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2008年 11月 05日

優先株式の評価-三洋電機のケース

パナソニックの三洋買収 金融3社の売却価格 焦点
パナソニックが三洋電機の子会社化で大筋合意したことで今後、三井住友銀行など金融三社が保有する優先株の売却価格が焦点となる。4日の東京株式市場では両社とも株価が上昇したが、市場の株価を基に価格算出を主張する金融機関と、株価の希薄化リスクを考慮すべきだとするパナソニックとの議論が残っている。
(日本経済新聞 2008年11月5日 9面)
【CFOならこう読む】
「買い手側からみると現在のPBRやPERが同業他社より高いことから判断して、株価は希薄化を織り込んでおらず、実際より割高な状態だとみている。一方、売り手からすると優先株転換で発行済株式数が増える可能性は発行時から分かっており、現在の株価は希薄化を織り込んだ上で成長性などを評価してついているとみる。そのため現在の株価にプレミアムを付けて売却したい考えだ。」
(前掲)
理論的には売り手が言うように、発行時に希薄化は織り込まれたと考えるべきですが、このケースでは次のような株式保有義務が買い手側に課されている点を考慮すべきです。
「資本金払い込み後、二年間はGSと大和証券SMBCグループが議決権ベースで四九%の優先株を保有するよう義務づけている。しかし、その一年後には保有義務が三四%に下がり、さらにその後は〇%。つまり三年を過ぎた時点で出資者側は自由に普通株に転換し、売却できるようになる。」
(日経産業新聞 2006年2月1日 24面)
最初の2年間とは、平成2008年3月13日まで、その1年後とは平成2009年3月13日です。つまり、転換に制限を設けて希薄化が起こりにくい仕組みにしたのです。
発行時の市場価格(2006年1月25日終値348円)を大幅に下回る価格で優先株が発行(普通株に換算した発行価格は70円)されたので、希薄化を抑える必要があったのです。

2009年3月13日の期限を迎えていない現時点で、希薄化が完全には株価に織り込まれていないというパナソニック側の主張に分があるように思います。

【リンク】
平成17年12月21日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2005/di-1221-1.pdf

平成18年1月25日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0125-1.pdf

平成18 年2 月14 日「第三者割当による新株式(優先株式)の発行にかかる覚書締結に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0214-2.pdf


by yasukiyoshi | 2008-11-05 11:55 | M&A
2008年 07月 19日

無議決権株の価格

普通株より割安に評価 日本市場の未熟さ反映?
「日本の株式市場のために、議決権のない優先株は必要だ。我々が実験台になる」。伊藤園の本庄八郎社長は他社に先駆け、昨年9月に同株を上場させた意義をこう強調する。「議決権の拡散を恐れ、資金調達に踏み切れない企業にとって成長の一助になる」と同社長。だが高い理想と裏腹に、伊藤園の無議決権優先株の株価は上場来、低空飛行が続いている。
配当が普通株に連動し25%上乗せされるにもかかわらず、株価は上場来ずっと、普通株より3-4割程度安いまま。伊藤園に続く企業が出ないのは「今、上場させても市場で割安に評価される」(大手食品企業)との警戒感もある。

(日本経済新聞 2008年7月19日 14面 無議決権株を追う㊦)
【CFOならこう読む】
このコラム、日経にしては珍しく(?)面白い記事です。

なぜ伊藤園の種類株の株価は普通株より3割以上も安いのか。記事ではその理由を2つ挙げています。

①無議決権優先株が東証株価指数に採用されていないため流動性が低い
②普通株にあって優先株にない議決権の価値が大きいから、価格差が拡大している

さらに記事は、イタリア、韓国の事例を引いて、
「国の法制度や市場のルールが未整備で、企業経営に対する規律付けが弱いと、株主は自ら議決権を握り、株主の利害に背かないよう経営を監視する必要性が増す。その場合、議決権の価値は増大し、結果として無議決権株と普通株の価格差が広がる。」
という仮説を立てています。

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確かに、安定株主作りに勤しむ日本の上場企業を見ると、議決権の価値は思っている以上に大きいのかもしれませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-19 09:19 | 種類株式
2008年 05月 21日

ソフトバンク、無議決権優先株の発行を取りやめ

ソフトバンク、優先株の発行を一転取りやめ
ソフトバンクは20日、議決権がない代わりに普通株より配当を多く受け取れる「優先株」の発行準備を取りやめると発表した。同社は8日に優先株の発行準備に入ると発表していた。しかしその後、個人株主から、新株の発行による株価への悪影響などを懸念する声が寄せられ、配慮を余儀なくされたようだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2000K%2020052008&g=S1&d=20080520

【CFOならこう読む】
ソフトバンクの無議決権優先株については、当ブログで5月9日に取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7902931/)。
その後、優先株を使ったエクイティファイナンスに関する取り合わせが相当数に達したとのことで、12日に次のようなコメントを発表していました。
「当社は、平成20年5月8日付プレスリリース「定款の一部変更に関するお知らせ」を発表しました。このリリースにおいて「当社における柔軟な資金調達を可能とするものであり」との記載に関して、株主・投資家より、優先株式を用いたエクイティファイナンスによる資金調達の可能性についての問い合わせを数多く受けております。
 当社においては、現時点でエクイティファイナンスによる資金調達を必要とする事業・投資案件等は一切なく、当面の間エクイティファイナンスを行う意図は全くありません。
 当社はこれまでも、企業価値の向上による株主利益の増大に努め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに対し、適正に利益を還元することを基本方針としてきました。今後も株主の皆様へ様々な形により利益還元を行うように努めるとともに、キャッシュフローの最大化を目標に業績の拡大および株主価値の向上を目指し全力で取り組んでまいります。」
しかしその後も株価は軟調に推移していました。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9984.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

孫社長の「買収したいところが出てくれば、これを使って買収することもある」としていたが、多くの株主がこの部分を強く意識し、希薄化懸念から一部の個人や機関投資家に嫌気されたとのことです。

ソフトバンクのM&A下手(特に上場会社の買収)を見透かされているのかもしれませんね。

個人的には、ソフトバンクの種類株の株価形成がどのようになるかに注目していたので、発行取りやめは残念です。
【リンク】
2008年5月20日「『定款一部変更の件』の株主総会への付議取りやめについて 」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080520_0001.html



by yasukiyoshi | 2008-05-21 10:00 | 資金調達
2008年 05月 09日

ソフトバンク、無議決権優先株を発行・上場

ソフトバンクが無議決権優先株、資金調達多様化へ動く
ソフトバンクは8日、議決権がない代わりに普通株より配当の多い種類株(無議決権優先株)の発行・上場に向け、定款変更などの準備に入ると正式発表した。地図大手のゼンリンも同様の定款変更を表明した。東証は種類株の上場に関する制度を7月に正式導入する。資金調達の多様化を目指した種類株の発行は年内に最大で10社程度に上りそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080509AT2C0801M08052008.html
【CFOならこう読む】
ソフトバンクの種類株は既存の普通株主に無償で割り当てられます。これは昨年9月
に上場した伊藤園と同じ手法です。
ソフトバンクと伊藤園の種類株の主な特徴は次の通りです。


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ソフトバンクは種類株式の発行の理由を次のように説明しています。
「本優先株式は、投資家の嗜好が多様化するなか、配当を選好する投資家に対しては本優先株式を、また、より議決権を重視される投資家には普通株をという形で、その嗜好に応じた投資機会の選択肢を提供するものであり、新たな投資家層を開拓し、我が国の証券市場のさらなる発展に貢献できるものと考えています。従いまして、現実に発行する場合には、まずは既存株主に対し、無償割当という形で実行し、既存株主にその選択の機会を提供すべきものと考えております。
 なお、将来的には本優先株式は、当社の企業価値の基礎となる経営理念・大きな志に基づいた中長期的な経営判断を可能とする株主基盤を維持しながら、当社における柔軟な資金調達や株式による買収等の選択肢を増やすものものでもあり、当社の企業価値の更なる向上に寄与するものと確信しています。」
また孫正義社長は、「M&Aなど攻めの経営の道具としても使える」と種類株発行の意義を強調しています。

無議決権優先株の市場株価が普通株の株価を上回る場合には道具として使え得ると思いますが、伊藤園の種類株のように普通株の株価を3~4割下回るようだとあまり種類株発行の意義は認められません。
http://cfonews.exblog.jp/7785958/

ソフトバンクの配当水準は普通株の2倍~5倍と伊藤園の1.3倍を大きく上回るので、これが種類株の株価形成にどう寄与するか注目されます。

【リンク】
2008年5月8日「定款の一部変更に関するお知らせ」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080508_0001.html
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/pdf/080508_0001.pdf

「優先株式の無償割当て及び優先株式の内容」伊藤園
http://www.itoen.co.jp/ir/class1/outline/index.html


by yasukiyoshi | 2008-05-09 11:15 | 資金調達
2008年 04月 21日

伊藤園の優先株 上場半年、普通株より3割安続く

伊藤園が普通株と別に東京証券取引所に上場している「無議決権優先株」の株価が上場半年を過ぎても軟調に推移している。国内初の試みとして注目を集めたが、株価は普通株より3~4割安い水準のまま。議決権が無いことで割安に放置されているのか、投資家が優先株に及び腰なのか。背景を探ってみた。
(日経ヴェリタス 2008年4月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事では普通株と優先株の流動性の価値が同じであると仮定して、同じPER(18日終値ベース)で試算した議決権の価値を799円(普通株の株価の43%)と計算しています。

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この計算は、当ブログで9月4日に説明したのと同様のものであると思われます。
http://cfonews.exblog.jp/6398916/

ただしこの計算だけをもって議決権の価値を推定することはできません。伊藤園の優先株の流動性は低水準であり、流動性ディスカウントを考慮する必要があるからです。

非流動性ディスカウントに関して、米国では制限付き株式(公開企業が発行するSECには登録されない株式)を検証することにより次のような研究結果が得られています。
1.マーハーは1969年から1973年の間に4つのミューチュアルファンドが購入した制限付き株式を調査した結果、同じ企業の公開株に対する平均割引率は35.43%であると結論づけている。
2.1970年以降のデータを使ったもろにーの調査によれば、10社の投資会社が購入した146銘柄の制限付き株式の平均割引率は35%である。
3.ジルバーは1984年から1989年にかけて発行された制限付き株式を調査し、割引率のメジアンが33.75%であることを見出した。
(資産価値測定総論3 アスワス・ダモダラン著 山下恵美子訳 Pan Rolling)
ということは上で計算された価値の大半は流動性の価値なのかもしれません。いずれにしてももう少し事例を重ねる必要がありそうです。

【リンク】
資産価値測定総論3―非公開企業から不動産、金融派生商品まで (ウィザードブックシリーズ 133)
アスワス・ダモダラン 山下恵美子
4775970992


by yasukiyoshi | 2008-04-21 10:01 | 種類株式
2008年 01月 09日

IPOに向けた資本政策ー種類株式の利用

東証、無議決権株4月にも上場制度・資金調達多様に
東京証券取引所は、株式を公開していない企業が議決権のない株(無議決権株)だけを上場できる制度を設ける方針だ。早ければ4月からの実施をめざす。創業間もない新興企業などが経営の枠組みを維持したまま成長に必要な資金を調達する手段を増やす。無議決権株は一般的に普通株より配当が高い種類株の一種。上場により一般投資家の選択肢も増えることになる。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080109AT2C0801608012008.html

【CFOならこう読む】
私は新興市場に新規上場する会社の資本政策策定のお手伝いを数多く行っています。資本主義体制化の企業は所有と経営の分離が大前提ですが、資本市場から資金調達しない非公開企業はその限りではありません。同族会社が厳しい規律のもと好業績をあげ続ける事例は数限りなくあります。上場企業の場合は、多数の一般投資家にリスクが分散され、大きなシェアを持たない多数の一般投資家の民意により経営の大枠が決定されるのが基本です。一方新興市場に新規上場する会社の場合、組織的な経営など行われておらず、もっぱらオーナー経営者の実力で上場にこぎつけることができているケースがほとんどでしょう。こういう会社も資本市場には必要です。大きく成長した暁に、結果として所有と経営が分離して行けば良いのです。それまではオーナー経営者が安定した経営権を持って経営に当たることが一般投資家にとっても望ましいと言えます。

ところで新規上場企業の資本政策は、オーナー会社型かVC(ベンチャーキャピタル)型かによって大きく異なります。オーナー会社の場合、過半数の持分を持ったまま上場することが比較的容易です。ところがVC型の場合、上場までに何度かエクイティファイナンスを実行しており、経営者のシェアは過半数ぎりぎりという場合も少なくありません。この場合上場時の公募により経営者のシェアは過半数を下回ることになります。ところが先ほどもお話しした通り、オーナー会社型であろうがVC型であろうが、少なくとも新興市場にいる間は、経営者に安定した経営権を付与しておいた方が一般投資家にとっても望ましい場合が少なくないのです。したがって非公開企業が無議決権株式を上場できるという方向性は正しいと思います。しかしこれが買収防衛策その他誰かの利権を守るために使われることは許されません。東証にはこの点に十分留意した上で制度整備及び運用を行ってもらいたいものです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-01-09 10:40 | 種類株式
2007年 12月 10日

経済産業省、複数議決権株式上場解禁を東証に求める

複数議決株の上場解禁を・経産省、安定経営促進へ提言
経済産業省は株主が1株で複数の議決権を行使できる「複数議決権株式」の上場を容認するよう東京証券取引所に求める。創業者ら経営陣が複数議決権株式を保有し株主総会の議決権の大半を握ることで、長期的視野から安定的経営をできるようにする狙い。経営陣以外の株主の意向にも配慮するため、複数議決権株式の上場ルール策定も提言する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S07016%2008122007&g=E3&d=20071209

【CFOならこう読む】
創業者等の特定の株主が複数の議決権を持つことにより、経営者が過半数の議決権を保持することが可能になります。ニューヨーク証券取引所等米国の証券取引所は、現在では既存の公開企業による新規の複数議決権株式の発行を禁じています。ただし新規公開の際に複数議決権株式を発行することは禁じられていません。グーグル創業者の複数議決権株式が有名です。

資本市場における個人株主の比率が低く、民主的な経営とは程遠い日本のコーポレートガバナンスを前提にすると、このような“規制緩和は百害あって一利なし“であると私は思います。

それにしても経済産業省管轄化に企業価値研究会なるものがあり、これがまとめた提言を東証につきつける、という構図はいかがなものでしょう。

【リンク】
なし


by yasukiyoshi | 2007-12-10 09:02 | 買収防衛策
2007年 12月 01日

伊藤園の優先株―上場して3ヶ月

伊藤園の優先株軟調に-普通株より3割安く
伊藤園の優先株が軟調に推移している。12月3日で上場から3ヶ月を迎えるが株価は普通株を上回って推移し、値幅も拡大傾向にある。「優先株は議決権がなくても配当が高いという利点があるので普通株と大きな差はつかない」との見方もあったが、普通株に比べて流動性が低いことなどが嫌気されている。優先株は上場初日の9月3日に付けた2850円からはほぼ1本調子で下落。12日には初値と比べ38%安の1760円を付けた。同期間の普通株の下落率(14%)と比較しても下げがきつく、30日の終値も1800円と普通株より3割強安い水準にとどまっている。
(日本経済新聞2007年12月1日 15面)

【CFOならこう読む】
伊藤園の種類株式の価格が普通株の価格を下回っている理由として、市場関係者は流動性の低さを指摘していることが、記事の中で書かれています。非流動性ディスカウントは日本の企業評価実務では、相続税評価上、30%~50%を遣っていることもあり、30%程度見るケースが多いと思います。

米国では、公開企業の譲渡制限株式の公開価格と公開市場外取引価格の統計データやIPOした会社の公開前の株価に関する実証データから算定された非流動性ディスカウントの統計数値が、多くの研究機関から公表されているが、これによると「非流動性ディスカウントは23%~45%とされているが、平均で30%前後のディスカウントが最も多い」(「M&Aの企業価値評価実務」 監査法人トーマツ編 中央経済社)。

日本では非流動性ディスカウントについての明示的な統計資料は今までなかったわけですが、伊藤園の種類株の市場価格は非流動性ディスカウントの実証データとして今後使われるようになるかもしれませんね。

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25935:伊藤園種類株
2593:伊藤園
NKY:日経平均


【リンク】
M&Aの企業価値評価―理論と実務の総合解説
トーマツ

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by yasukiyoshi | 2007-12-01 09:10 | 種類株式
2007年 09月 04日

伊藤園の優先株2795円 上場初日終値普通株より割安に

伊藤園が普通株に無償で割り当てた優先株が3日、東京証券取引所に上場した。
上場企業の本格的な優先株の上場は国内で初めて。初日の終値は普通株と比べて135円安い2795円。年間配当が48円と普通株より10円高いが、議決権がないことなどでひとまず普通株よりも割安に評価された。
(2007年9月4日 日本経済新聞朝刊17面)

【CFOならこう読む】
転換を前提としない優先株が上場するケースは伊藤園が国内では初めてということもあり、株価がどうなるかが注目されました。

結果としては議決権の無い分だけ割安に評価されました。日経金融新聞は議決権価値を12%と試算しています。これは次のように計算されています。
「まず利益の総額のうち普通株に配分される利益を求めて1株利益(EPS)を算出する。

2008年4月期の連結純利益予想は133億7千万円。

ここから優先株への配当分①2億6074万円(優先株式数2674万株×配当上乗額10円:筆者注)を差し引いた額を普通株と優先株の総数で割り、優先株式数で掛けると②約30億円。

今期の予想純利益から①と②を引いて普通株数で割るとEPSは113円となる。普通株の3日終値は2930円だからPERは25.9倍になる。

一方優先株は配当が10円増しなのでEPSも10円増の123円とみなせる。優先株に議決権を付与して普通株になったと仮定すれば25.9倍を掛けて3185円になるはず。

しかし優先株は2795円なので差額の390、12%のプレミアムが消えたと推定できる」

この議決権価値は、例えばTOBの対象となった場合、プレミアムを受け取れないことを根拠としています。

ただし伊藤園の無議決権株式は買収者の持分割合が50%を超えた場合、普通株式へ転換できる条項がついており、この辺りをどう見るかは意見が分かれるところかもしれません。

無議決権株式の価格形成についてはもう少し実績を見てみないと何とも言えないように思います。今後配当利回りの良さに惹かれて個人の買いが入ってくる可能性も十分にあると思います。

個人的には、昨日の終値ベースでは、国税庁が示している、優先配当の無議決権株式の相続税評価額である“普通株式の5%減”に近いところに収まった(4.6%減)ことに注目しています。

by yasukiyoshi | 2007-09-04 08:56
2007年 07月 19日

ダウ・ジョーンズ取締役会、ニューズによる買収を承認=関係筋

16人で構成する取締役会が承認したことで、
この案件はダウ・ジョーンズの議決権の過半数を保有するバンクロフト一族による最終投票に移る。

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djBRK9914.html

(CFOならこう読む)
デジタル技術の進展に伴うメディアの融合はとどまるところを知らず、
米国ではナイト・リッダー、トリビューンに続きこの1年内に大手新聞の経営が変わるのは3社目になります。
ダウ・ジョーンズはウォールストリート・ジャーナルの発行元であり、
日本で言えば日経新聞社が買収されるようなもので日本ではちょっと考えられない話です。

ダウ・ジョーンズ社の取締役会が承認したわけですが、
ニューズ社が議決権の過半数を獲得できるかはまだ不透明です。
「ダウ・ジョーンズ社は普通株のほか1株あたり普通株の10倍議決権を持つ『特殊株』の2種類を発行しており、
30人強のオーナー一族はこの特殊株を占有することで議決権の64%を支配してきた」のですが、
「一族が特殊株を第三者に売却すると自動的に議決権が普通株と同じになるという内規がある」ため、
オーナー一族の議決権の相当数が売却に賛成しても、
ニューズ社が過半数の議決権を獲得できるとは限らないからです。
複数議決権株式は買収防衛策としては強力なもので、
米国でも上場後の複数議決権株式の発行は認められていないようです。

しかしグーグルが創業者等に1株10議決権の複数議決権株式を発行したままで上場したように、
「目的が株主の利益や長期的な企業価値向上にある」場合には認められる場合もあるとされています。
日本の会社法は308条1項本文の規定に反することから複数議決権株式の発行は認めていません。

しかし定款で株式の種類ごとに異なる単元株式数を設定する(会社法188条)ことにより、
実質的に複数議決権を認めるのと同様の効果を生じさせることができます。

また非公開会社の場合には、定款で、
特定の株主についてのみ複数議決権を認める旨の定めを設けることができます(会社法109条2項)。
IPO準備に入る会社の資本政策としてこれを利用する会社が今後増えてくるものと予想されます。

by yasukiyoshi | 2007-07-19 09:36 | M&A