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2008年 05月 14日

ケンウッド、ビクター統合ーケンウッドが取得企業である理由は?

【CFOならこう読む】
昨日私はケンウッドが取得企業である理由を次のように説明しました。

「取得か持分の結合の識別について「企業結合に係る会計基準」は以下の要件の全てを満たしていない場合には、取得と判定する旨規定しています。

(1) 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること
(2) 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと(議決権比率が45%から55%の範囲内)
(3) 議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

本件の場合、(1)の要件は満足しています。(2)の要件については、ケンウッドがビクターの17%の持分を有していることを勘案すると、ケンウッド株主:ビクター株主=45:55となるので、これも満足していると思われます(もちろん1:2という統合比率はこれをクリアーするために恣意的に決められたという見方も出来なくはありませんが)。

ということは、(3)の要件を満足せず、つまりケンウッドがビクターを支配している一定の事実があるため取得と判定されたということです。これが具体的に何であるかはもう少し調べてみないとわかりません。後日またフォローしたいと思います。」

これについてM&A会計士様から次のコメントを頂戴しました。
「時価総額で考えるとビクター側が取得会社になりそうですが、やっぱりこれは、当初の第三者割当増資+株式移転という一連の流れから、ケンウッドによる取得とされたんでしょうかね?企業結合会計基準の注解2とか、適用指針の11、342あたりから、対価要件が満たせていないと判断されたのではないでしょうか?」
この点について今日は少しだけ掘り下げて考えてみたいと思います。

企業結合会計基準の注解2は対価が議決権のある株式であると認められるためには、同時に次の要件のすべてが充たされなければならないとしています。

1 企業結合は単一の取引で行われるか、又は、原則として、1事業年度内に取引が完了する
2 交付株式の議決権の行使が制限されない
3 企業結合日において対価が確定している
4 交付株式の償還又は再取得の取り決めがない
5 株式の交換を事実上無効にするような結合当時企業の株主の利益となる財務契約がない
6 企業結合の合意成立日前1年以内に当該結合目的で自己株式を取得していない

このうち本件で検討を要するのは1と6です。まず6ですが、適用指針第10号11項(6)が「一方の結合当事企業が他の結合当時企業の株式を取得する行為も同様に取り扱う」としていることから、昨年8月にビクターがケンウッドに対し行った第三者割当増資がこれに該当するか否かの検討が必要です。

6の趣旨は、「持分法の濫用という批判に耐えうる基準とするため」(Q&A M&A会計の実務ガイド あずさ監査法人編 中央経済社)というところにあるという見解もあります。つまり露骨に持分の結合の要件を満足することを目的として自己株取得は問題となることがある、という趣旨です。

しかしこれが本当なら対価要件ではなく、議決権要件の注釈でなければならないでしょう。そもそも本件の場合、議決権要件の潜脱であるということになれば取得企業はビクターということになってしまいます。

私は6の規定は、自己株の取得により一部の株主をスクィーズアウトする場合を想定したものと思っています。この場合実質的に対価の一部は現金であると見なすことができるからです。ただしそうであるとしても本件は第三者割当増資なので特に問題とならないように思います。

次に1です。1は、「企業結合取引を長期間にわたって複数回に分けて行うことにより、本来取得である企業結合を、持分の結合であるかのような状況を作り上げていくような潜脱行為を防ぐことが目的である」(同上)と一般に解されているようです。

しかしこの説明では、なぜ単一の取引でないといけないのか、そしてそれがどうして対価要件として規定されているのかよくわかりません。ここは複数回に分けて取引が行われ、かつその対価が現金であるような場合、取得と判定されることになると解するべきでしょう。そうであるなら、M&A会計士様の、「第三者割当増資+株式移転という一連の流れから、ケンウッドによる取得とされた」という指摘は当たっているように思えます。

もっとも、この規定を逆手に取ってプランニングに用いる余地もあるので、事前の第三者割当増資=取得(割当先が取得者)と考えるのは行きすぎのように思います。

本件の場合、ケンウッドが取得者であるという結論自体に問題はないと思いますが、その論理構成はどうもすっきりしませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-14 10:08 | M&A
2008年 05月 13日

ケンウッド、ビクター統合ー統合比率は1:2

ビクターとケンウッド、10月統合発表・営業利益、3年後4倍に
日本ビクターとケンウッドは12日、10月1日付で共同持ち株会社を設立し経営統合すると正式に発表した。両社が強みを持つ技術を融合し、カーエレクトロニクスや無線・防犯機器などを軸に収益を拡大。3年後の2011年3月期に連結営業利益を08年3月期のほぼ4倍の390億円に引き上げる。ただ統合後も規模で大手に劣り、中核事業の育成が急務。両社は提携の拡大にも意欲的で、今回の統合がさらなる電機再編の呼び水になる可能性もある。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080513AT1D120AD12052008.html

【CFOならこう読む】
昨日統合比率は1:2(ケンウッド株式1株に対し持株会社株式1株、ビクター株式1株に対し持株会社株式2株を割り当て)と発表されました。会計上取得か持分の結合か気になるところですが、プレスリリースには次の記載があり、取得として会計処理されるようです。
「本株式移転は企業結合会計基準における「取得」に該当し、パーチェス法を適用することになるため、共同持株会社の連結貸借対照表において「負ののれん」の計上が見込まれ、その償却にともなって営業外収益が増加する見込みです。これにより、当期純利益やROEなどが増加する見込みです。」
負ののれんが発生するということは、PBRが1倍を下回るビクターが被取得企業であることを意味します。時価総額ではケンウッドを大きく上回るビクターが被取得企業となるわけです。

取得か持分の結合の識別について「企業結合に係る会計基準」は以下の要件の全てを満たしていない場合には、取得と判定する旨規定しています。

(1) 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること
(2) 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと(議決権比率が45%から55%の範囲内)
(3) 議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

本件の場合、(1)の要件は満足しています。(2)の要件については、ケンウッドがビクターの17%の持分を有していることを勘案すると、ケンウッド株主:ビクター株主=45:55となるので、これも満足していると思われます(もちろん1:2という統合比率はこれをクリアーするために恣意的に決められたという見方も出来なくはありませんが)。

ということは、(3)の要件を満足せず、つまりケンウッドがビクターを支配している一定の事実があるため取得と判定されたということです。これが具体的に何であるかはもう少し調べてみないとわかりません。後日またフォローしたいと思います。

【リンク】
平成20年5月12日「日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドとの共同持株会社設立(株式移転)による経営統合について」日本ビクター株式会社
http://www.victor.co.jp/company/ir/pdf/info-080512a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-13 09:01 | M&A
2008年 05月 10日

仕掛中の研究開発費一括費用処理 武田薬品減益に

大型買収で償却費増、2期連続の営業減益=武田薬品の09年3月期連結業績
武田薬品工業=2009年3月期連結業績予想は、売上高が14.2%増の1兆5700億円、営業利益が43.3%減の2400億円、経常利益が51.5%減の2600億円、最終利益が55.0%減の1600億円。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008050900631&rel=j&g=eco

【CFOならこう読む】
武田薬品の平成20年3月期及び平成21年3月期(予想)の連結業績は次の通りです。

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平成21年連結業績予想が下方修正された主な要因は、買収したミレニアムやTAPの開発中の新薬候補の価値について、「仕掛中の研究開発費」として一括費用計上されるためです。

米国及びIFRSでは、仕掛中の研究開発費が無形資産として計上され、減損テストの対象となります。研究開発プロジェクト完了時に取得企業は個別に耐用年数を決定し償却を開始します。研究開発費が資産計上されなければ、日本基準ではのれんに含めて最長20年で償却されるのですが、米国で資産計上されているなら、「実務対応報告18号 連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」により、研究開発費は日本基準への修正、すなわち一括費用処理が求められます。

しかし少なくともM&Aの場面では、買収価格の大きな部分を開発中の新薬候補の価値が占めるにも関らず、これに資産性を認めず一括費用処理を強制する日本基準は妥当とは言えません。2011年までに予定される日本基準のIFRSへの統一の中で改正されるものと思いますが、それだけ武田薬品の減益を額面通り受け取るべきではないでしょう。

余談ですが、この影響により従来30%~40%であった武田薬品の配当性向が平成21年3月期には88.5%に跳ね上がるという予想が発表されています。
武田薬品は配当政策を次のように公表しています。
「配当につきましては、長期的な視点に立ち、連結業績に応じた安定的な利益の配分を基本方針とするとともに、「06-10中期計画」最終年度の連結配当性向を「45%程度」とすることを目標に、段階的に引き上げてまいります。」
この方針をどのように変更するのか注目されます。

【リンク】
2008年05月09日「当社子会社による米国バイオ医薬品会社・Millennium Pharmaceuticals, Inc.株式公開買付けの結果について」武田薬品工業株式会社
http://www.takeda.co.jp/press/article_27166.html


by yasukiyoshi | 2008-05-10 15:33 | 会計
2008年 05月 08日

日本企業の利益構造に変化ー財務省「法人企業統計季報」

企業-利益構造 近年は経常利益優位に
近年、日本企業の利益構造に特徴的な変化が起きている。統計開始の1956年以降、常に営業利益が経常利益を上回っていたが、2005年から関係が逆転した。背景には、金利の低下や債務削減による支払利息減少がある。だが、それ以上に、受取利息などに反映される海外子会社からの配当や特許使用料の増加が影響している。このことは、日本企業の海外事業の収益性が向上し、海外現地法人の稼いだ利益の国内への還流が拡大していることを示す。国内の人口減少や高齢化を考えると、日本企業がグローバル化の対応をさらに進めることはさけられず、今後も経常利益が営業利益を上回る関係が続く可能性が高い。
(日本経済新聞 2008年5月8日 25面 統計で読む日本経済)
【CFOならこう読む)】
営業利益と経常利益を区分表示することから得られる情報のうち最も重要なことは企業の借入余力(財務上の安全性)が計れることにあります。経常利益が改善している理由の一つは、所謂バランスシート調整により企業の借入金の削減が進んだことによるものと思われます。

営業外損益が資金調達費用又は余剰資金の運用収益のみで構成されるなら、こういった傾向はより明確に把握できるのですが、記事にもあるように海外子会社からの配当や特許使用料も営業外損益に計上されるので、経常利益の持つ情報の価値は減殺されてしまいます。本来日本法人の獲得利益は海外法人の損益も含めた連結ベースで捉えなければその実態は見えてきません。

法人企業調査の目的を財務省は次のように説明しています。
「法人企業統計調査は、指定統計第110号として「法人企業統計調査規則」(昭和45年大蔵省令第48号)に基づいて行うもので、その目的は、我が国における法人の企業活動の実態を明らかにし、あわせて法人を対象とする各種統計調査のための基礎となる法人名簿を整備することにある。」
実態把握をその目的としている以上、連結ベースの数値も調査対象に加えることを検討すべきであると思います。

【リンク】
「法人企業統計調査 > 調査の概要」財政総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/ssc/gaiyou.htm


by yasukiyoshi | 2008-05-08 08:38 | 会計
2008年 04月 18日

FAS157の適用について、SECが米国の全上場企業のCFOに送付した手紙

米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)に米証券取引委員会(SEC)から手紙が届いた。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になるなか、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。
手紙が取り上げているのは米財務会計基準審議会(FASB)が2007年11月に導入した新会計基準「FAS157」。企業がこれに基づくSEC提出書類(フォーム10-K)を作る際の考え方を示している。
FAS157は有価証券を性質に応じて三つに分類。流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3だ。
手紙は広範な有価証券をレベル3に分類できるとしている。本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。そのうえでレベル3について、どういう方法で評価したかのモデルを開示するように求めている。
例えばサブプライムローンを組み込んだ証券化商品などレベル2の参照価格はトリプルA格でもとの価格の50%程度。それをレベル3と見なし、開示モデルによる評価を公正価格(フェアバリュー)として構わないというわけだ。開示モデルさえしっかりしていれば70%と評価することも可能になる。
これによって金融機関のサブプライム関連損失の抑制効果が見込める。レベル2には債務担保証券(CDO)やLBO(借入で資金量を増やした買収)融資などかなりの資産が入る。
一部の会計士はレベル2を市場の参考価格を使って厳格評価する姿勢だった。その場合、債務超過に陥る金融機関が出て、連鎖破綻がおきかねなかった。SECは会計士へのけん制も狙ったもようだ。
市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。

(2008年4月17日 日本経済新聞夕刊9面 十字路)
【CFOならこう読む】
手紙(リンク↓)はレベル3インプットを利用して公正価値を評価した場合の開示の
充実を要請する趣旨で書かれているのですが、中に次のような記述があります。
Under SFAS 157, it is appropriate for you to consider actual market prices,or observable inputs, even when the market is less liquid than historical market volumes, unless those prices are the result of a forced liquidation or distress sale. Only when actual market prices, or relevant observable inputs, are not available is it appropriate for you to use unobservable inputs which reflect your assumptions of what market participants would use in pricing the asset or liability.
市場がゆがんでいる場合にはレベル3インプットに分類できる場合がある、ということが書かれているわけです。

3月28日のNew York Timesは、これに対し” If Market Prices Are Too Low, Ignore Them”と強烈な皮肉を込めた記事を掲載しています。FAS157は会計上公正価値をいかに測定し表示すべきかについて規定した会計基準です。そこでのポイントは、公正価値を、時価がある場合にはそれに基づき測定し、ない場合には内部データ(レベル3インプット)に基づき測定することを求めているところにあります。

サブプライムローン関連の証券化商品がどのように評価されるかについて、新日本監査法人の情報ポータルサイトに次のような記載があります。
「一口にサブプライムローン関連の証券化商品といっても、いろいろなものがあり、格付けがあるものと、ないものによっても状況が違います。格付けのある債券については、それと同一格付債券の気配値や、売買実績など、市場で根拠となるもの(レベル2インプット)が取れれば、それを使って評価することになります。格付け機関はこの問題の初期段階では格下げの必要はないといっていましたが、その後、全面的に
格下げを行った結果、債券の保有者は大きな評価損を計上することになりました。投資家は、債券が売られ気配値が下がることと、格下げの両方で評価損の拡大に見舞われました。こうした市場価格を推計するデータも市場からまったく得られなくなった場合、レベル3インプットによって、評価することになります。」

http://www.a2msn.jp/portal/column/single/subprime/story/02.html
このコラムはSECからの手紙以前に書かれています。SECからの手紙は、このコラムでレベル2インプットを取れるものと位置付けられているものを、市場価格が歪んでいると認められる場合にはレベル3インプットを用いて公正価値の評価を行うことを認めると言っているわけです。これは4月12日に当ブログで私が指摘した(http://cfonews.exblog.jp/7724804/)ように、”状況が悪いときには、それを測るモノサ
シを変えてやり過ごそう”ということに他なりません。

言うまでもなく、今は、実態をルールに従い正しく把握した上で、それに対し適切に対処していくことが求められている時です。場当たり的にモノサシを変えてやりすごそうという姿勢は全く持って間違っていると私は思います。
一方私自身は、全面時価会計が会計の正しい方向性であるとは思っていないので、これを機会に会計基準を見直すための議論はあってしかるべきであると考えています。

それにしても十字路の「市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。」とは一体何を言いたいのでしょうか? 少なくとも、私は市場原理主義者かもしれませんが(笑)、時価会計の信奉者ではありません。

情緒的なだけで中身がない議論を公の場ですることは厳に戒めてもらいたいものです。

【リンク】
SECからの手紙
http://www.sec.gov/divisions/corpfin/guidance/fairvalueltr0308.htm

New York Times 3月28日記事
http://norris.blogs.nytimes.com/2008/03/28/if-market-prices-are-too-low-ignore-them/


by yasukiyoshi | 2008-04-18 10:41 | 会計
2008年 04月 12日

金融商品の時価評価、G7で議題に・FRB議長「市場、不安定に」

【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は10日、バージニア州の講演後の質疑応答で「流動性の低い市場では時価評価の会計によって不安定になることがある」と述べ、証券化商品などの時価評価がもたらす損失の拡大で市場が揺さぶられているとの認識を示した。時価評価の問題は 11日にワシントンで開く7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で取り上げられる見通しとなった。G7会議の関係者が10日、明らかにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080411NTE2INK0311042008.html

【CFOならこう読む】

状況が悪いときに、それを測るモノサシを変えてしまおうという発想は日本の専売特許だと思っていましたがそうでもないのですね。
日本ではこんなことがあったのをご記憶の方も多いと思います。
「1998年3月期より銀行が保有する有価証券の評価方法について、それまで用いられていた低価法に加えて原価法による評価も認められることとなった。これは1997年から1998年の株価の大幅な下落に伴って、銀行が保有する株式の時価が簿価を下回る事態が続出し、これまでのように低価法を採用すれば評価損の計上によって収益の大幅な減少(すなわち自己資本の大幅な減少)が見込まれたことが背景にある。1998年3月期決算では都銀8行のうち東京三菱銀行を除く7行が株式について原価法に変更し、合計で約2兆円の評価損の計上を免れることとなった。」(郵政研究所月報2000.10)
このとき、「日本は国家ぐるみで粉飾をする国だ」と世界各国から袋叩きにあいました。今度のG7では日本が「時価会計見直し」を批判する番です。断固たる態度で反対意見を表明することを望みます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-12 10:38 | 会計
2008年 04月 09日

SPC連結ルール厳格化へ

特別目的会社、連結ルール厳格化・会計基準委、国際団体と合意

日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会は8日、金融機関や企業が設立、投資している特別目的会社について、連結決算の対象範囲を厳格化することで国際団体と基本合意した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080409AT2C0801F08042008.html


【CFOならこう読む】

上記記事によると、
「従来の国際会計基準や日本基準では、実質的な支配権を持っているかどうかを連結の判断基準としていた。新ルールでは、どの企業が実質的な支配権を握っているか判断が難しい場合は、特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業に連結を義務付ける方向で検討している。」
とのことです。

ASBJのウェブサイトに開示がないので、詳細は不明ですが、方向性としては正しいように思います。もちろん” 特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業”以外の企業には持分法を義務付けるのでしょうね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-09 08:32 | 会計
2008年 03月 29日

リストラ費用の持つ意味

上場企業の特損、4-12月期21%増 外需変調でリストラ加速 実効性、市場の目厳しく
リストラと巨額の特別損失-。いつか来た道を企業がたどり始めた。2007年4-12月期に上場企業(新興市場、金融除く3月期決算)が計上した特損は2兆4百億円。前年同期に比べ21%増え、今年に入っても基調は変わらない。通期でも前期の3兆7200億円を上回る可能性が強まっている。
(中略)
株式市場は相次ぐリストラを厳しく「監視」している。追い込まれた末の苦し紛れの一手なのか、将来の展望を開くための「選択と集中」なのかー。
新世代DVD事業の終息を決めた東芝。撤退に伴う一時的な損失として450億円を計上する。営業損益段階で計上する650億円の赤字と合わせ、新世代DVD事業の損失額は合計1100億円にのぼる。しかし、撤退報道を受けた2月18日は株価が急騰した。市場は「選択と集中」が進むとして、大規模なリストラを歓迎した。
「過剰な設備や人材を調整するだけのリストラと事業効率を高める前向きなリストラは性格が違う」と野村證券の藤田貴一ストラテジストは話す。業界内で限られたパイを争えば一握りの企業が勝者となるが、ほかは敗退せざるを得ない。展望の開けない事業に早々に見切りをつけることを、投資家は悪材料とは受け取らない。

(2008年3月29日 日本経済新聞 15面)
【CFOならこう読む】
CFOにとって大きなリストラ費用を計上するのはとても勇気がいることです。株価が暴落するのではないか…、そんな不安が頭をよぎります。

しかし投資家が見ているのは単なる会計利益ではなく経営そのものなのです。そして発生ベースの会計情報は、キャッシュフローを上回る多くの情報を提供してくれるのです。私の愛読書であるクリステンセンとデムスキの「会計情報の理論」(佐藤紘光他訳 中央経済社)に次のような記述があります。
「われわれは早くから、発生項目を会計生産物の中心的な存在として認識してきた。キャッシュベースの認識が用いられるとすると、会計システムはキャッシュフローのみを報告し、それ以外の何かを伝える能力をもたなくなる。発生主義会計が厳密に導入される場合、キャッシュフローが伝達するものを上回る情報が発生項目には含まれることになる。」
われわれは会計情報の有する豊かな報告構造をもっと信用して良いのだと私は思います。

なお上の”発生主義会計”という言葉は、”時価会計”や”公正価値会計”のアンチテーゼとして用いられています。この点はまた機会を設けて取り上げたいと思います。

【リンク】
2008年2月19日「HD DVD事業の終息について」
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2008_02/pr_j1903.htm

(株)東芝 【東証1部:6502】
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=6502.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

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by yasukiyoshi | 2008-03-29 09:45 | 会計
2008年 03月 26日

日本の株式市場は効率的か?-出光興産のケース

出光興産株、8日続落 石油製品、営業赤字に
出光興産の株価が急落している。25日の終値は前日比2%安の7420円で、8営業日連続で下落した。原油高騰による収益圧迫が懸念された。原油在庫の資産計上の方法の違いも響き、堅調な株価の同業他社とは対照的な値動きとなった。
出光興産は2008年3月期の連結経常利益を前期比50%減の540億円と見込む。原油高騰の中、競争激化で石油製品への価格転嫁が遅れており、石油製品部門は110億円の営業赤字に転落する見通しだ。
一方、同業他社の25日終値はコスモ石油が2%高、新日鉱ホールディングスが3%
高、新日本石油が前日と同じ。明暗が分かれた理由は「在庫の資産計上の方法の違いが響いた」(みずほ証券の塩田英俊シニアアナリスト)との見方が強い。
新日本石油など3社は総平均法を採用。原油価格が上昇すると、期初の割安な在庫も原価に含めるため会計上の原価が下がり、利益がかさ上げ(在庫評価益)が生じる。一方、出光興産が採用する後入先出法は在庫評価益が発生しない。
石油元売大手4社の今期業績は、在庫評価の影響を除くとそろって実質経常減益の見通し。原油高騰で、各社とも収益実態は厳しさを増している。

(2008年3月26日 日本経済新聞 17面)
【CFOならこう読む】
ファイナンスという学問では市場の効率性を3つのレベルで定義しています。

第1のレベルは現在の証券価格が過去の価格に含まれている情報を反映しているというもので、ウィークフォームでの効率性と言います。
第2のレベルの効率性は、現在の証券価格が過去の価格だけでなはなく、すべての公開情報を反映しているとするもので、これはセミストロングフォームの効率性と言います。
そしてすべての情報が証券価格に反映されているとするレベルをストロングフォームでの効率性と言います。

市場がセミストロングフォームのレベルで効率的であるなら、会計方針の選択が株価に影響を与えることはありません。この点、ブリーリーとマイヤーズはMBAのためのテキスト「コーポレートファイナンス」(日経BP社)の中で次のように説明しています。
「FIFO(先入先出法)によれば、先に在庫として積まれた商品の原価を費用控除する。LIFO(後入先出法)によれば、倉庫に最後に到着した商品の原価を費用控除する。インフレ率が高いときには最初に購入した商品のコストは、通常最後に購入した商品のコストよりも低い。したがって先入先出法によって計算された利益は、後入先出法によって計算された利益よりも大きくなるように見える。

さて、これが、プレゼンテーションの問題にすぎないのであれば、後入先出法から先入先出法に変更することは、何ら実害をもたらすものではないだろう。しかし、内国歳入庁、株主への報告に用いられるのと同じ方法を用いて企業の税金が計算されるべきだと主張している。したがって、後入先出法を用いることにより当面の税金支払いが軽減されている場合には、見かけ上の利益も低くなっていることになる。

 仮に市場が効率的であるならば、投資家は見かけ上の利益の減少をもたらすものであっても、後入先出法への会計の変更を歓迎するだろう。BiddleとLindahlはこの問題を研究し、このとおりのことが実際に起きており、後入先出法への変更は通常以上の株価の上昇をもたらすと結論付けた。株主は、計数の背後を読み、節約された税金の額に焦点を当てているようであった。」

つまり日本の株式市場がセミストロングフォームで効率的であるなら、出光興産の株価は上がり、コスモ石油の株価は下がらないといけないのです。しかしそうはならず、単純に利益の増減によって株価が上下するということなら、少なくともセミストロングフォームのレベルで日本の株式市場は効率的でないということになります。

このことは、日本企業の株価が全く実態を表していない可能性があることを意味しています。これは価値創造の担い手であるCFOにとっては由々しき問題です。しかしただ嘆いているだけでは何も変わりません。市場に理解してもらえるようなわかり易い言葉で、会計情報の持つ意味を伝えていく努力が求められるのだと思います。

【リンク】
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=965160

http://www.cosmo-oil.co.jp/ir/financial/valuable/2007/pdf/val2007_05-05.pdf


by yasukiyoshi | 2008-03-26 09:32 | 会計
2008年 03月 22日

子会社株式、持分法適用会社株式の減損処理に伴うのれんの償却-三井不動産のケース

三井不の今期 帝国ホテル株下落で特損130億円 取得価格の半分以下 のれん代償却 必要に
三井不動産は21日、33%出資する持分法適用会社の帝国ホテルの株価が大きく下落したため、2008年3月期の連結決算で130億円の特別損失を計上する予定だと発表した。20年償却の予定だった帝国ホテルののれん代130億円の一括償却が必要になった。ただ本業の収益などで吸収し、連結業績予想は修正しなかった。
 三井不動産は昨年10月、1株8750円で帝国ホテル株を33%取得した。帝国ホテル株の21日終値では3970円で、評価損の計上が必要な、取得価格の50%以下に下落している。
単独決算で取得価格と時価との差額として関係会社株式評価損440億円と特別損失に計上。これに伴い会計ルール上、連結決算で取得価格と時価純資産の差額であるのれん代130億円についても一括償却しなければならなくなった。

(2008年3月22日 日本経済新聞 15面)
【CFOならこう読む】
金融商品会計に関する実務指針91項は、市場価格のある有価証券の減損処理について次のように規定しています。

「売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む)のうち、市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(減損処理)しなければならない。」
 「時価のある有価証券の価額が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化するできるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得価額に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。」
三井不動産の単体の財務諸表上、帝国ホテル株式を上記規定に基づき減損処理したものと思われます。

さらに、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針32項(及び持分法会計に関する実務指針9項)はのれんの会計処理について次のように規定しています。
「親会社の個別財務諸表上、子会社株式(関連会社株式)の簿価に減損処理が行われたことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額と連結調整勘定未償却残高との合計額を下回った場合、その差額のうち、連結調整勘定未償却残高に達するまでの金額について償却しなければならない」(一部筆者加筆・修正)
この規定に基づき三井不動産は帝国ホテルののれん代130億円を一括償却することになったものと思います。
CFOとしては、子会社株式及び関連会社株式の減損処理を行うと同時に連結財務諸表上のれんの償却をせざるを得ない場合が少なからずあることに留意が必要です。

【リンク】
平成20年3月21日「特別損失の計上に関するお知らせ」三井不動産株式会社
http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/news/2008/pdf/news_080321.pdf


by yasukiyoshi | 2008-03-22 09:30 | 会計