吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 06月 23日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その5

協和発酵の株主配分に手詰まり感が漂い始めている。2009年3月期の年間配当は前期の2倍となる20円を予定するが、2010年3月期は減益が予想される配当据え置きが濃厚。足元の株価がキリンホールディングス傘下に入る際のTOB価格を大幅に下回っており、キリンHD株主への配慮などにより自社株買いも封じられている。
(日経ヴェリタス 2008年6月22日 19面)
【CFOならこう読む】
昨年、当ブログで協和発酵株式の希薄化問題を4回にわたりとりあげました。

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?
http://cfonews.exblog.jp/6665341/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その2
http://cfonews.exblog.jp/6671262/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その3
http://cfonews.exblog.jp/6676645/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4
http://cfonews.exblog.jp/6681686/

今日はこの続編です。

記事に次の記述があります。
「配当政策を明確に掲げていなかった同社は今期「連結配当性向30%(のれん償却前利益ベース)」を掲げた。5年ぶりの増配となる今期の20円配はそれに沿ったもの。
配当性向を厳密に守れば来期は減配だ。松田譲社長は「減配は考えていないが、増配も厳しい」と話す。
となると「機動的な自社株買いと自社株消却で株主配分を強化したい」(松田社長)ところ。キリンHDへの新株発行で協和発酵の発行済み株式数が44%増えており、自社株買いで消却するのが自然な流れだからだ。
しかし、両社は今後10年間キリンHDの協和発酵への出資比率を50.1%とする契約を結んでいる。協和発酵が自社株買い、消却をすれば発行済み株式数が減る。キリンHDの出資比率50.1%を維持するために「キリンHDに協和発酵株を売却してもらうようお願いすることになる(協和発酵幹部)というのだ。
キリンHDが買い付けた協和発酵株を売却しようとすると今度は別の問題が発生する。協和発酵株の株価はTOB価格を下回る水準で推移。キリンHDの株主から「1500円で買ったのになぜそれより安い価格で売るのか」と反発が出ることが予想されるのだ。協和発酵はキリンHD株主に「配慮」せざるを得ず、株価が1500円以上にならないと自社株買いできないジレンマに直面する。思うように株主配分できず低迷する株価にカンフル剤を打てない悪循環。経営陣はもどかしさ募らせている。」
そのジレンマは、協和発酵株式の大幅な希薄化を伴うディールに起因しており、自業自得と言えます。資本政策の失敗を後から修正するのは極めて困難なのです。

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”覆水盆に返らず”です。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-06-23 09:25 | M&A
2007年 10月 26日

シティ・日興コーディアルの株式交換比率

英米ファンドが日興株を大量売却、三角合併控え利益確定
日興コーディアルグループの大株主の投資ファンドが日興株の売却を進めている。英系の投資ファンド、オービス・インベストメント・マネジメントが日興株の大半を売却し、持ち株比率が5.30%から0.33%に低下したことが、24日付の大量保有報告書で明らかになった。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071026AT2C2503B25102007.html

【CFOならこう読む】
株式交換比率は12月または1月に、一定期間の平均市場株価に基づき下限37ドル、上限58ドルの間で決定すると10月2日に発表されています。日興株式を売却した英米ファンドは、シティの株価がサブプライム問題の影響から37ドルを割り込むリスクを考慮したものと思われます。ちなみに昨日のシティの終値は41.23ドルでした。

売り手である日興株式の評価を1700円と明確に示した上で株式交換比率の算定をすることとしているので、株主も売り買いの判断ができるのです。

この案件と比較するとキリン・協和発酵の経営陣がいかに株主に対して不誠実であるかよくわかります。

【リンク】
包括的戦略提携の一層化を図る シティ、株式交換にて日興コーディアルグループ全株式を追加取得へ
http://www.nikko.jp/ICSFiles/afieldfile/2007/10/02/071002_2.pdf

CFOニュース:2007年10月03日記事 米シティ、日興を三角合併方式で完全子会社に
http://cfonews.exblog.jp/6562144/


by yasukiyoshi | 2007-10-26 08:46 | M&A
2007年 10月 25日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4

キリンホールディングス傘下入りを決めた協和発酵。キリンHDによるTOB価格は1,500円だが、株価はTOB価格にさや寄せするどころか、発表後に3日連続で下落した。TOB後の新株発行による一株利益の希薄化が強く、市場の評価は芳しくない。なぜ今回の決断を下したのか、展望を含めて山上一彦専務執行役員に聞いた。
(日経金融新聞2007年10月25日7面)

【CFOならこう読む】
まだまだしつこくやります。

23日のコラムで株式交換割当株数に基づくキリンファーマの株主価値を次のように計算しました。
株式交換キリンに伴い発行される株式177,240,000株×TOB価格1500円=2,658億円

この計算は極めて常識的なもので誰にでもわかりやすいと思いますが、実際に会社が行った計算はこのようなものではなかったのかもしれません。

株式を対価としたM&A(合併、株式交換、会社分割等)の場合、売り手の株主価値だけでなく、買い手の株主価値も計算されます。これらの計算は、DCF法、類似会社比較法、市場株価法といった各種の方法により行われ総合的な判断に基づき最終的に比率の決定が行われます。

現金で買収する場合、売り手の株主価値がいくらであるかが明示されるのに対し、比率計算の場合には、両社の株主価値の相対的評価が問題になるので、それぞれの株主価値が明示されないケースも多いのです。100:200でも150:300でも、ともに1:2だから100か150かについては白黒つける必要がないのです。

今回の株式交換比率の決定が、上のように行われたとしたら、比率計算上用いられた協和発酵の株式価値はTOB価格の1500円とは乖離していた可能性が十分にあります。例えば、10月18日の終値1208円を使って割当株数の株主価値を計算すると、177,240,000株×TOB価格1,208円=2,141億円となり、私が20日のコラムで計算したキリンファーマの株主価値2,080億円と極めて近いものになります。

株式交換だけでM&Aが完了するスキームであれば、これはこれでありなのですが、今回のようにTOBと組み合わせて過半数の株式を取得するスキームで、TOB価格が1500円(プレミアムあり)なのに株式交換比率の計算上1208円(プレミアムなし)に基づき比率が計算されていたとするなら、TOBにより株式を売却できない株主は大きな不利益を被ることになります。

キリン及び協和発酵両社はキリンファーマの株主価値をいくらと算定したのか市場に説明する必要があると思います。その上で株式交換比率の計算上、協和発酵株主にプレミアムをどの程度与えているかも合わせて説明してもらいたいと思います。

次の点は重要なので強調したいと思います。

“この件で問題なのはEPSの希薄化ではありません。株価の希薄化が問題なのです。“

【リンク】
協和発酵工業株式会社に対する公開買い付け開始に関するお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_04.pdf

協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の株式交換契約締結のお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_05.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-25 08:44 | M&A
2007年 10月 24日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その3

協和発酵株続落、TOB価格乖離広がる
協和発酵の株価は1500円に設定されたTOB価格にさや寄せせず、下落が続く異例の展開になっている。23日の終値は前日比58円(4.2%)安の1320円。22日午前の正式発表後2日連続で下がり、TOB価格との差は180円に開いた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D2308G%2023102007&g=S1&d=20071023

【CFOならこう読む】
協和発酵株の昨日の終値はTOB価格よりも1割以上安い1,320円でした。これは一株当たり利益(EPS)の希薄化懸念というより、株価の希薄化懸念を市場が示しているととらえるべきです。これはすなわち株式交換により発行される協和発酵株の株数が、キリンファーマの株主価値に見合わないと市場は評価していると解するべきです。

ちなみにキリンの財務アドバイザーはJPモルガン、メリルの財務アドバイザーはメリルです。こういうディールを主導するアドバイザーの名前は良く覚えておきましょう。

【リンク】

Yahoo!ファイナンス:協和発酵工業株式会社
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=4151.t&d=c&k=c3&z=m&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-24 09:07 | M&A
2007年 10月 23日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その2

キリンが買収発表・協和発酵にTOBへ
キリンホールディングスと協和発酵は22日、キリンが協和発酵を傘下に収めることで合意したと正式発表した。キリンが31日からTOB(株式公開買い付け)を実施し、協和発酵の株式を1株1500円で27.95%(1億1157万8000株)取得する。最終的に2008年10月、協和発酵とキリンの医薬品事業を統合する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F2200D%2022102007&g=S1&d=20071022

【CFOならこう読む】
22日に書いたコラムを訂正しなければなりません。

希薄化が生じてしまいそうです。私は20日のコラムでも書いたように、キリンファーマの株式価値を2,080億円と算定しました。ところが昨日発表された株式交換比率(統合は2008年4月に株式交換によりキリンファーマを協和発酵の完全子会社とし、2008年10月に合併するという2段階で行われる)に基づき計算すると2,658億円になります。

(株式交換キリンに伴い発行される株式177,240,000株×TOB価格1,500円=2,658億円)

逆にいうと協和発酵は1株1,173円の大幅な有利発行でキリンファーマを取得することになります。

この比率による株式交換が協和発酵の株主総会特別決議により承認されるかどうかわかりませんが、少なくとも有利発行決議の瑕疵または不公正発行の訴えが株主からおこされる可能性は十分にあると思います。

まあ交換比率に不満があり、希薄化を確信している株主はTOBに応ずるでしょうから、上で述べたような問題は顕在化しない可能性もあります。というか、多少問題のある交換比率の方がTOBの成功可能性は高まると考えているのかもしれませんね。

【リンク】
協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の株式交換契約締結のお知らせ(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2007/1022_05.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-23 08:55 | M&A
2007年 10月 22日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?

キリン、協和発酵買収で22日合意・来週から友好的TOB
キリンホールディングスは東証一部上場の医薬品大手、協和発酵を買収することで同社と22日に基本合意する。友好的TOB(株式公開買い付け)を来週実施し、協和発酵の株式を取得。さらにキリンの医薬品子会社と合併させ、協和発酵を連結子会社にする。少子高齢化や医療費抑制などで経営環境が急激に変化する中、食品・医薬品業界でもM&A(合併・買収)戦略が活発になりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071022AT2F2100C21102007.html

【CFOならこう読む】
今日の日経金融新聞が1面で、次のように協和発酵のEPSの希薄化の懸念について論じています。
現時点ではキリンHDが友好的TOBで協和発酵株を取得、その後傘下の医薬品子会社キリンファーマと合併させる案が検討されているようだ。協和発酵は上場を維持、キリンHDは合併新会社の50%超の株式を持つ方針だ。ただこの方式が一部に不安を抱かせている。関係者の脳裏をよぎるのが2002年、中外製薬がスイス製薬大手ロッシュの傘下に入ったこと。
ロッシュは中外薬にTOBをかけたが取得したのは約10%。その後ロッシュに対する第三者割当増資、ロッシュ日本法人と中外薬の合併で持株比率を50%超に高めた。この過程の新株発行で発行済株式数が急増、大幅な一株利益の希薄化が発生し、急騰していた中外薬株は発表前の水準まで逆戻りした。
今回キリンHDが仮にTOBプレミアムを高く設定しても、その後の協和発酵とキリンファーマの合併比率次第で同じことが起これば…。19日の市場で協和発酵株がストップ高の1,402で値を付けながらその後、一時1,359円まで下落したのは「第二の中外になるかもという投資家の不安」(大手投信)を物語る。

私はこの指摘は的外れであると思います。

まず第一に、M&Aおいて希薄化が生じるかどうかは買い手の立場で論じられるべきです。M&Aの通貨として自社株を使用する合併や株式交換の場合にEPSの希薄化が生じることがあります。しかし今回のキリン・協和発酵のケースでは、買い手であるキリンは、キャッシュと子会社であるキリンファーマ株式を対価として協和発酵株を取得するので、キリンに新株発行はなく、キリンHDにEPSの希薄化は生じません。

第二に、協和発酵についてEPSの希薄化が生じるリスクですが、これはTOBで思った以上に株式が取得できず、協和発酵がキリンに対して第三者割当増資がある場合と協和発酵がキリンファーマを吸収合併するときの2回の局面である可能性があります。しかし前者はTOB価格の適正性の問題で、価格が協和発酵株主にとって魅力的であるなら、目標とする株式数を取得できるでしょうし、それができないなら協和発酵株主はキリンによる経営権取得を拒否したことになるので、無理に第三者割当増資を行うなら不公正発行に該当する可能性があります。つまりEPSの希薄化うんぬん以前の問題として法的に問題が生じる可能性出てくるのです。

後者の場面ではキリンファーマの株式価値と等価な協和発行株式が新規で発行されるなら株価に与える影響はないはずです。つまりおかしな合併比率で合併しない限り、EPSの希薄化が問題になることはないのです。仮に協和発酵に不利な合併比率で合併することになったなら(この場合希薄化が生じます)、その合併比率について有利発行の問題が生じるので、そのような比率で合併を行うことは極めて困難であると言えます。

以上の理由から、キリン・協和発酵のケースで希薄化について現時点であれこれ言うのは間違っていると思うのです。ところでより根源的な問題としてM&AによりEPSが希薄化するのは悪いことなのでしょうか?

M&Aといえども買い手にとってみれば新規投資の一形態にすぎません。投資の意思決定は、その投資が付加価値を生むかどうかにより判断されます。この新たに創造される付加価値と同じ価値の買い手株式が新たに発行されるならそのM&Aは株価には中立です。

したがってこの意思決定メカニズムには来年や再来年のEPSがどうなるかは全く無関連なのです。EPSの希薄化が何故嫌われるかというと、EPS×PER=株価の等式があまりに浸透していて、しかもPERが定数であるかのような誤解があるので、EPS↓⇒株価↓になってしまうという固定観念が一般にあるからです。しかし、今説明したように創造される付加価値と新規の発行株式数との関係で株式価値が先に決定するので、PERは逆算で後から決まるだけなのです。

したがってEPSの希薄化自体をM&Aの意思決定の場面で問題とするのはナンセンスであるのです。
問題とすべきは株価の希薄化が生じるかどうかです。

by yasukiyoshi | 2007-10-22 08:55 | M&A
2007年 10月 20日

キリンの協和発酵買収、月内合意めざす・友好的TOBで

キリンホールディングスが医薬品大手、協和発酵を買収する方向で同社と交渉に入ったことについて、キリンの加藤壹康社長は19日午前、記者団に対し「事業拡大のために(協和発酵に)接触しているのは事実」と述べ、協議していることを認めた。両社は早ければ月内の合意を目指し、詰めの交渉をしている。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F1900E%2019102007&g=S1&d=20071019

【CFOならこう読む】
TOBで3分の1程度の株式を取得し、その後キリンの医薬品事業子会社キリンファーマ(キリンホールディングスの100%子会社を協和発酵が吸収合併することによりキリンは協和発酵の50%超の株式を取得するというスキームです。

キリンの医薬品事業の営業利益は、2007年計画ベースで130億円。これに協和発酵のEBIT倍率16倍をかけると企業価値は2,080億円。キリンは有利子負債比率が小さいので、医薬品事業の株式価値は企業価値と等しい2,080億円とすると、協和発酵の株式時価総額は、18日終値ベース4,798億円+キリンファーマ2,080億円=6,878億円となります。

このうちキリンの持株比率は、(4796億円×1/3+2,080億円)/6,878億円×100=3,678億円/6,878億円=53.4%となります。したがってロイターが報じているような全額現金買収というスキームではありません。

協和発酵買収、キリン格付けにネガティブな影響も=S&P
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-28433720071019

それにしてもTOB価格決定前に報道機関にスクープされるというのはM&Aの成否を左右するような大失態ですね。特にキリンにとって見ると想定を大きく上回るような高い買い物になる可能性があるので、全く良いことはないと思います。協和発酵サイドからリークしたということはあり得るのかもしれませんが…。

【リンク】
キリンビール株式会社 平成18年12月期決算(PDF)
http://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/settlement/explain/pdf/ir_0612_1.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-20 09:49 | M&A