2008年 09月 24日

ワークスアプリケーション、買収防衛策取り下げ

ワークスアプリケーションズ、買収防衛策を取り下げ
業務用ソフト開発のワークスアプリケーションズは22日、24日開催の定時株主総会の議案から買収防衛策(大規模買い付けルール)にかかわる事項を取り下げると発表した。半数以上の議決権が株主総会前に書面で行使された結果、反対が多数で、否決の可能性が高いと判断した。現在の防衛策は10月31日で失効する。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20080924AT2D2201G22092008.html
【CFOならこう読む】
ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、議決権割合が20%以上となる大規模買付の場合次の手順に従うことを要請するものです。

①大規模買付行為に関する意向表明書の提出
②大規模買付行為に関する情報の提出
③特別委員会の設置、対応
④取締役会としての意見の通知


買収者が上記ルールに従わない場合、必要に応じて対抗措置を講ずるとしていますが、その具体的な対抗措置については新株予約権の無償割当に限定されません。

ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、特別おかしなものではありません。これが会社が説明するように、企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、いわゆる2段階買収のように株主に対象会社株券等の売却等の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の株主や取締役会が大規模買収者の提案条件等について検討し、取締役会が代替案を提供するために必要な情報や時間を十分に提供しないもの、を排除するためだけに在るのなら問題はないと言えます。

しかしこのルールが経営者保身の道具となり得ることを、多くの株主は敏感に感じとり、反対票を投じたのでしょう。こういうニュースは、経営者をまたぞろ株式持合いに走らせるのでしょうね。

今必要なのは、岩井克人氏が「M&A 国富論」(プレジデント社)で強調しているように、買収防衛に関するルールを法制化することだと思います。

【リンク】
平成20年9月22日「定時株主総会における一部議案の上程取下げおよび『定款の一部変更に関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ
http://ir.worksap.co.jp/press/press/media_1222070235_j.pdf

平成20年7月30日「当社株件等の大規模買付行為に対する対応方針(買収防衛策)に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ
http://ir.worksap.co.jp/press/press/media_1217415707_j.pdf

M&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことか
岩井 克人

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# by yasukiyoshi | 2008-09-24 11:02 | 買収防衛策
2008年 09月 22日

ヒロセ電機、利益率30%の命題

ヒロセ電機、利益率30%の命題 研究・営業・製造、連動する高収益の歯車
携帯電話部品のコネクターを得意とするヒロセ電機は一般の知名度は高くないが、海外投資家の間では根強い人気がある。売上高経常利益率30%超を維持する経営姿勢が好感され、外国人持株比率は45%を超える。「研究開発を最優先」「社長が値決めする」「外注先には資本を入れない」といった独自のルールが研究、営業、製造の各部門に連携して浸透。従業員1人当たりの生産性を高める少数精鋭主義のもと、業界で
は比類のない高収益を達成している。
今春、ヒロセ電機の社内がざわめきたった。内規の水準を超えて顧客からの値引き要請に応じたことを理由に、営業本部の社員に出勤停止処分が下されたためだ。営業の担当者は5万点を超えるコネクターの採算をすべて把握し、売上高経常利益率が30%を下回らないように顧客と交渉する。価格下落が厳しい場合は中村達郎社長に決裁を求める。この値決めのルールを逸脱したのだ。

(日経ヴェリタス 2008年9月21日 12面)
【CFOならこう読む】
売上高経常利益率を重視する理由は?

という問に中村社長は次のように答えています。
「酒井秀樹元会長が社長に就任した1970年代の定期預金金利は10%程度だった。
『10%以上もうからないなら、あくせく働く必要はない』として、最低20%の利益率を目指したのが始まりだ。企業の成長に伴い、現在は30%になった。仮に5%に落として同額の利益を維持するには6倍の売上高が必要だ。社員を増やせばいいが、業績悪化時にはリストラも必要になる。少数精鋭主義を保てない」
ヒロセ電機の場合、売上拡大志向を厳に戒めています。これはガルブレイスの次の言葉にもあるように、経営者の本性とは相反するものです。
「ひとたび最低限の収益によってテクノストラクチュアの安全が保証されると、目標選択の幅がでてくる。生存の必要くらい強いものはない。しかしこの選択が、多くの場合、どのような形で実行されているかについては、ほとんど疑問の余地がないのであって、それは、売上高で測って、会社の最大可能な成長率を達成することである。」
(新しい産業国家 J.K.ガルブレイス 河出書房新社)
ガルブレイスは、個人の目標と、組織及び社会の目標は一致していなければならず、経営者が売上高拡大により、自己の影響力の拡張を図るのは当然のことだと言っているのです。

ヒロセ電機にはこの本性を抑えるだけの規律が働いているのです。

ヒロセ電機は、売上高を超える手元流動性(現預金+有価証券)を保有しています。この活用について市場から厳しい目が向けられているようですが、これを単純に増配やM&Aに費やすべきではないでしょう。

これを全部経営者・従業員で山分けしたとしても、それが中長期的な利益獲得のインセンティブになるなら全く問題ないと思うのです。株主価値重視の経営とは、闇雲に増配することではありません。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-22 11:29 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 20日

TOBルール 改正から2年

実務面で課題多く 透明性向上 議論積み上げ必要
ライブドアによるニッポン放送株の大量取得などを契機にTOBルールが見直され、近く2年を迎える。株式の取得価格が市場に明示され、株主にとって透明性の高いM&A手法だが、実務面では細かな障害が多く、使い勝手が悪いとの声が根強くある。さらなる改正に向け問題点も浮上している。
(日本経済新聞 2008年9月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事の中に次の記述があります。
「敵対的買収をするならTOBは利用しない方がいい」と日興シティグループ証券の藤田勉マネジングディレクターはファンドなどに助言している。いったんTOBを始めると価格変更や撤回は買収企業の防衛策など例外を除き事実上困難で「買収側の負担が重すぎる」(藤田氏)。
TOB開始後、買付価格の引き上げは自由にできますが、引下げは原則として禁止されています(金商法27条の6 1項1号)。これは投資家保護及び相場操縦に悪用されないようにするための規定であると解されています。

この原則の例外として、買収防衛策の発動により、株価の希薄化が生じる場合、買付価格の引下げが容認されるという規定が、平成18年改正により新たに設けられています。引下げが容認されるのは、株式分割と新株又は新株予約権の無償割当の場合に限定されています。したがって、第三者割当増資により大きな希薄化が生じても、買付価格の引下げは認められません。

また、新株予約権の無償割当等により買付価格の引下げが認められるのは、TOB期間中にその決定があった場合ではなく、TOB期間中に実行された場合に限られます。相場操縦に悪用される懸念から、買付価格の引下げについて非常に厳しい要件が課されているわけですが、それにより行われるべきTOBがなかなか行えない、という弊害が生じているのも事実です。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-20 09:44 | M&A
2008年 09月 19日

武井工業所、フェニックス銘柄へ

武井工業 株価低迷で基準割れ ジャスダック上場廃止へ
ジャスダックに上場するコンクリート製品製造の武井工業所は18日、時価総額で算定する上場基準の維持が困難になり、日本証券業協会の「フェニックス銘柄」に移行する方針を固めた。株価が低迷し、期限内に時価総額が上場廃止基準の5億円を回復することが難しいと判断した。ジャスダックが取引所に移行した2004年12月以降で、時価総額基準により上場廃止になるのは初めて。
(日本経済新聞 2008年9月19日 14面)
【CFOならこう読む】
武井工業所は、時価総額が昨年12月に初めて上場廃止基準の5億円を下回りました。上場維持には9月末までに月末と月間平均の両方で5億円を上回る必要がありますが、18日時点で2億2千万円しかなく、少なくとも月間平均での基準割れがほぼ確実な情勢であるため、今日19日の取締役会で「フェニックス銘柄」への移行を決定するとのことです。

ところで「フェニックス銘柄」とは何でしょう?

フェニックス銘柄とは、日本証券業協会が、金融商品取引所の上場廃止銘柄を売買するために、平成20年3月31日からスタートさせた制度です。
「金融商品取引所を上場廃止となった銘柄の発行会社は、金融商品取引法等により開示が義務付けられている上場企業に比べて、企業内容の開示が十分に行われていないところが多いため、日本証券業協会では、非上場企業が発行する有価証券について、証券会社が投資家に対して投資勧誘を行うことを原則として禁止しています。
 したがって、上場廃止になった銘柄は、上場廃止時点で換金機会がいちじるしく低下します。
 さらに、本協会の規則により、非上場銘柄は原則として証券会社による投資勧誘が禁止されているため、投資家は証券会社を経由して売却先を探すことができず、特に、自力で売却先を探すことのできない個人投資家は、当該企業が再生を果たし再上場するまでの間は、当該株券を保有し続けるといった消極的な対応を求められるのが現状でした。そのため、既存株主の換金の場として、フェニックス銘柄制度が創設されました。

 なお、フェニックス銘柄の位置づけとしては、日本証券業協会の自主規制規則(「店頭有価証券に関する規則」)で定める店頭取扱有価証券のうち、金融商品取引所を上場廃止となった銘柄で、かつ、証券会社が日本証券業協会に対して届出を行った上で、その証券会社が継続的に売り気配・買い気配を提示している銘柄のことをいいます。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)
武井工業所は平成19年6月30日現在、773名の個人株主がいます。この数が、上場廃止を目前に控えた現時点でどの程度まで減少しているかわかりませんが、売却機会を逸した株主が少なからず存在することは十分に考えられ、フェニックス銘柄へ移行することで、そういう人に対して、上場廃止後も売却機会を提供できることになります。

余談ですが、フェニックス銘柄の場合も監査は必要です。
「フェニックス銘柄の場合には、直前事業年度の財務諸表及び連結財務諸表について公認会計士又は監査法人により金商法に準ずる監査が行われ、又は計算書類等について会社法に基づく会計監査人による監査若しくはこれに準じる監査が行われ、かつ、その総合意見が適正又は適法である旨の監査報告書が、記載されている財務諸表若しくは連結財務諸表又は計算書類等に添付されていること。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)
【リンク】
平成20年3月24日「当社株式の時価総額及び今後の展開等について」株式会社武井工業所
http://ir.eol.co.jp/ASP/5286?task=download&download_category=tanshin&id=538972&a=b.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-09-19 08:11
2008年 09月 18日

国際会計基準 導入本格検討を金融庁が表明

金融庁、国際会計基準の導入検討表明
金融庁は17日、企業会計の国際化に対応するため、「国際会計基準」を日本で導入する方向で本格的な検討に入ると正式表明した。10月にも長官の諮問機関である企業会計審議会で議論を始め、2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を作成する。国際基準は世界100カ国以上で採用され、米国も採用する方針に転換した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080917AT2C1700D17092008.html
【CFOならこう読む】
記事によると、
「日本企業が決算の開示方法を国際会計基準か日本基準か選べる「選択適用」を認めることで大筋一致した。」
とのことです。

一方、米国が目指しているような自国の基準をとりやめ、国際基準に一本化する、いわゆる”アダプション”については意見がまとまらなかった、ということで、報道されているように、”アダプション”で決まり、ということでは必ずしもないのかもしれません。

いずれにしても国際基準と日本基準の違いを埋める「共通化作業」は従来通り進められることが改めて確認されており、以前田中さんから頂いたコメント通りの方向に向かっています。
「一方で、IFRSは原則論しか規定されない会計基準ですので、その運用、あるいは具体的な会計処理の理論的根拠として、結局は監査法人は、かつての米国会計基準や日本基準における関連する指針を参照するようになるのだろうと思います。

そうなったときのために、日本基準のコンバージェンスをとっとと進めてもらって(今の時点で大きな部分はだいぶ収斂しているように思いますが)、米国基準を参考に運用するのか日本基準を参考に運用するのかなどという変な話にならないようにしてもらいたいものです。」
http://cfonews.exblog.jp/8322854/
【リンク】
平成20年9月16日「第1回『我が国企業会計のあり方に関する意見交換会』について」金融庁
http://www.fsa.go.jp/news/20/sonota/20080916-3.html


# by yasukiyoshi | 2008-09-18 09:18 | 会計
2008年 09月 17日

日本電産、東洋電機製造に買収提案

日本電産、東洋電機製造に買収提案 「鉄道機器」に進出
日本電産は16日、鉄道用機器メーカーで東証1部上場の東洋電機製造に買収を提案したと発表した。TOB(株式公開買い付け)により子会社化し、モーターなど鉄道機器分野に進出する狙い。日本電産は多くのM&A(合併・買収)を手掛けてきたが、相手企業と合意する前に買収提案を公表するのは初めて。東洋電機製造は「対応を検討中」としており、買収が成功するかは同社の対応に左右されそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080917AT1D160CK16092008.html
【CFOならこう読む】
本件で今後想定されるシナリオは次の通りです。

①東洋電機製造経営陣はTOBに賛同し、TOBが実行される。
②東洋電機製造経営陣はTOBに反対する。

 ②の場合、日本電産は、
②-1 買収を諦める
②-2 敵対的TOBを実行する


 ②-2の場合、東洋電機製造は、
②-2-1 第三者割当増資等により安定株主を作る
(王子・北越のケース)
②-2-2 濫用的買収者として買収防衛策を発動する
(スティール・ブルドックのケース)
②-2-2 何もしない

ところで、②-2-2のケースでTOBは成功するのでしょうか?

東洋電機製造は、個人株主の比率が約5割と高く、TOBの成否は個人株主がTOBに応募してくるかどうかによって大きく左右されます。

TOB価格は1株635円で12日終値(305円)に約108.2%のプレミアムを上乗せした水準です。過去の株価の推移から見ても十分な水準のプレミアムであると言えます。

ですからこのTOBに多くの個人株主が応募してくるように思えます。ところがゲーム理論的なアプローチではこれが必ずしもそうはならないことが指摘されます。

日本電産の買収に賛同する株主は、日本電産は東洋電機製造のファンダメンタルズ価値がTOB価格以上であると考えているはずだと考え、保有株式を売らない、という選択をします。日本電産の買収に反対する株主も、保有株式を売りません。

したがって、支配株主がいない本件のケースでは、ゲーム理論的には日本電産の買収は成立しない、ということになります。

岩井克人氏の近著「M&A 国富論」(プレジデント社)は、次のようにTOB価格だけで買収の可否を決する方法を次のように批判し、新しい買収ルールを提案しています。

「ある買収者が市場を一生懸命リサーチし、買収して価値を高められそうな会社を見つけてTOBをかけた場合、既存株主は何もしない、つまり「寝て待つ」ことが最良の戦略となるのです。その結果、買収は成立しなくなる。このようにTOB価格だけで買収するかどうかを決めるという仕組みは、本質的な矛盾を含んでいます。
これはファイナンス理論の中の最も重要な命題の一つなのですが、そのような理論を無視して、教科書を表面的に勉強しただけの人が、TOBの価格だけで買収の勝負をつければよい、それが株主のためだと主張しているのを見ると、情けなくなります。」
私は、TOBの価格で買収の勝負をつけるのが良いと考えています。株主が欲するのは、良い経営ではなくキャピタルゲインです。十分なプレミアムを付せば、多くの個人株主はTOBに応募してくるのです。そしてそれだけのプレミアムを付けてもなおペイする自信のある株主に支配権が移動する、この仕組みが国富の点からも望ましいと、私は考えるのです。

岩井氏の提案する買収提案の詳細については、また別の機会にこのブログでとりあげます。

【リンク】
平成20年9月16日「東洋電機製造株式会社に対する資本・業務提携に関する提案書提出のお知らせ」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-001.pdf

平成20年9月16日「貴社との資本・業務提携のご提案について」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-002.pdf

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# by yasukiyoshi | 2008-09-17 09:03 | M&A
2008年 09月 16日

休載します

新聞休刊日のため休載します。

# by yasukiyoshi | 2008-09-16 08:18
2008年 09月 13日

資本政策詳解-データホライゾン

【CFOならこう読む】
データホライゾンの株式上場の概要は次の通りです。

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データホライゾンは広島に本社があり、レセプト(診療報酬明細書)のデータ化と分析結果からの各種サービス、レセプトのチェックシステムの提供など医療関連情報事業を展開している会社です。

設立は昭和57年で、当初はガソリンスタンド向け販売管理システムや、養豚場向け生産管理システムの開発・販売を行っていたようです。順風万端に上場までこぎつけた、という会社ではなさそうです。

公募価額1,650円、2009年6月期予想EPSが104.55円なのでPER15.8倍の水準での株式公開となっています。

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データホライゾンの主な資本政策は (表2)の通りです。

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2004年3月期、2005年3月期は債務超過でキャッシュフロー的にも苦しかったものと推察されますが、第三者割当増資を重ねてこの時期を凌いだようです。

2007年3月期まで大きな繰越損失があり、これを資本準備金の取崩しにより填補しているところが特徴的です。

(表3)はデータホライゾンの株主構成です。

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上場直前に大株主である内海社長の奥様が亡くなり、相続により株式が分散しています。奥様は24万株を保有しており、上場へ向けた資本政策の上で、夫婦合わせてオーナー持分を計算していたはずで、相続発生は全くの想定外であったものと思われます。

過半数を持たない中で上場ベンチャー企業(といってよいでしょう)の経営を行うのは、難しい面があると思いますが、頑張って欲しいと思います。

かつて上場準備をしていたが、ここ最近事業が停滞して上場を諦めかけているオーナー社長は日本中にたくさんいると思いますが、データホライゾンの事例は大きな励みになると思います。

今、債務超過だとしても、決して諦めてはいけません。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-13 11:57 | IPO
2008年 09月 12日

アーバンコーポレイション バリバとの密約

消えたメリルのTOB
民事再生法の適用を申請し上場廃止が決まったアーバンコーポレイションが12日、東京証券取引所第一部の株式最終売買日を迎える。不動産市況の悪化と信用収縮が招いた今年最大の倒産劇の裏では、仏大手金融機関BNPパリバとの間で実施した資金調達の妥当性という問題が浮上。情報開示のあり方などの課題を投げかけた破綻の構図を検証する。
(日本経済新聞 2008年9月12日 16面 アーバンコーポレイション破綻の実相 上)
【CFOならこう読む】
記事には、
「アーバンコーポは7月11日、別の資金調達としてパリバを割当先に300億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行。その際に株価次第で実際の手取り額が減少する可能性のある「スワップ契約」を交わしていた。資産査定の過程でこの「密約」を発見したメリルは「契約を開示しないまま買収すれば、大きな法的リスクを抱えてしまう」と判断した。」
と書かれています。

スキームの全貌は次の通りです。
「7月11日 2010年満期 総額300億円のCBをバリバ向けに発行
転換価格 344円(開示日6月26日の終値)
資金使途 財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定

破綻まで存在が隠されていたスワップ契約の概要
7 月11日 BNP パリバに300 億円を支払う
パリバは手元にあるCBを株式に転換したうえで、市場の売買高の12~18%に相当する株数を市場で売却。
”売却した株数×その日の市場の売買高加重平均株価の90%”に相当する金額を日々アーバンコーポレイションに支払う。
出来高加重平均株価の算定の基礎となる株価に一定の下限を設定」
8月13日までの33日間のうち6日間しか下限価格を上回らず、結果としてアーバンコーポレイションが受け取った金額は92億円にとどまりました。
(日経ヴェリタス 2008年8月17日 14面)

CBとスワップ契約を一体のものとしてみると、MSCBとほぼ同じものになるにも関らず、この片側のみしか開示しなかったことが東証の適時開示規則に違反していないかという点と、スワップ契約という当事者しか入手できない未公表情報を知りながら、パリバがアーバンコーポレイションの株式を市場で売却したことがインサイダー取引にならないか、の2点について問題があるのではないかと、今日の記事は指摘しています。

【リンク】
株式会社アーバンコーポレイション ニュースリリース
http://www.urban.co.jp/news.html


# by yasukiyoshi | 2008-09-12 07:53 | 資金調達
2008年 09月 11日

NJK 減損銘柄別に判断

今期から基準緩和
NJKは2009年3月期から有価証券の減損基準を緩和する。前期まで時価が取得価格に比べ30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたが、30-50%の下落なら銘柄ごとに減損を判断する方式に変える。保有する仕組み債の価格変動が激しいため、有価証券の種類に応じた減損が必要と判断した。
(日本経済新聞 2008年9月11日 14面)
【CFOならこう読む】
NJKは第1四半期から記事のように会計処理基準の変更を行っております。記事では、期の途中で変更するかのように書かれていますが、そうではありません。

第1四半期の四半期報告書に、次のように会計処理基準の変更の開示がなされています。
「従来「その他有価証券」の減損にあたって、時価のあるものについては、時価が取得価額に対して30%以上下落しているすべての有価証券について減損処理を実施しておりましたが、銘柄によっては流動性が低く、時価の変動幅が短期的に大きいものが認められるようになり、減損の計上についてより慎重に判断する必要があると考えられることから、時価が30%以上50%未満下落した場合は、銘柄別にその流動性及び時価の推移を慎重に検討し回復可能性を勘案して減損処理を行う方法に変更いたしました。
なお、この変更による当第1四半期連結会期間における影響額はありません。」
金融商品会計に関する実務指針91項では、
「売買目的有価証券以外の有価証券について、時価が著しく下落したとき(時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合)は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減額処理しなければならない」

「上記以外の場合には、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断する」

「なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる」
としています。

従来NJKは、上記基準に比し保守的に、30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたのを、一時的な為替相場の変動により大きく時価が変動する仕組み債を保有している現状においては、30%-50%の下落の場合には回復可能性を判定した上で減損の要否を決める方法が妥当であると考え、会計処理基準の変更を行ったということです。

【リンク】
「有価証券報告書・四半期報告書」株式会社エヌジェーケー
http://www.njk.co.jp/irdata/securities/index.html


# by yasukiyoshi | 2008-09-11 08:41 | 会計
2008年 09月 10日

取引先持株会広がる

保有比率10%超、3月末で9社
仕入先や販売先など取引関係のある中小企業などに自社の株式を購入してもらう取引先持株会が広がっている。日本経済新聞社が2008年3月末時点で調べたところ、428社で取引先持株会が10位以内の大株主に名を連ねた。買収防衛に向けた安定株主づくりの一環と位置付ける企業もある。
(日本経済新聞 2008年9月10日 18面)
【CFOならこう読む】
次の表は、取引先持株会の保有比率が10%を超える企業のリストです。

e0120653_1958860.jpg新聞記事によると、新日鉄のケースを参考にして設立準備に動く企業が多くなっているとのことです。
「新日鉄は3月に資材の調達先や作業の外注先など104社で持株会を発足、現在は105社に増えた。1回の合計購入額は約3000万円。8月末で約31万株(発行済株式の0.0045%)と保有量は少ないが着実に増加している。
鉄鋼世界最大手のミタル・スチールが同2位のアルセロールを買収した2006年夏ごろから設立を検討。260社に加入案内を送付した。住友金属工業などとの株式持ち合いと合わせた安定株主づくりとみられる。」
日本では、例えばおもちゃ業界のように卸問屋や下請けといった取引先と緊密な関係を構築し、一つのグループとして経営している会社も少なからずあります。そういった会社が自社のみならず、取引先にも持株会を設立するのは悪いことではないし、否定すべきものでもありません。
一方現経営陣保身のための安定株主づくりは容認されるべきではなく、取引先持株会設立がその一環で、記事にあるように、
「取引先持株会は、取引関係を裏付けにしているため退会が少なく、1回の買付額も比較的大きい。上場企業が実質的に設立を主導することが多く、強い立場を利用して無理に株を買わせると、独占禁止法違反になる恐れもある。」
ということなら大問題であると言えます。

結局、保有比率の上限を設定する等、コーポレートガバナンス上弊害が生じないような設計にするしかないのかもしれません。この点は従業員持株会についても同様であると思います。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-10 09:08 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 09日

スティール、松風に企業価値向上策

ROE8%達成 スティール提言 松風に企業価値向上策
米投資ファンドのスティール・パートナーズは8日、筆頭株主になっている歯科材料大手の松風に対し企業価値向上に向けた提言を行ったと発表した。自己資本利益率(ROE)8%以上の達成を目標とした新しい経営計画の策定や、内部留保の使途説明などを要求資本効率の改善に努める社外取締役の導入なども求めた。
(日本経済新聞 2008年9月9日 14面)
【CFOならこう読む】
昨日、スティールが投資先との対話を重視する方向に転換しつつあるというような話題をとりあげましたが、今日の新聞に松風企業価値向上策について提言した旨の報道がありましたので、今日はその内容を紹介します。

提言の具体的内容は次の通りです。
「スティール・パートナーズは、松風が本業の歯科医療事業において着実に増益を実現されていることを喜ばしく思っています。しかし、同社経営陣が内部留保の使途や合理性について株主に対してより明確に説明すべきであると考えています。
スティール・パートナーズは、松風の留保利益は、本業の成長投資にこそ使うべきものであり、経営陣の本業ではないところの専門知識が必要な他社の株式やその他の有価証券投資につかうべきものではないと述べております。

合理的な範囲を超える留保分について、スティール・パートナーズは、自社株買いあるいは増配を通じて従業員持ち株会などを含む株主に還元すべきだと考えています。
スティール・パートナーズは松風に対して以下の提言を行いました。

. 株主資本利益率(以下「ROE」)を経営指標の一つとして導入し、より資本効率を重視した経営を行うためにROE8%以上の達成を目標に含んだ「新」中期経営計画を策定する。
. 内部留保の使途や合理性を説明するために「新」中期経営計画にて設備投資、減価償却費、研究開発費等の計画を開示する。
. 自社株買いもしくは特別配当を通じてROE及び一株当たりの当期純利益を改善する。
. 配当性向を恒常的に引き上げる。
. 株主と利害関係を共有するため、取締役にストックオプション制度を導入する。
. 資本効率の改善とステークホルダー間の利害の最適バランスを維持することに注力する社外取締役候補者を少なくとも3名選定する。
スティール・パートナーズは、これらの提案を実施することにより松風の一株当たりの当期利益が増加し、企業年金連合会が取締役再任のためのROE最低基準としている8%の達成を助けると考えています。松風は企業年金連合会の再任基準8%を下回る状態が続いていることを指摘しています。」
特に非事業用資産への投資が過大であると、スティールは次のような説明を行っています。
「■松風は2008年6月期末現在、本業への貢献が薄いと考えられる非事業用資産を87億円保有。これは総資産額の約39%、時価総額(2008年8月28日時点)比61%に相当
 >非事業用現預金は42億円、同時価総額比29%
 >有価証券は7億円、同時価総額比5%
 >投資有価証券は39億円、同時価総額比27%(ナカニシ、大日本スクリーン、ワタベウェディングの株式など)
■合理的な範囲以上の内部留保は、株主の資本を不必要に拘束し、評価減などの無用なリスクに晒す(2008年3月期に有価証券の価値が約10億円毀損)。同業他社や本業とのシナジーが薄いと考えられる他社株への投資などの資産運用は、会社の本業でもなく、「歯科医療の発展」という経営理念にも資さないとSPJSFは考える。
e0120653_8354651.jpg


■松風は本業から上がるキャッシュフローにより、十分将来の設備投資を賄える
>松風の過去5年間の営業活動によるキャッシュフロー(下図青の棒グラフ)をみると概ね設備投資額(下図赤)を上回っている
>過去5年間の営業活動によるキャッシュフローの平均値は設備投資の同平均値の約2.4倍、年間総配当額控除後でも1.8倍以上の水準
■87億円という非事業用資産の額は平均設備投資額の約20年分もの規模87億円という現在の非事業用資産の額は、平均設備投資額や本業から上がるキャッシュフローを考慮すると明らかに過大」
なお、内部留保の使途・合理性について説明を求めるのは、他の機関投資家も同様であるとして、企業年金連合会の議決権行使基準等を紹介しています。
「■企業年金連合会
>「既に厚い自己資本を有していながら適切な事業計画もなく、内部留保を積み増している場合等には、(剰余金の分配等について)肯定的な判断はできない。(()内はSPJSFが挿入)」(株主議決権行使基準 III.具体的行使基準 3.資本政策等に関する議案 (2) 剰余金の分配等 c )
>「株主に対する利益配分は、中長期的観点から行われるべきであるが、株主等に対し納得のいく説明もなく、必要以上に利益を留保する企業に対しては、連合会は適切な株主還元を求める。」(連合会 コーポレート・ガバナンス原則 II.コーポレート・ガバナンス原則具体的行使基準 5.事業計画等 ④)

■アジアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーションACGA(米国、英国、アジアの年金運用機関を構成員とする団体)
>「経営者は…株主価値の長期的最大化に努めねばならない。」「経営者はこうした自己資金の活用に何の計画性も持っていない。増配または自社株の買い戻し、もしくはその両方によって株主に還元すべきである。」「(提言)株価が簿価以下に下がったときには、自社株の買い戻しを実施する。」「(提言)ROE/ROAの目標値を明示(する)(()内はSPJSFが挿入) 」(ACGA日本のコーポレート・ガバナンス白書)

■インスティシューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下「ISS」、世界的に著名な議決権行使助言会社)
>「過去十分な利益を上げているにも関わらず、その内部留保について説得力のある理由を提示しない会社が、適切な説明なく不十分な配当を提案した場合には、ISSは反対票を投じるよう推奨する(SPJSF訳)」“ISS will recommend votes against the income allocation proposal where a consistently profitable company with no compelling reason to retain cash proposes an unusually low dividend without an adequate explanation”) (Japanese Proxy Season 2007-SUBSTANTIVE ISSUES FOR 2007-Allocation of Income and Dividends)」
提言内容は至極まっとうで、松風経営陣はこの提言に対し、きちんと対応することが求められると、私は思います。

【リンク】
2008年9月8日「スティール・パートナーズ・ジャパン、松風に企業価値向上のため提言 内部留保の使途についてより明確な説明を要望」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080905-Shofu_j.pdf

2008年8月28日「企業価値向上のための提言」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080905-Shofu_PPT_j.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-09-09 08:39 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 08日

米スティール対日戦略転換

「日本の経営者を啓蒙します。」米投資ファンド、スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が昨年6月の記者会見で発した一言が、物議を醸したのは記憶に新しい。企業に事前了承なしのTOBを仕掛けるスティールは「こわおもて投資家」の代表格。だが意外なことに、最近は対話路線への転換を急いでいるという。なぜなのか。昨夏以降、メディアへの登場を拒んできたリヒテンシュタイン氏が日経ヴェリタスに胸の内を明かした。
(日経ヴェリタス 2008年9月7日 54面)
【CFOならこう読む】
リヒテンシュタイン氏は、インタビューの中で、
「昨年のブルドック案件から、投資先とのコミュニケーションがいかに大切かを学ん
だ」
「投資先企業にはまず、スティールが長期の投資を目指すファンドであることを理解
してもらいたい。そして我々が利益率やROEを高める具体的なアイデアを持ってい
る」
と語っています。

そして、そのアイデアについて具体的に次のように語っています。
「例えばコーポレートガバナンスの向上、中核事業への経営資源の集中、資本政策の最適化などです。こうした取り組みで株価が上がる余地は大きいはずです。」
そして投資ファンドの目的について、
「この仕事の最大の目的は、投資先企業を育てていくことです。その結果として、我々は株主を含めた企業のステークホルダーに価値をもたらすことができます。企業が良くなっていけば経済全体が良くなるし、税収が増え、株価上昇を通じて年金生活者など国民の利益にもつながる。そう信じて働いています。」
と話しています。

私には、未だ彼らが濫用的買収者である理由がわかりません。

しかしリヒテンシュタイン氏は、それをただ徒に非難するのではなく、日本市場での”土着化”を進めています。7月に代表にモルガン出身のマーク・オフリルが就任したのも”土着化”を進めるためです。
「オフリル氏は通算17年間にわたって日本に住んでいる日本通。モルガンでの経験も長く、日本市場を熟知しています。オフリルが代表になったことで、投資先企業との対話も加速していくでしょう」
「彼に期待するのは、日本政府との関係構築です。モルガン時代には大阪証券取引所の社外取締役を務めた経験もありますし。」
ブルドックの時に、さんざんコケにされた経済産業省と関係を構築しようと云うのでしょうか?

いずれにしても日本で”土着化”するには、官庁との関係が重要であることは間違いありません。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-08 08:39 | M&A
2008年 09月 06日

端株強制買い取り-KDDIのケース

代金、みなし配当課税 KDDI 株主に注意喚起
KDDIは1株に満たない端株の強制買い取りに関する税金の取り扱いで、株主に注意を促し始めた。端株を買い取る際に同社が端株主に支払う代金が、みなし配当課税の適用を受けることが決まったためだ。(日本経済新聞 2008年9月6日 16面)
【CFOならこう読む】
端株を強制的に買い取る場合、配当金と同じく10%の源泉徴収が課されるという通知をKDDIは国税から受け取ったというニュースです。

強制買い取りではなく、株主自ら24日までに端株の買い取りを会社に対し請求する場合には、みなし配当課税は回避できるとのことです(この場合でも譲渡益課税が生じる可能性はあります)。

この件からだけでも、複雑怪奇な日本の金融所得税制の一端が垣間見れます。

【リンク】
平成20年9月3日「端株の処分に関する税制についてのお知らせ」KDDI株式会社
http://www.kddi.com/corporate/ir/shareholder/guide/pdf/hakabu_shobun.pdf



# by yasukiyoshi | 2008-09-06 10:53 | 税制
2008年 09月 05日

テクモ・スクエニのケース

テクモとコーエー、経営統合波乱含み 具体策は11月上旬メド
ゲームソフト会社でともに東証1部上場のテクモとコーエーは4日、経営統合に向け協議を始めると発表した。経営統合委員会を設け、11月上旬をメドに統合の具体策を詰める。テクモは同業のスクウェア・エニックスからTOB(株式公開買い付け)提案を受けていたが、経営陣はこれを拒否し、コーエーとの統合を選んだ。これを受け、スク・エニはテクモに質問状を提出、対応を今後考えるとしており、先行きはなお波乱含みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080905AT1D040AF04092008.html
【CFOならこう読む】
スク・エニからのTOB提案を拒否し、ホワイトナイト役をコーエーに求めた格好です。

スク・エニではなく、コーエーを選んだ理由をテクモ経営陣は明確に語っていません。
スク・エニは昨日、テクモに対し質問状を提出し、この点を照会しています。

今後の展開が注目されますが、仮にスク・エニが敵対的TOBに打って出た場合、テクモがコーエーとの経営統合を強行するのは、時間的な制約から、非常に困難であると言えます。その理由は次の通りです。
「簡易合併手続が利用できる場合を除き、会社が第三者と合併を行うには株主総会において特別決議を行う必要があるが、敵対的買収の手段として一般に用いられるTOBは、証取法上、買付期間が最短で20日、最高で60日とされており、これとの関係で、実際に防衛的な合併を行うには実務上困難な問題が生じる可能性がある。
まず、そもそも合併が敵対的TOB阻止のための手段として機能するためには、TOB手続中に対象会社の取締役会において他の会社との合併を決定し、TOB買付期間満了前の一定の日を基準日ないし株主名簿閉鎖日として、合併承認のための株主総会を招集しなければならない。
TOB完了後に基準日を定めて株主総会を招集しても、買付者側が多数の株式を取得して基準日までに名義書換をすれば合併承認決議はブロックされてしまうことになるからである。しかしながら、基準日等を定めるためには2週間前の公告が必要とされていることに鑑みると、最短20日間の買付期間内にここまですべて完了させるのは不可能ではないにせよ至難の業であろう。」
(「平時」の予防策と「有事」の対応策 太田洋・原田充浩著 商事法務)
いずれにしても、スク・エニとコーエーのいずれがテクモの株主価値を創造するのか(当然、従業員のモチベーションを高める施策も含まれます)、きちんと時間をかけて説明をした上で、テクモ株主がいずれかを選択する、という手続きが必要でしょう。そういう意味では、両社がTOB合戦を行うのが一番わかりやすい形であると私は思います。

【リンク】
2008年8月29日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けについて」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080829_133.pdf

2008年9月4日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けの提案に関する同社からの回答への対応」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080904_135.pdf

平成20年9月4日「経営統合にかかる協議開始のお知らせ」テクモ株式会社 株式会社コーエー
http://www.tecmo.co.jp/company/pdf/2008090402.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-09-05 09:09 | M&A
2008年 09月 04日

自社株買いによる株高効果

実施率上昇、株高効果ます 金庫株、新たな説明責任を
株式相場の数少ない好材料として自社株買いが脚光を浴びている。中でも投資情報として関心が高いのが「自社株取得枠」だ。会社が自ら設定した取得枠のうち、どの程度を実行したかを表す実施率が年々上昇。開示情報としての信頼度向上とともに、株価への影響も大きくなっている。
(日本経済新聞2008年9月4日 12面 自社株買いの今 上)
【CFOならこう読む】
記事では、自社株買いと株高効果との関連について次のように説明しています。
「野村證券金融経済研究所が取得枠設定を発表した企業の株価をTOPIX対比で調べたところ、2007年度上期までの株高効果は発表日からせいぜい2営業日、株価上昇率も1-2%だった。ところが2007年度下期以降は株高効果が20日程度持続しているうえ、上昇率も4%上回る。」
理論的には自社株買いは株主価値に中立です。しかし「低迷する株価に刺激を与えたい」という動機で自社株買いを行う会社は少なくありません。株価に影響を与えるとしたらそれはどのよう理由によるのでしょうか?

第一に、経営者が、株価が企業のファンダメンタルズ価値を下回っていることを確信していて、それを市場にアピールすることにより株価に影響を与えることがあります。これはシグナリング効果と呼ばれます。

第二に、企業にキャッシュフローが潤沢で、当面資本コストを上回るような投資案件もないことから、株価にこれが織り込まれていないときに、これを自社株買いまたは増配により株主に還元することにより株価に反映させることができる場合があります。

第三に、社債等負債により資金調達し、同時に自己株買いを実行し、負債比率を上昇させることにより資本コストを引き下げることができるなら、株主価値は上昇します。

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2007年度下半期からサブプライムの影響もあり、株価は大きく下げています。したがって、ファンダメンタルズに比し株価が低い会社が相対的に増加していると考えられます。

また、キャッシュの効率的利用が求められるようになったのも最近のことです。更に、昨日もお話ししたように、バブル崩壊後借金返済に汲々としてきた日本企業は、ここにきてようやく過剰債務が解消され、資本コストを引き下げるために負債比率を上昇させる財務政策を選択し得る状況になりつつあります。

つまり上で説明した3つの要因が複合的に作用して、自社株買いが株価上昇を促す能性があるのです。
そういう意味で、今は自社株買いの好機であると言えそうです。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-09-04 07:52 | 自社株取得
2008年 09月 03日

社債の発行残高増加

上場企業の社債の発行残高が増えている。2008年6月末時点で、貸借対照表に記載された残高は35兆2039億円と3月末に比べ2.6%増え、2・4半期連続の増加となった。米国発の金融市場の動揺が続く中、M&Aなど成長投資や株主配分に活用する資金を、早めに固定金利で調達しようと動いている。
(日本経済新聞2008年9月3日 17面)
【CFOならこう読む】
リチャード・クー氏が「日本経済を襲う2つの波」で指摘するように、日本はバランスシート不況から脱しようとしています。
e0120653_7474929.jpgバブル崩壊後借金返済に汲々としてきた日本企業は、ここにきて過剰債務が解消され、新たにお金を借りて新規投資に向かう気持ちになりつつあるのです。

CFOの重要な仕事としてディズニーの元CFOゲイリー・ウィルソンはHBR誌のインタビューの中で次のように語っています。
「戦略的なCFOが重視する点は2つある。第1は、会社の戦略目標を達成するために、資金を効率的に投資すること。第2は、最適の資本コストで資金を調達すること。」
バブル前は銀行がコーポレートガバナンスの中心にいて、このようなことを考える必要はなく、バブル後は借金を返すことが至上命題でしたから、最適資本構成は無借金であることでした。そういう意味で、ようやくCFOがCFOとしての本来の仕事が出来る時代が初めてやって来ようとしています。

発行体格付を落としても、資本コストの点からSBによる資金調達を選択したエーザイのケースはそのことを象徴しているように私には思えます。

【リンク】
日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方
リチャード・クー

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# by yasukiyoshi | 2008-09-03 09:56 | 資金調達
2008年 09月 02日

時価総額基準による上場廃止猶予期間入り

東京証券取引所と大阪証券取引所に上場する企業で、8月末の時価総額が各市場の上場基準を下回っている企業が19社と、3月末に比べ14社も増えた。原材料高など収益環境の悪化で、株価下落が長期化する企業も目立つ。19社は一定期間、上場廃止を猶予されるが、上場を維持するにはその間に収益向上策などを求められることになる。
(日本経済新聞2008年8月29日 16面)
【CFOならこう読む】
各取引所は時価総額が一定の額を下回った状況が続くと上場廃止にすると定めています。

東証、大証ともに月間平均時価総額又は月末時価総額のいずれかの時価総額が、一定基準を下回ると上場廃止猶予期間入りとなります。

e0120653_236144.jpg各市場の規定は次のようになっています。

東証1部・2部の場合
10億円未満である場合において、9か月(所定の書面を3か月以内に提出しない場合は3か月)以内に10億円以上とならないとき
又は
上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3か月以内に当該数値以上とならないとき

東証マザーズの場合
5億円未満である場合において、9か月(所定の書面を3か月以内に提出しない場合は3か月)以内に5億円以上とならないとき
又は
上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3か月以内に当該数値以上とならないとき

大証1部・2部の場合
上場時価総額が5億円未満である場合において,9か月(事業計画の改善等に関する書面を3か月以内に大証に提出しない場合にあっては,3か月)以内に5億円以上とならないとき。

4月1日にも書きましたが、売買高も少なく時価総額も小さい銘柄はどんどん上場廃止にすれば良いのです。その代わり上場審査はもう少し緩やかにし、市場の銘柄を積極的に入れ替えていくことで、魅力的な商品(銘柄)ラインナップを投資家に提供していくことが、特に新興市場にとっては重要であると思います。

【リンク】
「上場廃止基準概要 (一部・二部)」
http://www.tse.or.jp/rules/listing/stdelisting.html
「上場廃止基準概要 (マザーズ)」
http://www.tse.or.jp/rules/listing/stdelisting_mo.html
「大阪証券取引所 市場第一部・第二部上場廃止基準とその運用について」株式会社大阪証券取引所 自主規制本部 上場グループ
http://www.ose.or.jp/stocks/doc_kahk/kahk01.pdf



# by yasukiyoshi | 2008-09-02 23:07
2008年 09月 01日

資本政策詳解ーサニーサイドアップ

【CFOならこう読む】
サニーサイドアップの株式上場の概要は次の通りです。

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サニーサイドアップは中田英寿をマネジメントしていることで有名な会社です。公募価額2,800円、2009年6月期予想EPSが194.43円なのでPER14.4倍の水準での株式公開となっています。

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サニーサイドアップの主な資本政策は (表2)の通りです。

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次原社長は、2005年7月に付与された新株予約権700株(分割後280,000株)の行使を、2006年7月に行っており、これにより上場後持株比率50.1%を確保する資本政策となっています。

(表3)はサニーサイドアップの株主構成です。

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中田英寿が第3位(発行済株式数ベースでは第2位)の大株主に顔をみせている他、北島康介や為末大も株主になっています。

従業員持株会は設立しておらず、代わりに約30人の従業員にストックオプションを付与しています。

余談ですが、株主の状況、中田の住所はモナコ(モンテカルロ)と記載されています。タックスヘイブンで名高いあのモナコです。

【リンク】
平成20年8月「新株式発行届目論見書」株式会社サニーサイドアップ
http://www.c-direct.ne.jp/hercules/uj/pdf/10102180/00071796.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-09-01 09:10 | IPO
2008年 08月 29日

ロックアップ条項

ベンチャーキャピタル(VC)など新規上場企業の大株主に対して、株式売却を一定期間制限する条項のこと。あらかじめ大口の売りを抑えて上場直後の株価を安定させる目的で設定する。
(日本経済新聞2008年8月29日 16面 なるほど株式 このコトバ)


【CFOならこう読む】
条項がある場合は上場目論見書の「募集または売出しに関する特別記載事項」に記載されます。

例えば、イナリサーチの場合、次のようなロックアップ条項が設定されています。
「ロックアップについて 本募集及び本売出しに関し、売出人である中川賢司及び中川博司並びに当社株主である八十二3号投資事業有限責任組合、杏林製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社及び若林弘一は、日興シティグループ証券株式会社(主幹事会社)に対して、本募集及び本売出しに係る元引受契約締結日から180日間(以下「ロックアップ期間」という。)は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社株式(潜在株式を含む。)を売却しない旨を約束しております。
 また、当社は、主幹事会社との間で、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(株式分割及びストックオプション等に関わる発行を除く。)を行わないことに合意しております。
 なお、上記のいずれの場合においても、主幹事会社は、その裁量で当該合意内容の一部若しくは全部につき解除し、又はその制限期間を短縮する権限を有しております。」

今年上場した企業のうち、株価の下落が目立つものには、大株主による「ロックアップ条項」が緩い企業が多い(日経ヴェリタス2008年8月17日)と言えます。

7日に上場したベンチャーリパブリックは、柴田啓社長の出身母体である三菱商事が主要株主ですが、「ロックアップ条項」は設定されていません。ベンチャーリパブリックの公募価格3000円に対し8月28日の終値は2040円と大きく値を下げています。

また同じく7日に上場したトライステージには「ロックアップ条項」が設定されているものの、「創業メンバーの取締役3人が16万2000株を売り出した。「創業者利益の確定が早過ぎる」と悪材料視された。」(日経ヴェリタス2008年8月17日)ことにより、公募価格4000円に対し8月28日の終値は2290円と大きく公募価格を下回っています。

結局、オーナー経営者が自らの利得のみのためにIPOしたのではない、という姿勢が大事なのだと思います。

【リンク】
平成20年7月「株式発行並びに株式売出届出目論見書」株式会社ベンチャーパブリック
http://www.vrg.jp/ir/data/00071441.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-29 11:12 | IPO
2008年 08月 28日

PIPEs-田崎真珠のケース

経営改善「PIPEs」広がる 上場維持しファンド活用 改革効率はMBOに軍配
上場企業が経営改善として投資ファンドから「PIPEs(パイプス、株式公開企業への私募投資)」と呼ぶ手法で出資を受ける事例が増えている。株式の非公開化前提のMBO(経営陣が参加する企業買収)と違い、上場を維持しながら支援を得られるのが特徴。経営改革にファンドの資金は活用したいが、上場廃止はしたくないという企業の間で広がっている。「経営再建にはファンドの力が必要」。7月末、3期連続の最終赤字で財務体質が悪化した田崎真珠は、投資ファンドのMBKパートナーズの出資受け入れを決断した。MBOも検討したが、最終的には「社員や取引先への影響が大きい」(明石靖彦常務)上場廃止を避けるためにPIPEs方式を選んだ。
(日本経済新聞2008年8月28日 14面)
【CFOならこう読む】
「PIPEsはPrivate Investment In Public Equitiesの略。ファンドは投資先と相対で私募増資や第三者割当増資などの条件を交渉、市場価格より安く株式の一部を譲り受ける。経営にも関与して企業価値を高め、保有株の売却益を狙う。企業側には公募増資などに比べて迅速に資金調達できる利点がある。上場企業のステータスを保ちつつ、一定の改革を期待できる手段として経営者も受け入れやすい。」
(前掲 日経新聞記事)
田崎真珠のスキームの概要は次の通りです。
第三者割当による種類株式の発行(A種優先株式)
発行期日 平成20年10月下旬(予定)
調達資金の額 6,900,000,000 円(発行価額: 200 円)(差引手取概算額)
当該増資による発行株式数  35,000,000 株
募集後における発行済株式総数  35,000,000 株
割当先  Watermunt Spare Parts B.V.(MBK パートナーズの投資目的子会社)
A種優先株式には議決権が付与されており、発行後におけるWSPの議決権比率は49.55%となります。

発行価額の200円は、本件取締役会決議日7月31日の終値142円に比し高い設定となっていますが、A種優先株式には、優先株式1株につき4株の普通株式の交付を請求することができる取得請求権が付与されており、これを勘案すると有利発行となるので、株主総会の特別決議を必要とします。

臨時株主総会は9月下旬又は10月上旬に開催され、①(i)発行可能株式総数の変更やA種優先株式の内容に関する規定の新設等A 種優先株式発行のために必要となる事項に関する定款の一部変更並びに(ii)社外取締役との間の責任限定契約に関する規定の新設を内容とする定款の一部変更、②A 種優先株式の有利発行、並びに③本増資実行後の発行可能株式総数等に関する定款の一部変更について決議されます。

更に、本増資を条件として現取締役5名中代表取締役を含む4名及び現監査役4名中3名が辞任し、同じ臨時株主総会において、新たな役員の選任について併せて承認を求め、経営陣を一新することが予定されています。

PIPEsは、株主総会の特別決議を要すること、株価が大きく希薄化するため一般投資家への影響が大きいと考えられること、上場を維持しながら経営改善に取り組むため、ファンドにとってもMBOに比しExitまで時間がかかる場合が多いと考えられること等を勘案すると、この方式を選択すべきケースはあまりないと思われます。

【リンク】
平成20年7月31日「第三者割当による優先株式の発行、定款の一部変更、代表取締役及び役員の異動、主要株主である筆頭株主及び親会社の異動、大規模買付行為への対応方針の取り扱い、並びに臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」田崎真珠株式会社
http://www.tasaki.co.jp/kessan/whats031.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-28 10:21 | M&A
2008年 08月 27日

取引所ルール創設により、経営者の保身目的の防衛策導入・発動排除へ

東証、買収防衛策の開示徹底 年内にも新ルール
東京証券取引所は年内にも、上場企業の買収防衛策に対する新たな規制ルールを作る。国内外の投資家から意見を聞いたところ防衛策について否定的な見解が相次いだためで、情報開示の徹底などにより経営者の保身目的の防衛策導入・発動を排除する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080827AT2C2601726082008.html
【CFOならこう読む】
東証は記者会見に合わせて、「M&Aをとりまく現状に関する投資家意見の概要― 買収防衛策を中心に ―」というレポートを公表しています。

このレポートは、以下の文章で締めくくられています。
「当取引所は、投資者の保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、上場会社の企業行動に対して適切な対応をとることを、上場制度の整備における基本方針の一つとしており、従来より、買収防衛策の導入に係る尊重事項を企業行動規範に定めているほか、詳細な開示事項を定めるなど、買収防衛策の導入時または導入後において、株主及び投資者の正当な権利を保護するために必要と考えられる事項を整備してきたところである。

当取引所では、現行の我が国の法制度の下において、買収防衛策自体を一律に否定するものではないが、議論の対象は企業一般ではなく上場会社の買収防衛策であることから、資本市場の視点を重視する必要がある。その意味でも、今回、買収防衛策の導入そのものを歓迎しない旨の投資家コメントが数多く寄せられたことについては、真摯に受けとめる必要があると考える。そこで、当取引所としては、買収防衛策が株式市場において投資者に与えうるネガティブな側面を上場会社に発信していくこととしたい。

また、このような投資家意見の背景には、投資者の権利への配慮が不十分な買収防衛策の導入や、実際の買収局面において、防衛策の発動や第三者割当て等の敵対的買収に対する対抗措置により、投資者が株式を売却する機会が奪われたり制約を受けたりするような企業行動が現実に見られることがあるように思われ、当取引所としても、投資者の保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、あらためて市場開設者として何ができるかについて、早急かつ重点的に具体的方策を打ち出していくこととした
い。」
個人的には、社外取締役の要件、濫用的買収者の定義、第三者割当増資の上限設定等を市場ルールとして厳格に規定することが必要であると考えています。

【リンク】
平成20年8月26日「定例記者会見資料」株式会社 東京証券取引所グループ
http://www.tse.or.jp/about/press/080826s.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-27 08:43 | M&A
2008年 08月 26日

富士フイルムのMSCB

MSCB転換価格引き下げも 富士フイルム、株価低迷で希薄化の懸念
富士フイルムホールディングスの株式の希薄化懸念が台頭している。株価は8月5日に3130円の年初来安値を付けた後も低迷が続き、過去に発行したMSCB(株価により条件が変わる転換社債)の下限転換価格(3770円)を下回っている。この状況が続けば、約1ヵ月後には転換価格が大幅に引き下げられ、潜在株が増える公算が大きい。富士フイルムがMSCBを発行したのは2006年4月。液晶偏光版保護フイルムの能力増強や、需要が落ち込んだ写真フイルム事業のリストラに対応するために、ユーロ円建てで合計2000億円を調達した。同社としては1983年以来23年ぶりのエクイティファイナンスだった。
大型のエクイティファイナンスを円滑に実施するために、富士フイルムは次のような仕組みを採用した。MSCBは5年債、7年債をそれぞれA号・B号の2本ずつ発行し、野村証券が全額引き受けた。野村はSPCを通じてMSCBを裏付けとした富士フイルム株と交換できる交換社債を組成し、個人投資家を中心に販売した。

(日経ヴェリタス 2008年8月24日 15面)
【CFOならこう読む】
MSCBの転換価額は次の通り定められています。
イ.各本新株予約権の行使に際して払込をなすべき額は、本社債の発行価額と同額とする。

ロ.転換価額は当社、当社の代表取締役社長が、当社取締役会の授権に基づき、投資家の需要状況及びその他の市場動向を勘案して決定する。但し、当初転換価額は、本新株予約権付社債に関して当社と幹事引受会社との間で締結される引受契約書の締結日の終値に下記の数を乗じた額を下回ってはならない。

2011年満期A号新株予約権付社債及び2011年満期B号新株予約権付社債 1.4
2013年満期A号新株予約権付社債及び2013年満期B号新株予約権付社債 1.3

ハ.転換価額の修正
転換価額は、(2011年満期A号新株予約権付社債及び2011年満期B号新株予約権付社債の場合)2009年3月31日及び2010年3月31日又は(2013年満期A号新株予約権付社債及び2013年満期B号新株予約権付社債の場合)2008年9月30日、2009年9月30日、2010年9月30日、2011年9月30日、2012年9月30日(以下それぞれを「修正日」という。)の翌日以降、各修正日まで(当日を含む)の10連続取引日(但し、株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」という。)における当社普通株式の普通取引の終値(以下「終値」という。)のない日は除き、修正日が取引日でない場合には、修正日の直前の取引日までの10連続取引日とする。)の終値の平均値の90%に相当する金額に修正される。但し、かかる算出の結果、修正日価額が2006年3月7日の終値(以下「下限転換価額」という。)を下回る場合には、修正後の転換価額は下限転換価額とする。
(2006年3月7日プレスリリースより抜粋)
以上の条項に基づき、当初転換価額は、5年債は5278円、7年債は4901円に設定(その後、ストックオプションの発行によって5年債は5275.7円、7年債は4898.8円に変更)されました。

昨日の終値3390円は下限転換価額3770円を大きく下回っています。この株価水準が続き、5年債及び7年債の両方とも転換価額が下限転換価額に下方修正された場合、発行済株式数は約1割増加することになります。

富士フイルムは、2006年4月の時点で、なぜこのような希薄化のリスクがある資金調達手段を選択したのでしょうか?

富士フイルムの自己資本比率は、2006年3月時点で64.9%あり、エクイティファイナンスを必要とする状況ではありませんでした。資本コストの点から考えると、むしろデットでのファイナンスを選択するのが自然であったと思われます。にも関らずMSCBの発行に踏み切ったのはなぜでしょう? 

プレスリリースを見ると、発行理由の最後に次の記述があります。
「資金調達コストは、短期借入れや普通社債より低い金利コストとなり、新たな成長事業への投資を財務面からもサポートすることを目指しております」
これを見る限り、富士フイルムは、表面金利の安さのみを見て、低コストの資金調達手段としてMSCBの発行を選択したようです。

言うまでもなく、真のコストはオプション価値を勘案して算定されるべきで、表面金利が低いからと言って資金調達コストが安いことにはなりません。この辺のところを富士フイルムの経営陣が理解していたかどうかわかりませんが、いずれにしても当時の意思決定は誤りであったと私は思います。

【リンク】
平成18年3月7日「ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」富士フイルム株式会社
http://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/other/ff_irnews_20060307_001j.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-26 10:03 | 資本コスト
2008年 08月 25日

トータル・リターン・スワップ(TRS)-TCI・CSXのケース

「デリバティブ活用し株式実質保有」 隠れ大株主米で問題化
Jパワー(電源開発)株の買い増しで話題となった英ヘッジファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が米国で訴えられ、市場関係者の注目を集めている。経営参加を迫られた米鉄道大手CSX(フロリダ州)が「TCIがデリバティブを使って実質的な株式持ち高を隠した」と提訴。情報開示ルールの盲点が浮き彫りになり、世界的に規制論議が高まる可能性が出ている。
(日本経済新聞 2008年8月25日 19面)
【CFOならこう読む】
トータル・リターン・スワップ(TRS)が、5%開示ルールの対象になるかどうかが裁判で争われ、今年6月の一審判決で連邦地裁は、「TCIは取引先金融機関にCSX株を売り買いさせる経済的能力を持っていた」とし、5%開示ルールの適時開示を行わなかったTCIは違法であると判断しました。

トータル・リターン・スワップ(TRS)とは次のものです。
「ヘッジファンドなどが金融機関と相対取引するデリバティブの一種。対象資産が株式の場合、実際に保有していなくても金融機関から値上がり益や配当収入が得られ、一方で株価下落の場合には損失分を支払う義務を負うため、事実上株式を保有しているのと同じ経済効果を持つ。実際に現物株を保有しておらず、TRSには議決権もないことから、米国のルールでは大株主として開示対象になるか不透明だった」
(前掲 日経新聞記事)
判決そのものに異論はありません。しかし何となく釈然としない感じがしなくもありません。株式を保有するということと、株式と同じ経済的効果を享受することは同じことなのでしょうか?

90年代、堅調に株式市場が上昇した米国では、株式を売却してしまうと課税されてしまうことを嫌い、エクィティスワップや仕組債を利用して、株式時価相当の現金と引き換えに、株式を手元に残したまま、株式からの配当・値上がり値下がりの結果を全て取引相手に移転するという手法が盛んに用いられました。

取引相手の投資銀行はヘッジの相手先を探し、その相手先が株式の経済的効果を負担することになります。このとき株式の真の保有者は誰でしょう?

こういうことを突き詰めて考えていくと、またもや”会社は誰のものか”というところに行き着きます。株式の経済的効果を享受するということと、会社を支配するということは必ずしも同じことではないのです。だから、例えば経営能力のないファンドが、上場企業の50%超の株式を保有したところで、それ自体非難される言われはないと私は思うのです。

昭和の初め、我妻榮先生が「近代法における債権の優越的地位」について論じましたが、資本主義が深化している現代においてこそ、法律・会計・税法・ファイナンスの学際領域における問題として考えていく必要があるのかもしれません。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-08-25 10:12 | コーポレートガバナンス
2008年 08月 15日

株式譲渡益と配当への課税、オバマ陣営、税率20%に

16日~24日まで夏休みのため休載いたします。

税制改革案 マケイン側と対立
米大統領選の民主党候補に確定しているオバマ上院議員の陣営が、14日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿する形で税制改革案を公表した。ブッシュ大統領が看板としてきた減税政策を巡り長期の株式譲渡益と配当への課税に関して、最高税率を20%にする方針を明らかにした。
20%の税率を適用するのは年収25万ドル以上の世帯。年収25万ドル未満の層に関しては詳しく言及していない。株式譲渡益と配当への課税では現在、15%の上限税率を設けており、オバマ陣営の主張が通れば一部増税になる。

(日本経済新聞 2008年8月15日 7面)
【CFOならこう読む】
オバマがウォーレン・バフェットに会いに行ったときに、”金持ちの税率が低すぎる”と言われた、というニュースを以前読んだことがありますが、これがそれに対するオバマ氏の回答なのでしょう。

日本では株式市場を活性化する税制改正が模索されていますが、重要なのは普通の人が安心して株式投資が出来るインフラ(税制も含む)を整備することにあります。

そういう意味では、普通の人が普通に投資して得られる金融所得に係る課税は非課税で良いと思います。日本版401kの非課税枠ももっと広げるべきです。

一方、金持ち優遇の批判が、日本の株式市場活性化そのものの障害になっている現状を鑑みると、これらの批判をかわすためにも、日本でも一定の年収以下の世帯のみ非課税(又は軽減税率適用)とするといった措置を講じても良いのではないかと思います。

【リンク】
首相、株投資促す税制改正を 金融相に検討指示
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C13016%2013082008&g=E3&d=20080813

非課税限度額上げ要望 日本版401kで厚労省
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080814AT3S1301913082008.html

株譲渡益や配当の税率、60歳以上は10%を維持 日証協が要望へ
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1101A%2011082008&g=E3&d=20080812

財務次官、麻生氏の証券税制発言に「まず金融所得課税一体化」
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S1101C%2011082008&g=E3&d=20080811

証券優遇税制の拡充、金融相も「議論する」
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C10002%2010082008&g=E3&d=20080811



# by yasukiyoshi | 2008-08-15 09:56 | 税制
2008年 08月 14日

主要輸出企業の今期為替見通し、想定レート据え置き大勢

主要輸出企業が為替相場の先行きを慎重に見ている。足元の為替相場は一時、約7ヶ月ぶりに1ドル=110円に下落するなど期初よりも円安傾向にあるが、多くの企業が2008年度の想定為替レートを期初に設定した水準から変えていない。円安傾向が続けば業績の上ぶれ余地が出るが、米国景気の後退など外部環境は厳しく楽観視する声は聞かれない。
(日本経済新聞 2008年8月14日 15面)
【CFOならこう読む】
主要企業の2009年3月期の想定為替レートと影響額は次の通りです。

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円ドルの想定レート見直しは少数派で、大半は期初の想定レートを事実上維持しています。記事は、今後の収益悪化に備えて、想定レート見直しによる利益押し上げの「のりしろ」を確保したいと考える企業が多いためと分析しています。

想定為替レートの水準はどの程度に設定するのが適当なのでしょう。参考になるかどうかわかりませんが、以下、最近の新聞紙面等から市場関係者他の為替予想を列挙しておきます。
「個人投資家の間でユーロやポンドの手じまい売りが出始めた」(インヴァスト証券三ヶ田裕信氏 日経新聞2008年8月13日)

「日本の機関投資家が米国の短期債に再投資する可能性もあり、大きな円高要因にならないかもしれない」(ソシエテジェネラル銀行斉藤祐司氏 同)

「ファンダメンタルズからみれば、ドルを買う理由は乏しい」(JPモルガン佐々木融氏 同)

「米経済は最悪期を脱していない。今のドル高はこれまで売ったドルを買い戻す持ち高調整が主因。経済のファンダメンタルズは全く反映されていない。再びドル売りが強まる。年末にかけて1ドル=102円まで円高・ドル安が進む。」(JPモルガン佐々木融氏 日経ヴェリタス2008年8月10日)

「景気悪化で投資家のリスク資産への投資意欲が一段と低下して、国境を越えた資金の移動が著しく減少する。巨額の経常赤字を抱える米国への資金流入は細り、次第にドル安が進む。年末にかけて1ドル=100円まで円高・ドル安が進む。」(ステート・ストリート銀行富田公彦氏 同)

「来年にかけて日本経済が再評価される。日本はバブル崩壊の経験を生かし、株式も不動産も傷が浅かった。日本が政策金利を据え置く一方、海外では利下げする国が増える。年末にかけて1ドル=105円まで円高・ドル安が進む。」(みずほコーポレート銀行竹中浩一氏 同)

「年末にかけて米住宅価格の下落速度が鈍化し、景気が回復し始める。米経済を下支えする新興国の高成長がいきなりストップするとは考えにくい。年末にかけて1ドル=112円まで円安・ドル高が進む。」(住友信託銀行瀬良礼子氏 同)。

「日本の景気が後退局面に入ったうえ、ユーロ圏も失速。豪ドルなどの高金利通貨も金利先安観が出ており、相対的にドルが買われやすい。11月ごろに1ドル=113円まで上昇する。」(ドイツ証券深谷幸司氏 同)
見方にはかなりばらつきがありますが、少なくとも大幅な円安・ドル高を予想する声はないようです。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-08-14 09:18 | 為替
2008年 08月 13日

会計基準の国際基準との共通化-連結先行で改正へ

会計基準の国際化 「連結先行」で改正へ
金融庁、日本経団連などは企業会計の国際化に迅速に対応するために、連結決算の会計基準を単独決算より先行して改正する方針を固めた。単独決算の改正は税制などとの調整が必要で、会計全体の改革が遅れる要因になっているため。世界各国で国際会計基準を採用する流れが加速しており、国際基準を受け入れる布石との見方もある。
(日本経済新聞 2008年8月13日 17面)
【CFOならこう読む】
今回の合意は、まずはコンバージェンスを連結先行で行い、将来的には、
①連結は日本基準と国際基準の選択適用、単体は日本基準
②連結は国際基準のみ、単体は日本基準
などの道を模索するというものです。

私はこのブログで連単同時の国際化を主張してきたので、今回の合意は残念に思いますが、決まってしまったものはどうにもなりません。

7月18日の記事(http://cfonews.exblog.jp/8322854/)に、田中恒行さんが次のコメントをくださいました。
「一方で、IFRSは原則論しか規定されない会計基準ですので、その運用、あるいは具体的な会計処理の理論的根拠として、結局は監査法人は、かつての米国会計基準や日本基準における関連する指針を参照するようになるのだろうと思います。

そうなったときのために、日本基準のコンバージェンスをとっとと進めてもらって(今の時点で大きな部分はだいぶ収斂しているように思いますが)、米国基準を参考に運用するのか日本基準を参考に運用するのかなどという変な話にならないようにしてもらいたいものです。」
確かに、将来的にアダプションで行く可能性を鑑みると、連結主体でコンバージェンスを速やかに進める意義はあるのかもしれませんね。

田中さんが紹介してくれた、経団連のアンケート調査結果によると、「原則的には連結と個別で同一の会計基準を用いるべきとしながらも、39社中23社が連結・個別で異なる会計基準の使用を認めるべき」と回答しています。

ただし、「多くの企業が個別財務諸表の開示を廃止し、連結財務諸表のみの開示へ一本化すべき(33社)」という結果はとても重要です。

”金商法上の開示は連結財務諸表のみとし、個別財務諸表の開示は廃止する”ことが会計基準の連単の乖離を容認する前提となる、と多くの会社が考えていると読み取れるからです。

【リンク】
2008年5月20日「今後のわが国会計基準のあり方に関する調査結果概要」(社)日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/031.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-13 09:13 | 会計
2008年 08月 12日

キャッシュリッチは悪か?

企業の余剰資金がM&Aや新規事業にあふれ出し始めた。第一三共がインド製薬最大手を買収し、キリンホールディングスは3000億円の買収資金を用意。ソニーは650億円で米ソニー・BMGミュージックエンタテインメントを完全子会社化する…。目に付く動きの背景には増益が続き、企業の手元資金が60兆円規模にまで積み上がっていたことがある。投資家にとかく批判される「キャッシュリッチ企業」が面白くなってきたのだ。
(日経ヴェリタス 2008年8月10日 1面)
【CFOならこう読む】
以下の表は東証1部(時価総額1000億円以上)を対象に、「ネットキャッシュ比率」により上位10社を並べたものです。

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日経ヴェリタスは、キャッシュリッチ上位50社について調べた結果、ROEについては東証1部平均6%に対し12.5%、株価についても2006年末から今年7月29日までの騰落率でキャッシュリッチ上位50社時価総額加重平均がTOPIXを70ポイント超上回っていることを指摘し、キャッシュリッチ企業に優等生が多いと結論付けています。

確かに儲かっているからこそキャッシュリッチになっているわけで、キャッシュリッチ企業が他と比べてROEでも株価でも勝っているのは当然と言えます。重要なのは、キャッシュリッチ企業がさらに企業価値を創造するには何をすべきかという視点です。

記事には、「不要なキャッシュはROEの引き下げ要因とされるが、より大事なのは事業の利益成長性ともいえそうだ」と書かれていますが、この指摘は本質を捉えていません。以下、その理由を説明します。

「一定成長配当割引モデルを用いると、株式の価値は次のように表されます。

P= D1/r-g = D0(1+g)/r-g
ただし、P=株式の理論価格
      Dt=t期の配当の期待値
      r=株主の期待収益率(株主資本コスト)
      g=配当の期待成長率

ここで、前期の配当(D0)はすでに決まっているので、株価を決定するのは、その他の2変数(r, g)と考えることができます。このうち、株式の期待収益率rは企業の事業リスクや財務リスクに基づいて資本市場で決定されると考えられます。 次に、配当の期待成長率gは次の内部成長率(増資なしに達成できる1株当たり利益の成長率)の式によって決まると考えられます。

 g=ROE・(1-d)
 ただし、ROE=株主資本税引後当期利益率
   d=配当性向

内部成長率を決定する変数のうち、配当性向は長期的には大きく変わらないとすれば、高い水準のROEを維持することが利益・配当の成長のために重要になります。一定成長モデルと内部成長率の考え方を前提とすれば、ROEが高ければ株価が高くなるという関係が成立します。

ここで、この成長率の算式は毎期獲得される利益がROEの利益率で事業に再投資されることを前提としていることに注意が必要です。キャッシュをキャッシュのまま保有していてもリターンが得られないので、その分成長が阻害されることになります。この点は非常に重要です。」

つまり不要なキャッシュを保有することが、成長を阻害するのです。

ただし、この判断は中長期的な視点で行われるべきです。今どれだけキャッシュを貯めこんでいても、中長期的にこの使い道が決まっていれば基本的に問題ないと言えます。

この点、日経ヴェリタス5面のさわかみ投信社長の沢上篤人氏の話がとても的を得ていると思うので紹介します。
「肝心なのは経営者が計画的にキャッシュを蓄え、意図的に使うという長期の観点だ。自己資金が豊富にあれば、たとえ現在のように金融不安や景気悪化で金を借りにくくなったとしてもへっちゃら。競争相手が動けないときに、設備投資なり企業買収なり、機動的に次の手を打てる。そんなキャッシュリッチが真に強い企業だ。
世界的に機関投資家による株式保有が進み、外資系ファンドを中心にキャッシュ保有が非効率という声が強いが、少し違うのではないか。確かに成長の意欲も見込みもない企業は株主に還元すればいい。でもファンドの狙いは短期的な利益。企業は本来、10年単位でキャッシュ戦略を考えるべきで、そうであれば金をためたっていい。

[中略]

日本では長らく間接金融の下、さほど苦もなく銀行からの借り入れが可能だったのでキャッシュマネジメントなど考えるまでもなかった。その時代を引きずり、突然、ファンドから圧力を受けて慌てる企業も少なくない。追い込まれて無関係な事業に金を使ってしまうことだってある。
一方で、バブル崩壊後、銀行に頼れなくなったことで自律的に資金計画を考えるよう変わりつつある企業も多い。ここ数年はキャッシュも蓄積してきた。問題はこれからだ。金をどう使うかによって、永続的に成長できる企業と、そうでない企業に、はっきりと分かれていくだろう。」
(日経ヴェリタス 2008年8月10日 1面)
注:当ブログは、筆者の個人的な見解を書き記しているもので、筆者が所属する法人の見解ではありません。また、記事は、CFOが自己の業務の参考となるケースを提供するために書かれており、情報の正確性・完全性について保証するものではありません。従って情報の正確性・完全性に起因して発生した損害について、筆者及び筆者が所属する団体はその責を負うものではないことにご注意ください。

【リンク】
 なし

# by yasukiyoshi | 2008-08-12 09:49 | 業績評価
2008年 08月 11日

アデランス、新経営体制が発足

アデランス、新経営体制が発足 強まる「スティール色」
かつら最大手のアデランスホールディングス(HD)は9日に都内で臨時株主総会を開き、筆頭株主の米投資ファンド、スティール・パートナーズが推薦する 2人の社外取締役を含む新たな経営陣が選任された。定時株主総会で再任を否決された取締役らが暫定的に経営にあたる状態は解消した。今後は企業価値を向上させる改革に取り組むことになるが、課題は山積している。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080811AT1D0901D09082008.html

【CFOならこう読む】
スティールが今後アデランスにどのような改革(リストラ?)を要求して行くのかが注目されます。これを考える上で、2月8日にスティールがアデランス宛に出した”業績評価と提言”が参考になります。

”業績評価と提言”は、アデランスの現状について次のような問題点の指摘を行っています。

-毛髪関連のコアとなる市場における戦略の失敗
-非効果的なマーケティング戦略(広告宣伝へのアプローチを含む)
-コスト管理の失敗-説明責任・透明性の欠如
-現経営陣の経営能力の欠如及び同社における経営資源の欠如

そして次の提言を行っています。

1.SPJSFの代表を取締役に指名。
2.財務アドバイザーとして投資銀行を起用。
3.アデランスの経営を委託できる他社との統合の可能性も含めて、戦略的な代替案を考慮。


このうち1と2については、既に実行されています。
3については、今後、「特別委員会」(企業価値向上策を提言する。メンバー3人のうち2人がスティールが推した社外取締役)の圧力のもと、何らかの施策が講じられるものと思われます。

その内容は明らかにされていませんが、他社との統合の可能性も含めた”戦略的な代替案”と言う以上、非公開化しコアではない資産売却を行うといった抜本的なリストラを敢行した後、競合他社との統合又は再上場を行うといった線で進んで行く可能性が高いものと思われます。


注:この記事は筆者の個人的な意見であり、筆者が所属する法人の見解ではありません。また、記事は、CFOが自己の業務の参考となるケースを提供するために書かれており、情報の正確性・完全性について保証するものではありません。従って情報の正確性・完全性に起因して発生した損害について、筆者及び筆者が所属する団体はその責を負うものではないことにご注意ください。


【リンク】
2008年8月9日「臨時株主総会の決議結果に関するお知らせ」株式会社アデランスホールディングス
http://www.aderans.co.jp/company/investors/images/pdf/20080809.pdf

2008年6月30日「スティール・パートナーズ・ジャパン、アデランスの取締役候補者 と同社の日興シティ・グループ起用に関する声明を発表」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、
エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080630-aderans_j.pdf

「スティール・パートナーズ・ジャパン、アデランスに戦略的な代替案を要求」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、
エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080208-aderans_j.pdf


# by yasukiyoshi | 2008-08-11 09:12
2008年 08月 09日

為替ヘッジのタイミング

円相場 予想変動率が低下 9.5%、7ヵ月半ぶり水準
外国為替市場で円相場が今後、やや落ち着くとの見方が広がっている。先行き1ヵ月後の円・ドル相場の見通しを映す予想変動率(ボラティリティ)は、9%台半ばまで下がり、9%台半ばまで下がり、7ヶ月ぶりの低水準となった。原油価格の下落などでドルが急落するリスクが和らいでいるためだ。
(日本経済新聞 2008年8月9日 17面)
【CFOならこう読む】
記事でいう予想変動率とは、インプライド・ボラティリティのことです。
「インプライド・ボラティリティとは、マーケットで観測されるオプション価格から逆算したボラティリティのことである」(「ファイナンシャルエンジニアリング」ジョンハル著 金融財政事情研究会)
ボラティリティはリスクの価格を表すので、ボラティリティが高いときに為替リスクヘッジ目的の金融商品を買うと高くつきます。

そういう意味では、そろそろ、ヘッジを厚めにしても良い時期なのかもしれません。

【リンク】
2008年 08月 8日「東京外為市場・15時=ドル再び110円に接近、買いの動き強まる」ロイター
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-33152920080808


# by yasukiyoshi | 2008-08-09 08:05 | 為替