事業会社は含まれない。1豪ドル=61円(2008年11月13日現在)
買収対価としてCCA株主は、現金、ライオンネイサン株、もしくは両方の組み合わせのいずれかを選択できるという方式はとても良いと思います。

M&Aでは、必ずしも株主の望む通りの結果にならない可能性があることが、「TOBによる敵対的買収の不可能性」として1980年にサンフォード・グロスマンとオリバー・ハートにより指摘されています。
この理論によると、多くの株主が次のように考えます。
「買収者は被買収企業の将来性について自分たちの知らない良い情報を持っているに違いない。買収者がマジョリティを握ることで株価は買収価格より上がるはず。ならばそのまま持っていよう。」
多くの個人株主がこのように考えるなら、このM&Aは不成立に終わります。

被買収者の株主が対価を株で受け取るか、現金で受け取るか選択できれば、「TOBによる敵対的買収の不可能性」の問題は解消されます。

ただし、国内法ではこのようなスキームが予定されておらず、実行は困難であると思われます。

【リンク】
2008年11月17日「ライオンネイサン社とコカコーラ アマティル社における全株式取得に向けた交渉について」キリンホールディングス
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2008/1117_01.html


# by yasukiyoshi | 2008-11-18 11:23 | M&A
2008年 11月 17日

株主配分、「利回り」により決定

イベント制作大手のテー・オー・ダブリューは株主配分に「利回り」の考え方を採り入れる。年間配当額を株価で割った配当利回り4.5%に相当する配当金と、連結ベース配当性向40%になる配当金比べて、高いほうで支払うという内容だ。
(日経ヴェリタス 2008年11月16日 14面)
【CFOならこう読む】
以下TOWのプレスリリースからの抜粋です。
「来期(平成22 年6月期)より利益配分の指標として、連結ベースの配当性向および株価配当利回りを基本といたします。
具体的には、来期(平成22 年6月期)の連結業績予想の当期純利益に対して、配当性向40%で算出された一株当たりの予想配当金と、本決算発表日(平成21 年8月6日)の前日の終値に株価配当利回り4.5%を乗じて算出された一株当たりの配当金のいずれか高い方を最低配当金として配当金を決定することとし、来期以降も同様といたしたいと存じます。なお、連結配当性向40%は下限目標といたしますが、株価配当利回りにつきましては、市場金利等の動向を勘案して決定いたします。
また、内部留保の確保という従来からの基本方針に基づき、株価の急騰局面においては、連結配当性向換算で100%を上限として配当額を決定したいと存じます。」
TOWは、主に資金源泉を内部留保に求めており、投資も概ね営業キャッシュフローの範囲に抑えられています。将来の成長よりも株主還元を重視していると言えます。

配当利回りを東証上場平均を約2%上回る水準に設定することで、「長期に保有してくれる株主づくりにつなげたい」と川村社長は説明しています。

14日終値は524円。利回り4.5%から配当金は23.58円と計算されます。今期予想配当は32円なので、支払配当金は32円となり、このとき配当利回りは6.1%となります(但し、新しい配当政策は、2010年6月期から導入されることに留意してください)。

つまり、この配当政策は、4.5%の配当利回りを最低保証する方式であると言うことができます。

【リンク
平成20年11月10日「配当方針に関するお知らせ」株式会社テー・オー・ダブリュー
http://www.tow.co.jp/ir/pdf/release/20081110_1.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-17 08:53 | 配当政策
2008年 11月 15日

ドルが基軸通貨でなくなることの意味

「米ドル、もはや唯一の基軸通貨ではない」 仏大統領
【パリ支局】AFP通信によると、フランスのサルコジ大統領は13日、「米ドルはもはや唯一の基軸通貨ではない」と語った。14日にワシントンで開幕する緊急首脳会合(金融サミット)でも同様の主張を展開する見込みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081114AT2M1401614112008.html
【CFOならこう読む】
サルコジはユーロこそが次の基軸通貨だとでも言いたいのでしょうか?
ならば、それは間違いだと教えてあげなければなりません。
-下手をすると、日本がもっているドルも紙切れになるかもしれない。
岩井 このゲームがどうなるかが、ここ十年のポイントでしょう。理想的に言えば、世界中央銀行ができるしかないんだけれど、これはたいへんに難しい。ヨーロッパのなかでさえ、ユーロ中央銀行でだれが主導権をもつか、そしてユーロ中央銀行と各国の経済政策に関する主権との関係がほとんど解けない大問題になっているわけですから。だから、ここしばらくは二面作戦でいくよりほかないと思います。
 ひとつは、書生的な言い方ですが、たとえいくら困難であろうとも、世界中央銀行への足がかりとなるような国際機関や国際制度を、少しずつ地道につくりあげていくことです。もうひとつは、ひどくコンサバティブな言い方ですが、ほんとうの世界通貨ができるまで、なんとかドル基軸通貨体制をもたせていくこと。そのためには、脅しとかいろんなかたちで、アメリカに基軸通貨国としての責任を忘れないようにしなければならない。ぼくは、ユーロの登場は、そういう意味での脅しであるかぎりは、非常に意味があると思う。だが、第二の基軸通貨としてドルの簒奪をねらっているのだとしたら、それはものすごく危険です。基軸通貨とはひとつしかないことに意味があるのであり、複数の基軸通貨の共存などというのは、これだけ世界経済が一体化した現在においては、ありえない。脅しが行きすぎると、元も子もなくなる。

ードルが揺らぐと、これはほんとうに世界危機になる。そのなかで日本がどうなる
か。
岩井
 心中でしょう。ユーロのほうは大丈夫だと思っているだろうけれど、ユーロがもっているユーロダラーというのは膨大です。ドル危機が本格化したら、ユーロだって危機に陥る。ユーロはある程度は穏便にいくように振る舞うしかない。」
(「資本主義から市民主義へ」 岩井克人 新書館)


【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-15 00:53 | 為替
2008年 11月 14日

中小企業向けの融資減少、鮮明

9月末3.2%減、3年半ぶり大幅
銀行の中小企業向け貸し出しの落ち込みが鮮明になってきた。日銀が13日まとめた国内銀行ベースの9月末の貸出残高は179兆円となり、前年同月末より3.2%減った。減少額は3年半ぶりの大きさ。米金融危機をきっかけに世界景気の先行きへの懸念が強まり、銀行が融資に一段と慎重になっている。中小企業の間では政府系金融機関から借りる動きが広がる一方、政府の追加経済対策の早期発動を求める声も強まってきた。
(日本経済新聞 2008年11月14日 3面)
【CFOならこう読む】
「中小向け融資は、米国の住宅ローン問題を発端に世界の金融市場が混乱し始めた昨夏以降、13ヶ月連続で前年同月を下回っている。8月末までは1%前後の減少額にとどまっていたが、9月末は大幅に落ち込んだ。13日に9月中間決算を発表したみずほフィナンシャルグループは傘下の3銀行合算で9月末残高が6.2%も減った。」
(前掲紙)
本来、金融機関が貸し渋りに向かわざるをえなくなるようなBIS規制の仕組みに問題があります。やみくもにリスクアセットを絞る方向ではなく、資本増強に向かわせる、そういう仕組みに変える必要があると、私は思います。

そうは言っても、貸し渋りの影響から、現実に年を越せない中小企業が数多く存在します。私の感覚では、10月末に10割の信用保証制度が設けられてから、事態は好転に向かっているように思いますが、それでも最悪の状況は脱したという程度の話です。まずは、信用保証枠を現在の6兆円から20兆円に増やし、利用可能業種も545から618に拡大するという追加経済対策を一刻も早く実行してもらいたいものです。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-14 09:03 | 資金調達
2008年 11月 13日

資本政策詳解-オーウイル

【CFOならこう読む】
オーウイルの株式上場の概要は次の通りです。

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オーウイルは、食品原料の国内販売、輸出入を手掛ける独立系専門商社です。伊藤園との関係が深く、2008年3月期における伊藤園に対する売上高は33億円あり、オーウイルの売上高の15%を占めています。また第2位の大株主であるグリーンコアという会社は、伊藤園の筆頭株主でもあります。

公募価額450円、2009年3月期見込みEPSが82.54円なのでPER5.5倍という水準での株式公開となっています。

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オーウイルの主な資本政策は (表2)の通りです。

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※クリックすると拡大表示します。

2006年2月と11月に第三者割当増資を行っており、2006年11月の増資単価100,000円は簿価純資産によっているとの開示があります。2006年3月期の1株当たり純資産は91,528円、2007年3月期は100,526円なので、この100,000円という増資単価は妥当であると言えますが、2006年2月期の70,000円はどのように決めたのか疑問が残ります。

(表3)はオーウイルの株主構成です。

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小口社長とグリーンコア合わせて過半数を確保する資本政策になっています。この点からも伊藤園との関係の深さが伺われます。

平成20年8月末時点で従業員数60名、従業員持株会を設立しており、上場直前時点で3%の持分を有しています。ストックオプションは発行していません。

公開株数115万株のうち、売出株数が100万株を占めることからわかるように、上場の主たる目的は資金調達にありません。開示対象の過去5期間全てにおいて配当があることからも将来の成長に向けての投資よりも社長やグリーンコアへの利益還元を重視していることがわかります。それでは何のための上場でしょうか? 創業者利得を確保するためか? 事業承継のためか? いずれにしても大きな成長は期待できないように思えます。さらに言うと、主要取引先が大株主であるというガバナンス体制にも不安を感じます。

【リンク】
オーウィル株式会社 IR情報
http://www.owill.co.jp/ir/library.html


# by yasukiyoshi | 2008-11-13 12:06
2008年 11月 12日

中小企業向けの制度融資

横浜商工会議所は11日、中小企業の制度融資の利用支援などを柱とした「中小・小規模企業緊急特別支援事業」を発表した。県や国の制度融資の説明会を開いたり、ホットラインを開設し、中小企業の資金繰りに関する相談体制を強化する。
(日本経済新聞 2008年11月11日 神奈川・首都圏経済面)
【CFOならこう読む】
上場企業の経常減益が相次ぐ中、中小企業の資金繰りは年末にかけてさらにタイトになることが予想されます。

このような状況の中、横浜商工会議所は、昨日「中小・小規模企業緊急特別支援事業」を発表しました。その概要は次の通りです。
Ⅰ.公的中小・小規模企業支援策の説明会並びに個別相談会等の開催
○緊急経済対策に係わる「制度融資説明会並びに個別相談会」の開催
○各支部における年末個別相談会の実施  【⇒詳細はこちら】
○国(㈱日本政策金融公庫等)、神奈川県、横浜市の中小企業支援制度情報の周知・
PRの徹底(ガイドブックの無料配布、メールマガジン)

Ⅱ.「緊急特別支援窓口」の開設
 ○相談窓口の開設時間延長
 ○経営革新セミナー(土曜開催)の開催
 ○土曜相談窓口の設置
 ○緊急特別支援電話相談(ホットライン)の開設 TEL:671-7453
 ○無料窓口・巡回相談体制の充実
  (巡回回数増、専門指導員・公的金融機関職員との巡回相談の実施等)
 ○金融支援策の積極的展開
  ・無担保・無保証人の融資(マル経融資)
  ・会員限定「無担保別枠1000万円保証」
  ・11金融機関の連携融資
  ・経営安定特別融資
  ・原油・原材料価格高騰対策特別資金
  ・セーフティネット保証の紹介・斡旋等
 ○全会員訪問(ローラー作戦)と連動した公的支援メニューの紹介

Ⅲ.横浜市との連携
 ○「原材料価格高騰対応等緊急保証」の開始に伴う『セーフティネット特別資
   金』融資対象業種認定業務支援
  ・認定窓口への人的応援 等
 ○当所と横浜市相談窓口との連携

Ⅳ.行政への要望
国が10月末、対象業種を広げた「セーフティーネット特別融資」制度のに関する情報提供、及び「セーフティーネット特別融資」の認定を行っている横浜市の窓口に職員を派遣し、企業が迅速に認定が受けられるように支援するといった事業を行うとしています。

【リンク】
横浜商工会議所
http://www.yokohama-cci.or.jp/


# by yasukiyoshi | 2008-11-12 08:51 | 資金調達
2008年 11月 11日

予想PER15倍へ急上昇

響く円高・需要減 海外戦略の見直し迫る
上場企業の経常利益は2009年3月期に7期ぶりの減少に転じる。米国発の金融危機は世界の実体経済にも影響を広げており、減益は来期も続く可能性がある。財政基盤、技術力などで日本の主力企業は国際的にも強さを維持しており、逆風下でいかに競争力向上の手を打てるかが金融危機の浮沈を左右する。
(日本経済新聞 2008年11月11日 1面 企業収益 逆風に挑む 上)
【CFOならこう読む】
日経平均株価の予想PERが急上昇しています。
「6%減から26%減へ。3月期決算企業の今期の業績見通しを期初と先週末で比べると、経常減益率は20ポイント拡大した。このうち5ポイント弱がトヨタの下方修正による。円高・資源高・米景気減速の3つがマイナス材料となり7期ぶりの減益を見込んでいたが、収益環境は大幅に悪化した。
株価はそれを先取りする形で下落していた格好だ。日経平均株価がバブル後最安値を記録した10月27日、利益から見て株価の割安さを測る予想PERは日経平均の構成銘柄の平均で10倍弱と歴史的な水準まで下げた。だが、PERは先週末には15倍弱と急上昇。必ずしも割安といえない水準まで利益が下がった。」
(前掲記事)
第2四半期決算発表を受けて通期の利益予想が下方修正され、その結果、予想PER(=株価/予想利益)が急上昇した、ということを新聞記事は言っているのです。PER15倍というのは、もはや割安とは言えないという点については、私も同じ意見です。CFOは今後の株価の上昇余地は小さいことを前提に、財務戦略を考える必要があるでしょう。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-11 09:13
2008年 11月 10日

本日休載します

新聞休刊日のため本日休載します。

# by yasukiyoshi | 2008-11-10 08:32
2008年 11月 08日

金融機関の自己資本比率規制緩和

地域金融の株含み損、算入不要に 自己資本規制を弾力化
中川昭一財務・金融担当相は7日、閣議後の記者会見で、銀行などの自己資本比率規制を見直し、保有する有価証券の含み損の一部を算入しなくて済むルールを決めたと表明した。2008年12月期から、12年3月期まで適用する。なかでも多くの地域金融機関は株式や債券などの含み損を算入しなくて済むようになり、株価急落が自己資本比率を押し下げる影響を回避できる。銀行の貸し渋りを防ぐ効果もあるとみている。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081107AT2C0700807112008.html
【CFOならこう読む】
従来金融庁が有価証券の含み損益を金融機関の自己資本に厳格に反映させてきたのは、金融機関の健全性を示す自己資本比率を正確に把握する必要があったからです。これを当座の貸し渋り対策として、ルールそのものを変更するのは、会計基準を変更するのと同様、本末転倒だと私は思います。

自己資本が基準値を下回る金融機関には、資本増強を促すのが筋でしょう。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-11-08 17:28 | 会計
2008年 11月 07日

エルピーダ、中国・蘇州の工場稼動先送り

エルピーダ、中国の工場稼動先送り DRAM合弁で1年
エルピーダメモリは6日、中国で計画していた代表的な半導体メモリー、DRAMの合弁工場の稼働を1年程度先送りすると発表した。総額50億ドル(約 4900億円)を投じ、2010年1―3月期に稼働させる計画を8月に発表したばかり。わずか3カ月で計画の修正を迫られた。米国発の金融危機のあおりでDRAM市況の回復が想定より大きく遅れると判断し、供給過剰の回避を優先することにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081107AT1D0609I06112008.html
【CFOならこう読む】
坂本社長は、先送りの理由を、DRAM市況の一寸先が全く見えないため、と説明しました。同社は2009年前半には市況回復が期待できるとの従来の見方を転換、投資を厳しく選別する方針を鮮明にするとのことです。

前掲紙の同じ紙面に”相次ぐ投資凍結・撤回”という記事が掲載されています。電機や自動車部品、素材など幅広い分野で設備投資を撤回・凍結したり先送りしたりする動きが相次いでいるとして、いくつかの事例が紹介されています。

エフ・イー・テクノロジーズ(ソニー系表示装置開発会社)
 パイオニアの鹿児島工場の買収を凍結

小糸製作所
 タイの新工場建設を見送り

ティー・エステック
(ホンダ系のシートメーカー)
 インドの増産投資を最大で半年間見送り

三井化学
 中国・江蘇省の合成繊維原料の工場建設計画を撤回

三菱化学
 北九州市の工場で合成樹脂の新設備稼働を先送り

帝人
 合成樹脂の新ライン建設計画を凍結

市況下落又は需要低迷により、投資を回収するだけの十分な将来キャッシュフローを見込めないことから、投資を先送りする又は撤回するというケースが多く見られます。

実行するか、先送りするか、撤回するか、の判断が難しいところですが、リアルオプション的に言うと、延期オプションの価値をどう評価するか、ということによると思います。

CFOの力量が問われる局面です。

【リンク】
2008年11月6日「中国合弁工場の稼動延期について」エルピーダメモリ株式会社
http://www.elpida.com/ja/news/2008/11-06.html



# by yasukiyoshi | 2008-11-07 09:33
2008年 11月 06日

エルピーダ続報

エルピーダがストップ高。新株予約権付社債(CB)発行による一株価値の希薄化懸念から株価は大きく下落したが、この日まで4営業日続伸し、CBの下限転換価格(509円)を上回る水準まで回復した。
(日本経済新聞 2008年11月6日 20面 株式往来)
【CFOならこう読む】
「5日に提出された大量保有報告書から、割安株投資で知られる米資産運用大手のアライアンス・バーンスタインが10月29日までに9.31%の株式を取得していたことが分かった。共同保有分を合わせると11.9%になり、実質的に筆頭株主に浮上した可能性がある。」(前掲)

エルピーダのMSCBについては、10月20日に取り上げました。
http://cfonews.exblog.jp/8789670/

MSCB発行をリリースした10月15日の終値1383円から400円まで下げた後、4営業日続伸し、昨日674円まで戻しています。

記事にあるアライアンス・バーンスタインとは、アクサ・フィナンシャル・インクが63.2%の持分を有する世界有数の資産運用会社です。運用資産総額は8004億米ドル、うち約半分をバリュー株に投資しています。

9月末の時点では、大株主にアライアンス・バーンスタインの名前はありません。PBR0.15倍という水準を割安とみて、大きな投資に踏み切ったのでしょう。

捨てる神あれば、拾う神あり?!

【リンク】
アライアンス・バーンスタイン株式会社
http://www.alliancebernstein.co.jp/


# by yasukiyoshi | 2008-11-06 10:33 | 資金調達
2008年 11月 05日

優先株式の評価-三洋電機のケース

パナソニックの三洋買収 金融3社の売却価格 焦点
パナソニックが三洋電機の子会社化で大筋合意したことで今後、三井住友銀行など金融三社が保有する優先株の売却価格が焦点となる。4日の東京株式市場では両社とも株価が上昇したが、市場の株価を基に価格算出を主張する金融機関と、株価の希薄化リスクを考慮すべきだとするパナソニックとの議論が残っている。
(日本経済新聞 2008年11月5日 9面)
【CFOならこう読む】
「買い手側からみると現在のPBRやPERが同業他社より高いことから判断して、株価は希薄化を織り込んでおらず、実際より割高な状態だとみている。一方、売り手からすると優先株転換で発行済株式数が増える可能性は発行時から分かっており、現在の株価は希薄化を織り込んだ上で成長性などを評価してついているとみる。そのため現在の株価にプレミアムを付けて売却したい考えだ。」
(前掲)
理論的には売り手が言うように、発行時に希薄化は織り込まれたと考えるべきですが、このケースでは次のような株式保有義務が買い手側に課されている点を考慮すべきです。
「資本金払い込み後、二年間はGSと大和証券SMBCグループが議決権ベースで四九%の優先株を保有するよう義務づけている。しかし、その一年後には保有義務が三四%に下がり、さらにその後は〇%。つまり三年を過ぎた時点で出資者側は自由に普通株に転換し、売却できるようになる。」
(日経産業新聞 2006年2月1日 24面)
最初の2年間とは、平成2008年3月13日まで、その1年後とは平成2009年3月13日です。つまり、転換に制限を設けて希薄化が起こりにくい仕組みにしたのです。
発行時の市場価格(2006年1月25日終値348円)を大幅に下回る価格で優先株が発行(普通株に換算した発行価格は70円)されたので、希薄化を抑える必要があったのです。

2009年3月13日の期限を迎えていない現時点で、希薄化が完全には株価に織り込まれていないというパナソニック側の主張に分があるように思います。

【リンク】
平成17年12月21日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2005/di-1221-1.pdf

平成18年1月25日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0125-1.pdf

平成18 年2 月14 日「第三者割当による新株式(優先株式)の発行にかかる覚書締結に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0214-2.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-11-05 11:55 | M&A
2008年 11月 04日

資本政策詳解-アサカ理研

【CFOならこう読む】
アサカ理研の株式上場の概要は次の通りです。
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アサカ理研は、電子部品などからの貴金属回収のほか、治具洗浄、シリコン基板の再生、エッチング液の再生を展開している福島県郡山市の会社です。現社長の山田慶太氏のお父さんである山田盛久氏が1969年に設立し、慶太氏が1994年に跡を継いでいます。

公募価額800円、2009年9月期見込みEPSが146.43円なのでPER5.5倍という水準での株式公開となっています。
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アサカ理研の主な資本政策は (表2)の通りです。
e0120653_17311333.jpg


山田慶太氏が社長に就任した前後に、株式移動が行われたものと思われます。近年資金調達は銀行借入によっており、増資等のエクイティ・ファイナンスは行われていません。

(表3)はアサカ理研の株主構成です。
e0120653_17312060.jpg


山田慶太氏、盛久氏、慶太氏のお母さんが取締役を務めている(?)(有)モラル・コーポレーション合計で64%の持分を確保する資本政策になっています。平成20年8月末時点で従業員数138名、従業員持株会は設立しておらず、従業員のインセンティブはストックオプションによっています。

盛久氏が高齢であることから、相続対策の色彩が濃厚なIPOです。株主には山田性が散見されます。売出は盛久氏のみ行っています。これも持株の一部を現金化しておきたいという相続を考えてのことと思われます。

【リンク】
株式会社アサカ理研
http://www.asaka.co.jp/index.html


# by yasukiyoshi | 2008-11-04 11:50 | IPO
2008年 11月 01日

TCI全株をJパワーに売却へ

Jパワー:英投資ファンドの保有株買い取り 対立終結へ
電力卸大手のJパワー(電源開発)は31日、筆頭株主の英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド」(TCI)が保有する発行済み株式の9・9%をすべて買い取ると発表した。Jパワー子会社の取り扱いに反対するTCIがJパワー側に保有株買い取りを要請してきたことに応じた。大幅増配の可否などを巡って展開された両者の対立も終結する見通しとなった。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20081101ddm008020022000c.html
【CFOならこう読む】
TCI・Jパワーの件について、「ズバリ先読み 日本経済」(竹中平蔵・田原総一郎 アスコム)の中の竹中氏の発言が的をえているので、紹介します。
田原 同じような話で、Jパワーの株買い増し問題というのもある。Jパワーは、全国に発電所や送電線網を持って、東京電力などへの電力供給をしている会社。半世紀以上前に国策会社として設立されたが、2004年に株式上場し、完全民営化された。この筆頭株主が、イギリスの投資ファンドTCIで、Jパワー株の9.9%を持っている。ところが、もっと買いたいと言ったら、日本政府はノーと言った。公益性が高いから、株取引は外為法で規制されており、外資が10%以上保有する場合は政府の認可が必要とされている。しかし、許可せず、買い増し計画の中止命令を出したと。どういうことですか?

竹中 これも、なぜ「ノー」なのか、よくわからない。財務省や経産省が、田中角栄を逮捕したときのように、別件逮捕みたいな法律を使って、投資できないようにしちゃった。そう決まった翌日だったか、英「フィナンシャルタイムズ」の一面はすごかったですよ。見出しが”Japan closed to investors”(投資家に閉ざす日本)でEUのコミッショナーが抗議している写真入りの、大々的な記事。世界から見ると「なんだこれは」ということをやっているわけです。

そもそも、会社が上場しているということは、広く株式も売っているわけですよ。上場を英語でいうとおもしろい。"place”と言うんですよ。置くんです。さあ、取引してくださいと置いているわけです。じゃあ、これを買おうかというと、「ダメだダメだ。イギリスのお前はダメだ」と言っているわけです。ビックリしますよね、普通は。空港設備でも原子力でも、守らなければならない公共の利益があるのは当然です。しかし、なぜ外資規制なのかが、まったくわからない。国内資本ならば何でもいいのか、連合赤軍のような過激派が買ったらどうするんだ、という問題でしょう。だからやっていることの説明がほとんどつかないんです。

田原 なるほど。

竹中 ちなみにソニーは外資です。キヤノンも三井不動産も外資なんですよ、今は。

田原 株主構成を見て、外国資本が50%を超えているから?

竹中 外資の定義は、そうですからね。私は担当者に聞いたんですよ。「ソニーはJパワーの株を10%を超えて買えるんですか」と。フーンと考えて「買えません」と言った(笑)。だからムチャクチャなことをやっているんです。

田原 そうか、ソニーもキヤノンも三井不動産も、投資できないんだ。じゃあ外資のキヤノンのトップが、日本の経団連会長でいいんですか?

竹中 知りません、そんなことは(笑)。

田原 無責任な天下り官僚ばっかりの空港会社や電源開発会社のほうが、よほど安全保障に差し障りがありそうですね。

竹中 とにかくやっていることが、ちょっとムチャクチャすぎるんです。かつての経済産業省は、ここまでヘンなことはしなかったと思いますよ。でも最近は、なりふり構わずです。

田原 なんで?

竹中 天下り先の確保でしょ。それしか考えられない。しかし、外為法という別件逮捕の手が使えるぞ、これで何でもできるぞとわかりましたから、これから同じような問題が噴出してくるでしょう。

連休初日のなので、今日はこれでオシマイ。
皆さん良い連休を!

【リンク】
ズバリ!先読み 日本経済 改革停止、日本が危ない!
竹中 平蔵

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# by yasukiyoshi | 2008-11-01 08:45 | M&A
2008年 10月 31日

確定拠出年金の充実?

追加経済対策、事業規模最大の27兆円 首相「消費税上げ3年後」
政府は30日、米国発の金融不安による景気減速などに対応する追加経済対策を決定した。融資枠拡大などを含めた事業規模は過去最大規模の約27兆円。実質的な財政支出となる「真水」は約5兆円で、財源には財政投融資特別会計などの「埋蔵金」を活用、赤字国債の発行は回避する。税制抜本改革に関し、麻生太郎首相は同日の記者会見で、早ければ3年後に消費税率を引き上げる考えを表明した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081031AT3S3001W30102008.html
【CFOならこう読む】
追加経済対策で、確定拠出年金(日本版401k)の充実も盛られた。具体的には、企業が拠出する掛け金に従業員が上乗せして資金を出す「マッチング拠出」を認め、個人が長期的に株式を買いやすい環境が整備される。

確定拠出年金とは、掛金を確定して、給付は運用次第で決まるタイプの年金制度です。
確定拠出年金の特徴として、
・年金資産を自分で運用し、その結果に応じて年金額が決定される。
・年金資産が個人別に区分され、残高の把握や転職時の資産の移行が容易である。
・企業規模を問わず実施することが可能である。

といった点があげられます。
(企業年金連合会HP http://www.pfa.or.jp/top/qa/qa02.html#q4

確定拠出年金には自営業者等が加入できる「個人型年金」(掛金は個人が拠出)と、企業が導入し、従業員を加入させる「企業型年金」(掛金は企業が拠出)の2タイプがあります。それぞれの拠出限度額は次の通りです。
●企業型
 厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金を実施していない場合
                           月額 4万6千円
 厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金を実施している場合
                           月額 2万3千円
●個人型
 自営業者等                     月額 6万8千円
                     (国民年金基金等の掛金と合算して)
 厚生年金保険の被保険者
(会社が企業型確定拠出年金、厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金のいずれも実施していないこと。)
                           月額 1万8千円
(厚生労働省HP 
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html
確定拠出年金の最大のメリットは、その税制にあります。

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これは単に拠出金額が所得控除されるというだけでなく、実質的にキャピタルゲインに対する税金が免除されることを意味します。

この点マイロン・ショールズ他の「タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー」(邦題「MBA税務工学入門」中央経済社)は、次のように説明しています。
「年金基金に拠出された$1は、n年後には$(1+R)nとなるが、年金支払時に、この投資収益累計額の全額に対して税率tで課税されるとした場合、税引後の手取り額は$(1+R)n(1-t)となる。年金基金に対する当初の投資額は($1)は、税効果(税引)後で考えた場合、(拠出時に投資支出額が全額損金算入されているために)$(1-t)で済むことから、税引後投資支出額に対する税引後投資収益率は、次のように計算される。
{1/(1 -t )}(1 +R ) n (1 -t ) = (1 +R ) n

但し、R=税引前運用利回り
n =期間
t=通常税率  」
にも関らず、この制度は日本では全く認知されていません。
2008年8月31日現在の確定拠出年金の施行状況は以下の通りです。
企業型年金の規約数等
企業型年金承認規約数  2,811件
企業型年金加入者数   約3,000千人(平成20年7月末)(速報値)
実施事業主数      10,822社

個人型年金の加入者等(平成20年7月31日現在)
第1号加入者      38,358名
第2号加入者      58,499名
           計96,857名(資格喪失者を除く)

事業所登録       53,145事業所
登録運営管理機関    213社
                      (厚生労働省年金局発表)
拠出限度額が小さすぎることが日本版401kが広く浸透して行かない原因であるように思います。これを機会に拠出限度を大きく拡張し、政府が401kの税務メリットを国民にくりかえし、わかりやすく説明することで、この制度は日本でも認知されるようになると私は思います。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-10-31 09:16 | 税制