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2008年 06月 11日

企業価値研究会の「買収防衛策のあり方」に関する報告書のポイント

買収防衛策、発動限定的に 経産省研究会
経済産業省の研究会がまとめる敵対的買収防衛策のあり方に関する報告書の全容が明らかになった。企業が実際に防衛策を発動する際の要件を具体的に明示。株主総会の議決に是非を委ねる方式での発動を経営者の「責任逃れ」とするなど、取締役会による的確な対応を求めたのが特徴だ。経営に規律をもたらすといった敵対的買収の効用にも言及し、経営者が自らの立場を守ろうとするような発動に強く警鐘を鳴らしている。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080611AT3S1001Y10062008.html

【CFOならこう読む】
報告書は本日(11日)公表されるようなので、一通り目を通してから、この場でまた取り上げることにしますが、新聞記事の箇条書きされたポイントを見て、一点非常に危惧されるところがあるので、今日はその点について書きます。

危惧されるのは、
「防衛策の発動に際し、買収者に対価として金銭を支払うべきでない」
というところです。

事前警告型ライツプラン(新株予約権を利用した買収防衛策)は、買収者だけ行使できない差別的条件を付した新株予約権を全株主に無償で割り当て、買収者以外の者に買収者登場前の時価よりも著しく低い価額で株式を取得させて買収者の持株割合を低下させる等の内容の防衛策を平時のうちに開示して事前警告を行うものです(「新株予約権の法務・会計・税務」税務研究会出版局)。

ところが国税庁が、「新株予約権を用いた敵対的買収防衛策に関する原則的な課税関係について(法人税・所得税関係)(平成17年4月28日)」の中で、「新株予約権が実際に交付された場合、法人株主は新株予約権付与時に新株予約権の時価相当額の受贈益が生じ、個人株主は行使時に株式の時価と権利行使価額との差額について課税が生じる」との見解を公表したため、経済産業省は平成17年4月28日に、有事において行使可能な第三者に譲渡可能な形で設計されたライツプランの新類型を発表し、同日国税庁は、「新株予約権を用いた敵対的買収防衛策の【新類型】に関する原則的な課税関係について(法人税・所得税関
係)」の中で、新類型の場合、課税関係は生じない旨明らかにしています。

現在の新株予約権を有償で買い取る実務は、この流れに沿ったものです。そして、この流れは経済産業省と国税庁が後押ししたものであったわけです。

今回の報告書が、この方向性を翻し、新類型のライツプランを否定するものであるなら、国税庁は平成17年4月28日の見解について見直しを行い、ライツプランを発動したとしても一定の要件を満たした場合、株主側では一切課税が生じない、ということにしないと実務は動かないと思います。

この辺りの調整が経済産業省と国税庁との間で出来ているのかどうかわかりませんが、国税庁としてもなかなか容認し難いところだろうと推察されます。

【リンク】
「1 事前警告型ライツプランに係る税務上の取扱い(第一類型)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/050428/01.pdf
「新株予約権を用いた敵対的買収防衛策(ライツプラン)の【新類型】に係る税務上の取扱い(有事)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/050707/01.pdf




by yasukiyoshi | 2008-06-11 08:17 | 買収防衛策
2008年 05月 07日

防衛策廃止を決めた資生堂株価続伸

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や仏ロレアルなど外資大手がM&Aを繰り広げる化粧品業界。2年前に買収防衛策を導入して守りに入った資生堂が4月30日、防衛策の廃止を決めた。攻めへの転換を市場は好感し、株価は週末にかけて大幅続伸した。支持表明の広がりは、防衛策を導入する企業に対する市場の厳しい目を反映している。
(日経ヴェリタス 2008.5.4 11面)
【CFOならこう読む】
本件は、5月1日に当ブログで取りあげました。
http://cfonews.exblog.jp/7850217/

上記記事では、以下の後日談を伝えています。
「『サンキュー』。廃止を公表した2日後、資生堂に国際電話が入った。電話の主は同社株主でもある海外の機関投資家。決定の支持を伝えるものだった。ライバルの花王は買収防衛策を導入していない。市場関係者からは『そもそも導入しないのが当たり前』との声も聞かれる。」
買収防衛策の廃止を発表した4月30日の終値は2,495円、翌日の5月1日の終値は2,630円でした。上昇率は5.4%です。事例を積み重ねることにより、買収防衛策導入は株価にマイナス(廃止は株価にプラス)というコンセンサスが得られるようになることを期待します。

【リンク】
(株)資生堂 【東証1部:4911】Yahoo!ファイナンス
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=4911.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on


by yasukiyoshi | 2008-05-07 08:05 | 買収防衛策
2008年 05月 01日

資生堂、買収防衛策を取りやめ

資生堂は30日、6月の株主総会までが期限となっている買収防衛策について継続しないことを決めたと発表した。2年前に事前警告型の防衛策を導入したが、金融商品取引法など株式取得に関連する法整備が進んだことに加え、業績の伸びで時価総額も増加、買収リスクが低下した。市場からの批判もある防衛策を継続していく意義は小さいと判断した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D3008O%2030042008&g=S1&d=20080430
【CFOならこう読む】
買収防衛策導入の企業は、2007年末時点で413社。このうち8割以上が「取締役会決定型」(買収意欲をそぐため新株予約権の発行で対抗する際に、第三者で構成する独立委員会の判断を仰ぎ、取締役会で最終決定する形)でした。しかし、昨年八月の司法のブルドック判断を境に、対抗策を発動する際に必要に応じて、株主総会などで承認を求める株主判断型が増加しつつあり、1―3月に導入を決めた企業は16社あります。(2008年4月7日 日本経済新聞)

また、この事例を参考にして「敵対的買収者に金銭など対価を渡す可能性がある」と明記する企業も1-3月に買収防衛策を導入した40社のうち5割近い19社に上りました。資生堂は、2006年6月29日の定時株主総会で「取締役会決定型」の買収防衛策を導入しましたが、今年の定時株主総会で買収防衛策の期限が切れるため、新たな制度設計を上のような他社事例を踏まえた上で検討していたものと思われます。

結論としては、「大量買付に関する法制度の整備状況も勘案し、当社としては、本定時株主総会において、本プランの継続をお諮りするよりも、新3 ヵ年計画を着実に実行していくことこそが、グローバル市場における当社の競争力と持続的成長性を高め、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に繋がるものと判断し、本日開催の取締役会において、本定時株主総会終結の時をもって本基本方針を廃止し、以降、本プランを継続しない」(4月30日プレスリリース)ということです。

前田社長の「防衛作は『猛犬注意』の張り紙にすぎない。」との言葉はなかなかに含蓄があります。

なお、実務的には買収防衛策廃止に伴い定款変更(新株予約権無償割当ての決定機関に関する規定の削除)が必要となることに留意する必要があります。

【リンク】
平成20年4月30日「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続について」株式会社資生堂
http://www.shiseido.co.jp/ir/ir_news/img/067.pdf

平成18年4月27日「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の導入について」
http://www.shiseido.co.jp/ir/ir_news/img/018.pdf



by yasukiyoshi | 2008-05-01 08:37 | 買収防衛策
2008年 04月 28日

第三者割当増資に規制論

株主保護 問われる実効性 東証・監査役協会など検討
特定の企業や投資ファンドに株式を割り当てて資金調達する第三者割当増資に厳しい目が向けられている。一株利益が減るため株価下落につながりかねず、既存株主に不利としてかねて問題視されてきた。ところが実施企業が急増しており東京証券取引所、日本監査役協会などが規制の検討を始めた。株主保護に向けた実効性の高い規制を打ち出せるか、注目される。
(日本経済新聞 2008年4月28日 16面 法務インサイド)
【CFOならこう読む】
2006年夏に、王子製紙が北越製紙に対し敵対的TOBを仕掛けた際に、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受け、24%強を出資する筆頭株主になることにより、敵対的TOBが阻止された事件を皆さんご記憶だと思います。日本では授権株数の範囲内であれば、第三者割当増資は取締役会の決議で行うことができます。したがって、第三者割当増資を買収防衛策として利用することが取締役会決議のみでできるのです。上記記事にもあるように、第三者割当増資の違法性が問われる場合もあります。
「一つは株主総会の特別決議を経ずに株式を市場価格より特に有利な価格で第三者に割り当てる「有利発行」。もう一つは発行の主要目的が資金調達でなく、企業の支配権の維持や移動を目的とした「不公正発行」の場合だ。いずれも会社法で禁止されている。」
つまり資金の使い道が決まっていて割当価格が大幅に安くないケースでは第三者割当増資が認められるのです。北越の事例でも、第三者割当増資は設備投資のために行われることが発表されていました。これを規制するために「東証の自主ルールで規制する」すなわちニューヨーク証券取引所のように20%を超える株式を発行する場合、株主総会決議にかけるようにするというのは、一つの方法であると思います。しかしこれだけでは、ブルドック事件以降加速している、株式持合いを含めた安定株主作りの流れを一層強めることになりかねません。

上場会社の増資は原則公募増資とすべきです。取引所は第三者割当増資を例外的なものととらえ、一定規模以上のものは個別に審査をするという位の規制をしないと日本では機能しないと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-28 08:59
2008年 04月 17日

買収防衛型ファイナンス?-住友金属鉱山のケース

割高な調達コスト 株主への説明難しく
「調達コストが高すぎないか」。住友金属鉱山が2月に調達した「新株予約権付ローン」に対して、市場関係者の間でこんな感想が聞かれた。
このローンでは、住友金属鉱山が三井住友銀行から1000億円を借り入れるとともに、同行に新株予約権2万個を割り当てた。金利は実質年1.45%で基準金利のスワップ金利に対する上乗せ幅は0.36%前後だった。
ある国内証券の担当者は「1000億円の巨額調達とはいえ、普通社債なら上乗せ幅は0.2%前後で済み、年利は1.29%程度になったはず」と解説する。
住友金属鉱山株式を取得できる新株予約権の価値を含めれば、実は普通社債より金利が安くなってもおかしくない。にもかかわらず、金利が高いのはなぜか。「自社の判断で自由に資本調達をコントロールできるようにしたかった」(田尻直樹常務執行役員)という住友金属鉱山側の要望が一因だ。

(2008年4月17日 日本経済新聞 14面 検証買収防衛型ファイナンス)
【CFOならこう読む】
私はこの日経の記事がよくわかりません。
2月1日に住友金属鉱山の新株予約権付ローンをこのブログでとりあげました。
http://cfonews.exblog.jp/7170502/

この日の日経はこのスキームについて「通常の借入金に比べ低利のため今回のスキームを採用することにした。」と報じていました。
それが今日の日経の記事は、「金利が高い」と評価しているのです。しかもその理由を「万が一のための用心棒代」と説明しているのです。

私には社債マーケットについての勘が備わっていないので、金利の高い安いを論じる能力はないのですが、あえて言わせてもらえば、そもそもCBを始めオプションが付与されているデットで資金調達をする理由は、一括法により会計処理をすることができるため表面金利を引き下げることができるからのはずで、”金利が高い”株式転換型のデットによりあえて資金調達をしようと考える企業があるとは思えないのです。

今日の日経17面は住友金属工業の7年債百億円の募集について報じています。利率は1.35%、国債利回りに対するスプレッドは0.4%。住友金属工業の格付けはダブルAマイナス、住友金属鉱山の格付けはシングルAプラス(JCR)であることを考えると1.45%という金利が特に高いという風には思わないのですが…

【関連過去記事】
2008年02月16日「社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も 」
http://cfonews.exblog.jp/7274985/
【リンク】
平成20年1月31日「新株予約権付ローンに係る第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付)」住友金属鉱山株式会社
http://www.smm.co.jp/release/2008/pdf/20080131-2.pdf

2008年04月16日「UPDATE2: 住友金属工業<5405.T>、期間7年国内SB発行条件を決定=利率1.35% 」ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK011854820080416?rpc=144


by yasukiyoshi | 2008-04-17 10:49 | 資金調達
2008年 03月 31日

買収防衛策導入から3年 経営陣の保身見え隠れ

買収防衛策の導入が日本でスタートして丸3年。昨夏、最高裁も初判断を示し、6月総会を前に多くの企業で導入の是非などを巡り最後の検討が進む。防衛策の現状と展望を探った。
 (中略)
わが国での防衛策導入に拍車をかけた経済産業省「企業価値研究会」は米国モデルとした。20年以上前、普及が始まった米国の防衛策は現在、株主のために取締役会が買収価格を引き上げる交渉ツールとして機能している。
かたや、日本の経営者は経営権の移動を阻止する=地位を保全する役割を防衛策に期待しているようだ。実情に詳しいある識者は「従業員、会社を守るためだという経営者と話し込むと、自分のポストを死守するという本音が透けてみえる」と話す。背景にはわが国のサラリーマン社長の報酬が米国の敏腕経営者に比べ低いこと、社長が転職する経営者市場が未成熟なことが考えられるという。

(2008年3月31日 日本経済新聞 19面 法務インサイド)


【CFOならこう読む】

買収防衛策は、核爆弾同様、抑止力として利用するものであって、決して使用してはいけないものです。ところが日本の企業は、これを使用することを前提に考えるから、買収者に金銭的な保障をするとか、発動の際に株主の同意が必要とか、おかしな議論になるのです。

株主が買収の可否について判断できるだけの十分な時間と情報が開示されるなら、むしろ買収防衛策の導入は容認されない、という位の法的手当てが必要であると私は思います。特に従業員(=経営者)主権とも言うべき日本の上場企業では、組織の安定が優先されるに決まっています。

良くも悪くも組織に大きな変革を強いることになる敵対的買収を、企業価値が増大するなどという神の世界の論理で納得することなど到底できないのです。しかし良い買収は企業価値を増大させ、その結果社会全体の富を創造します。また買収の脅威は経営者への規律付け効果を生じます。ですから良い買収が経営者(=従業員)の裁量で排除されることは、法的に回避される手当てが必要だと私は思うのです。
ところで記事はこれを経営者の保身という趣旨で書いていますが、私はこれは違うと思います。

昨年10月6日に紹介した「歴史の終わり」(フランシス・フクヤマ著 三笠書房)という本の中の次の文章を再度引用します。
「たとえば、日本の文化は(東アジアの他の多くの国々と同様)個人よりも集団志向が強い。この集団は、家族というもっとも身近な最小単位からはじまり、躾や教育によって確立されるさまざまな師弟関係を通じて広がり、勤務先の会社、そしてさらには日本文化にとっていかなる意味においても最大の集団、国家にまでいたる。ある個人のアイデンティティは、まったくといっていいほど集団のアイデンティティに押し殺されている。彼は自分の目先の利益のために働くのではなく、自分が所属している集団や、あるいはもっと大きな集団の福利のために働くのだ。」

「こういう集団への一体化こそが、日本の大企業の一定部分にも採用され効果を発揮している半永久的な終身雇用のような慣行を生み出しているのだ。西欧の自由主義経済の教訓からすれば、終身雇用は被雇用者に安心感を与えすぎることによって経済効率を損ねてしまうはずである。」

「ところが日本文化のなかに育まれた集団意識の現状からいえば、会社が社員に示す家族主義的な温情に報いるため、社員の側は涙ぐましい努力を払い、自分自身の利益はもとより、いっそう大きな組織の栄光と名声のためにも働くことになる。」
経営者も従業員も会社という名の集団に殉ずる者達であり、”原理原則”を押し付けたところで何も変わらないのです。これを変えるのは”法の力”しかないと私は思うのです。

【リンク】

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by yasukiyoshi | 2008-03-31 10:12 | 買収防衛策
2008年 02月 21日

新日鉄取引先持株会立ち上げ

新日鉄、取引先持株会を立ち上げ・親密な100社強参加
新日本製鉄は取引企業で構成する「取引先持株会」を立ち上げた。3月以降、参加企業が払う毎月の拠出金で証券市場から新日鉄株を継続的に買い付ける。同社の仕入れ先企業は千数百社にのぼるが、まず購買などで親密な100社強が参加する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080221AT1D2009A20022008.html

【CFOならこう読む】

いつか来た道にまた戻ろうとしているように思えます。
昔は、資本政策の要諦は安定株主作りとされ、取引先も重要な安定株主として位置付けられていたものです。上場指南本にもそんなことが必ず書かれていました。しかし時代が変わり、株主価値創造を志向する会社が増える中で、政策的投資を受けることも投資することも好ましくないというコンセンサスが徐々に出来つつあるように思います。

実際株式持合いは大きく減少しています。M&Aにしても徐々に抵抗が薄れ、株主価値を創造する買収なら受け入れるというまっとうな感覚を持つ経営者が増えているように思います。一方買収の脅威に対し過度に反応する旧態然とした一部の会社がしゃにむに安定株主作りに勤しんでいるのもまた事実です。新日鉄もそんな会社の一つです。新日鉄は平成18年に新株予約権による買収防衛策を導入しています。この買収防衛策導入のプレスリリースに次の記載があります。

「当社に対し買収を行おうとする者がいる場合に、これを受け入れるか否かの最終的な判断については、その時点における株主の皆様に委ねられるべきものであると考えます。」
最終的には一般投資家による民主的な判断に委ねるという極めてまっとうな姿勢と安定株主作りがどこでどう繋がるのか私にはさっぱりわかりません。

それにしても日経の好意的なこの記事は一体どういうことでしょう。

【リンク】
「株主・投資家の皆様へ」新日本製鉄
http://www0.nsc.co.jp/investor/


by yasukiyoshi | 2008-02-21 08:09 | 買収防衛策
2008年 01月 05日

オートバックスセブンの新株予約権付社債発行差止事件の地裁判断

昨年話題にした事例の中でその顛末をお話ししたかったけれど、その機会を逸してしまったものがいくつかあります。オートバックスセブンの事例もそのひとつです。
オートバックスセブンの新株予約権付社債に関する私の記事は次の通りです。

買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その2
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その3
買収防衛策としての転換社債型新株予約権付社債の発行―オートバックスセブンのケース その4

記事の中で東京地裁の判断は理解できない旨書きましたが、具体的に裁判所の判断の具体的な内容については不明でした。この件商事法務No.1816の52ページに簡単な記事が掲載されていましたので、今朝はこれを取り上げます。

記事は不公正発行であるかどうかの裁判所の判断について書いていません。有利発行であるか否かが本件における主な争点であったとして、地裁の有利発行でないとした理由を次のように記載しています。ちなみに裁判長はまたまたあの鹿子木康氏です。

「本件における主な争点は、本件新株予約権付社債が有利発行に当たるか否かについてであり、オートバックスセブンの委託を受けたブルータス社の算定では、モンテカルロ・シミュレーションを用いて、本件新株予約権の公正な価値を198万円としていた。これに対し債権者は新株予約権の公正な価値は第1回が2498万円、第2回は876万円であり、本件新株予約権付社債は特に有利な条件で発行されるものであると主張した。
 鹿子木裁判長は、本件社債と普通社債との利率の差を、オートバックスセブンとR&Iの格付け同じ他社の普通社債発行事例のスプレッド等と比較するなどした上で、オートバックスセブンが5年満期の普通社債総額650億円を発行する場合に想定される利率を1.787%としたブルータス社の算定に不合理はないと判示した。そして、額面金額1億円の本件新株予約権の対価は、393万5000円(1.787%-1%)×1億円×5年間)で、これを1.787%の割引率で割り戻すと、発行時点の現在価値は373万円となることが一応認められるとして、(中略)有利発行に該当するということはできないとして、債権者の申し立てを却下したものである」

【CFOならこう読む】
行使価格が現在の株価と同じ価格であるならこのような計算は合理性があるのかもしれませんが、付与株式数が既存株式数の44%と大きな希薄化が伴う本件のような新株予約権を評価する場合には、希薄化を予期して既存株式の株価が大幅に下落する恐れがあり、オプション評価モデルによって算定される理論価格は希薄化を考慮して修正することが必要であると考えられますが、上の評価にはこれが勘案されておらず、ナンセンスと言わざるを得ません(この点例えばブリーリー=マイヤーズ コーポレートファイナンス(第6版)下巻70ページを参照のこと)。

実際に株価は10月25日終値2890円から11月9日終値2395円に大きく下げた事実を裁判所はどう考えるのでしょうか。さらに言うなら373万円を裁判所が公正価値と判断するなら、何故会社の198万円という評価が有利発行に相当しないと言えるのか理解に苦しみます。

ライブドア事件で東京地裁は、「特に有利なる条件」による新株予約権の発行とは、公正な発行価額よりも特に低い価額による発行をいうところ、新株予約権の公正な発行価額とは、現在の株価、権利行使価格、権利行使期間、金利、株価変動率等の要素をもとにオプション評価理論に基づき算出された新株予約権の発行時点における価格をいう」の判断を示しています。この判断と本件の判断は明らかに矛盾しています。

【リンク】
2007年10月26日「第三者割当により発行される無担保転換社債型新株予約権付社債の
募集に関するお知らせ」株式会社オートバックスセブン
http://www.autobacs.co.jp/seven/release/news.php?id=939&PHPSESSID=f4a51cbad8
df6bdce98f6de2d10a561c


2007年11月7日「当社に対する新株予約権付社債発行差止仮処分の申立てに関するお
知らせ」株式会社オートバックスセブン
http://www.autobacs.co.jp/seven/release/news.php?id=944


by yasukiyoshi | 2008-01-05 10:51 | M&A
2007年 12月 10日

経済産業省、複数議決権株式上場解禁を東証に求める

複数議決株の上場解禁を・経産省、安定経営促進へ提言
経済産業省は株主が1株で複数の議決権を行使できる「複数議決権株式」の上場を容認するよう東京証券取引所に求める。創業者ら経営陣が複数議決権株式を保有し株主総会の議決権の大半を握ることで、長期的視野から安定的経営をできるようにする狙い。経営陣以外の株主の意向にも配慮するため、複数議決権株式の上場ルール策定も提言する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S07016%2008122007&g=E3&d=20071209

【CFOならこう読む】
創業者等の特定の株主が複数の議決権を持つことにより、経営者が過半数の議決権を保持することが可能になります。ニューヨーク証券取引所等米国の証券取引所は、現在では既存の公開企業による新規の複数議決権株式の発行を禁じています。ただし新規公開の際に複数議決権株式を発行することは禁じられていません。グーグル創業者の複数議決権株式が有名です。

資本市場における個人株主の比率が低く、民主的な経営とは程遠い日本のコーポレートガバナンスを前提にすると、このような“規制緩和は百害あって一利なし“であると私は思います。

それにしても経済産業省管轄化に企業価値研究会なるものがあり、これがまとめた提言を東証につきつける、という構図はいかがなものでしょう。

【リンク】
なし


by yasukiyoshi | 2007-12-10 09:02 | 買収防衛策
2007年 12月 07日

委任状争奪戦-モリテックスのケース

モリテックス役員選任決議、東京地裁が取り消し
画像処理機器メーカー、モリテックスの株主総会での委任状争奪戦を巡る手続きが違法だったとして、筆頭株主で制御機器メーカーのIDECがモリテックスの取締役・監査役選任の決議取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は6日、IDEC側の主張を認める判決を下した。判決は日本でも急増する委任状争奪戦の透明性を巡る議論に大きな影響を与えそうだ。モリテックスは控訴する方針だが、経営の混乱を避けるためにIDECに歩み寄るとの見方もある。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D06095%2006122007&g=S1&d=20071206

【CFOならこう読む】
裁判所が上場企業の役員選任決議を取り消した初めてのケースだそうです。ちなみに裁判長は鹿子木康、あのスティール・ブルドックの裁判を担当した人です。ポイントは2つ。

①モリテックスが株主の議決権行使を促す目的で総額約450万円分のクオカードを配布していた。
議決権行使比率低下に悩む会社が商品券などを配布するケースは少なからずあります。モリテックスの場合、株主に配った葉書に「会社提案にご賛同のうえ、議決権を行使してほしい」と書かれていたことを裁判所は問題視し、「会社法で禁じる利益供与に当たる」と認定しました。会社提案に賛成した株主にのみ500円のクオカードを配布するとの誤解を株主に与えた、ということです。

②モリテックスが「IDECの委任状には(モリテックスの)会社提案の賛否論がない」との理由で集計対象から除外していた。
モリテックスは同社側の提案が出席株主の過半数の賛成を得たとしていたが、その際IDEC側の委任状を集計の母数に含めていませんでした。これは「IDEC側の委任状は証券取引法が定める会社提案の賛否論がない」ことをその根拠としたものですが、地裁では、株主のIDECは総会の招集通知を受け取るまでモリテックスの株主提案を知ることができないので、物理的に委任状に会社提案の賛否欄を設けることができないという面を考慮し、「会社側の賛否欄がなくても有効」と判断しました。

常識的に考えて会社とIDECが委任状争奪戦を行っている場面で、IDEC側の委任状はIDEC提案賛成、会社提案反対に決まっているわけで、会社の理屈は相当無理があると思います。

地裁の判断は妥当であると思いますが、IDEC側にも委任状争奪戦に向けて株主に十分な情報開示を行ったかどうかについては疑問があり、その点IDEC側にも少なからず問題があったと私は思います。

何故モリテックスでこんなゴタゴタが起きているかというと、モリテックスの個人株主比率が67%と非常に高いからです。今回の件をきっかけにまたぞろ安定株主工作(株式持ち合いも含む)に走る上場企業が増えることが危惧されます。

【リンク】
2007年6月19日「株式会社モリテックスが発送されました2007 年6 月14 日付「『議決権行使書』ご返送のお願い」と題する文書等について」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj070619.pdf

2007年5月18日「(追加)株式会社モリテックスからの必要情報リストによる質問事項に対する
当社の回答について」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj070518.pdf

平成19年6月1日「当社中期経営計画『GLOBAL10』とIDEC社株主提案との比較について」株式会社モリテックス
http://www.moritex.co.jp/home/ir/070601_3.pdf

2007年12月6日「株式会社モリテックスに対する株主総会決議取消請求訴訟の判決に関するお知らせ」IDEC株式会社
http://www.idec.com/jpja/investor_center/news_events/pdfs/kj071206.pdf



by yasukiyoshi | 2007-12-07 08:58 | M&A