吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2009年 01月 19日

株価指数プットオプションの建玉増加

株価指数オプション市場でプットオプション(売る権利)の建玉が増加している。日経平均オプションでみると権利行使価格で6000円台での増加が鮮明で、この水準が下値のメドとして意識されつつあるようだ。投資心理を映すボラティリティー指数も上昇傾向。年度末を控えて、市場参加者は先行き警戒感を強めている。
(日経ヴェリタス2009年1月18日24面)
【CFOならこう読む】
日経平均プットオプション 3月12日が最終売買日の日経平均3月物建玉(1/16時点)
権利行使価格6500円 1万3034枚(前週末比17%増加)
権利行使価格6000円 1万1835枚(前週末比20%増加)
3月末を控えヘッジ目的による機関投資家の買いが入っているものと思われます。但し、ボラティリティも1/16時点で53.3%(前週末比8.8%増加)と高い水準にあり、ヘッジのコストも割高になっています。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2009-01-19 07:54
2009年 01月 17日

三菱商事のリスク管理手法―MCVA

リスク管理が威力発揮 真価問われる投資会社化
リスク管理で威力を発揮しているのが、2002年に導入したMCVAという独自指標。
事業ごとの収益から想定最大損失(実質リスク)に株主資本コストを乗じた数値を引いた後の損益を示す。赤字が続けば原則、その事業からの撤退を決める。
この指標でみた赤字額合計は2002年3月期で766億円と同年度の純利益を上回っていた。それが退出ルールの明確化で前期は一気に187億円に減少。これに伴い不良資産関連の償却は2005年3月期の943億円をピークに、前期は1億円強に縮小した。

(日本経済新聞2009年1月17日15面 会社研究)
【CFOならこう読む】
三菱商事のMCVA(Mitsubishi Corporation Value added)は次のように算定されます。

MCVA=事業収益-(最大想定損失×資本コスト)
但し、
事業収益= 税後純利益-(1-限界税率)×(有価証券売却損益+上場有価証券評価損)
MCVAはその名称からもわかるように、株主付加価値(EVA、SVA)を三菱商事に合うようにカスタマイズしたものです。

EVAは、
一般的に、税引後営業利益-資本コスト
により算出されますが、投資会社である三菱商事の場合、有価証券の売却という形で投資の回収が行われるので、税引後営業利益に基づき付加価値を把握することが適当ではなく、金融収支、事業収支を加味しカスタマイズされました。

最大想定損失は、実質リスクと定義されます。

実質リスクとは、統計的に計測される損失発生額の「期待値」(EL)と統計的に計測される損失発生額の「変動幅」(UL)の合計から分散投資効果を差し引いて計算されます。EVAは投下資本に基づき資本コストを計算しますが、MCVAはリスク調整後資本コストを計算するのです。

基本的な考え方は、外資系の金融機関が90年代から導入している手法によっています。例えばチェース・マンハッタンが同様のリスク管理手法をを導入していることが、「戦略的リスクマネジメント」(T・L・バートン/M・G・シェンカー/P・L・ウォーカー 東洋経済)に紹介されています。

三菱商事は、MCVAにより次のようなリスクマネジメントが可能になったと説明しています。
・異なる種類の取引・資産に係わるリスクを計量し会社としてのリスク総量やリスク構造を把握する
・営業組織をビジネスモデルや取扱商品毎に再編し、個々の組織単位で保有するリスク量と収益のバランスを経営管理指標とする
・リスク総量と自己資本(体力)を比較しながら、追加リスク総量を管理し、且つ追加リスクの配分(資源配分)を行う
なお、本文中のMCVAの説明は、京都大学経済学部大学院経済研究科目平成1 7 年度前期「資産運用論」資料、「三菱商事におけるビジネスポートフォリオマネジメント~価値創造経営とリスクマネジメント~」(経営企画部 北村康一)によっています。

【リンク】
2005年7月5日「三菱商事におけるビジネスポートフォリオマネジメント~価値創造経営とリスクマネジメント~」三菱商事株式会社 経営企画部
http://www.kier.kyoto-u.ac.jp/fe-nomura/katou/05.07.05.pdf


by yasukiyoshi | 2009-01-17 11:30 | 業績評価
2008年 12月 26日

バリュー・アット・リスク(VaR)

統計過信のツケ 漂流するリスク管理
「まさか相関係数が一に近付くとは」。富国生命保険の桜井祐記取締役は今秋の想定外の金融市場の動きに困惑した。これは日本株、外国株、商品などが同じような値動きをし、リスク抑制の基本手段である分散投資の効果が得られなくなったことを意味する。
金融危機で投資家のリスク管理は根本から揺らいだ。金融機関はバリュー・アット・リスク(VaR)と呼ばれる統計的手法で株、債券などの損失可能性を予測し、資産配分している。1978年ー2007年の30年間の日経平均株価の値動きを前提に計算すれば、1日で5%以上動く可能性は1万分の1以下。これを「無視しうる頻度」と判断して、見合った資金を投じていく手法だ。

(日本経済新聞2008年12月26日 13面 株価 金融技術の限界 下)
【CFOならこう読む】
金融機関に限らずバリュー・アット・リスク(VaR)はもっともポピュラーなリスク計量手法のひとつで、ほとんどのビジネススクールで教えられています。

VaRを言葉で表現すると次のようになります。
「①過去のある一定期間のデータをもとに、
 ②将来の特定の期間内に、起こりうる収益率の分布を予測し、
 ③ある一定の確率の範囲内で、
 ポートフォリオの現在価値がどの程度損失を被るかを、理論的に算出された値」
  (「バリュー・アット・リスクの基礎知識」吉田洋一著 シグマベイスキャピタル)
日銀は、VaRのメリットとデメリットを次のように説明しています。
メリット
 為替・債券・株式等、全く異なる金融資産でも、VaRによって統一的にリスクを計量化し、さらに、相関等を考慮した上で合算することもできる。
 デメリット
 ① 過去の一定期間のデータを使ってリスクを計量化するため、使用したデータに含まれないような大きな価格変動やショックが発生した場合のリスクは、十分に把握できない。
 ② 従来リスクとして十分認識されていなかった要素や、新商品のようにデータの蓄積のない取引に関しては、そもそもリスクの計量化自体が困難。
 ③ 予想される損失について一定の確率分布を仮定した上でリスクの計量化を行うため、前提が崩れた場合のリスクは分からない。」
(「統合リスク管理の高度化」日本銀行金融機構局)

「10月16日の日経平均株価の下落率(11.4%)について、発生確率を予測すると、その発生確率は124京年(京は兆の1万倍)に1回という天文学的数字となった。」
(前掲紙)
まさに、今年「使用したデータに含まれないような大きな価格変動やショックが発生した場合のリスクは、十分に把握できない」ような事態が起きたのです。

「定量モデルに依存するだけでなく、定性的な判断を重視する必要性が高まっている」(ボスコン 木島康史氏 前掲紙)という意見はその通りですが、マネジメントにとって依るべき定量モデルが必要であるのもまた事実です。

そういう意味では、リスク評価の第一人者である森平教授の、「リスク管理の抜本的な見直しは、数年以上かかる膨大な作業で、現状は暗中模索の段階だ」(前掲紙)という言葉から、我々は依るべきモデルを失ったという事実を宣告されたような気がして、暗澹とした気持ちになります。

【リンク】
2005年7月「リスク管理高度化と金融機関経営に関するペーパーシリーズ 統合リスク管理の高度化
」日本銀行金融機構局
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/fsk0507a3.pdf


by yasukiyoshi | 2008-12-26 09:55 | 資金調達
2007年 09月 15日

トヨタ、東北に新工場・宮城が有力、10年秋稼働めざす

生産拠点の分散化を進めるトヨタのグループ戦略の一環で、労働力を確保しやすい東北で拠点を拡充する。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070914AT1D1401P14092007.html

(CFOならこう読む)

CFOが検討すべきリスクは、マーケットリスク、市場リスク、
オペレーショナルリスク、ハザードリスク等色々あります。
トヨタが東北に新工場を作るのは、
主に自然災害によってもたらされるハザードリスクを低減するためと考えられます。
ハザードリスクには通常保険でヘッジするのですが、
トヨタは全てのリスクプロファイルの検討を行い、
最適なヘッジ手段を採用しているのでしょう。

自然災害によるハザードリスクの定量化はなかなか困難ですが、
“90年代から自然災害モデルを使った確率論的分析が徐々に普及してきています。
こうした自然災害モデルの活用により、歴史的な損害データに含まれない
災害事象も想定した分析が行われるようになり、定量化の精度を上げるのに役立っています“

経営のためのトータルリスク管理 中央経済社

それにしてもCFOの仕事はあまりに広く、
全ての分野に精通するのは不可能です。
どれもそこそこというより、
1つ非常に強い分野(M&A、事業投資管理、金融リスクヘッジ、会計等)を持つ方が市場価値が高いでしょう。
上記したようなトータルリスク管理に通じた人材は稀少なので
これを徹底的に勉強するのは良いかもしれません。

by yasukiyoshi | 2007-09-15 08:32