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2008年 06月 07日

監査役の決算承認-荏原製作所のケース

荏原、前期決算承認を株主総会議案に 監査役の1人が承認せず
荏原は6日、27日に開催予定の定時株主総会で2008年3月期の決算を承認議案として提出すると発表した。昨春に発覚した会社資金の不正支出事件に絡み、社外監査役の1人が同事件の調査が不十分で、経理帳簿にも虚偽の疑いがあるとして決算を承認しなかったため。通常、決算は監査役会などの承認を前提に総会で報告すれば済む事項。決算そのものの承認を株主に問う極めて異例の事態となった。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080606AT1D0604L06062008.html

【CFOならこう読む】
上場会社の場合、通常計算書類について株主総会の承認を要せず、取締役がその内容を報告すれば足りることになっています。何故そうなっているかというと、①会計監査人の監査報告が「無限定適正意見」であることが要件になっており、内容の適法性の担保があること、②上場会社の計算書類の内容は複雑であり、株主総会で決定するのに原則として適さないからです。

ただし、監査役会(又は監査委員会)の監査報告の内容として、「会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと」、が株主総会の承認をしない要件となっています。荏原の場合、監査役会としては、「事業報告及びその附属明細書は法令及び定款に従い、会社の状況を正しく示しており」、「取締役の職務の執行に関する不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実は認められません」とする監査結果を表明しています(6月6日プレスリリース)。にも関らず株主総会で決算承認を要することになるのは何故でしょう?

それはこういうことです。

監査報告の作成は、監査役会により行われますが、監査意見は多数決により形成されます(会社法393条1項)。ただし、ある事項に関する監査役会監査報告の内容と自己の監査役監査報告の内容とが異なる場合には、各監査役は、監査役会監査報告に自己の監査役監査報告の内容を付記することができることになっています(会社法施行規則130条2項)。そして「会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見」が付記された場合、計算書類について株主総会で承認を得る必要があるのです(会社計算規則163条3項)。

荏原の監査役監査報告書には、大森義夫監査役の、「コンプライアンス上、重大な疑義があるので、本事業報告を承認しない」との意見が付記されています。

【リンク】
平成20年6月6日「当社第143期定時株主総会の決議事項に関するお知らせ」株式会社荏原製作所
http://www.ebara.co.jp/ir/shareholder/pdf/143kenkai.pdf



by yasukiyoshi | 2008-06-07 11:08 | コーポレートガバナンス
2008年 06月 06日

「市場原理主義批判」への批判

あちこちで市場原理主義への批判を耳にする。多くは誤解と偏見に基づくものだ。
(日本経済新聞 2008年6月5日19面 大機小機)
【CFOならこう読む】
コラムは「市場原理主義批判」への批判を簡潔かつ的確に行っています。
「批判」への批判は次の3点です。

第一、
市場原理主義批判者は、市場メカニズムだけですべてを律することはできないと言う。しかしどんな市場原理信奉者でも、市場の失敗は認めており、公的な介入の必要性を認識している。市場原理を重視する人たちは、公的な介入を本当に必要な分野に限定すべきだと言っているだけだ。

第二、
市場原理主義者の主張する政策によって格差が広がったという批判がある。仮にそれが正しいとしても、市場原理をいたした政策を放棄する理由にはならない。市場原理をいかす政策は、供給面を効率化して経済的なパイを拡大することによって国民福祉を高めることを意図している。そのパイの配分が公正でないと判断されるなら、税制などによる再分配政策で対応するしかない。経済の効率化と公平な分配という2つの目標を達成するには2つの政策が必要だ。

第三、
アングロ・サクソン型の市場原理は日本の伝統的社会理念や日本人の価値観に合わないという批判もある。しかし市場と組織、自由と規制、民間と政府の役割を組み合わせて制度を設計していく選択肢は多様にあり、すべてアングロ・サクソン型の経済社会になるわけではない。

但し第二の批判には注意が必要です。市場原理主義は自由主義と結びつきますが、自由主義と”公平な分配”というような平等主義とは真っ向から対立することがあるのです。この点ミルトン・フリードマンは「資本主義と自由」で次のように述べています。
「自由主義思想の根本にあるのは、個人の尊重である。自由主義では、各自が自分の考えに従ってその能力と機会を最大限に生かす自由を尊重し、このとき、他人が同じことをする自由を阻害しないことだけを条件とする。このことは、ある点では平等を、ある点では不平等を支持することを意味する。人は等しく自由権を持っている。
この権利がきわめて重要な基本的権利なのは、人間が一人ひとりみな違うからであり、自分の自由でもって人と違うことをしようとするからだ。そして人と違うことをする過程で、大勢が暮らす社会のあり方に、一層多くの貢献をする可能性がある。

だから自由主義者は、権利の 平等・機会の平等と、物質的平等・結果の平等との間に厳然と一線を引く。自由な社会が他の社会より多くの物質的平等をもたらすのはよろこばしいことではあるが、自由主義者にとってそれはあくまで自由社会の副産物であって、自由主義を正当化するものではない。自由と平等を促進するような政策、たとえば独占を排除して市場機能を強化するような政策こそ、自由主義者にとって好ましい。不運な人々を助けるための慈善活動は、自由の生かし方として自由主義者にとって望ましい。貧困をなくすための政府の事業も、多くの市民にとっての共通目標を達成する効率的な手段として、自由主義者は是認するだろうーただし、自発的な行動ではなく政府による強制に委ねることを残念に思いながら。

ここまでは平等主義者も同じであろう。だが、平等主義者はさらに一歩を踏み出そうとする。彼らが「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」ことを認めるのは、目標を達成するための効率的な手段だからではなく、「正義」だからなのだ。この点に立ち至ったとき、平等は自由と真っ向から対立する。ここでは平等か自由のどちらかしか選べない。この意味で平等主義者であると同時に自由主義者であることはできないのである。」(ミルトン・フリードマンは「資本主義と自由」日経BP)
今、日本は平等主義から自由主義へ向かおうとしています。市場原理主義への批判はこの大きな流れに対するアンチテーゼなのです。ならば市場原理主義者は、”平等”ではなく”自由”を選択するとはっきり主張しなければ議論が先に進まない、と私はこのコラムを読んで思いました。

【リンク】
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村井 章子

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by yasukiyoshi | 2008-06-06 10:17 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 30日

アデランス、株主総会で社長他役員再任否決

アデランスHD総会、役員再任否決 スティールなどが反対
筆頭株主の米投資ファンド、スティール・パートナーズから全経営陣の退任を求められていたアデランスホールディングスは29日午前、東京都内で定時株主総会を開き、岡本孝善社長ら現取締役の再任に関する議案が否決された。同社株を議決権ベースで約28%保有するスティールをはじめ、業績不振に不満を持つ株主が反対に回り、過半数の支持を集められなかった。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2900F%2029052008&g=S1&d=20080529

【CFOならこう読む】
全く予期していない事態が起き正直驚いています。
アデランスという少し脇の甘い会社の特殊事例ではありますが、こういうことが起こりうるんだと経営者や一般投資家が認識知ることでコーポレートガバナンスが変わる契機になるような気がします。

一昨日の山田太一のドラマ「本当と嘘とテキーラ」で主演の佐藤浩一の台詞が、頭の中でリフレインしています。

「大人はゆっくり変わるんです」

そう、日本の会社だって変わるんです。

さて、取締役が欠けた場合の法的な措置ですが、次のように会社法は規定しています。

「取締役が欠けた場合、または、法令・定款所定の取締役の員数が欠けた場合には、遅滞なく後任の取締役を選任しなければならない(会社法976条22号)。しかし、その場合、任期の満了または辞任により退任した取締役は、後任者が就任するまでの間、なお取締役としての権利・義務を有する(会社法346条1項)」
【リンク】
平成20年5月29日「第39回定時株主総会決議及び役員人事について」株式会社アデランスホールディングス
http://www.aderans.co.jp/company/investors/images/pdf/20080529a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-30 10:32 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 22日

TCI、Jパワーの株主総会に向け委任状争奪戦へ

TCI 委任状勧誘開始 Jパワーと争奪戦
英系投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)は21日、株式の9・9%を保有するJパワー(電源開発)に対して求めている増配などの株主提案を株主総会で可決するため、他の株主の賛同を募る委任状の勧誘を始めると発表した。Jパワーが会社提案する中垣喜彦社長の取締役再任議案にも反対する。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200805220055a.nwc

【CFOならこう読む】
TCIが行う委任状勧誘の対象となる議案は次の通りです。

<株主提案に係る議案>

1. 株式持合い・株式投資に対する制限
 定款において、株式持合いを含む株式投資を総額50 億円に制限
2. 社外取締役の導入
 定款で、最低3 名の社外取締役枠を設定
3. 期末配当案(その1)
 期末配当を1 株につき90 円とする(年間合計で120 円)
4. 期末配当案(その2)
 期末配当を1 株につき50 円とする(年間合計で80 円)
5. 自己株式の取得
 総額700 億円の自己株式取得枠を設定

<反対する会社提案に係る議案>
6. 期末配当案
 期末配当を1 株につき40 円とする(年間合計で70 円)
7. 中垣喜彦氏の取締役選任の件

この株主提案は、当ブログで5月16日(http://cfonews.exblog.jp/7947236/)と5月19日(http://cfonews.exblog.jp/7965979/)にとりあげたコーポレントガバナンス白書の推奨に従ったものです。

TCIの狙いは、日本的な安定株主政策の不合理性を論点としたうえで、特に機関投資家にプレッシャーをかけることにあります。
プレスリリースの中でTCI代表ジョン・ホー氏の次のコメントを紹介しています。
「私たちは、日本生命保険、みずほグループ、三井住友銀行、T&D ホールディング、鹿島建設といった取引先株主又は持ち合い株主がどのようにして深刻な利益相反を回避し、どのような基準に基づいて議決権の行使方法を決めるのか、注意深く見守っていかなければならないと考えています。」
事態はゲゲゲの鬼太郎の妖怪世界戦争のような様相を呈してきました。

【リンク】
2008年5月21日「J パワー第56 回定時株主総会に関する委任状勧誘ならびに持ち合い株主・取引先株主の利益相反に関する問題提起」ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンド
http://www.tcifund.jp/pdf/news_jp27.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-22 08:14 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 19日

「日本のコーポレートガバナンス白書」続報

【CFOならこう読む】
5月16日に当ブログで取り上げた、「ACGA(エイシアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーション)」のとりまとめ役、英ハーミーズ・ファンド・マネジャーズのシニアアドバイザー、マイケル・コナーズの単独インタビューが18日の日経ヴェリタスに掲載されていたので、その抜粋を紹介します。
-なぜいま提言を?
「カニフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)やハーミーズなど世界の有力機関投資家が結集して提言するのは初めてだ。いかに海外の運用機関が日本企業のありように憤りを感じているかを示している」

-何が一番の問題ですか。
「昔はお金を貸した銀行が企業経営に規律を与えていた。将来は市場が規律を求めるだろうが、今は真空地帯。株主は企業の所有者ではなく利害関係者の1人にすぎないというステークホルダーズ資本主義はしょせん、経営陣の利益を守る煙幕であり、早晩、企業経営がゆがむ」

-資本主義のありようは国によって違うという考え方もあります。
「米国では市場が最優先、英国では株主利益が最優先だ。日本では経営者が第一に見える。日本企業は買収防衛策も相次いで導入しているが、発動の可否を経営陣が選んだ第三者委員会が決める仕組みは不公正だ」

-3人の社外取締役はなぜ必要なのですか。
「1人や2人では多勢に無勢だ。多くの企業では人材がうずもれている。社外取締役として他企業でどんどん活躍できるようにすればいい」

-ひ弱な企業統治が、企業経営にもたらす問題は何ですか。
「選択と集中の遅れと、過剰な資金をため込むことだ。5,6割の企業は非効率で、あるべき水準をはるかに下回る利益しか出せていない。世界で一番速く高齢化が進む日本では配当収入が極めて大切。経営陣が現金のうえにあぐらをかいている余裕はない」

過剰な資金も株価に反映されているなら問題はないのです。

企業価値-(有利子負債-余剰資金)=株主価値

ですから理論的には、余剰資金は株主価値を構成するのです。
ところが多くの日本の上場企業の株価にはこの余剰資金部分が反映されていません。これは経営陣がため込んだ現金を効果的に使うことができず、将来的には費消されると市場は見ていることに他なりません。このことを「経営陣が現金のうえにあぐらをかいている」と表現しているのです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-19 08:31 | コーポレートガバナンス
2008年 05月 16日

カルパースらによる「日本のコーポレートガバナンス白書」

欧米有力年金 「経営者に保身の傾向」 企業統治提言を発表
欧米の有力年金基金や運用会社が日本企業にコーポレートガバナンス(企業統治)改革を求める提言をまとめ、15日発表した。「経営者に保身の傾向が強まっている。外部の目を入れ規律を働かせるべき」(会見した英運用会社、ハーミーズのマイケル・コナーズ氏)として、最低3人の社外取締役起用などを柱とする改革を求めた。
(日本経済新聞 2008年5月16日 14面)


【CFOならこう読む】
米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)をはじめ、年金・運用会社7社が参加し、ガバナンス研究などの専門機関「ACGA(エイシアン・コーポレート・ガバナンス・アソシエーション)」が今回の提言をまとめました。

提言の骨子は次の通りです。

●「所有者としての株主」という原則を認識し、その他のステークホルダーとの利益均衡を図る
●資本を効率的に活用し、長期的な企業価値の向上に努める(ROEの目標値や配当性向の設定、自社株買いを推奨)
●独立した立場で経営陣を監督する社外取締役を最低3人指名(中期的には社外取締役が取締役会の3分の1、長期的には2分の1を占めるのが望ましい)
●第三者や少数の特定株主への新株発行などによる希薄化から株主を保護するような原則を確立(株主総会で年間発行額の上限を決議するなど)
●ポイズンピル型の買収防衛策は廃止(導入の場合は社外取締役の人数や株主が判断する機会を増やす)
●株主総会と議決権行使の公平性・透明性を高める(総会の集中日開催や株式持合いは避け、議決権行使結果は公表)

特に4番目については、1年間で既発行済株式総数の5%を超える第三者割当増資を禁じる、という相当厳しい内容になっています。

提案としては至極まっとうであると思いますが、提言の前提として、日本の経営者の多くは、自己の保身のために行動をしている訳でなく、会社という名の”お家”のために自己を犠牲にして働いているということを知る必要があると思います。このような古くからの日本の組織の有様を理解しなければ対話は全く進まないと私は思います。

【リンク】
ACGA 日本のコーポレート・ガバナンス白書 2008年5月
http://www.acga-asia.org/public/files/ACGA_Japan_White_Paper_FINAL_Japanese.pdf



by yasukiyoshi | 2008-05-16 07:54 | コーポレートガバナンス
2008年 04月 28日

第三者割当増資に規制論

株主保護 問われる実効性 東証・監査役協会など検討
特定の企業や投資ファンドに株式を割り当てて資金調達する第三者割当増資に厳しい目が向けられている。一株利益が減るため株価下落につながりかねず、既存株主に不利としてかねて問題視されてきた。ところが実施企業が急増しており東京証券取引所、日本監査役協会などが規制の検討を始めた。株主保護に向けた実効性の高い規制を打ち出せるか、注目される。
(日本経済新聞 2008年4月28日 16面 法務インサイド)
【CFOならこう読む】
2006年夏に、王子製紙が北越製紙に対し敵対的TOBを仕掛けた際に、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受け、24%強を出資する筆頭株主になることにより、敵対的TOBが阻止された事件を皆さんご記憶だと思います。日本では授権株数の範囲内であれば、第三者割当増資は取締役会の決議で行うことができます。したがって、第三者割当増資を買収防衛策として利用することが取締役会決議のみでできるのです。上記記事にもあるように、第三者割当増資の違法性が問われる場合もあります。
「一つは株主総会の特別決議を経ずに株式を市場価格より特に有利な価格で第三者に割り当てる「有利発行」。もう一つは発行の主要目的が資金調達でなく、企業の支配権の維持や移動を目的とした「不公正発行」の場合だ。いずれも会社法で禁止されている。」
つまり資金の使い道が決まっていて割当価格が大幅に安くないケースでは第三者割当増資が認められるのです。北越の事例でも、第三者割当増資は設備投資のために行われることが発表されていました。これを規制するために「東証の自主ルールで規制する」すなわちニューヨーク証券取引所のように20%を超える株式を発行する場合、株主総会決議にかけるようにするというのは、一つの方法であると思います。しかしこれだけでは、ブルドック事件以降加速している、株式持合いを含めた安定株主作りの流れを一層強めることになりかねません。

上場会社の増資は原則公募増資とすべきです。取引所は第三者割当増資を例外的なものととらえ、一定規模以上のものは個別に審査をするという位の規制をしないと日本では機能しないと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-28 08:59
2008年 04月 25日

西武鉄道株虚偽記載による損害賠償問題-地裁判決

西武鉄道株虚偽記載、一部個人株主へ賠償命令・信託は請求棄却
西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載発覚による株価下落で損失を被ったとして、個人株主約290人が西武鉄道側に総額約13億円の損害賠償を求めていた訴訟の判決で、東京地裁(難波孝一裁判長)は24日、176人、約2億3000万円分の支払いを西武鉄道側に命じた。一方、信託銀行4社が計約120億円の損害賠償を求めた訴訟では、信託銀行側の請求を棄却した。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080424AT3Y2400624042008.html

【CFOならこう読む】

今回の判決は、虚偽記載公表後に株を売却した176人について、虚偽記載公表日の終値(1081円)と売却価格との差額分の損失を被ったと認定する一方、計2億3千万円の賠償を命じたものです。現在も保有している株主は、1株当たり評価額が1081円下回っていないと損害を認めませんでした。2004年12月の証取法(現金商法)改正で虚偽記載による株価下落で損害を被った株主を救済しやすくする規定が盛り込まれました、西武鉄道のケースは改正前のため適用されません。

金商法21条の2第2項は損害の額を次のように計算すると定めています。すなわち、有価証券報告書等の虚偽記載等の事実が公表されたときは、その公表日前1年以内に当該有価証券と取得し、その公表日において引き続きその有価証券を所有する者は、その公表日前1ヶ月間のその有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の平均額から公表日後1ヶ月間のその有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、虚偽記載等により生じた損害額とすることができる、としています。

今回の地裁判決の算定方法はこれとは異なるものになっています。

なお、金商法の損害賠償請求権者は、上の規定からも分かるように、公表日前1年以内に株式を取得し、その公表日において引き続き保有する者に限られます。市場価額を引き下げるような虚偽記載等(例えば虚偽の損失計上)によって売却して損害を被った者は、保護されません。この点立法論としては学説に批判があります(証券取引法読本 河本一郎・大武泰南著 有斐格)。

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by yasukiyoshi | 2008-04-25 08:08 | コーポレートガバナンス
2008年 04月 19日

Jパワー投資問題、引き続き議論必要・金融相

渡辺喜美金融担当相は18日の閣議後の記者会見で、政府が英投資ファンドにJパワー(電源開発)株の買い増し中止を勧告したことに関連して「対内投資のルールが(公共性の維持と市場活性化の)整合性をとりながら進んでいくことが大事だ」と改めて強調した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C18008%2018042008&g=E3&d=20080418
【CFOならこう読む】
18日付のフィナンシャル・タイムズが、Jパワー株買い増し中止勧告について、日本政府の対応を批判した記事を掲載しています。
「外国企業による投資はある時はグローバル経済に必要な要素として、ある時は安全保障上の脅威として扱われる(筆者注 対応にはバランスが必要)。」

「株の買い増し中止勧告をしたことで、バランスを失った最新の事例になった。さらに悪いことに、Jパワー経営陣を業績改善に必要な合理的な圧力から守ってしまった。」

「日本政府は国の安全ではなく、Jパワー経営陣を守っているのではないかという疑念がわいてくる。Jパワーは2004年の上場以来、業績が悪化傾向にある。借金を返すことで経常利益は増えているが、資本効率は逆に悪くなっている。」

「外国投資家に電力会社の株式20%を持たすことと日本企業の経営陣が貴重な資本を利益が少ない案件に投資するのを許すことと、どちらが国の繁栄と安全保障にとって長期的にみて脅威か、よく考えるべきだ。」
これらの批判に対し、渡辺喜美金融担と当相甘利明経済産業相とが意見の調整をした上で、日本政府として真摯に説明をしていく必要があると私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-19 08:59 | コーポレートガバナンス
2008年 04月 03日

東証がルール検討-経営陣と株主対立の場合 監査役が仲介・調整

経営陣と株主対立の場合、監査役が仲介や調整・仕組み作り着手
東京証券取引所と日本監査役協会は、買収防衛策の導入などで経営陣と株主の利害が対立する場合に、監査役が第三者の立場で仲介や調整を担う仕組み作りに着手した。株主の利益を損ねかねない決定を経営陣が公表する際に、監査役の意見書添付を義務づけるルールなどを検討する。株主に適切な判断材料を提供し、経営陣の保身的な行動に歯止めをかける。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080403AT2C0201K02042008.html

【CFOならこう読む】
監査役会設置会社では、監査役の半数以上は、「社外監査役」でなければならないと会社法335条3項は定めています。監査役が例えば第三者割当増資の場面で、その妥当性について調査、判断するなど、積極的に関与することを目指すとのことです。

現状監査役会設置会社が大多数であるので、監査役にもっと仕事をさせようということなのでしょう。構成員の過半数が「社外」であるので、一定の独立性が担保されているはずとの期待もあるのでしょう。ところで「社外」の要件は何でしょうか? 

要件は、過去にその会社または子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人でなかった者です。ところがその実態は、

 ①親会社等関連会社の出身者、
 ②取引金融機関の出身者

により大部分が占められており(日本監査役協会「監査役の活動実態と意識調査・結果報告書」)、これらが独立性の点で期待に合致した人選か否かは疑わしい(藤本直「社内監査役の機能とその充実」商事法務研究会)と言わざるを得ません。

それでは要件をもっと厳しくし、独立性の点で期待できる人選にしたらうまく行くのかというと、とてもそうは思えません。

取締役会とのパワーバランスが拮抗すればするほど、会社のガバナンスが混迷の度合いを深めると予想されるからです(実際そういう会社を見たことがあります)。私は以前からここでお話ししている通り、取締役会の改革を第一に進めるべきだと思っています。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-03 08:53 | コーポレートガバナンス