吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 10月 24日

変動利付国債についても市場価格以外の評価容認へ

市場価格以外の評価容認、変動利付国債も対象 会計基準委方針
金融危機を受けた時価会計の見直しを検討している企業会計基準委員会(ASBJ)は、価格が下落している変動利付国債や物価連動国債を単純な市場価格以外の時価で評価することを認める方針だ。新たに作成する指針の中に、価格が極端に下落している国債などはそれ以外の時価で評価してよいとの考え方を盛り込む。変動利付国債を大量に保有する銀行など金融機関は決算で評価損を計上せずに済むことになりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081024AT2C2301X23102008.html

【CFOならこう読む】
新聞記事によると、
「変動利付国債は市中発行残高が40兆円強あり、主に銀行など金融機関が保有。通常の国債と比べて流動性が乏しいため海外勢などの売却で価格が急落し、多くの投資家が含み損を抱える状況になっている。」

「変動利付国債にこのまま時価を当てはめると多額の含み損を抱えるため、「時価会計を適用するのと緩和するのでは自己資本比率が大きく変わってくる。」
とのことです。

今後は「理論価格の算定法や監査法人の実務対応が焦点になる」(国内証券)でしょう。

この点について、ロイターが次のように書いています。
「2008年9月中間期以降の決算の会計処理で、変動利付国債のどの回号に理論値を採用するかは、各金融機関の判断にゆだねられるが、大和総研の吉井一洋制度調査部長は、理論値採用の判断を金融機関にゆだねるなら、変動利付国債の同じ回号でも違う価格で評価されることが起こりうると指摘。「同じ金融商品で金融機関によって評価額がばらつくなら時価会計の理念とかけ離れてしまう」と厳しく指摘している。」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-34460220081022
吉井さんが言うように、会計士の判断により評価額がぶれるということがあれば大問題です。ASBJは、理論値による評価を容認するのであれば、責任を持って、指針となる価格評価フォーミュラーを提示すべきでしょう。

ただ、私自身は満期のある債券の評価は、東京大学経済学部の醍醐教授が言う、「償却原価・時価比較高価法」(http://cfonews.exblog.jp/8772474/)により行うのが良いのでは、と思っています。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-24 08:54 | 会計
2008年 10月 22日

減損会計停止・株買い取り機構…

減損会計停止案が浮上 政府・与党、追加経済対策で
政府・与党が近くまとめる追加経済対策を巡り、自民党内で減損会計の停止や国による株式買い取り機関の設置が争点になっていることが21日、明らかになった。世界的な金融不安に対し、これまでの政策を大きく変更する内容。金融庁や党の閣僚経験者は、安易な会計基準の見直しや国の市場介入に強く反対しており、追加対策のとりまとめは難航しそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081022AT2C2101N21102008.html
【CFOならこう読む】
またぞろ国家を挙げて粉飾を行おうというのでしょうか?

米国のようにモノサシ自体の妥当性を検討しようという方向性なら理解できますが、
財務数値が悪化し事業に支障が生じるから、モノサシの目盛りを変えて財務数値の悪
化がないことにしようというのは、到底まともな議論とは思えません。

資本主義経済において財務数値が正しく企業実態を現すことがいかに重要か、全く理
解していない輩が自民党に存在するということが私には信じられません。

それにしても自民党は大きな政府を目指す政党なのか、小さな政府を目指す政党なの
か、選挙前にはっきりしてもらいたいものです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-22 09:03 | 会計
2008年 10月 17日

時価会計一部凍結?-満期保有目的の債券

日米欧、時価会計一部凍結へ 金融危機封じへ非常手段
日米欧が一斉に、金融機関や企業が保有する債券や証券化商品などの金融商品を時価で評価する時価会計の適用を一部凍結する方向で動き出した。日本は民間の企業会計基準委員会(ASBJ)が16日、時価評価の対象外になる範囲を拡大するなど会計基準を見直す検討を始めた。市場の混乱を受けて時価会計凍結を検討する米国や、見直し策を打ち出した欧州に追随する。世界的な金融危機を封じ込めるため緊急措置に踏み切る。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081017AT2C1601T16102008.html


【CFOならこう読む】
時価会計の凍結などとセンセーショナルな見出しが、今日の日経の一面を躍っていますが、その内容は、下図の通り、「時価評価」が必要な「売買目的」有価証券から「満期保有目的」の債券への保有区分の変更が認められるようになるようになることと、証券化商品の評価方法が緩和される、というものです。

(2008年10月17日日経新聞 7面 より)
e0120653_1754531.jpg特に後者については、FAS157と同様の基準を新たに日本でも設けようということなのだと思います(FAS157は、有価証券を性質に応じて、流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3に分類し、レベル3に分類されると内部データに基き公正価値を測定することを容認しています)。これをもって時価会計の凍結、ということには必ずしもなりません。

前者については若干説明が必要です。

金融商品会計に関する実務指針69項によると、満期保有目的の債券とは、「企業が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう」とされ、「保有期間が漠然と長期であると想定し保有期間をあらかじめ決めていない場合、又は市場金利や為替相場の変動等の不確定要因の発生いかんによっては売却が予想される場合には、満期まで所有する意思があるとは認められない」とされています。

そして「満期まで所有する意図は取得時点において判断すべきものであり、いったん、他の保有目的で取得した債券について、その後保有目的を変更して満期保有目的の債券に振り替えることは認められない。」としています。

つまり、証券化商品を売買目的有価証券から満期保有目的の債券に振り替えることは現状認められないのですが、これを容認することにより、市場価格による時価評価は免れるし、また、レベル3に区分することにより、強制評価減も免れ得る、ということで、”時価会計の凍結”を実効せしめようということなのだと思います。

この変更の是非については多くの議論があると思いますが、そもそも論として、「満期保有目的」の債券というカテゴリーを設けること自体が必要なのか、という問題があります。

この点、東京大学大学院経済学研究科 金融システム専攻の醍醐聰教授は「会計学講義〔第4版〕」(東京大学出版会)の中で次のように批判しています。
「市場金利の動向や資金需要の変動のいかんで、保有する債券を中途売却したり、保有目的を変更したりするのは機動的な投資行動の常である。翻って考えると、問われるべきは、債券の分類変更をした企業の投資判断の不合理性ではなく、企業の合理的な投資判断に対してまで会計が干渉し、ペナルティーを課さなければ効力を維持できないような会計基準を設けたことの不合理性である。」
それではどうするか? 醍醐教授は次のように言っています。
「機動的な投資判断が想定される満期のある債券については、償却原価と時価を比較して高い方を採用する「償却原価・時価比較高価法」が適合すると考えられる。」
償却原価は、信用リスクに応じた償還不能見積高を算定し、これを控除したものとすれば、実態に即した会計処理ができると私も思います。

以前からお話ししているように、「状況が悪いときに、それを測るモノサシを変えてしまおうという発想」は許されません(http://cfonews.exblog.jp/7724804/)。

しかしモノサシが実態を測定できないなら、そのモノサシは変えるべきです。実態を正しく表すモノサシを新たに策定する、そういう姿勢での検討をASBJには切にお願いしたいところです。

【リンク】
会計学講義 第4版
醍醐 聰

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by yasukiyoshi | 2008-10-17 11:04 | 会計
2008年 10月 06日

FAS157 Q&A

米国の金融安定化をきっかけに、時価会計の停止論議が熱を帯びている。金融危機を引き起こしたサブプライムローンなどを組み込んだ複雑な証券化商品の市場が崩壊し、時価会計を基に金融機関に多額の評価損を迫る懸念が浮上しているためだ。しかし、時価会計の全面停止は世界の市場を混乱させかねない劇薬だ。とりあえずは柔軟な運用を可能にするにとどめ、金融機関自身に早期の体質強化を迫る、当局のメッセージと読み解く向きが多い。
(日経ヴェリタス 2008年10月5日 19面)
【CFOならこう読む】
ここ数日、米当局が、あたかも時価会計の停止を決めたかのような報道もありますが、それは事実と異なります。
9月30日に、SEC(米証券取引委員会)とFASB(財務会計基準審議会)が、FAS157号に関し次のようなQ&Aを公表しています。

Q 市場からの時価の証拠が存在しない場合、将来キャッシュフローなどを利用して会社側の想定に基づいて計算してもよいか?
A 使ってもよい。適切なリスクプレミアムを加えたキャッシュフローを用いた算定は許される。公正価値の決定は判断を必要とする。さまざまな原因からの複数の情報が公正な価値のより良い証拠を提供する可能性がある。予想キャッシュフローはほかの関連情報と同様と考えることができる。

Q 市場の混乱による、正常でない取引の価格は公正価値を測定する際の参考となるか?
A 正常でない取引は公正価値測定を決める際には決定的ではない。ただ取引が正常でないかどうかには判断が求められる。

Q 活発でない市場における取引は時価算定に影響を与えるか?
A 影響を与える。活発な市場における取引価格は、公正な価値を最も代表しているし、参考にされるべきだ。活発でない市場における取引は公正な値を測定するときの1つの情報かもしれないが決定的でない。活発でない市場での価格と、類似資産の価格が一致していないのならば、調整が必要かもしれない。
(日経ヴェリタス 2008年10月5日 19面)
読んでおわかり頂けると思いますが、このQ&Aは、従来の基準の前提を大きく変えるものではありません。”時価会計が諸悪の根源”という意見に対し、157号の解釈の枠内でも大幅な損失計上が必要ない場合があることを再確認させる、というのがこのQ&Aの趣旨だと思われます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-06 09:31 | 会計
2008年 09月 30日

SPCを使ったオフバランス取引-ビックカメラのケース

SPCを使って、資産や負債をバランスシートから切り離すオフバランス取引に厳しい視線が注がれている。表面的には分離されていても、企業による実質保有が続いている可能性があるからだ。SPC取引の問題点を探る。
(日本経済新聞 2008年9月30日 16面 揺れるSPC取引 上)
【CFOならこう読む】
e0120653_2021920.jpg2002年8月、ビックカメラは、東京・池袋本店と本社ビルを2002年8月に特別目的会社である有限会社に290億円で売却し、この有限会社が不動産を担保に、小口の証券を発行、販売しました。いわゆる「不動産の証券化」です。

記事によると、同社元社員が経営に携わっていた「豊島企画」(同渋谷区)も約70億円出資していたということです。

特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)は、流動化の要件として、リスク負担の金額の割合が流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)の5%以内であることを求めています(第13項)。そしてこの計算には譲渡人の子会社又は関連会社が負担するリスクを含めなければならないことになっています(第16項)。

ビックカメラは14億5千万円の劣後出資を行っています。この金額は流動化した池袋本店と本社ビルの時価290億円のちょうど5%に当ります。豊島企画が子会社であるということになると流動化の要件を満たさなくなるのです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-30 09:19 | 資金調達
2008年 09月 18日

国際会計基準 導入本格検討を金融庁が表明

金融庁、国際会計基準の導入検討表明
金融庁は17日、企業会計の国際化に対応するため、「国際会計基準」を日本で導入する方向で本格的な検討に入ると正式表明した。10月にも長官の諮問機関である企業会計審議会で議論を始め、2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を作成する。国際基準は世界100カ国以上で採用され、米国も採用する方針に転換した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080917AT2C1700D17092008.html
【CFOならこう読む】
記事によると、
「日本企業が決算の開示方法を国際会計基準か日本基準か選べる「選択適用」を認めることで大筋一致した。」
とのことです。

一方、米国が目指しているような自国の基準をとりやめ、国際基準に一本化する、いわゆる”アダプション”については意見がまとまらなかった、ということで、報道されているように、”アダプション”で決まり、ということでは必ずしもないのかもしれません。

いずれにしても国際基準と日本基準の違いを埋める「共通化作業」は従来通り進められることが改めて確認されており、以前田中さんから頂いたコメント通りの方向に向かっています。
「一方で、IFRSは原則論しか規定されない会計基準ですので、その運用、あるいは具体的な会計処理の理論的根拠として、結局は監査法人は、かつての米国会計基準や日本基準における関連する指針を参照するようになるのだろうと思います。

そうなったときのために、日本基準のコンバージェンスをとっとと進めてもらって(今の時点で大きな部分はだいぶ収斂しているように思いますが)、米国基準を参考に運用するのか日本基準を参考に運用するのかなどという変な話にならないようにしてもらいたいものです。」
http://cfonews.exblog.jp/8322854/
【リンク】
平成20年9月16日「第1回『我が国企業会計のあり方に関する意見交換会』について」金融庁
http://www.fsa.go.jp/news/20/sonota/20080916-3.html


by yasukiyoshi | 2008-09-18 09:18 | 会計
2008年 09月 11日

NJK 減損銘柄別に判断

今期から基準緩和
NJKは2009年3月期から有価証券の減損基準を緩和する。前期まで時価が取得価格に比べ30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたが、30-50%の下落なら銘柄ごとに減損を判断する方式に変える。保有する仕組み債の価格変動が激しいため、有価証券の種類に応じた減損が必要と判断した。
(日本経済新聞 2008年9月11日 14面)
【CFOならこう読む】
NJKは第1四半期から記事のように会計処理基準の変更を行っております。記事では、期の途中で変更するかのように書かれていますが、そうではありません。

第1四半期の四半期報告書に、次のように会計処理基準の変更の開示がなされています。
「従来「その他有価証券」の減損にあたって、時価のあるものについては、時価が取得価額に対して30%以上下落しているすべての有価証券について減損処理を実施しておりましたが、銘柄によっては流動性が低く、時価の変動幅が短期的に大きいものが認められるようになり、減損の計上についてより慎重に判断する必要があると考えられることから、時価が30%以上50%未満下落した場合は、銘柄別にその流動性及び時価の推移を慎重に検討し回復可能性を勘案して減損処理を行う方法に変更いたしました。
なお、この変更による当第1四半期連結会期間における影響額はありません。」
金融商品会計に関する実務指針91項では、
「売買目的有価証券以外の有価証券について、時価が著しく下落したとき(時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合)は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減額処理しなければならない」

「上記以外の場合には、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断する」

「なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる」
としています。

従来NJKは、上記基準に比し保守的に、30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたのを、一時的な為替相場の変動により大きく時価が変動する仕組み債を保有している現状においては、30%-50%の下落の場合には回復可能性を判定した上で減損の要否を決める方法が妥当であると考え、会計処理基準の変更を行ったということです。

【リンク】
「有価証券報告書・四半期報告書」株式会社エヌジェーケー
http://www.njk.co.jp/irdata/securities/index.html


by yasukiyoshi | 2008-09-11 08:41 | 会計
2008年 08月 13日

会計基準の国際基準との共通化-連結先行で改正へ

会計基準の国際化 「連結先行」で改正へ
金融庁、日本経団連などは企業会計の国際化に迅速に対応するために、連結決算の会計基準を単独決算より先行して改正する方針を固めた。単独決算の改正は税制などとの調整が必要で、会計全体の改革が遅れる要因になっているため。世界各国で国際会計基準を採用する流れが加速しており、国際基準を受け入れる布石との見方もある。
(日本経済新聞 2008年8月13日 17面)
【CFOならこう読む】
今回の合意は、まずはコンバージェンスを連結先行で行い、将来的には、
①連結は日本基準と国際基準の選択適用、単体は日本基準
②連結は国際基準のみ、単体は日本基準
などの道を模索するというものです。

私はこのブログで連単同時の国際化を主張してきたので、今回の合意は残念に思いますが、決まってしまったものはどうにもなりません。

7月18日の記事(http://cfonews.exblog.jp/8322854/)に、田中恒行さんが次のコメントをくださいました。
「一方で、IFRSは原則論しか規定されない会計基準ですので、その運用、あるいは具体的な会計処理の理論的根拠として、結局は監査法人は、かつての米国会計基準や日本基準における関連する指針を参照するようになるのだろうと思います。

そうなったときのために、日本基準のコンバージェンスをとっとと進めてもらって(今の時点で大きな部分はだいぶ収斂しているように思いますが)、米国基準を参考に運用するのか日本基準を参考に運用するのかなどという変な話にならないようにしてもらいたいものです。」
確かに、将来的にアダプションで行く可能性を鑑みると、連結主体でコンバージェンスを速やかに進める意義はあるのかもしれませんね。

田中さんが紹介してくれた、経団連のアンケート調査結果によると、「原則的には連結と個別で同一の会計基準を用いるべきとしながらも、39社中23社が連結・個別で異なる会計基準の使用を認めるべき」と回答しています。

ただし、「多くの企業が個別財務諸表の開示を廃止し、連結財務諸表のみの開示へ一本化すべき(33社)」という結果はとても重要です。

”金商法上の開示は連結財務諸表のみとし、個別財務諸表の開示は廃止する”ことが会計基準の連単の乖離を容認する前提となる、と多くの会社が考えていると読み取れるからです。

【リンク】
2008年5月20日「今後のわが国会計基準のあり方に関する調査結果概要」(社)日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/031.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-13 09:13 | 会計
2008年 07月 26日

日本の株式市場は効率的か? その2-昭和シェル・東燃のケース

石油元売6月中間 会計処理方法で業績に明暗
石油元売り2社の2008年6月中間期の連結業績は、原油在庫の評価など会計処理方法の違いで明暗が分かれた。25日、昭和シェル石油は上方修正、東燃ゼネラル石油は下方修正をそれぞれで発表。ただ、原油高に伴う価格転嫁が十分に進まず、会計処理方法の影響を考慮した実質ベースの収益は両社とも厳しいのが実態だ。
昭和シェルの中間期の純利益は前年同期比86%増の390億円となり、従来予想を190億円上回った。同社は原油の在庫評価方法として、期初の在庫額と期中の仕入額を合計して平均する「総平均法」を採用。期中に原油価格が上昇すると、期初の割安な在庫による利益のかさ上げ効果(在庫評価益)が発生する。6月末のドバイ原油の実勢価格は昨年12月末に比べ1バレル当たり約40ドル上昇。在庫評価益が約400億円発生し、利益を大きく押し上げた。
一方、東燃ゼネラルの中間期の純利益は前年同期比65%減の59億となり、従来予想を101億円下回った。同社が在庫評価方法として採用する「後入先出法」では、直近に仕入れた在庫から先に出荷したとみなすため、売上原価が時価に近くなり、在庫評価益が発生しにくい。

(日本経済新聞 2008年7月26日 15面)
【CFOならこう読む】
会計上の在庫評価損益は、税金の影響を除くとキャッシュフローに影響しません。ということは、インフレ局面では会計上の利益が小さく出る後入先出法の方が平均法と比べ、課税所得が小さくなる分有利であると言えます。したがって市場が効率的であるなら、次のようなことが言えます。
「FIFO(先入先出法)によれば、先に在庫として積まれた商品の原価を費用控除する。LIFO(後入先出法)によれば、倉庫に最後に到着した商品の原価を費用控除する。インフレ率が高いときには最初に購入した商品のコストは、通常最後に購入した商品のコストよりも低い。したがって先入先出法によって計算された利益は、後入先出法によって計算された利益よりも大きくなるように見える。

さて、これが、プレゼンテーションの問題にすぎないのであれば、後入先出法から先入先出法に変更することは、何ら実害をもたらすものではないだろう。しかし、内国歳入庁、株主への報告に用いられるのと同じ方法を用いて企業の税金が計算されるべきだと主張している。したがって、後入先出法を用いることにより当面の税金支払いが軽減されている場合には、見かけ上の利益も低くなっていることになる。

仮に市場が効率的であるならば、投資家は見かけ上の利益の減少をもたらすものであっても、後入先出法への会計の変更を歓迎するだろう。BiddleとLindahlはこの問題を研究し、このとおりのことが実際に起きており、後入先出法への変更は通常以上の株価の上昇をもたらすと結論付けた。株主は、計数の背後を読み、節約された税金の額に焦点を当てているようであった。」「コーポレートファイナンス」(日経BP社)
つまり日本の株式市場が効率的で、かつ業績予想修正の影響がすでに株価に織り込まれていないのであれば、週明け東燃ゼネラルの株価は上がり、昭和シェルの株価は下がるはずです。

逆にそうならないとすれば、日本の株式市場は効率的でないということになります。

そして日本の株式市場は会計情報の持つ意味を正しく価格に織り込めない、つまりセミストロングフォームのレベルで日本の株式市場は効率的でないことを示す実例は枚挙にいとまがありません。

だから東燃ゼネラルと昭和シェルの株価が週明け、上とは逆の方向に動く可能性も十分にあるのです。

【過去記事】
2008年03月26日「日本の株式市場は効率的か?-出光興産のケース」
http://cfonews.exblog.jp/7602184/


by yasukiyoshi | 2008-07-26 09:30 | 会計
2008年 07月 18日

国際会計基準、連結決算のみに採用?

国際会計基準「採用に向け基準を」
日本公認会計士協会の増田宏一会長は17日、「今年の初秋にも米国が国際会計基準の受け入れを決める可能性がある」との見通しを示したうえで「日本も国際基準の採用に向け準備を進めるべきだ」との見解を表明した。会計士協会が同日、名古屋市内で開いた研究大会では国際会計基準を巡る議論が本格化した。
パネルディスカッションでは住友商事の島崎憲明副社長や日本公認会計士協会の山崎彰三副会長らが「国際基準を受け入れなければ世界から取り残される」との指摘。当面は連結決算のみに採用するのが現実的との認識を示した。

(日本経済新聞 2008年7月18日 14面)

【CFOならこう読む】
このニュースは、日本基準を維持しつつ重要な国際基準との差異は2011年6月末までに解消するという方向性(コンバージェンスといいます)から日本基準を捨て国際基準を全面採用という方向性(アダプションといいます)への路線の変更を示唆しています。

日本と米国はコンバージェンスを目指しているのですが、米国は今年の初秋にもアダプションを決める可能性があり、そうすると日本は孤立化してしまうので、アダプションへ路線変更すべき、とこの記事は言っているのです。

当面連結決算のみ国際基準を導入するのが現実的であるとの認識が示されたということですが、趣旨がよくわかりません。上場企業にとっては、個別が日本基準、連結のみ国際基準であることのメリットはあまりないように思います。

一方非上場企業(特に中小企業で監査を受けていない会社)の実務にはアダプションだろうがコンバージェンスだろうがほとんど影響がないと思われます。ということは何故連結決算のみのアダプションなのでしょうか。現実的とは何のことを言っているのでしょうか?

おそらく、単独決算には会社法や税法との調整が必要で、その調整には時間がかかるので、当面会社法や税法との調整をあまり要しない連結決算のみ当面国際基準を採用しよう、ということなのだと思います。
ここにはユーザーの視点が欠落しています。大事なことは、ユーザー、すなわち、企業及び投資家にとってどちらが有用なのか、ということです。そういった議論の結果、アダプションで行こうということであれば、会計サイドはリーダーシップを発揮し、まずは各方面と調整していく努力をすべきであると私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-18 08:40 | 会計