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2008年 03月 08日

退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理方法

「株価が少しでも上昇してくれれば…」住生活グループの伊奈啓一郎取締役は3月末を控えたこの時期、日経平均株価の動きにやきもきする日々を過ごしている。株式相場の低迷によりグループの年金基金の運用利回りが悪化、2008年3月期に多額の年金費用の計上を迫られる可能性が高まっている。
昨年4月から今年1月までの運用成績はマイナス7%前後。今年度は最大マイナス10%の悪化を見込む。同社は「数理計算上の差異」と呼ばれる年金運用の利差損益を発生年度に一括償却している。マイナス10%の場合、この「差異」は約80億円発生し、今期の予想連結営業利益(500億円)を大きく押し下げる。
大和ハウス工業、住友林業も「差異」の発生年度に一括償却。東京ガス、三菱レイヨン、日清食品は翌年度に一括償却している。運用収益が期待収益を上回った場合は増益要因となるが、現在のような相場環境では強烈な逆風だ。「投資家から本業が原因だと誤解されては困るのだが」と伊奈取締役は心配する。

(日本経済新聞2008年3月8日 17面 揺れる)


【CFOならこう読む】

「数理計算上の差異」の費用処理方法は次の組み合わせがあります。

●処理開始時期
a 発生年度から処理
b 発生年度の翌期から処理

●処理方法
A 一括処理方法
B 定額法
C 定率法

つまりa-A、a-B、a-C、b-A、b-B、b-Cの6通りあるのです。

年金資産の数理計算上の差異はいわゆる含み損なので処理を先送りせず、一括処理することが望ましいと考える経営者も少なからずいます。2005年3月期の調査では8%~10%の企業一括処理を選択しているとの報告があります(退職給付会計の実務 泉本小夜子 日経文庫)。

 今年度は多くの年金資産が大きなマイナスの運用成績を計上することが予想され、「数理計算上の差異」を発生年度に一括処理する方法を採用している会社は気が気でないことと思います。こんなときには「会計方針の変更」という言葉がCFOの頭をよぎるものです。「一括法から定額法又は定率法への変更、それが難しければせめて発生年度の翌期からの処理に変更できないだろうか」、そんな考えが頭をもたげるかもしれません。事例としてはないこともないようです。しかし、通常、合理的な変更理由を見出し難く、監査法人等の理解を得るのは不可能であると思われます。会計方針というのは当初の選択が本当に重要なのです。

【リンク】
退職給付会計の知識 (日経文庫)
泉本 小夜子

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by yasukiyoshi | 2008-03-08 10:24 | 会計
2008年 03月 04日

武富士の実質的ディフィーザンス

武富士、仕組み債取引損失計上を発表・最大300億円
武富士は3日、欧米企業の信用リスクを扱う金融派生商品関連の金融取引で、最大300億円の損失を計上すると正式に発表した。メリルリンチ日本証券が組成した仕組み債による取引で、サブプライムローンに絡む信用収縮が響いて取引の清算に追い込まれる。2008年3月期の予想連結純利益(433億円)は下方修正する可能性があるという。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D03006%2003032008&g=S1&d=20080303

【CFOならこう読む】

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社債の実質期限前償還(実質的ディフィーザンス)は負債をオフバランス化することにより、バランスシートをスリム化することを目的に行われます。具体的には、企業が社債の元利金を信託銀行に払い込み、信託銀行は国債など安全資産でこの資金を運用し、社債投資家への元利金払いに充当される仕組みになっています。

オフバランスの為の要件を、金融商品会計に関する実務指針46項は、「取消不能で、かつ社債の元利金の支払に充てることを目的とした他益信託等を設定し、当該元利金が保全される高い信用格付けの金融資産(例えば、償還日がおおむね同一の国債又は優良格付けの公社債)を拠出することである」としています。上記記事は、メリルリンチが組成した仕組み債がこの要件を満足しているかどうかについて疑問を呈しています。

金融商品会計に関するQ&Aは、「わが国において、元利金が保全される高い信用格付けの金融資産とは、国債や政府機関債のほかに、例えば、拠出時に複数の格付け機関よりダブルA格相当以上を得ている社債が含まれると考えられます」としており、メリルリンチの仕組み債はムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズからトリプルAの格付けを取得していることから、この要件は満足していると一応は言えます。

しかし大きな損失が現実に発生しましたのです。武富士とメリルリンチはお互いに責任をなすりつけているようですが、そもそも4%の利率の社債を無リスクでオフバランスできると考えること自体常識から外れています。そういう意味では、武富士、メリルリンチのみならずオフバランスを容認した監査法人にも責任の一端はあると私は思います。

【リンク】
2007.5.24「実質的ディフィーザンスの実施について」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/070524_3.html

2008.3.3「実質的ディフィーザンス解消のお知らせ」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/080303.html


by yasukiyoshi | 2008-03-04 09:58 | 資金調達
2008年 01月 31日

連結:国際会計基準、単体:日本国内基準?

会計基準の世界的統一が加速するなか、日本の孤立感が深まっている。国際会計基準を採用する国は百カ国を超え、2011年には資本市場の「共通語」となることがほぼ確実。欧米間で基準作りの主導権争いが激しさを増す一方で、出遅れた日本は会計分野で発言力を失いかねない。決算書の透明性向上を目指した「会計ビッグバン」を経て、日本は再び大きな試練を迎えている。
(2008年1月31日日経金融新聞7面)

【CFOならこう読む】
企業会計基準委員会(ASBJ)は、昨年8月、国際会計基準とのその時点での差異を2011年6月末までに解消すると発表しました。しかしこれは国際会計基準を全面採用するということではなく、あくまで自国の会計基準を存続させた上で、昨年時点の国際基準との差異を解消するということなので、国際会計基準審議会(IASB)が開発するルールは、2011年時点でも解消されません。

つまり今のままではいつまでたっても国際会計基準と完全に統一されることはないのです。何故国際会計基準を全面採用することができないのでしょうか? 記事では国内法制や税制との整合性が障害となっていると指摘しています。しかしそれは日本固有の問題ではないはずです。こういった障害を解決し2011年にはカナダ、韓国、インドなども一斉に国際基準に乗り換えます。

日本は縦割り行政であり調整不可能であると、自国の会計基準にいつまでも拘泥していると、世界の中で完全に孤立することになりかねません。会計士協会会長の増田氏は解決策として「連結決算だけに国際基準を適用してはどうか」と言っているそうです。しかしそれが企業にどれだけ余計な負担を強いることになるかわかっているのでしょうか? それともその分会計士の仕事が増えて望ましいとでも思っているのでしょうか? 

EUが上場企業に対し連結ベースの決算書に国際基準を適用し、各国の法制や税制が絡む単独決算は自国基準を使う「連単分離方式」を採用していることを理由に、増田氏の言うような方向性もあり得るとの意見もあるようですが、言語も文化も異なるEU内の統一と、日本国内の権益の調整を同じ次元で語る神経が私には全く理解できません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-01-31 08:53 | 会計
2008年 01月 12日

M&A会計欧米統一基準の概要ーその2

M&A会計、欧米が統一・来年7月、子会社株売却で新基準
【ロンドン=田村篤士】欧米の会計基準を作る専門家組織は10日、企業のM&A(合併・買収)を巡る欧米の会計基準を2009年7月に統一することを決めた。企業買収の実態を比較するモノサシが国際的に統一され、国境を超えた買収やグループ再編が加速する。日本の会計基準も修正を迫られるのは確実。連結決算で子会社株の一部売却を利益として認めない方針を打ち出しており、子会社上場など日本企業の財務戦略に影響しそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M10015%2010012008&g=MH&d=2
0080110

【CFOならこう読む】
昨日に続きM&A会計統一基準についてお話しします(今日説明する項目は2005年6月の公開草案通り決定しています。公開草案については「企業結合会計の知識」(関根愛子著 日本経済新聞社)を参考にしています。

①デューデリ等のM&A関連コストの取扱い
取得に要した支出額は米国もIFRSも取得原価に含めていたのが、今回の統一基準ではすべて費用として処理することになりました。

②仕掛研究開発費の資産計上
研究開発費は米国も日本同様発生時に費用処理されます。しかし研究開発型企業を買収する場合、取得の目的が被取得企業の研究開発にあり、その取得価値のほとんどが被取得企業の研究開発の価値である場合でもそれを分離して費用処理するということはされず、のれんに含めて資産計上されていました。
1月7日にアステラスによるアジェンシス買収のお話しをしましたが、あの事例でも研究開発費の価値がのれんに化けていました(http://cfonews.exblog.jp/7056416/)。
統一基準ではこの研究開発費をのれんとは分離して把握し無形資産として計上し、減損テストの対象となります。研究開発プロジェクト完了時に取得企業は個別に耐用年数を決定し償却を開始します。

③リストラコストの取扱い
米国では(日本も)リストラコストに関し合併時に損失が確定していなくても、一定条件を満たせばM&Aでない場合には計上されないリストラコストを、M&Aの場合には引当計上できますが、リストラコストをあらかじめ計上してその後の業績を良く見せるといった弊害を防ぐため、統一基準ではM&Aだけ特別な扱いをすることはしないということになりました。
リストラコストを見込んで取得価額を決定している場合にこれが引当計上されずに会計処理すると、のれんがその分小さく計上されることになります。

④偶発債務の取扱い

米国では(日本でも)発生の可能性の高い偶発債務は引当計上されますが、発生の可能性が低い場合には引当計上されません。
統一基準では偶発債務を発生の可能性の高さで区分するのではなく、公正価値で認識することとされています。これはM&Aの場合、偶発債務を考慮して取得価額を決定する場合があるのでこれを会計処理にも反映させようという趣旨だと思います。

【リンク】
BUSINESS COMBINATIONS PHASE II
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/FB09D3C0-D7CA-478C-881C-704495F8A6CC/0/Business_Combinations_JN2008.pdf

企業結合会計の知識 (日経文庫)
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by yasukiyoshi | 2008-01-12 17:45 | M&A
2008年 01月 11日

M&A会計欧米統一基準の概要

M&A会計、欧米が統一・来年7月、子会社株売却で新基準
【ロンドン=田村篤士】欧米の会計基準を作る専門家組織は10日、企業のM&A(合併・買収)を巡る欧米の会計基準を2009年7月に統一することを決めた。企業買収の実態を比較するモノサシが国際的に統一され、国境を超えた買収やグループ再編が加速する。日本の会計基準も修正を迫られるのは確実。連結決算で子会社株の一部売却を利益として認めない方針を打ち出しており、子会社上場など日本企業の財務戦略に影響しそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M10015%2010012008&g=MH&d=20080110

【CFOならこう読む】
米国の連結財務諸表の基本的な考え方は、いわゆる親会社説によるものであったのですが、国際基準は経済的単一体説によっており、米国は差異解消に向けて大幅な歩み寄りを決断したものと言えます。
この親会社説と経済的単一体説はそれぞれ何を意味しているかというのがなかなかに難しいのです。今日の日経新聞17面によると、親会社説とは連結決算書は親会社株主のために作成されるという考え方であり、親会社だけでなく親会社以外の少数株主のために作成されるという考え方を経済的単一体説と言うと説明していまが、何だかよくわからないと感じる人が多いと思います。

両者の違いはこういうことです。

A社が資産100円のB社を買収するとします。A社が取得する持分は60%、これを90円で取得したとします。純粋に親会社説を推し進めると取得した資産は100円の60%の60円となります。ところがA社のコントロールはB社の全ての資産・負債に渡ると考えられるので、連結されるB社資産は100円として会計処理するのが適当であるというのが米国や日本の現在の基準です。そうすると100円の資産のうち60円部分だけが親会社に帰属するので残り40円をどう処理するか問題になりますが、これは親会社以外の少数株主が所有する部分ということで、少数株主持分として処理されます。この処理そのものは米国基準と国際基準(そして日本基準も)同じです(国際基準では少数株主持分ではなく非支配持分という勘定科目が使われます)。

しかし基本的には親会社説によっている米国基準では少数株主持分が「資本の部」に表示されないのに対し、国際基準では経済的単一体説によっているので、非支配持分(=少数株主持分)が「資本の部」に計上されます。国際基準の考え方は、非支配持分は負債ではないという会計理論に沿ったものであるのに対し、米国基準は親会社の持分ではないから「資本の部」に計上すべきでないというものでそれぞれ一長一短あります。

例えば自己資本比率は、負債が全くない会社を買収したとしても、米国基準によるとその比率は、少数株主持分の有る無しによって歪むことになりますが、国際基準によるとこの弊害が緩和されます。一方親会社の株主価値を評価する場合、連結グループの企業価値ー連結グループの負債価値で計算されますが、少数株主持分は負債価値に含めるのが普通です。つまり米国基準によると「資本の部」=株主価値になるのでわかりやすいし、またPBRを計算する場合にも単純に株価を一株当り株主資本で控除すれば良いので、計算が容易であるという利点があります。

またROEを計算する場合にも当期利益は少数株主に帰属する部分を除いて計算されるので、これと整合させるためには資本に少数株主持分を含めるべきではないのですが、米国基準によるとこの考え方とBSの構造に矛盾がないと言えます。ただし国際基準でも「資本の部」が親会社持分と少数株主持分の2段階で表示されるので、米国基準的なROEの計算は容易にできます。要するに財務諸表の読者がどちらがしっくりくるかということなのだと思います。そういう意味でのれんの取扱いに留意が必要です。経済的単一体説によると少数株主持分からものれんが生じると考えられるのです。

さきほどの数値例によると、親会社説によった場合ののれんは、90円-100円×60%=30円となりますが、経済的単一体説によると90円÷0.6(B社の公正価値)-100円=50円となります。そして少数株主持分(非支配持分)は60円(=150円×40%)となるのです。今回の統一基準の公開草案が2005年6月に公表されたときには後者の処理を要求していましたが、これについては反対が多く前者の処理で良いということになりました。後者では財務諸表の読者がしっくりしないということでしょう。

統一基準の日本への影響を考えた場合、少数株主持分はすでに純資産で表示することとされているので、ここまでお話しした点については国際基準との大きな不整合はありません。一番の不整合は新聞記事にもあるように子会社株式の売却損益の処理でしょう。基本的に経済的単一体説の立場に立つ統一基準では、子会社株式の売却は株主間の株式移動であると見なされ、売却損益はPLに計上されません。また株式の追加取得の際に従来のれんが生じる場合がありましたが、統一基準では自己創設のれんを認めないという見方を徹底し、のれんが計上されないことになるようです。この部分は公開草案のまま変更がないとすると、差額は資本剰余金により処理されます。
追記
M&Aに関する米国基準は、IASBとの共同プロジェクトの成果として昨年12月に改訂されています。説明の都合上、上で記載した米国基準とは、改訂前の米国基準を指していますのでご注意下さい。なお上でお話したように、この共同プロジェクトにより、M&Aに関し従来あった欧米間の差異はほとんど解消されました。ただし、のれんの測定に関しては、米国は全部のれんを原則としたのに対し、IFRSは全部のれんも選択可能というような差異が存在しています。米国サイドは『経済的単一体説→全部のれん』という点で妥協できなかったのかもしれません。

【リンク】
BUSINESS COMBINATIONS PHASE II
http://www.iasb.org/NR/rdonlyres/FB09D3C0-D7CA-478C-881C-704495F8A6CC/0/Business_Combinations_JN2008.pdf


by yasukiyoshi | 2008-01-11 12:56 | M&A
2008年 01月 07日

企業買収における条件付取得対価の会計処理ーアステラスのアジェンシス買収のケース

アステラス製薬は米バイオベンチャーのアジェンシス(カリフォルニア州)を先月買収したのに伴い、2008年3月期以降の6期で合計580億円超ののれん償却を強いられそうだ。単年度の償却負担は最大158億円程度まで膨らむ見通し。ただ中期経営計画で掲げた11年3月期の連結営業利益2800億円(今期見通し比9%増)は変えない見通しだ。
(日経金融新聞2008年1月7日4面)

【CFOならこう読む】
買収金額は3億8700万ドル(1ドル109円換算で約422億円)。アジェンシスは純資産をほとんど持たないため、このほぼすべてがのれんに計上され、2008年1月から2012年12月までの5年間で償却される予定です。さらにアステラスはアジェンシスの新薬研究の進展に伴い、成功報酬として対価(上限1億5千万ドル=約164億円)を支払う契約になっています。

この成功報酬部分の会計処理は、企業結合に係る会計基準三2.(2)⑤条件付取得対価の会計処理に従い、「条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識」することになります。ここで「追加的に認識するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識されたもの仮定して計算し、追加認識する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する」(企業結合に係る会計基準 注11)点に注意が必要です。

したがって成功報酬が2009年3月期に発生した場合は、2009年3月期に164億円÷60ヶ月×15ヶ月(2008年1月~2009年3月)=41億円がのれん償却費として追加計上され、また成功報酬が2010年3月期に発生した場合は、2010年3月期に164億円÷60ヶ月×27ヶ月(2008年1月~2010年3月)=73.8億円がのれん償却費として追加計上されます。

業績見通しや中期経営計画にはこの不確定要因を織り込む必要があります。アステラスは一昨年、2011年3月期に連結営業利益2800億円を目指す中期経営計画を発表済みですが、利益の上積みによりのれん償却費の影響は吸収できるとして、計画の変更は行わない予定でいるようです。

【リンク】
(11/27)アステラス、米バイオ医薬VBを買収 NIKKEI NET
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/ma.aspx?site=MARKET&genre=y2&id=AS1D2708E%2027112007

2007年11月27日「米国バイオベンチャーAgensys,INC.買収に関するお知らせ」アステラス製薬株式会社
http://www.astellas.com/jp/company/news/2007/pdf/071127.pdf


by yasukiyoshi | 2008-01-07 08:28 | M&A
2007年 12月 05日

会計方針と株価

減価償却法 見直し広がる -設備状況の変化に対応-
企業が相次ぎ設備など固定資産の減価償却方法を変更し始めた。4月の減価償却制度の改正を機に設備の利用実態の見直しを進め、初期に償却負担が重くなる分、早めに償却が進む定率法と、償却速度は遅くなるが利益への影響が安定的な定額法のうち、現状に適した方法へと切り替えている。ただ、償却を加速し税負担を抑える新制度の利点を活用しにくいという課題も浮かび上がってきた。
(日本経済新聞2007年12月5日17面)

【CFOならこう読む】
記事によると今年に入って減価償却方法を変更した主な企業は次の通りです。

e0120653_914710.jpg減価償却方法は、収益との対応や経営者の保守的な態度を反映した形で企業が決めることができます。そして一度決めた方法はみだりに変更することは許されません。変更する場合、会計上「正当な理由」が必要です。

例えば富士通は、「主力のコンピュータシステム事業で長期契約中心の運用受託が増えているほか、需要動向が激しいメモリー事業撤退で収益が安定した。償却期間を通じて一定の利益を得られるなら、償却という費用も期間を通じて均等に発生すると見た方が理にかなう。したがって定率法から定額法に変更することでより適切にビジネス実態を表すことができる」を「正当な理由」としています。

ところで、日本では昔から会計方針の変更が“益出し”の手段として使われていることです(上の企業はそうではないと思いますが…)。在庫の評価におけるFIFOとLIFO、工事進行基準か完成基準かといった会計方針を会計上の利益を捻出するために変更する、という本来あっては行けないことが数多く行われてきたのです。政府主導で行われたこともあります。

そうまでして、会計上の利益を捻出することにいかなる意味があるのか、特に株価にどのような影響を与えるのか、が問題になります。コーポレートファイナンスでは、市場は効率的であるということが仮定されます。これを効率的市場仮説と言います。効率性の程度は3つのレベルに分けられます。

市場が過去の株価を完全に織り込んでいる場合をウィーク・フォームの効率性、過去の株価だけでなく全ての公開情報を反映しているならセミストロング・フォームの市場の効率性、株式に関係する全ての情報を反映しているならストロング・フォームの市場の効率性を満たすと言われます。

米国の数多くの実証分析がセミストロング・フォームの市場の効率性は満足することを証明しています。つまり会計上の利益を会計方針の変更によっていかに捻出しても市場が公開情報を正しく解釈しているなら株価には全く影響しないことになります。これを証明する実証分析もたくさんあります。

ところが会計方針の変更が株価に影響を与える場合もあるのです。Stephen A. Ross等の「コーポレートファイナンスの原理」(金融財政事情研究会)に次のような記述があります。
「Biddle and Lindahl」はLIFOへの在庫の原価計算の変更が、株価の上昇を伴うことを発見した。インフレ傾向の環境では、FIFOによる在庫の原価計算に比べて、LIFOの在庫原価計算は税金を減少させる(売上原価が現在の高い時価を反映する…吉永注釈)ので、これは予想されることである。彼らは、LIFOを用いることによる税金の減少額が大きいほど、株価の上昇が大きいことを発見した。」
減価償却方法の場合、定率法が定額法に比し税金を減少させる効果があるので、株価という観点からは定率法が望ましいと言えます。一方投資家により有益な会計情報を示すという観点からは、富士通のように定額法が望ましい場合もあり得ます。

日本では「確定決算主義」と言って会計上費用計上していないと税務上損金計上が認められない方式が採用されているので、このような会計上のニーズと税務上のニーズの違いを使い分けることができないのです。

「税法」が、来るべき市場型資本主義を阻害することがないように、コーポレートファイナンスの点から改正すべき点は山ほどあると、私は思います。
ところで、現在の日本の市場がセミストロング・フォームのレベルで市場が効率的であるかどうかについては、私は甚だ疑問であると思っています。

【リンク】
コーポレートファイナンスの原理 第7版
Stephen A.Ross 大野 薫

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by yasukiyoshi | 2007-12-05 08:54 | 会計
2007年 11月 28日

のれんの償却期間延長―ゼンショーのケース

牛丼店「すき屋」を展開するゼンショーの異例の会計処理変更が業界内で話題になっている。2007年9月中間期から突然、のれん代の償却期間を延長した。単年度ごとの償却負担が減るため、今期の営業利益は上乗せされる。同社は短期から中長期的に投資を回収するM&A戦略に変えたためとするが、重い金利負担や回転ずし事業の行き詰まりなど、苦しい財務事情も見え隠れする。
(日経金融新聞2007年11月28日 5面)

【CFOならこう読む】
記事の中で中央大学の間嶋教授の「保守的な会計処理の観点から償却期間を短くするケースはあるが、延長はよほど正当な理由がないと認められない」という意見が紹介されていますが、その通りだと思います。

昨年エム・ピー・テクノロジーという会社がのれんの償却期間の延長について、会計監査人である中央青山が了解しなかったというような事例もあります。記事にあるように「会計処理の変更は当社からではなく、監査法人(あずさ)から言われた」ということが本当ならかなり問題だと私は思います。

【リンク】
2007年11月16日「2008年3月期 中間決算短信」株式会社ゼンショー
http://www.zensho.co.jp/documents/ir/report/pdf/20071116-1.pdf

平成18年6月15日「平成18年7月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社エムピー・テクノロジーズ
http://www.mptech.co.jp/jp/news/pdf/pr060615_02.pdf


by yasukiyoshi | 2007-11-28 09:24 | 会計
2007年 11月 14日

連結子会社の決算期変更―花王・カネボウのケース

花王は2009年3月期から連結子会社のカネボウ化粧品の決算期を現在の12月期から3月期に変更する。本体と決算期をそろえ投資家に対し情報開示の透明性を一段と高めるのが狙い。2009年3月期から四半期決算が義務づけられることも背景にある。
(2007年11月14日日本経済新聞19面)

【CFOならこう読む】
子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超えない場合には、親会社は子会社の正規の決算をそのまま利用して連結決算を行うことができます(連結原則注解7)。

しかし3ヶ月決算がずれていると、四半期決算では、親会社の4-6月期に子会社の1-3月期を連結することになり連結情報としての有用性が低くなる問題があります。

日本では2009年3月期から四半期決算制度が正式に導入され、3ヶ月単位の即時開示が求められることもあり、多くの会社が決算期変更に踏み切るものと予想されます。

子会社の決算期変更をする場合、子会社の損益をどのように連結するかについては次の2つの方法が考えられます。
①前年1月から3月までの損益は連結損益計算書に含めず、連結株主資本等変動計算書に利益剰余金の増減として、「決算期の変更に伴う子会社剰余金の修正」のように表示する方法。
②子会社の事業年度の月数を15ヶ月として、連結損益計算書に含める方法。ただしこの場合その旨、及びその内容を連結財務諸表に注記する必要があります(連結財務諸表規則ガイドライン3-3)。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2007-11-14 08:27 | 会計
2007年 11月 05日

米シティ:CEOが辞意表明へ、緊急役員会で追加評価損検討も-報道

11月3日(ブルームバーグ):米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は2日、米銀最大手シティグループのチャールズ・プリンス最高経営責任者(CEO)が辞意を表明する見通しだと報じた。トップの引責辞任は大手金融機関の間で広がる様相を見せている。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=aycw.UfBMKhQ&refer=jp_home

【CFOならこう読む】
サブプライム問題は、SPCを使った損失飛ばし疑惑に発展しそうです。

米大手金融機関が運営する「SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)」と呼ばれるSPCが米国では簿外とされることを利用した「飛ばし」疑惑が浮上しているのです。

ウォールストリートは、シティにすでにSECが調査に入っていることを報じています。先週末の金融株式は、決算への不振から全面的に売られ、シティの株価は11月2日、日興との株式交換の下方限度である37ドルを割りこむ事態となっています(11月2日終値は37.730ドル)。

証券化商品の会計処理は不透明で、取引量が少なく時価の把握が難しいため、会社の推定で評価額を左右できてしまうことから、その価格を「市場価格」ならぬ「神話価格」とウォーレン・バフェットは揶揄しているそうです(日経金融新聞11月5日 1面)

それでは、不透明さいっぱいの日本の株式市場が決める価格を、私は「オッパッピー価格」と呼ぶことにします。
その心は、“特に意味はありません”です。

【リンク】
Bloomberg.com:Citigroup Inc
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=C:US


by yasukiyoshi | 2007-11-05 08:05 | 会計