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2008年 10月 20日

エルピーダMSCB発行

エルピーダ、逆張りの資金調達 市場低迷時のCB発行、嫌気され株価急落
エルピーダメモリが発行を決めた500億円のCBの評判が芳しくない。株式市場では1株価値の希薄化を嫌気した売りが殺到し、株価は発表翌日の15日から3日連続で制限値幅の下限まで売り気配を切り下げた。3日間の累計下落率は36%に達し、初めて1000円台を割り込んだ。17日の終値は883円。ただでさえ株式市場が冷え込んでいる時期に、なぜ株価下落のリスクをはらむ資金調達に踏み切ったのか。坂本幸雄社長が得意とする「逆張り経営」の真価が問われている。
(日経ヴェリタス 2008年10月19日 16面)
【CFOならこう読む】
会社は、今回発行されるCBの特徴を次のように説明しています。
「本新株予約権付社債には、①毎月一度、転換価額がそのときの株価の93%に相当する金額に修正されるという転換価額修正条項に加え、②割当先である「Nomura AsiaLimited」との間で、原則として毎月一定数量(社債額面金額50億円)を転換する旨の合意をする予定であり、さらに③原則として償還期限の前取引日において残存する新株予約権付社債全てが株式に切り替わるという取得条項が付されていることにより、着実な資本拡充が期待できます。なお、このような新株予約権付社債においては、発行後に株価が上昇すれば希薄化の度合いが小さくなり、株価が下落すれば希薄化の度合いが大きくなる一方、当社は、株価の推移に関わらず当社の判断で繰上償還を行う権利(コールオプション)を有することから、想定外の急激な株価下落により当社の予想と異なる速度・程度で希薄化が進む蓋然性が高まった場合等において、資本政策を柔軟に見直すことが可能となっております。」
何故、株式市場が最悪なこの時期にエクィティファイナンス(しかもMSCB)に踏み切ったのでしょうか?

記事は次のように説明しています。
「エルピーダはいち早く最新鋭の生産設備に移行するなど、コスト競争力は業界の中でも高い。それでも赤字になるなら「他社は膨大な赤字になっているはず」(エルピーダ)だ。世界的に金融市場の信用収縮が進み資金調達も容易ではない。坂本社長は「資金繰りの悪化で、近い将来に業界再編が一段と進む」と予測する。他社にのみ込まれるのではなく、のみ込む側になるための条件とは、豊富な手元資金を持つことに尽きる。
エルピーダは銀行団と締結している融資枠(コミットメントライン)のうち、長期のコミットメントライン1100億円を10月中に全額引き出す。それだけでは足りずに500億円の資金調達を決断した。これで手元資金は2500億円程度に増える。2年間の設備投資を賄える額だ。
坂本社長は長年の経験から「不況時こそチャンス」という半導体業界の鉄則が深く体に染み込んでいる。今回のような不況時には業界全体が投資を抑制しており、好況時よりも大幅に安い価格で製造装置を購入できる。業界再編となれば経営が行き詰った他社の持つ製造設備を格安な条件で買うこともできる。荻原俊明CFOは「今、調達する500億円は好況時の1000億円に匹敵する」と話す。だからこそ悪条件の中で、逆張りの資金調達に踏み切った。」
DRAMの市況回復が不透明な現状においてエクィティファイナンスを行おうと思えばMSCBしかないのかも知れませんが、多くの株主には容認できないところでしょう。

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それでも中長期的な価値創造に確信があるなら、マネジメントは意思決定すべきです。短期的な株価の動きに惑わされるべきではない、と私は思います。

【リンク】
2008年10月14日「第三者割当による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債発行に関する
お知らせ」エルピーダメモリ株式会社
http://www.elpida.com/pdfs/pr/2008-10-14mj.pdf

2008年10月17日「第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行条件の決定に関するお知らせ」エルピーダメモリ株式会社
http://www.elpida.com/pdfs/pr/2008-10-17mj.pdf


by yasukiyoshi | 2008-10-20 09:26 | 資金調達
2008年 10月 08日

今日の経済教室

中小企業の高成長実現に CFOの存在が不可欠 忽那憲治神戸大学教授
筆者のかつての分析では、中小企業の成長に大きな影響を与えていたのは、資金調達に関連するものでは外部株主の導入と計画の作成という2つの要素だった。今回の7社へのヒアリング調査でも、高成長中小企業にはこうした特徴が顕著に見られた。だがその背後には社長以外で経営に携わるスタッフの存在、具体的にはCFO人材の加入がかかわっており、高成長を達成する上での重要な要因となっていることが明らかになった。
【CFOならこう読む】
忽那教授はベンチャー経営研究の分野でとても有名な学者です。忽那教授はCFOの必要性について次のように述べています。
「技術ベースのベンチャー企業の場合、ファイナンスに関する知識が不足していることが多い。そうした場合、事業のリスクを分析したうえで、成長資金の調達のための資本政策を作成し、事業計画書にまとめ、実行できる経営レベルの人材が重要になる。これがCFOである。」
そしてCFO人材の加入が大きな効果を生んだ次の事例を紹介しています。
「電子商取引関連事業を営むビックタウン(東京・中央)は2年前に同社の顧問税理士A氏を財務担当役員のCFOとして迎え入れた。創業当初は政府系金融機関に2千万円の融資を申し込んでも、5百万円しか調達できないような資金繰りだったが、A氏の参画以降、銀行からの借入れが楽になったという。株式公開を目指すようになった同社は、事業計画書を作り直し、これがVCから高く評価され、多くのVCから投資提案が舞い込んだ。
だが順調な事業拡大で資金繰りが良好だったため、このCFOは「事業をさらに軌道に乗せ、時価総額を上げた後に、より有利な条件でVCから資金を調達した方が得策」と判断。VCなどへの第三者割当増資で20007年3月に1億5千万円を調達した際は、時価総額を10億円にまで高めた段階で実施したため、VCの保有比率は13%程度に抑えることができた。財務担当者が会社に加わることで、銀行との融資交渉が円滑になっただけはでなく、VCからの資金調達でも既存株主の保有比率の低下を抑えることができたわけだ。」
忽那教授の議論は全く的を得ていますが、高成長中小企業にCFOが必要であるということを言っているのであって、良いCFOがいれば成長できると言っているわけではないことに注意する必要があります。高成長企業だからこそCFOの活躍できる機会があるのです。CFO自信もこの辺りを見据えたうえで、仕事場を選択する必要があると思います。

それから忽那教授はCFOの職能として資金調達に焦点を絞った議論をしていますが、これは中小企業のCFOとしてはとても重要ではありますが、上場企業のCFOまで含めてその職能を考えると、M&A、配当政策立案、資本コスト管理、投資の採択、IR、リスク管理、税務戦略、システム構築等カバーしなければならない範囲は非常に広く、必ずしも資金調達がCFOにとって最も重要な仕事というわけではないという点にも留意が必要です。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-08 10:25 | 資金調達
2008年 10月 07日

貸し渋りの実態調査開始

金融庁と中小企業庁、中小金融の実態調査を開始
金融庁は6日、中小企業庁と共同で地方の中小企業の業況や資金繰りの実態調査を開始した。全国150カ所の企業が対象。金融庁は中小金融の円滑化を進めているが、調査の結果次第では追加の対策を打ち出す可能性もある。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C0601O%2006102008&g=E3&d=20081006
【CFOならこう読む】
「「期限直前になって借り換えはできないと言われた」と訴える中小企業が増えてい
るという。」
(日本経済新聞 2008年10月7日 5面 視点より)
私の周りにも、これに近い話がたくさんあります。今頃調査を開始するというのでは、遅きに過ぎますが、やらないよりはまし、早急に対策を講じてもらいたいと思います。

昨日の国会でも、北側公明党幹事長の「金融機関による貸し渋りがある。柔軟な融資をすべきだ」という質問に対し、中川財務・金融担当相は、「金融機関が目の前の赤字や債務超過といった数字だけでなく、地域に密着した企業の良い面を把握できるようにしなくてはならない。金融庁として、関係団体に柔軟にきめ細かく対応するよう指示している」、与謝野経済財政担当相も「融資保証の業種拡大などは思い切ってやる。11月の早々には新制度による保証が可能となるよう準備を始めている。国会でも配慮をお願いしたい」と答弁しています。

問題の一端は、昨年10月の信用保証制度の変更にあります。従来は協会が損失の全額を負担していたが、新たに金融機関が2割を負担する「責任共有制度」に変えたことにより、中小企業に対する金融機関の融資姿勢が慎重になっているといるのです。
「保証協会が保証すると言っても融資を断る金融機関がある。制度変更が『貸し渋り』を招いている」(東京中小企業家同友会)状況を打開するためには、全額協会負担に戻す以外ないでしょう。

日本経団連の御手洗会長が、昨日、記者会見を行い、「補正予算案を早期に成立させ、中小企業の資金繰り対策や個人・企業への減税など緊急の経済対策を検討すべきだ」との緊急提言を行ったとのことですが、そんな他人事のようなことを言っている場合ではありません。事態を見据えた具体的な提案を行ってもらいたいものです。
経団連会長、追加対策を緊急提言
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081007AT3S0601W06102008.html
日本経団連の御手洗冨士夫会長は6日の記者会見で、米金融危機を引き金に世界経済への不透明感が強まったことを受け緊急提言を公表した。まず必要なのは「各国政府、金融当局が協調し、金融システムを沈静化すること」と指摘。次に国内では「補正予算案を早期に成立させ、中小企業の資金繰り対策や個人・企業への減税など緊急の景気対策を検討すべきだ」と追加策を求めた。

 「補正予算案の早期成立を望む」と題した提言をまとめた。国内外の景気情勢は「米国発の金融システム不安が広がり、世界同時不況への瀬戸際に立たされている」と言及。6日の日経平均株価の下落に関しては「金融不安が欧州にも飛び火し、市場はこれからも(危機が)出てくると読んで株価に表れている」との見方を示した。(07:01)
【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-10-07 09:34 | 資金調達
2008年 09月 30日

SPCを使ったオフバランス取引-ビックカメラのケース

SPCを使って、資産や負債をバランスシートから切り離すオフバランス取引に厳しい視線が注がれている。表面的には分離されていても、企業による実質保有が続いている可能性があるからだ。SPC取引の問題点を探る。
(日本経済新聞 2008年9月30日 16面 揺れるSPC取引 上)
【CFOならこう読む】
e0120653_2021920.jpg2002年8月、ビックカメラは、東京・池袋本店と本社ビルを2002年8月に特別目的会社である有限会社に290億円で売却し、この有限会社が不動産を担保に、小口の証券を発行、販売しました。いわゆる「不動産の証券化」です。

記事によると、同社元社員が経営に携わっていた「豊島企画」(同渋谷区)も約70億円出資していたということです。

特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)は、流動化の要件として、リスク負担の金額の割合が流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)の5%以内であることを求めています(第13項)。そしてこの計算には譲渡人の子会社又は関連会社が負担するリスクを含めなければならないことになっています(第16項)。

ビックカメラは14億5千万円の劣後出資を行っています。この金額は流動化した池袋本店と本社ビルの時価290億円のちょうど5%に当ります。豊島企画が子会社であるということになると流動化の要件を満たさなくなるのです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-30 09:19 | 資金調達
2008年 09月 29日

日本経済回復への道標

再び失望を招く日本経済
4~6月期再びマイナス成長に陥った日本経済。高すぎる輸出依存度を解消するため、内需の喚起が必要であることは自明の理である。しかし実現への議論さえいまだ始まっていない。
-スミザーズ・アンド・カンパニー会長 アンドリュー・スミザーズ氏

(日経ヴェリタス 2008年9月28日 26面
【CFOならこう読む】
スミザーズ氏は、次のように、日本経済が上向かない理由が構造的な不均衡にあると指摘しています。

「日本は過去数年にわたる限定的な経済成長を輸出と企業の設備投資に依存してきた。個人消費が弱すぎる一方、企業の設備投資が多すぎるというようにバランスが悪いため、内需は低迷したままだ。日本企業による国内投資のGDP比率は米国企業よりも50%上回っている。それが正当化されるのは日本が米国に比べて相当高い成長を遂げている場合だが、実際は逆に米国の成長をはるかに下回っている。日本企業の投資は成果を生まず、大半が無駄に使われている。その結果、投資収益率も低いままだ。
中国を含む世界経済が減速してきたことで、日本経済の輸出依存度の高さは慢性的というより差し迫った問題になってきた。日本は内需を喚起する必要がある。投資が過大で輸出依存度が高いことを考えれば、消費を通じて内需拡大を達成しなければならない。
消費拡大を実現するには、家計の所得を増やすか、あるいは貯蓄率を減らすしかない。しかし貯蓄率は既に過去10年間で11%から3%に低下している。今後さらに下がる可能性はあるものの、景気を押し上げるほどの大幅な低下余地があるとは思えない。このため消費拡大には所得増加が必要になるが、所得増加が必要になるが、所得も伸び悩んでおり、GDPに対する所得比率は他の主要国よりも低い水準だ。」
内需喚起のためには、企業の利益を減らしその分賃金引き上げるしかない、という安直な議論があります。先週末久々に”朝まで生テレビ”を見ましたが、民主党の議員がそのようなことを力説していました。しかし、そんなことをすれば、スミザーズ氏が言うように、「企業の利益が減れば、設備投資が急激に落ち込み、経済全体としては低迷する。」ということになります。

結局、日本経済の構造的問題を解決する方策は、野口悠紀雄氏が言う”資本開国”しかないように思います。

「外国企業による直接投資が投資受入国の経済成長を促進したことは、多くの研究で明らかにされている。OECDのデータによると、国内企業と進出外国企業の労働生産性を比較すると、総じて進出外国企業の水準が高いことが示されている。先進国中では労働生産性水準が下位に位置する日本はもちろんのこと、労働生産性水準が高いアメリカ、フランス、オランダといった国でも同様の結果が示されている。日本に外国企業が進出してくれば、労働力の移動や企業間競争の促進を通じて、日本経済の労働生産性向上に寄与するだろう。」(「資本開国論」野口悠紀雄 ダイヤモンド社)
我々一人ひとりが、外国企業を受け入れるために何をなすべきかを、真剣に考えるときが来ているように私は思います。と同時にそういう時代が来ることを前提にCFOは今から準備する必要があると思います。

【リンク】
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄

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by yasukiyoshi | 2008-09-29 11:03 | 資金調達
2008年 09月 26日

東武のハイブリッド証券

東武鉄道、転換社債800億円発行 東京スカイツリー地域の開発
東武鉄道は25日、ユーロ円建て新株予約権付社債(転換社債=CB)を800億円発行すると発表した。発行に伴う費用を除いた784億円を、有利子負債の削減と設備投資に充当する。地上デジタル放送の電波タワー「東京スカイツリー」(東京・墨田)を中心とする業平橋・押上地区の再開発に備え財務体質を強化する。
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hotnews.aspx?site=MARKET&genre=c1&id=AS2D2500F%2025092008
【CFOならこう読む】
東武の資金調達のスキームは次の通りです。

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平成20年9月25日プレスリリースより

東武は、2012年春の開業を目指す「東京スカイツリー」建設など資金需要が旺盛ですが、一方中期経営計画の中で負債の削減目標を掲げており、負債による資金調達は行えない状況にあるため、SPC(子会社)を通じて優先出資証券を割り当てることによる方法を選択しました。

会社はプレスリリースの中で、この資金調達方法を選択した理由を次のように説明しています。
「① 本優先出資証券は、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、主要格付機関(株式会社格付投資情報センター及び株式会社日本格付研究所)から、70%以上の資本性が認められる見通しであるなど、実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性も兼ね備えております。
自己資本を直截拡充できる時価発行増資では、発行済株式の増加及び一株当たり利益の減少等の株式の希薄化を招くことになり、他方、長期負債の積み増しでは実質的な財務改善につながりません。今般の資金調達については、これらの手段に比して、株式の希薄化の抑制と、実質的な資本増強による財務構成比率の改善の双方を実現できるものと判断しております。

② 当社が発行する社債に新株予約権を付与すること(本優先出資証券には、本新株予約権付社債に交換することができる交換権が付与されており、当該交換権を行使した場合は、本優先出資証券は本新株予約権付社債に交換され、当該新株予約権付社債は自動的にかつ直ちに当社の普通株式に転換されます。)により、本邦でも実績のある海外SPCを通じた株式への交換権を付与せず優先出資証券を発行する調達手段に比して、相対的に有利な金利(配当)条件で資金調達を行うことが可能となっております。
但し、既存株主の皆様に配慮した商品性を実現すべく、時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定するとともに現金決済による取得条項(※)を付与することにより、将来の株価上昇時においても株式の希薄化を極力抑制することを重視致しました。
※ 【現金決済による取得条項及び償還について】
本新株予約権付社債には、発行から5年経過以降において、当社がその裁量により、一定期間の事前通知を行うことにより下記の財産の交付と引き換えに本新株予約権付社債を取得する権利が付与されます。TR社は、当社が本新株予約権付社債の現金決済による取得条項の権利を行使した場合には、当社から交付される下記の財産を対価として本優先出資証券を償還します。
なお、当社及びTR社は、本優先出資証券の割当先との間で、割当先の当社の議決権保有比率が銀行法上の制約である5%を超過することとなる現金決済による本優先出資証券の償還を行わないことを約束する予定です。この限りにおいて、現金決済による本新株予約権の取得条項を行使できる当社の権利は制約されることとなり、期待する効果が限定される可能性があります。
(ⅰ)額面金額並びに1口当たり金額の100%に相当する金額、及び
(ⅱ)転換価値から額面金額並びに1口当たり金額を差し引いた額(正の数値である場合に限る。)を1株当たり平均VWAPで除して得られる数の当社普通株式
・ 転換価値: (額面金額÷転換価額)×1株当たり平均VWAP
・ 1株当たり平均VWAP: 当社が取得通知をした日の翌日から5取引日後の日から始まる20連続取引日に含まれる各取引日において株式会社東京証券取引所が発表する当社普通株式の売買高加重平均価格の平均値

③ 本邦においては事業法人による今般の資金調達のようなハイブリッド証券による資金調達のマーケットが必ずしも成熟しているとは言えない状況の中、当社子会社であるTR社が発行する本優先出資証券の特性に鑑み、且つ当社が企図する財務構成比率改善を実現するための今般の調達予定額を確実にするとの観点から、当社と長年の取引関係があり、当社の経営状況等についてご理解を頂いている主要取引銀行3行を割当先とする第三者割当方式による調達に決定した次第です。
東武本体で優先出資証券を発行しなかったのは、優先出資証券にCBへの交換権を付与することで金利を引き下げることが可能であるためです。ただしこの金利引き下げ効果については、このブログでも繰り返し指摘しているように、オプション部分を区分して会計処理しないことが認められていることから生じる一種のまやかしに過ぎず、実質的には格付けに応じた金利が支払われます。

【リンク】
平成20年9月25日「第三者割当による2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」東武鉄道株式会社
http://www.tobu.co.jp/file/1749/080925-1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-09-26 09:08 | 資金調達
2008年 09月 12日

アーバンコーポレイション バリバとの密約

消えたメリルのTOB
民事再生法の適用を申請し上場廃止が決まったアーバンコーポレイションが12日、東京証券取引所第一部の株式最終売買日を迎える。不動産市況の悪化と信用収縮が招いた今年最大の倒産劇の裏では、仏大手金融機関BNPパリバとの間で実施した資金調達の妥当性という問題が浮上。情報開示のあり方などの課題を投げかけた破綻の構図を検証する。
(日本経済新聞 2008年9月12日 16面 アーバンコーポレイション破綻の実相 上)
【CFOならこう読む】
記事には、
「アーバンコーポは7月11日、別の資金調達としてパリバを割当先に300億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行。その際に株価次第で実際の手取り額が減少する可能性のある「スワップ契約」を交わしていた。資産査定の過程でこの「密約」を発見したメリルは「契約を開示しないまま買収すれば、大きな法的リスクを抱えてしまう」と判断した。」
と書かれています。

スキームの全貌は次の通りです。
「7月11日 2010年満期 総額300億円のCBをバリバ向けに発行
転換価格 344円(開示日6月26日の終値)
資金使途 財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定

破綻まで存在が隠されていたスワップ契約の概要
7 月11日 BNP パリバに300 億円を支払う
パリバは手元にあるCBを株式に転換したうえで、市場の売買高の12~18%に相当する株数を市場で売却。
”売却した株数×その日の市場の売買高加重平均株価の90%”に相当する金額を日々アーバンコーポレイションに支払う。
出来高加重平均株価の算定の基礎となる株価に一定の下限を設定」
8月13日までの33日間のうち6日間しか下限価格を上回らず、結果としてアーバンコーポレイションが受け取った金額は92億円にとどまりました。
(日経ヴェリタス 2008年8月17日 14面)

CBとスワップ契約を一体のものとしてみると、MSCBとほぼ同じものになるにも関らず、この片側のみしか開示しなかったことが東証の適時開示規則に違反していないかという点と、スワップ契約という当事者しか入手できない未公表情報を知りながら、パリバがアーバンコーポレイションの株式を市場で売却したことがインサイダー取引にならないか、の2点について問題があるのではないかと、今日の記事は指摘しています。

【リンク】
株式会社アーバンコーポレイション ニュースリリース
http://www.urban.co.jp/news.html


by yasukiyoshi | 2008-09-12 07:53 | 資金調達
2008年 09月 03日

社債の発行残高増加

上場企業の社債の発行残高が増えている。2008年6月末時点で、貸借対照表に記載された残高は35兆2039億円と3月末に比べ2.6%増え、2・4半期連続の増加となった。米国発の金融市場の動揺が続く中、M&Aなど成長投資や株主配分に活用する資金を、早めに固定金利で調達しようと動いている。
(日本経済新聞2008年9月3日 17面)
【CFOならこう読む】
リチャード・クー氏が「日本経済を襲う2つの波」で指摘するように、日本はバランスシート不況から脱しようとしています。
e0120653_7474929.jpgバブル崩壊後借金返済に汲々としてきた日本企業は、ここにきて過剰債務が解消され、新たにお金を借りて新規投資に向かう気持ちになりつつあるのです。

CFOの重要な仕事としてディズニーの元CFOゲイリー・ウィルソンはHBR誌のインタビューの中で次のように語っています。
「戦略的なCFOが重視する点は2つある。第1は、会社の戦略目標を達成するために、資金を効率的に投資すること。第2は、最適の資本コストで資金を調達すること。」
バブル前は銀行がコーポレートガバナンスの中心にいて、このようなことを考える必要はなく、バブル後は借金を返すことが至上命題でしたから、最適資本構成は無借金であることでした。そういう意味で、ようやくCFOがCFOとしての本来の仕事が出来る時代が初めてやって来ようとしています。

発行体格付を落としても、資本コストの点からSBによる資金調達を選択したエーザイのケースはそのことを象徴しているように私には思えます。

【リンク】
日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方
リチャード・クー

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by yasukiyoshi | 2008-09-03 09:56 | 資金調達
2008年 08月 26日

富士フイルムのMSCB

MSCB転換価格引き下げも 富士フイルム、株価低迷で希薄化の懸念
富士フイルムホールディングスの株式の希薄化懸念が台頭している。株価は8月5日に3130円の年初来安値を付けた後も低迷が続き、過去に発行したMSCB(株価により条件が変わる転換社債)の下限転換価格(3770円)を下回っている。この状況が続けば、約1ヵ月後には転換価格が大幅に引き下げられ、潜在株が増える公算が大きい。富士フイルムがMSCBを発行したのは2006年4月。液晶偏光版保護フイルムの能力増強や、需要が落ち込んだ写真フイルム事業のリストラに対応するために、ユーロ円建てで合計2000億円を調達した。同社としては1983年以来23年ぶりのエクイティファイナンスだった。
大型のエクイティファイナンスを円滑に実施するために、富士フイルムは次のような仕組みを採用した。MSCBは5年債、7年債をそれぞれA号・B号の2本ずつ発行し、野村証券が全額引き受けた。野村はSPCを通じてMSCBを裏付けとした富士フイルム株と交換できる交換社債を組成し、個人投資家を中心に販売した。

(日経ヴェリタス 2008年8月24日 15面)
【CFOならこう読む】
MSCBの転換価額は次の通り定められています。
イ.各本新株予約権の行使に際して払込をなすべき額は、本社債の発行価額と同額とする。

ロ.転換価額は当社、当社の代表取締役社長が、当社取締役会の授権に基づき、投資家の需要状況及びその他の市場動向を勘案して決定する。但し、当初転換価額は、本新株予約権付社債に関して当社と幹事引受会社との間で締結される引受契約書の締結日の終値に下記の数を乗じた額を下回ってはならない。

2011年満期A号新株予約権付社債及び2011年満期B号新株予約権付社債 1.4
2013年満期A号新株予約権付社債及び2013年満期B号新株予約権付社債 1.3

ハ.転換価額の修正
転換価額は、(2011年満期A号新株予約権付社債及び2011年満期B号新株予約権付社債の場合)2009年3月31日及び2010年3月31日又は(2013年満期A号新株予約権付社債及び2013年満期B号新株予約権付社債の場合)2008年9月30日、2009年9月30日、2010年9月30日、2011年9月30日、2012年9月30日(以下それぞれを「修正日」という。)の翌日以降、各修正日まで(当日を含む)の10連続取引日(但し、株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」という。)における当社普通株式の普通取引の終値(以下「終値」という。)のない日は除き、修正日が取引日でない場合には、修正日の直前の取引日までの10連続取引日とする。)の終値の平均値の90%に相当する金額に修正される。但し、かかる算出の結果、修正日価額が2006年3月7日の終値(以下「下限転換価額」という。)を下回る場合には、修正後の転換価額は下限転換価額とする。
(2006年3月7日プレスリリースより抜粋)
以上の条項に基づき、当初転換価額は、5年債は5278円、7年債は4901円に設定(その後、ストックオプションの発行によって5年債は5275.7円、7年債は4898.8円に変更)されました。

昨日の終値3390円は下限転換価額3770円を大きく下回っています。この株価水準が続き、5年債及び7年債の両方とも転換価額が下限転換価額に下方修正された場合、発行済株式数は約1割増加することになります。

富士フイルムは、2006年4月の時点で、なぜこのような希薄化のリスクがある資金調達手段を選択したのでしょうか?

富士フイルムの自己資本比率は、2006年3月時点で64.9%あり、エクイティファイナンスを必要とする状況ではありませんでした。資本コストの点から考えると、むしろデットでのファイナンスを選択するのが自然であったと思われます。にも関らずMSCBの発行に踏み切ったのはなぜでしょう? 

プレスリリースを見ると、発行理由の最後に次の記述があります。
「資金調達コストは、短期借入れや普通社債より低い金利コストとなり、新たな成長事業への投資を財務面からもサポートすることを目指しております」
これを見る限り、富士フイルムは、表面金利の安さのみを見て、低コストの資金調達手段としてMSCBの発行を選択したようです。

言うまでもなく、真のコストはオプション価値を勘案して算定されるべきで、表面金利が低いからと言って資金調達コストが安いことにはなりません。この辺のところを富士フイルムの経営陣が理解していたかどうかわかりませんが、いずれにしても当時の意思決定は誤りであったと私は思います。

【リンク】
平成18年3月7日「ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」富士フイルム株式会社
http://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/other/ff_irnews_20060307_001j.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-26 10:03 | 資本コスト
2008年 07月 16日

ラ・パルレ 第三者割当増資取り下げ

増資手続に不備
ラ・パルレは15日、高野友梨子氏を割当先に16日に実施予定だった増資について、当初予定の払込期日に資金が払い込まれなくなったと発表した。ラ・パルレが関東財務局に提出した有価証券届出書に手続き上の不備があったため。
(日本経済新聞 2008年7月16日 16面)
【CFOならこう読む】
本件、会社は次のように説明しています。
「本日、発表いたしました「 第三者割当増資の取下げ」に ついてご説明申し上げます。7月16 日( 水)に 予定されていた、髙野友梨氏に割当予定であった新規発行140,000株について、手続き上の問題から、金融商品取引法上の手続きを再度行うことになりました。これは、第三者割当が決定した後に、監査法人の任期満了に伴う異動の「臨時報告書」の提出を行いましたので、これによって生ずる金融商品取引法8条1項に定められた、15日間の待機期間の要件を満たすため再度の手続きを行うことによるものです。」
有価証券の募集又は売出しに関する届出は、原則として、内閣総理大臣が有価証券届出書を受理した日から15日を経過した日にその効力を生じますが、この15日間を「待機期間」といい、発行会社、証券会社等が有価証券の内容や発行会社の事業内容・財務内容を周知させる周知期間であるとともに、投資者が当該有価証券を購入するかどうかを事前に熟慮するいわゆる熟慮期間としての性格を有しています(「新ディスクロージャー制度詳解」(企業税務制度研究会編著 税務研究会出版局))。

有価証券届出書提出日以降において訂正届出書が提出された場合には、原則として、効力発生日はこの訂正届出書が受理された日から15日を経過した日となります。

会社の説明から、臨時報告書についても同様の規定があるものと思われますが、条文は未確認です。本件後日またフォローします。

【リンク】
平成20年7月15日「第三者割当による新株式発行に伴う有価証券届出書の取り下げに関するお知らせ」株式会社ラ・パルレ
http://www.parler.co.jp/ir/settlement/release/2008/20080715_01.pdf

「投資家の皆様へ」株式会社ラ・パルレ 代表取締役社長 羽田雅弘
http://www.parler.co.jp/ir/settlement/release/2008/20080715_02.pdf


by yasukiyoshi | 2008-07-16 10:19 | 資金調達