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2008年 09月 09日

スティール、松風に企業価値向上策

ROE8%達成 スティール提言 松風に企業価値向上策
米投資ファンドのスティール・パートナーズは8日、筆頭株主になっている歯科材料大手の松風に対し企業価値向上に向けた提言を行ったと発表した。自己資本利益率(ROE)8%以上の達成を目標とした新しい経営計画の策定や、内部留保の使途説明などを要求資本効率の改善に努める社外取締役の導入なども求めた。
(日本経済新聞 2008年9月9日 14面)
【CFOならこう読む】
昨日、スティールが投資先との対話を重視する方向に転換しつつあるというような話題をとりあげましたが、今日の新聞に松風企業価値向上策について提言した旨の報道がありましたので、今日はその内容を紹介します。

提言の具体的内容は次の通りです。
「スティール・パートナーズは、松風が本業の歯科医療事業において着実に増益を実現されていることを喜ばしく思っています。しかし、同社経営陣が内部留保の使途や合理性について株主に対してより明確に説明すべきであると考えています。
スティール・パートナーズは、松風の留保利益は、本業の成長投資にこそ使うべきものであり、経営陣の本業ではないところの専門知識が必要な他社の株式やその他の有価証券投資につかうべきものではないと述べております。

合理的な範囲を超える留保分について、スティール・パートナーズは、自社株買いあるいは増配を通じて従業員持ち株会などを含む株主に還元すべきだと考えています。
スティール・パートナーズは松風に対して以下の提言を行いました。

. 株主資本利益率(以下「ROE」)を経営指標の一つとして導入し、より資本効率を重視した経営を行うためにROE8%以上の達成を目標に含んだ「新」中期経営計画を策定する。
. 内部留保の使途や合理性を説明するために「新」中期経営計画にて設備投資、減価償却費、研究開発費等の計画を開示する。
. 自社株買いもしくは特別配当を通じてROE及び一株当たりの当期純利益を改善する。
. 配当性向を恒常的に引き上げる。
. 株主と利害関係を共有するため、取締役にストックオプション制度を導入する。
. 資本効率の改善とステークホルダー間の利害の最適バランスを維持することに注力する社外取締役候補者を少なくとも3名選定する。
スティール・パートナーズは、これらの提案を実施することにより松風の一株当たりの当期利益が増加し、企業年金連合会が取締役再任のためのROE最低基準としている8%の達成を助けると考えています。松風は企業年金連合会の再任基準8%を下回る状態が続いていることを指摘しています。」
特に非事業用資産への投資が過大であると、スティールは次のような説明を行っています。
「■松風は2008年6月期末現在、本業への貢献が薄いと考えられる非事業用資産を87億円保有。これは総資産額の約39%、時価総額(2008年8月28日時点)比61%に相当
 >非事業用現預金は42億円、同時価総額比29%
 >有価証券は7億円、同時価総額比5%
 >投資有価証券は39億円、同時価総額比27%(ナカニシ、大日本スクリーン、ワタベウェディングの株式など)
■合理的な範囲以上の内部留保は、株主の資本を不必要に拘束し、評価減などの無用なリスクに晒す(2008年3月期に有価証券の価値が約10億円毀損)。同業他社や本業とのシナジーが薄いと考えられる他社株への投資などの資産運用は、会社の本業でもなく、「歯科医療の発展」という経営理念にも資さないとSPJSFは考える。
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■松風は本業から上がるキャッシュフローにより、十分将来の設備投資を賄える
>松風の過去5年間の営業活動によるキャッシュフロー(下図青の棒グラフ)をみると概ね設備投資額(下図赤)を上回っている
>過去5年間の営業活動によるキャッシュフローの平均値は設備投資の同平均値の約2.4倍、年間総配当額控除後でも1.8倍以上の水準
■87億円という非事業用資産の額は平均設備投資額の約20年分もの規模87億円という現在の非事業用資産の額は、平均設備投資額や本業から上がるキャッシュフローを考慮すると明らかに過大」
なお、内部留保の使途・合理性について説明を求めるのは、他の機関投資家も同様であるとして、企業年金連合会の議決権行使基準等を紹介しています。
「■企業年金連合会
>「既に厚い自己資本を有していながら適切な事業計画もなく、内部留保を積み増している場合等には、(剰余金の分配等について)肯定的な判断はできない。(()内はSPJSFが挿入)」(株主議決権行使基準 III.具体的行使基準 3.資本政策等に関する議案 (2) 剰余金の分配等 c )
>「株主に対する利益配分は、中長期的観点から行われるべきであるが、株主等に対し納得のいく説明もなく、必要以上に利益を留保する企業に対しては、連合会は適切な株主還元を求める。」(連合会 コーポレート・ガバナンス原則 II.コーポレート・ガバナンス原則具体的行使基準 5.事業計画等 ④)

■アジアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーションACGA(米国、英国、アジアの年金運用機関を構成員とする団体)
>「経営者は…株主価値の長期的最大化に努めねばならない。」「経営者はこうした自己資金の活用に何の計画性も持っていない。増配または自社株の買い戻し、もしくはその両方によって株主に還元すべきである。」「(提言)株価が簿価以下に下がったときには、自社株の買い戻しを実施する。」「(提言)ROE/ROAの目標値を明示(する)(()内はSPJSFが挿入) 」(ACGA日本のコーポレート・ガバナンス白書)

■インスティシューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下「ISS」、世界的に著名な議決権行使助言会社)
>「過去十分な利益を上げているにも関わらず、その内部留保について説得力のある理由を提示しない会社が、適切な説明なく不十分な配当を提案した場合には、ISSは反対票を投じるよう推奨する(SPJSF訳)」“ISS will recommend votes against the income allocation proposal where a consistently profitable company with no compelling reason to retain cash proposes an unusually low dividend without an adequate explanation”) (Japanese Proxy Season 2007-SUBSTANTIVE ISSUES FOR 2007-Allocation of Income and Dividends)」
提言内容は至極まっとうで、松風経営陣はこの提言に対し、きちんと対応することが求められると、私は思います。

【リンク】
2008年9月8日「スティール・パートナーズ・ジャパン、松風に企業価値向上のため提言 内部留保の使途についてより明確な説明を要望」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080905-Shofu_j.pdf

2008年8月28日「企業価値向上のための提言」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080905-Shofu_PPT_j.pdf


by yasukiyoshi | 2008-09-09 08:39 | コーポレートガバナンス
2008年 09月 08日

米スティール対日戦略転換

「日本の経営者を啓蒙します。」米投資ファンド、スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が昨年6月の記者会見で発した一言が、物議を醸したのは記憶に新しい。企業に事前了承なしのTOBを仕掛けるスティールは「こわおもて投資家」の代表格。だが意外なことに、最近は対話路線への転換を急いでいるという。なぜなのか。昨夏以降、メディアへの登場を拒んできたリヒテンシュタイン氏が日経ヴェリタスに胸の内を明かした。
(日経ヴェリタス 2008年9月7日 54面)
【CFOならこう読む】
リヒテンシュタイン氏は、インタビューの中で、
「昨年のブルドック案件から、投資先とのコミュニケーションがいかに大切かを学ん
だ」
「投資先企業にはまず、スティールが長期の投資を目指すファンドであることを理解
してもらいたい。そして我々が利益率やROEを高める具体的なアイデアを持ってい
る」
と語っています。

そして、そのアイデアについて具体的に次のように語っています。
「例えばコーポレートガバナンスの向上、中核事業への経営資源の集中、資本政策の最適化などです。こうした取り組みで株価が上がる余地は大きいはずです。」
そして投資ファンドの目的について、
「この仕事の最大の目的は、投資先企業を育てていくことです。その結果として、我々は株主を含めた企業のステークホルダーに価値をもたらすことができます。企業が良くなっていけば経済全体が良くなるし、税収が増え、株価上昇を通じて年金生活者など国民の利益にもつながる。そう信じて働いています。」
と話しています。

私には、未だ彼らが濫用的買収者である理由がわかりません。

しかしリヒテンシュタイン氏は、それをただ徒に非難するのではなく、日本市場での”土着化”を進めています。7月に代表にモルガン出身のマーク・オフリルが就任したのも”土着化”を進めるためです。
「オフリル氏は通算17年間にわたって日本に住んでいる日本通。モルガンでの経験も長く、日本市場を熟知しています。オフリルが代表になったことで、投資先企業との対話も加速していくでしょう」
「彼に期待するのは、日本政府との関係構築です。モルガン時代には大阪証券取引所の社外取締役を務めた経験もありますし。」
ブルドックの時に、さんざんコケにされた経済産業省と関係を構築しようと云うのでしょうか?

いずれにしても日本で”土着化”するには、官庁との関係が重要であることは間違いありません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-08 08:39 | M&A
2008年 08月 25日

トータル・リターン・スワップ(TRS)-TCI・CSXのケース

「デリバティブ活用し株式実質保有」 隠れ大株主米で問題化
Jパワー(電源開発)株の買い増しで話題となった英ヘッジファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が米国で訴えられ、市場関係者の注目を集めている。経営参加を迫られた米鉄道大手CSX(フロリダ州)が「TCIがデリバティブを使って実質的な株式持ち高を隠した」と提訴。情報開示ルールの盲点が浮き彫りになり、世界的に規制論議が高まる可能性が出ている。
(日本経済新聞 2008年8月25日 19面)
【CFOならこう読む】
トータル・リターン・スワップ(TRS)が、5%開示ルールの対象になるかどうかが裁判で争われ、今年6月の一審判決で連邦地裁は、「TCIは取引先金融機関にCSX株を売り買いさせる経済的能力を持っていた」とし、5%開示ルールの適時開示を行わなかったTCIは違法であると判断しました。

トータル・リターン・スワップ(TRS)とは次のものです。
「ヘッジファンドなどが金融機関と相対取引するデリバティブの一種。対象資産が株式の場合、実際に保有していなくても金融機関から値上がり益や配当収入が得られ、一方で株価下落の場合には損失分を支払う義務を負うため、事実上株式を保有しているのと同じ経済効果を持つ。実際に現物株を保有しておらず、TRSには議決権もないことから、米国のルールでは大株主として開示対象になるか不透明だった」
(前掲 日経新聞記事)
判決そのものに異論はありません。しかし何となく釈然としない感じがしなくもありません。株式を保有するということと、株式と同じ経済的効果を享受することは同じことなのでしょうか?

90年代、堅調に株式市場が上昇した米国では、株式を売却してしまうと課税されてしまうことを嫌い、エクィティスワップや仕組債を利用して、株式時価相当の現金と引き換えに、株式を手元に残したまま、株式からの配当・値上がり値下がりの結果を全て取引相手に移転するという手法が盛んに用いられました。

取引相手の投資銀行はヘッジの相手先を探し、その相手先が株式の経済的効果を負担することになります。このとき株式の真の保有者は誰でしょう?

こういうことを突き詰めて考えていくと、またもや”会社は誰のものか”というところに行き着きます。株式の経済的効果を享受するということと、会社を支配するということは必ずしも同じことではないのです。だから、例えば経営能力のないファンドが、上場企業の50%超の株式を保有したところで、それ自体非難される言われはないと私は思うのです。

昭和の初め、我妻榮先生が「近代法における債権の優越的地位」について論じましたが、資本主義が深化している現代においてこそ、法律・会計・税法・ファイナンスの学際領域における問題として考えていく必要があるのかもしれません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-08-25 10:12 | コーポレートガバナンス
2008年 08月 07日

産業界って何だ?

揺れる行政戸惑う市場 司法判断も意図せぬ影響 萎縮する投資家
「悪夢を思い出す」。東京証券取引所の幹部が言う悪夢とは、敵対的な買収を防止できる「黄金株」を禁止する方針を打ち出した一ヵ月後に。「条件付の容認」に追い込まれた”事件”を指す。
特定の株主に重要議案の拒否権を与える黄金株。一般株主の権利を狭める恐れがあり、東証は2005年11月、同株禁止へ上場規則の改正に動く。金融庁とも足並みをそろえたが、土壇場で当時の金融相与謝野馨にひっくり返された。「会社法が認めるものを上場規則で認めないのは理屈としてあり得ない」。通商産業省(現経産相)を務めた与謝野の背後に、東証は「産業界の代弁役を務める同省の影を感じた」(幹部)という。
(日本経済新聞 2008年8月7日 7面 金融力④)
【CFOならこう読む】
やはりそういうことだったか、と今更ながら思います。
経産省、そして”産業界”の力を改めて感じます。

ところで”産業界”とは何でしょう?
”産業界”が守ろうとしているものとは何でしょう?

私には、”産業界”とは、このブログの中で繰り返しお話ししているような、経営者・従業員主権ともいうべき日本のコーポレートガバナンスを象徴するもの、であるように感じられます。

彼らの力は強大です。
自らを守るためには、自由市場経済の発展を阻害するような要求を平然とつきつけます。

本日の「経済教室」でビル・エモット氏が、アジア(特に中国)の発展は、自由主義経済がもたらしたものであると述べています。そして次のエピソードを紹介しています。
「90年代に、講演者や経済顧問として最も頻繁に中国政府が招いた外国人は、ここ数十年で最も強力な自由市場論者の一人であるかのミルトン・フリードマン教授だった。
マネタリストの総帥である彼はまた、市場は効率的な資源分配を促しイノベーションを推進するとの持論でも名高い。市場は政治と社会の自由に寄与するとの信念の持ち主でもあった。」(日本経済新聞 2008年8月7日 27面 経済教室)
”産業界”の主張と、”将来のイノベーション”とが両立しない場合、我々がどちらを重視すべきかは明々白々でしょう。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-08-07 08:58 | コーポレートガバナンス
2008年 07月 25日

社外取締役-昨日の続き

【CFOならこう読む】
ヴァージングループ会長リチャード・ブランソンの「僕たちに不可能はない」(中村紀子訳 インデックス・コミュニケーションズ)を読みました。

ヴァージンは1986年に株式を上場したのですが、すぐに非公開化してしまいました。その理由をリチャード・ブランソンは本の中でこう語っています。
「だが、シティのやり方に愛想が尽きるまで、そんなに時間はかからなかった。シティと僕とは結局相容れないのだ。公開したあとは、どのバンドと契約を交わすか話し合うために、それまでのように自宅兼仕事場の船でパートナーたちとリラックスしたミーティングを持つ代わりに、取締役会のご意見を頂戴しなければならなくなった。彼らのほとんどは、音楽ビジネスとは何かをてんで分かっていなかった。一夜にして何百万枚ものセールスを叩き出すレコードの作り方など、知るはずもなかったのだ。おまけに、ライバル会社を出し抜いて人気バンドと契約を交わさないといけないというのに、取締約会が開かれるまで何週間も待たなければならなくなった。いざ取締約会が開かれたときには、時すでに遅し、の状態だ。さもなくば、取締役会の連中がこんなことをほざく。「ローリング・ストーンズと契約するですって? うちの家内が嫌ってるんですよねぇ。ジャネット・ジャクソン? 誰ですかそれ?
僕はそれまで、素早く決断を下し、直感に従って行動してきた。ところが今は「赤テープ」と取締約会にぐるぐる巻きにされ、規則規則の毎日だ。それに、ぴかぴかの大型テーブルの上座に捉えられ、周りをピンストライプの背広に囲まれながら、「ヴァージンとは何か」を説明しなければならないのには反吐が出そうだ。そもそも今までの僕には執務室のようなものがなくて、僕の「机」は船の居間にある座り心地満天の肘掛け椅子、黄色のメモ帳に必要なことを書き込んでいればそれで良かった。だから何より、自分の足で立っている気持ちがしない。利益を倍にしているのに、なぜかヴァージンの株は下降していく。そして、僕は人生で初めて、欝に陥った。」
私はリチャード・ブランソンに何を言うべきでしょう。少なくとも、昨日お話ししたようなことを、したり顔で語ることはできません。リチャード・ブランソンが言っていることは100%正しい。

会社には、”株式公開すべき会社”と”株式公開すべきでない会社”があるのです。ヴァージンは”株式公開すべきでない会社”、そして日本の上場企業の多くも”株式公開すべきでない会社”。

そういう会社は、リチャード・ブランソンのように、直ちに非公開化すべきだと私は思います。

【リンク】
僕たちに不可能はない
中村 起子

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by yasukiyoshi | 2008-07-25 08:39 | コーポレートガバナンス
2008年 07月 24日

社外取締役

「仲間内」に投資家厳しく 中立・独立性を疑問視
社外役員の存在意義が問われている。社外から中立な人材を招いて取締役会に外部の声を取り込み、企業価値の向上やコーポレートガバナンスの改善に資するのが本来の機能だ。しかし現実は中立性や独立性に乏しい名ばかりの「社外役員」が多い。形式上の要件を満たしていても期待される役割を果たしているか疑問視する向きもある。
(日本経済新聞 2008年7月24日 16面 社外役員を問う -上-)
【CFOならこう読む】
会社法では、社外取締役を次のように定義しています。
「社外取締役とは、「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがない者をいう」(会社法2条15項)
「監査役設置会社」では社外取締役の設置義務はありませんが、「委員会設置会社」では指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会は、その過半数が社外取締役により構成されなければなりません。

会社法では、親会社関係者・重要な取引先の関係者等であっても社外取締役の要件を満たすので、その独立性に疑義があると指摘されています。
「社外取締役に実質的に求められる資質は、執行役からの「独立性」であるが、その適格性は疑わしい。執行役に支配されていなくても、執行役と利害を共通にする点が多い」(江頭憲治朗「株式会社法」有斐閣496頁)
今年5月に、カルパースなど欧米の有力な年金基金や運用会社7社が、「日本コーポレートガバナンス白書」という提言を公表しています(http://cfonews.exblog.jp/7947236/)。

記事にもあるように、白書は、「独立した立場で経営陣を監督する社外取締役を最低3人指名(中期的には社外取締役が取締役会の3分の1、長期的には2分の1を占めるのが望ましい)」と提言しています。そして社外取締役の適格性を担保するため、「合理的で透明なプロセスを経て、適切な能力を備えた社外取締役を指名し、その独立性と適合性を企業開示文書で株主に伝える」というような手続を要求しています。

社外取締役の要件については、次のように国内でも様々な提言がされています。
「社外取締役は、会社法上の社外取締役の要件を充足するだけでなく、その役割に相応しい実質的な独立性を具有することが求められる。したがって、親会社や主要な取引先等の取締役または使用人が子会社、特に上場会社の社外取締役を兼務すること、取締役の相互派遣等はこれを避けるものとし、社外取締役の就任期間は原則として5年を超えない」(新コーポレート・ガバナンス原則」

「実質的独立性に疑義がある者①大株主又はその利益を代表する者、②経営者又は従業員である(あった)者、③グループ会社の経営者又は従業員である(あった)者、④重要な取引関係がある(近い過去にあった)別の会社の経営者又は従業員である者、⑤当該会社のアドバイザーとして、取締役としての報酬以外に高額の報酬を受け取っている(近い過去に受け取っていた)者、⑥上記のいずれかに該当する近親の親族を有する者、⑦会社間における取締役の相互兼任がある場合の取締役である者、⑧当該会社の取締役に就任してから、すでに長期間が経過している者」(日本取締役協会「独立取締役コード(2005年10月13日)
これらによれば、社外取締役として顧問弁護士を選任することも(学研のケース)、上場子会社の社外取締役を親会社の使用人が勤めることも(富士通・ニフティのケース)も容認されないということになります。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-24 08:04 | コーポレートガバナンス
2008年 06月 28日

荏原製作所、株主総会で計算書類承認

社外監査役の大森氏「依然問題残る」
荏原は27日、都内で提示株主総会を開き、2008年3月期の計算書類などが可決された。計算書類は、社外監査役の大森義夫氏が、元副社長の不正支出問題の調査が不十分などとして事業報告を承認しなかったため、総会の決議事項になっていた。
(日本経済新聞 2008年6月28日 16面)
【CFOならこう読む】
本件については、当ブログで6月7日にとりあげました。
http://cfonews.exblog.jp/8083580/

決算承認後、大森監査役は日経新聞記者に次のように語ったとのことです。
「総会で可決されても問題が完全に無くなったわけではない」
「(不正支出事件について)荏原の顧問弁護士に事情を聴こうとしたが会社から拒否された」
大森監査役の去就が注目されるところですが、
「私がすぐに辞めると、後に続く人が出にくくなるのでは」として、当面監査役の職にとどまる考えを明かしているそうです。

社外取締役、社外監査役の存在意義が問われている今だからこそ、大森監査役にはとことん頑張って頂きたいと思うのですが…。

荏原のように歴史のある会社が変われば、多くの会社が影響を受けると思うのです。

【リンク】
平成20年6月27日「当社第143期定時株主総会における計算書類の承認に関するお知らせ」株式会社荏原製作所
http://www.ebara.co.jp/ir/2008/pdf/news20080627a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-06-28 08:34 | コーポレートガバナンス
2008年 06月 27日

株式持合いの堅守崩れず

460社が株主総会 Jパワー、ファンドの増配提案を否決
上場企業約460社が26日、全国で一斉に定時株主総会を開いた。約1300社が開催するピークの27日に次ぐ規模。英投資ファンドが増配などを求めているJパワー(電源開発)や、米投資ファンドが社長再任に反対した日本興亜損害保険など、外国人株主の提案の動向が焦点となっている。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080626NTE2INK0626062008.html
【CFOならこう読む】
Jパワーについては、誰もが予想したとおりの結果に終わりました。
それでも、3人以上の社外取締役を導入すべきという議案に4割弱もの賛成票が集まったことには時代の変化を感じます(TCIの保有比率は9.9%)。

国内外の機関投資家に議決権行使の助言をする最大手、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)日本法人のマーク・ゴールドスタイン代表は、現経営陣の役員再任案に賛成する一方、社外取締役の選任義務化には賛成した理由を次のように述べています。
http://markets.nikkei.co.jp/features/03.aspx?site=MARKET&genre=x3&id=MMMAx3000025062008
「TCIは中垣喜彦社長の解任を求めていますが、ISSは取締役の再任案への賛成を助言しました。社外取締役がおらず株式の持ち合いが増えているなどマイナス要因がありますが、赤字ではなく、反対するほどひどいとはいえませんでした。取締役の代替案がTCIから示されなかったのも理由です。ただ、TCIが提案した社外取締役の選任義務化に対し賛成したことで、メッセージは伝えられたかと思います。

TCIは現在、委任状争奪戦を行っている米貨物鉄道大手のCSXに対しては代替の取締役を5人推薦しており、株主には選択肢があります。TCIは日本でも取締役候補者を推薦するつもりだったようですが、Jパワーに拒否されました。

Jパワーではあらゆる議案で判断にとても苦労しました。両社の代表と会い、大量の資料を読み、時間をかけて結論に至りました。(ISS競合の)グラス・ルイスと助言内容が分かれたようですが、それほど判断は難しいものでした。」
外資のプレッシャーを受けつつ、日本企業もゆっくりと変わろうとしているのです。
そしてそのはじめの一歩が、社外取締役の選任義務化なのかもしれません。

【リンク】
平成20年6月26日「第56回定期株主総会決議のご通知」電源開発株式会社
http://www.jpower.co.jp/annual_rep/pdf/ketsugi56j.pdf


by yasukiyoshi | 2008-06-27 08:34 | コーポレートガバナンス
2008年 06月 21日

暴走する資本主義 ロバート・B・ライシュ

暴走する資本主義
雨宮 寛 今井 章子
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【CFOならこう読む】
「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」、「勝者の代償」の著者で、クリントン政権で労働長官も務め、また現在はオバマの政策アドバイザーを務めるロバート・B・ライシュの新刊「暴走する資本主義」(Supercapitalism)を読みました。彼の本はいつも、我々に、全く新しい視点を提供してくれるのですが、今回はさらに頭をぶん殴られたようなショックを受けました。

帯から本のさわりを紹介します。
「1970年代以降、資本主義の暴走、つまり超資本主義と呼ばれる状況が生まれたが、この変革の過程で、消費者および投資家としての私たちの力は強くなった。消費者や投資家として、人々はますます多くの選択肢を持ち、ますます「お買い得な」商品や投資対象が得られるようになった。
しかしその一方で、公共の利益を追求するという市民としての私たちの力は格段に弱くなってしまった。労働組合も監督官庁の力も弱くなり、激しくなる一方の競走に明け暮れて企業ステーツマンはいなくなった。民主主義の実行に重要な役割を果たすはずの政治の世界にも、資本主義のルールが入り込んでしまい、政治はもはや人々のほうでなく、献金してくれる企業のほうを向くようになった。
私たちは「消費者」や「投資家」だけでいられるのではない。日々の生活の糧を得るために汗する「労働者」でもあり、そして、よりよき社会を作っていく責務を担う「市民」でもある。現在進行している超資本主義では、市民や労働者がないがしろにされ、民主主義が機能しなくなっていることが問題である。
私たちは、この超資本主義のもたらす社会的な負の面を克服し、民主主義より強いものにしていかなくてはならない。個別の企業をやり玉に上げるような運動で満足するのではなく、現在の資本主義のルールそのものを変えていく必要がある。そして「消費者としての私たち」、「投資家としての私たち」の利益が減ずることになろうとも、それを決断していかなければならない。その方法でしか、真の一歩を踏み出すことはできない。」
ところで、本の中に次のようなくだりがあります。
「1980年代以降、やる気がある優秀な米国の若い男女が、投資銀行や金融サービス会社、ヘッジファンドやプライベート。エクイティ・ファンドに就職するために、あるいは大企業でCFO(最高財務責任者)になるために、有名ビジネススクールへと駆り立てられたのも、彼らの「貪欲さ」が理由ではない。企業財務という不毛な分野に膨大な知的エネルギーをつぎ込ませたのも、気前のよいストックオプションやボーナスによって経営者の給料を株価に連動させたのも、貪欲さではなかった。」


この「企業財務という不毛な分野」という記述は大いに気にいりません。不毛な企業はあったとしても不毛な職能はないはずです。それは不毛な人間がいたとしても不毛な臓器というものがないのと同じことです。

by yasukiyoshi | 2008-06-21 23:38 | コーポレートガバナンス
2008年 06月 14日

ライブドア虚偽記載による損害賠償問題−地裁判決

ライブドアに95億円賠償命令 虚偽記載で株下落、東京地裁判決
ライブドアによる有価証券報告書の虚偽記載発覚で同株価が下落し損害を受けたとして、日本生命保険と信託銀行5行がライブドアホールディングス(旧ライブドア)に計108億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(阿部潤裁判長)は13日、ライブドアHDに95億4400万円の支払いを命じた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1C13008%2013062008&g=MH&d=20080613

【CFOならこう読む】
金商法21条の2第2項は損害の額を次のように計算すると定めています。すなわち、有価証券報告書等の虚偽記載等の事実が公表されたときは、その公表日前1年以内に当該有価証券を取得し、その公表日において引き続きその有価証券を所有する者は、その公表日前1ヶ月間のその有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の平均額から公表日後1ヶ月間のその有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、虚偽記載等により生じた損害額とすることができる、としています。

今回の地裁判決の損害額の推定方法はこの規定にしたがって算定されたものです。本件では、公表日がいつであるのかが問題になりましたが、「検察官が広く報道機関に事実を伝達することは『公表』にあたる」として、東京地検特捜部の強制捜査の2日後の2006年1月18日、ライブドアの虚偽記載容疑が一斉に報じられたため、検察官が同日に報道機関に事実を伝達したと推認できるとしたものです。

なお、本件では株価下落には虚偽記載以外の要因もあったとして、公表前後1ヶ月間の株価の差額から3割を減額して損害額を算定していますが、この3割の根拠は現時点で不明です。詳細がわかり次第ここで再度取りたいと思っています。

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 なし

by yasukiyoshi | 2008-06-14 09:46 | コーポレートガバナンス