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2009年 02月 12日

中小企業庁、非上場株の評価で指針

中小企業庁は多岐にわたる非上場株の「値付け」方法を整理し、指針を作成した。ベンチャー企業は将来の利益見通しに基づいて評価するなど、どの企業がどの方法を使うべきかについて一定の方向性を示した。非上場の中小企業の経営者が死亡した場合、その企業の株式は親族らに分散しがちだ。適切な評価の指針をまとめることで、円滑な事業承継を支える。
 中小企業庁の研究会で指針を検討し、近く正式に公表する。
 資産が少なくても成長力のある企業は、将来の収益を予想して算定する「収益方式」が適当だと指摘。収益性が低くても不動産などを多く持つ企業は、資産から負債を差し引いた純資産を株数で割る「純資産方式」を採用するのが望ましいとの判断を示した。
 資産や収益による評価で納得が得られないときは、事業内容が似た上場企業の株価と比較して決める「比準方式」を活用する例もある。その際には客観性を高めるために、複数の企業と比較するよう求めた。

(日本経済新聞夕刊2009年2月9日3面)
【CFOならこう読む】
経営承継法は、後継者が贈与により取得した自社株式2について、「遺留分を算定する際の価額を合意の時における価額に固定する」ことを内容とする合意(以下「固定合意」という。経営承継法第4 条第1 項第2 号)を行うことができ、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可といった諸手続きを経ることで当該合意の効果が生じることとしています(同法第7 条から第9 条)。固定合意における価額は、「合意の時における価額(弁護士、弁護士法人、公認会計士(公認会計士法第16 条の2 第5 項に規定する外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士又は税理士法人がその時における相当な価額として証明したものに限る。)」(以下「合意時価額」という。)であることが必要ですが、非上場株式の評価方法に絶対の方法があるわけではありません。

今般の指針は、固定合意が利用される際の非上場株式の評価方法のメルクマールとなることを目的として策定されたものです。

指針を一読したところ、非上場会社の株式評価入門的な内容で特筆すべき点はありません。強いて言えば過去の裁判例が豊富なので、その点利用価値はあるかもしれません。

少し気になるのは、本指針を策定した「非上場株式の評価の在り方に関する委員会専門委員会」(委員長:品川芳宣早稲田大学大学院会計研究科教授)の事務局を担当したプルータスコンサルティングの名前が指針の中で散見される点です。
具体的には、
「β値に関しては、東京証券取引所のほか、Bloomberg 社やプルータス・コンサルティング社が公表している。」(11ページ脚注)
「エクイティー(マーケット)リスクプレミアムとしては、Ibbotson Associates 社のほか、プルータス・コンサルティング社が、株価のヒストリカル・データに加え、現状の市場の株価とキャッシュ・フローのレベルを反映した指数を公表している。」
(12ページ脚注)
「米国においては、Ibbotson Associates 社(正式にはその親会社であるMorningStar 社)が現地の上場企業に関するヒストリカル・データを利用して小規模リスクプレミアムを定量化している。これまでは、我が国では、同様のデータが整備されておらず、実務上は米国市場のデータに依拠した小規模リスクプレミアムが適用されてきたのが現状である。しかし、近時においては、プルータス・コンサルティング社が、我が国の株式市場の実績値から小規模リスクプレミアムを算出、公表している。」(12ページ脚注)
Bloomberg 社やIbbotson Associates 社と並列にプルータス・コンサルティング社の名前を記載することで、同社の提供するデータがBloomberg 社やIbbotson Associates 社が提供するそれと同程度の信頼性があると中小企業庁がお墨付きを与えたかのようなミスリードにつながる可能性があり、ここに事務局を担当した一民間企業の名前を書くのは適当とは思えません。

【リンク】
平成21年2月「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」中小企業庁


by yasukiyoshi | 2009-02-12 13:08 | バリュエーション
2008年 07月 23日

解散価値によるTOB−コマ・スタジアムのケース

東宝がコマ・スタジアム買収へ 友好的TOBで
東宝は22日、東京・歌舞伎町の「新宿コマ劇場」を運営するコマ・スタジアムを完全子会社化すると発表した。株式公開買い付け(TOB)を実施し、友好的に買収する。劇場は年内で閉館する予定で、東宝が主導して跡地を再開発する。
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072201000610.html
【CFOならこう読む】
コマの7月22日終値1545円に比し、TOB価格は何とその4.8倍の7400円です。このTOB価格は何のバリューに基づくものなのでしょうか?

新聞記事によると東宝のTOBの目的を次のように説明しています。
「コマは演歌など興業の不振から主力の「新宿コマ劇場」閉鎖を決めたが、建物の解体から新しいビルの完成まで約4年間は事業停止となる。事業の継続が難しくなるため、東宝傘下で再建を図る。東宝はコマ劇場に隣接する自社の不動産と一体で再開発を進める。」(日本経済新聞 2008年7月23日 11面)
東宝は、この点公開買付開始公告の中で次のように書いています。
「当社は、対象者の所有する「新宿コマ劇場」建物の所在地(東京都新宿区歌舞伎町一丁目19 番1)を含む一帯の土地(以下「本件土地」といいます。)を所有しており、対象者は、本件土地5,385.33平方メートルの南側部分3,164.38 平方メートル(以下「本件土地南側部分」といいます。)を当社より賃借し、「新宿コマ劇場」建物の敷地として利用しております。また、当社は、本件土地の北側部分を、自社の所有する「新宿東宝会館」建物(地下4階・地上9階、テナントとして映画館・飲食店・レジャー施設等)の敷地として利用しております。ところが近年になり、演劇公演における観客ニーズの多様化から、特に対象者が得意とした演歌公演の観客動員の減少が続き、対象者は深刻な業績不振に陥りました。そのため、対象者は、平成15 年11 月には「経営再建計画」を策定し、平成17 年3月には「梅田コマ劇場」の資産売却により大阪地区の劇場経営から撤退いたしました。その後、対象者は、「新宿コマ劇場」を唯一の拠点として、話題性のある企画公演、他社との提携・貸館公演の実施等、時代のニーズに合った公演施策への転換を図ってまいりましたが、観客動員の回復には結びつかず、平成20 年3月期決算では2期連続の大幅な営業赤字を計上するに至り、再び抜本的な経営の見直しを迫られました。

また、「新宿コマ劇場」(昭和31 年築)及び「新宿東宝会館」(昭和44 年築)はともに、築後相当の年数が経過し、施設・設備の老朽化が激しくなっております。さらに、歌舞伎町一丁目地区は、演劇劇場2館、映画館計14 スクリーンが集積する一大映画・演劇興行街でありますが、昨今の周辺環境の変化や近隣競合地区へのシネマコンプレックス(複合映画館)の新規出店の影響を受け、映画・演劇興行立地の地盤沈下が急速に進んでいる状況にあります。

このような事態を踏まえ、対象者は、「新宿コマ劇場」建物の敷地を所有する当社に対して全面的な経営支援を要請し、「新宿コマ劇場」を閉館して当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組むことが、最善の選択との判断に至りました。また、当社にとっても、本件土地は、都内の主要繁華街では希少な大型物件でありながら、きわめて収益性・効率性の低い資産と化しており、当社の経営方針に照らして、本件土地の早期の再開発による有効活用が必要と考え、そのためには、何よりも本件土地南側部分の借地権を有する対象者の協力が不可欠と判断いたしました。」
要するに土地再開発のためにコマが有する借地権を取得する必要があり、TOBの目的はそこにあるというわけです。

こういうことですから、コマ・スタジアムの評価をもはや継続価値によって行うことはできません。東宝は時価純資産法に基づきTOB価格の決定を行ったことを開始公告の中で次のように説明しています。
「当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定する際の参考とするため、当社及び対象者から独立した第三者算定機関としての算定人であるアビームM&A コンサルティング株式会社(以下「アビームM&A コンサルティング」といいます。)に対し、対象者の株式価値の評価を依頼しました。アビームM&A コンサルティングは、当社からのかかる依頼に基づき、時価純資産法及び市場株価法により対象者の株式価値の評価を実施し、当社は、アビームM&A コンサルティングから平成20 年7月18 日付で株式価値算定書(以下「アビームM&A コンサルティング算定書」といいます。)を受領しています。それぞれの手法において算定された対象者の株式1株当たりの価値の範囲は、時価純資産法では7,057 円から7,401 円、市場株価法では1,555 円から1,728 円です。なお、アビームM&A コンサルティングは、対象者の株式価値の評価においては、対象者の本件土地南側部分の借地権には相当の含み益が存在しその重要性が高いことから、時価純資産法を採用するとともに、株式会社生駒データサービスシステム(以下「生駒データサービスシステム」といいます。)により実施されたかかる借地権の不動産鑑定に基づき、かかる借地権の適正な時価を対象者の株式価値に反映しております。また、対象者が唯一の事業所であり収益基盤であった「新宿コマ劇場」を閉館して、当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組み、対象者の演劇事業が大幅に縮小されることが予定されていることから、対象者の事業資産から生み出される将来キャッシュフローに基づく株式価値の評価を行うことは難しいため、ディスカウンティッド・キャッシュフロー法は採用しておりません。当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定するに際して、アビームM&A コンサルティング算定書の時価純資産法の評価結果を重視しつつ、対象者に対する事業・法務・会計・税務に係るデュー・ディリジェンスの結果、対象者による本公開買付けへの賛同の可否、対象者株式の市場価格の推移、及び本公開買付けの見通し等を総合的に勘案し、かつ、対象者と協議・交渉した結果等も踏まえ、平成20 年7月22 日の取締役会において本公開買付けにおける買付価格を7,400 円と決定いたしました。なお、本公開買付けにおける買付価格は、対象者株式の株式会社大阪証券取引所(以下「大阪証券取引所」といいます。)市場第二部における平成20 年7月18 日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値1,559 円(小数点以下を四捨五入)に対して約375%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20 年7月18 日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値1,680 円(小数点以下を四捨五入)に対して約341%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20年7月18 日の終値1,545 円に対して約379%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムをそれぞれ加えた価格となります。」
なお、TOBに先立ち、5月28日付で東宝はコマ・スタジアムと「新宿コマ劇場」跡地の再開発に共同して取り組む旨合意したことを公表しています。時価純資産法による評価の前提として、このような合意が必要であると考えたのではないかと推察されます。

【リンク】
「投資家の皆様へ」東宝株式会社
http://www.toho.co.jp/toho_ir/welcome-j.html

開示情報 平成20年7月22日「株式会社コマ・スタジアム株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」


by yasukiyoshi | 2008-07-23 08:42 | TOB
2008年 06月 30日

ソフトバンクの理論株価

ソフトバンクの企業価値はどのくらいなのだろうか。同社は複数の事業を運営しているので、事業価値を積み上げる「サム・オブ・パーツ」方式で試算してみよう。
(日経ヴェリタス2008年6月29日 14面)
【FOならこう読む】
記事では、事業価値と上場保有株の時価総額を合計した企業価値から純有利子負債を引くことで株主価値を求め、これを自己株控除後の発行済株式数で割って理論株価を算定しています。

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事業価値はEBITDA倍率により計算されています。
これは乗数アプローチ(マルチプル)と呼ばれる手法の一つで、実務上も多用されています。
評価対象会社の評価指標×類似会社のマルチプルにより株主価値又は企業価値を計算します。

株主価値が計算される評価指標としては、PER(株価/1株当り当期利益)、PBR(株価/1株当り純資産)、企業価値が計算される評価指標としては、EBIT(Earnings Before Interest and Tax: 支払利息、税金差引前利益)、EBITDA(Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Amortization : 支払利息、税金、減価償却費差引前利益)がよく利用されます。

マルチプルで使用される評価指標は、予想数値によるのが一般的ですがソフトバンクは業績予想を公表していません。したがって当然のことなら予想者によって相当のばらつきが生じます。
「例えば、携帯電話の事業価値について、日興シティグループ証券の山科拓氏は予想EBITDAを3504億円(2009年3月期ベース)、倍率を5倍として計算する。UBS証券の乾牧夫氏は3488億円(2010年3月期ベース)、6倍で算出。モルガンスタンレー証券の田中宏典氏は3510億円(2013年3月期ベース)。4.5倍で算定している。」
保有株の価値は27日終値ベースで計算されています。これをアフタータックスで計算すべきであるという考え方もあります。

例えば、ヤフー株の投資簿価は62億円なので含み益が1兆240億円あります。ヤフー株の価値を実現するにはこれを売却するしかないのだとすると、売却益に対する課税分(約4000億円)だけ価値を減じてやる必要があると考えるのです。

記事の評価は概ね現状の株価と一致しているので、少なくとも市場は保有株の価値をアフタータックスで見ていないということができます。

【リンク】
「ソフトバンクグループの国内外持株会社が直接保有する投資有価証券」
2008年06月27日 17:00(日本時間)現在
http://www.softbank.co.jp/irdata/share_data/index.html


by yasukiyoshi | 2008-06-30 08:44 | バリュエーション