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2008年 07月 15日

不動産流動化の要件-ビックカメラのケース

ビックカメラが3億円所得隠し 国税局指摘

家電販売大手「ビックカメラ」(東京都豊島区)が東京国税局の税務調査を受け、06年8月期までの4年間で約3億3千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。取引先を経由して関係会社に支払った業務委託料について、対価性がなく「寄付金」であると認定された模様だ。
http://www.asahi.com/national/update/0714/TKY200807140272.html
【CFOならこう読む】
この事件、裏金3億円では済まない可能性があります。

2002年8月、ビックカメラは、東京・池袋本店と本社ビルを2002年8月に特別目的会社である有限会社に290億円で売却し、この有限会社が不動産を担保に、小口の証券を発行、販売しました。いわゆる「不動産の証券化」です。

記事によると、同社元社員が経営に携わっていた「豊島企画」(同渋谷区)も100億円近く出資していたということです。

特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)は、流動化の要件として、リスク負担の金額の割合が流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)の5%以内であることを求めています(第13項)。そしてこの計算には譲渡人の子会社又は関連会社が負担するリスクを含めなければならないことになっています(第16項)。

ビックカメラは14億5千万円の劣後出資を行っています。この金額は流動化した池袋本店と本社ビルの時価290億円のちょうど5%に当ります。豊島企画が子会社であるということになると流動化の要件を満たさなくなるのです。豊島企画はビックカメラの子会社ではないとの外形を作り出すための裏金である可能性を指摘しているのが上記記事なのです。

ビックカメラは、今年東証一部に上場していますが、その直前に、売却した不動産の買い戻しを行い、流動化の際に出資した匿名組合の清算配当金約五十億円を特別利益に計上しています。

【リンク】
2008年7月14日「当社に関する一部報道について」株式会社ビックカメラ
http://www.biccamera.co.jp/ir/report/20080714.html

平成19年10月26日「特別利益の計上に関するお知らせ」株式会社ビックカメラ
http://www.biccamera.co.jp/ir/news/pdf2007/20071026news.pdf


by yasukiyoshi | 2008-07-15 09:01 | 資金調達
2008年 07月 09日

取得条項付新株予約権を用いた転換社債−プロミス600億円発行

プロミス、CB最大600億円発行
プロミスは8日、ユーロ市場で新株予約権付転換社債(CB)を最大で600億円発行すると発表した。昨年9月に三洋信販をTOBしたのに際して三井住友銀行から調達した短期借入金(残高で800億円)の返済などに充てる。発行日は24日で年限は7年。CB発行は1996年2月以来12年ぶり。
(日本経済新聞 2008年7月9日 17面)
【CFOならこう読む】
額面現金決裁条項付きのCBは6月19日に武富士が発行したばかりです。これは、株価が転換価額を上回った場合に、額面金額相当額の金銭に加え、市場株価と額面金額相当額との差額に相当する価値の株式を受け取ることができるというものです。

通常のCBは額面相当の新株を交付するのに対し、このCBは市場株価が額面を超える部分に相当する新株しか発行されないので、希薄化の抑制が可能です。

さらに、次のように株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、新株予約権の行使ができない転換制限条項が入っています。
「当社が今回採用した額面現金決済条項では、
i) 発行3 年後以降約6 年9 ヶ月までにおいては、当社株式の終値が20 連続取引日にわたり、各当該取引日に有効な転換価額の130%以上であった場合、
ii) 発行約6 年9 ヶ月後以降は当社普通株式の終値に関わらず、
当社は、自己の裁量により、一定期間(取得日の45 日以上前60 日以内)の事前通知を行ったうえで、各本新株予約権付社債の全部(一部は不可)につき(a)額面金額の100%に相当する金額及び(b)転換価値(以下に定義する。)から本社債の額面金額相当額を差し引いた額(正の数値である場合に限る。)を1 株当たり平均VWAP(以下に定義する。)で除して得られる数の当社普通株式(株式数は、下記の計算式で算出される。)を交付財産として、残存する本新株予約権付社債の全部を取得することができます。
・転換価値:(額面金額÷最終日転換価額)×1 株当たり平均VWAP
・最終日転換価額:1 株当たり平均VWAP の計算期間の最終日の転換価額
・1 株当たり平均VWAP:当社が取得通知をした日の翌日から5 取引日目の日に始まる20 連続取引日に含まれる各取引日において株式会社東京証券取引所が発表する当社普通株式の売買高加重平均価格の平均値
これにより従来の転換社債と同様の経済的効果をもたらしつつ、株価の上昇時においても大幅な希薄化の抑制が可能となります。」(プレスリリースより)
さらにプロミスのCBには、次のような社債権者に繰上償還請求権が付与されている点が特徴的といえます。
「5 年後に社債権者の選択による額面の105%での繰上償還請求権を付与することにより、クーポンを付与せずに、比較的長期間の7 年満期で、かつ最終満期時の償還額は額面の100%という設計になっております。」
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(図1)額面現金決済条項付ヨーロピアン行使型新株予約権付社債(ECoNeSS CB)と株価水準のイメージ
(プレスリリースより)
なお会計上の論点については、当ブログ5月24日の武富士CBの記事を御覧下さい。
http://cfonews.exblog.jp/7997778/

【リンク】
平成20年7月8日「2015 年満期ユーロ円建取得条項(額面現金決済型)付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」会社名プロミス株式会社
http://www.promise.co.jp/news/datas/sikin_20080708_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-07-09 07:59 | 資金調達
2008年 07月 05日

社債管理者

スルガコーポ債、7年ぶり債務不履行 問われる投資家保護 有事に「まとめ役」不在
スルガコーポレーションが6月24日に民事再生法を申請したのに伴い、同社の発行した公募普通社債210億円が債務不履行(デフォルト=元本もしくは金利の支払いが滞ること)になった。公募普通社債のデフォルトは2001年のマイカル債以来約7年ぶり。スルガコーポ債は、社債保有者の権利保護のために働く「まとめ役」が不在で、投資家保護の在り方に一石を投じた。
(日本経済新聞 2008年7月5日 14面)
【CFOならこう読む】
記事のまとめ役とは「社債管理者」のことを言っています。そこで今朝は「社債管理者」について簡単にまとめてみたいと思います。

社債管理者は、社債の発行会社の委託を受けて、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うものです(会社法702条)。各社債の金額が1億円以上の場合その他社債管理者を置かなくても社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、発行会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を委託しなければなりません(会社法702条・976条33号)。

法務省令では、ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50未満の場合(社債権者の数が50人以上となる可能性がない場合)には社債管理者を設ける必要がないとしています(会社則169条)。

社債管理者には債権管理の能力が要求されるので、その資格は、銀行、信託会社または担信三条の免許を受けた者等に限られます。

社債管理者は、
①償還・利息の支払等の弁済を受け、または、債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有し(会社法705条1項・708条・709条1項)
②債権者の異議手続において、社債権者のために異議を述べることができ(会社法740条2項)
③社債権者集会の決議により、当該社債の全部につき支払を猶予し、その債務不履行によって生じた責任を免除し、もしくは和解をする、または、当該社債の全部についてする訴訟行為、もしくは破産・再生・更生手続もしくは特別清算に関する行為をする権限を有する
といった役割を担います。
以上は「株式会社法第2版」(江頭憲治郎著 有斐閣)を参考にしています。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-07-05 08:50 | 資金調達
2008年 06月 26日

低格付社債のスプレッド上昇ースルガコーポ債デフォルト

スルガコーポ、再生法申請 普通社債、7年ぶり不履行に
東証2部上場の不動産会社、スルガコーポレーションは24日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表した。負債総額は約620億円。同社は7月25日付で上場廃止となる。取得した商業ビルの入居者立ち退き交渉をめぐる弁護士法違反事件で、暴力団に近いとされる不動産仲介会社との関係が表面化。資金調達が困難になったという。同社が発行した公募普通社債はデフォルト(債務不履行)になる。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080625AT1D240AI24062008.html
【CFOならこう読む】
スルガコーポレーションの社債(120億円)デフォルトの影響を受け、低格付債利回りの国債に対する上乗せ幅(スプレッド)が一段と拡大する可能性があります。

国内でのデフォルトは二〇〇一年のマイカル以来、約七年ぶりです。昨日は市場全体に警戒感が広がり、この日は流通市場でトリプルB社債(格付投資情報センター=R&I)の平均スプレッドは、一・三四六%と前日比〇・〇〇六ポイント広がっています。

当面、低格付債の発行が難しくなり、資金調達に影響が出る会社もありそうです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-06-26 07:46 | 資金調達
2008年 06月 24日

金利上昇局面における資本政策ーサンリオ、優先株を買入消却

サンリオ 優先株を買い入れ消却 4割相当分、金利上昇分で
サンリオは優先株の一部を買入消却する見通しだ。今後金利が上昇する可能性があるとみて、市場金利に連動して配当が決まる優先株を極力減らす。
(日本経済新聞 2008年6月24日 14面)

【CFOならこう読む】
優先株の概要は次の通りです。
(1) 発行額:100億円
(2) 配当金:日本円半年物東京インターバンクレート(TIBOR)に4%加算した利率
(3) 普通株式転換可能期間:平成22年3月23日以降
(4) 当初転換価額:平成22年3月23日に先立つ45取引日目に始まる30取引日の毎日の普通株式終値平均値の90%に相当する金額(以降、年2 回の転換価額の修正があります。)
(5) 強制償還価額:発行価額(1株につき1万円)に107%を乗じた価額

消却するのは2005年3月に発行したB種優先株百億円のうち4割にあたる40億円分。三菱東京UFJ銀行とみずほコーポレート銀行からの買い入れには、計42億8千万円の資金が必要で、これは現預金の取崩と銀行借入で賄う方針です。

平成20年3月31日現在の株主資本は以下の通りです。
(1) 資本金      14,999百万円
(2) 資本剰余金
 1 資本準備金     10,003
2 その他資本剰余金   92
(3) 利益剰余金
 1 その他利益剰余金
繰越利益剰余金    3,053
(4) 自己株式    △ 954
株主資本合計     27,194百万円

会計上の原資を手当するために、26日の定時株主総会で資本準備金50億円の取崩しが付議されます。

議案の概要は次の通りです。
1. 資本準備金の額の減少の目的
これまで期間利益を償還原資とする計画でありましたB種優先株式の償還原資の一部として充当するために、また、今後の資本政策の柔軟性、機動性の確保を目的として資本準備金を減少し、その全額をその他資本剰余金に振り替えるものであります。
2. 資本準備金の減少額
資本準備金の減少額 5,000百万円
なお、減少後の資本準備金は、5,003百万円
3. 資本準備金の減少の日程(予定)
(1) 取締役会決議日 平成20年5月15日
(2) 株主総会決議日 平成20年6月26日
(3) 効力発生日 平成20年7月31日(債権者異議申述期間後)

【リンク】

平成20年5月15日「資本準備金のその他資本剰余金への振替に関するお知らせ」株式会社サンリオ
http://www.sanrio.co.jp/corporate/ir/disclosure/detail/49_0515.html

平成20年5月29日「優先株式の強制償還に関するお知らせ」株式会社サンリオ
http://www.sanrio.co.jp/corporate/ir/disclosure/detail/49_0529_1.html


by yasukiyoshi | 2008-06-24 09:00 | 資金調達
2008年 05月 24日

取得条項付新株予約権を用いた転換社債-武富士700億円発行

武富士がCB700億円
武富士は23日、UBSグループを引受先とするユーロ円建て新株予約権付社債(=転換社債=CB)を700億円発行すると発表した。期間は10年で、CB発行で得る約682億円は有利子負債の返済に充て、資金調達構造の適正化や金融収支の改善を進めていく方針だ。
現金決済条項や転換制限条項を採用し、既存株主の利益の希薄化を抑制するという。
ノンバンクの海外でのCB発行では最大規模とみられる。
発行日は6月19日、表面利率1.5%。
(日本経済新聞 2008年5月24日 16面)

【CFOならこう読む】
CBの場合、株価が転換価格を大きく上回ると希薄化が生じてしまうので、既存株主の利益を害しないような配慮が必要となります。

武富士のCBは、株価が転換価額を上回った場合に、額面金額相当額の金銭に加え、市場株価と額面金額相当額との差額に相当する価値の株式を受け取ることができるというもので、日本郵船が2006年9月20日に発行したユーロ円CBとほぼ同様の商品設計となっています。通常のCBは額面相当の新株を交付するのに対し、このCBは市場株価が額面を超える部分に相当する新株しか発行されないので、希薄化の抑制が可能です。

さらに、次のように株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、新株予約
権の行使ができない転換制限条項が入っています。
「2017年6月20日まで(当日を含まない。)は、本新株予約権付社債権者は、ある四半期の最後の取引日(以下に定義する。)に終了する30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が、当該最後の取引日において適用のある転換価額の120%を超えた場合に限って、翌四半期の初日から末日までの期間(2017年4月1日に開始する四半期については、同日から同年6月19日までの期間)において、本新株予約権を行使することができる。2017年6月20日以降、本新株予約権付社債権者は、同日以降のいずれかの取引日において当社普通株式の終値が当該取引日に適用のある転換価額の120%を超えた場合、以後いつでも本新株予約権を行使することができる。」
この商品は、CBの取得が帳簿価額で行われるのか、時価で行われるのかが最大のポイントです(時価で行われると、差損益が発生する可能性があるので)。
この点「企業会計適用指針第17号」23項は次の要件が全て満たされた場合、帳簿価額で取得される旨規定しています。

①取得条項に基づく取得の対価の金額は、当該取得条項に基づき、当該転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の目的である自社の株式の数に基づき算定された時価であること
②当該取得条項に基づいて取得した際に消却することが募集条項等に示されており、かつ、当該募集条項等に基づき取得と同時に消却が行われていること
③現金の交付がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式の交付がすべて新株予約権部分の取得に充てられるように、現金と自社の株式を対価とするそれぞれの部分があらかじめ明確にされ、これらの額が経済的に合理的な額と乖離していないこと。


本件はこの要件を全て満たすように商品設計されたものと思われます。

もうひとつ潜在株式調整後1株当たり当期利益の計算上、新株予約権が潜在株式にカウントされるかどうかも大きなポイントとなります。この点プレスリリースで武富士は次のように希薄化効果が生じない旨説明しています。
本新株予約権付社債には転換制限条項が付されており、新株予約権の行使が制限されております。そのため、「一株当たり当期純利益に関する会計基準」(企業会計基準第二号)及び「一株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第四号)に基づき、本新株予約権付社債は「条件付発行可能潜在株式」に該当し、新株予約権の行使の条件が充足されない限り潜在株式に含まれず、会計上希薄化効果が認識されないため、募集時における潜在株式数及び募集後における発行済株式総数に関する記載は省略しております。
【リンク】
2008.05.23「第三者割当によるユーロ円建取得条項(現金決済条項)付及び転換制限条項付転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
http://www.takefuji.co.jp/corp/nwrs/detail/080523_2.html



by yasukiyoshi | 2008-05-24 10:22 | 資金調達
2008年 05月 23日

キリンHD 負債枠4000億円拡大

社内基準見直し 買収資金など確保狙う
キリンHDは買収資金などを機動的に確保するため、有利子負債を現在より最大で4000億円程度増やせるよう社内の財務基準を見直す。同社は2007年12月期に協和発酵、豪乳業大手のナショナルフーズを相次いで買収した。国内のビール市場が縮小傾向にあるなか、海外事業の強化や多角化の推進に向け、今後も積極的にM&Aを進める狙いがある。
(日本経済新聞 2008年5月23日 17面)
【CFOならこう読む】
キリンHDは、2006-2009の中期経営計画で、
①M&Aに充てる資金のめどを3000億円
②DEレシオ(有利子負債/自己資本)0.5倍程度
に設定しています。

しかし買収金額は合計3700億円と、3000億円の投資額をすでに上回っており、またDEレシオも0.58倍まで上昇しています。このためDEレシオの目標値を1倍程度に見直すとのことです。これにより新たに4000億円近く有利子負債増額の余地が生まれます。

DEレシオを基準値として設定しているのか、目標値として設定しているのかは大きく違います。しかし上記記事でもその区別が曖昧になっているように一般に両者の違いは意識されません。最適資本構成を睨みながら、中期計画の中でDEレシオを目標値として設定する、財務先進企業は日本ではそれほど多くないのです。キリンHDも、戦略投資の制約条件として、DEレシオの基準値を設定している程度の話で、DEレシオ1倍が最適資本構成であると考えているわけではないのでしょう。

このことは、吉元CFOの「状況次第で様々な調達手段を検討するが、DEレシオが一時的に1倍程度まで上昇できるのは許容できる」という発言からも明らかです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-23 08:41 | 資金調達
2008年 05月 21日

ソフトバンク、無議決権優先株の発行を取りやめ

ソフトバンク、優先株の発行を一転取りやめ
ソフトバンクは20日、議決権がない代わりに普通株より配当を多く受け取れる「優先株」の発行準備を取りやめると発表した。同社は8日に優先株の発行準備に入ると発表していた。しかしその後、個人株主から、新株の発行による株価への悪影響などを懸念する声が寄せられ、配慮を余儀なくされたようだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D2000K%2020052008&g=S1&d=20080520

【CFOならこう読む】
ソフトバンクの無議決権優先株については、当ブログで5月9日に取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7902931/)。
その後、優先株を使ったエクイティファイナンスに関する取り合わせが相当数に達したとのことで、12日に次のようなコメントを発表していました。
「当社は、平成20年5月8日付プレスリリース「定款の一部変更に関するお知らせ」を発表しました。このリリースにおいて「当社における柔軟な資金調達を可能とするものであり」との記載に関して、株主・投資家より、優先株式を用いたエクイティファイナンスによる資金調達の可能性についての問い合わせを数多く受けております。
 当社においては、現時点でエクイティファイナンスによる資金調達を必要とする事業・投資案件等は一切なく、当面の間エクイティファイナンスを行う意図は全くありません。
 当社はこれまでも、企業価値の向上による株主利益の増大に努め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに対し、適正に利益を還元することを基本方針としてきました。今後も株主の皆様へ様々な形により利益還元を行うように努めるとともに、キャッシュフローの最大化を目標に業績の拡大および株主価値の向上を目指し全力で取り組んでまいります。」
しかしその後も株価は軟調に推移していました。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9984.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

孫社長の「買収したいところが出てくれば、これを使って買収することもある」としていたが、多くの株主がこの部分を強く意識し、希薄化懸念から一部の個人や機関投資家に嫌気されたとのことです。

ソフトバンクのM&A下手(特に上場会社の買収)を見透かされているのかもしれませんね。

個人的には、ソフトバンクの種類株の株価形成がどのようになるかに注目していたので、発行取りやめは残念です。
【リンク】
2008年5月20日「『定款一部変更の件』の株主総会への付議取りやめについて 」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080520_0001.html



by yasukiyoshi | 2008-05-21 10:00 | 資金調達
2008年 05月 20日

エクイティ・コミットメントラインーフルスピードのケース

新株予約権使う調達に新手 株価配慮し段階的 行使
新株予約権を使った新手の私募型の資金調達が広がっている。証券業界の規制で、株価に連動して条件が変わる転換社債(MSCB)が発行しにくくなり、株式の希薄化に上限を設けるなど”改良”を加えた点が特長だ。新興企業がまとまった成長資金を調達する際などに都合がよいが、株価下落を招くリスクは残る。安易な活用に警鐘を鳴らす向きもある。(日本経済新聞 2008年5月20日 16面)
【CFOならこう読む】
典型的なエクイティ・コミットメントラインは次のようなものです。
「発行会社は行使価額修正条項付新株予約権(行使価格はMSCBと同様、株価に応じて変動。時価から10%近い割引価格で新株の発行を受けられる点も同じ:筆者注)を第三者に割り当てる。これと同時に発行会社と割当先との間でエクイティ・コミットメント契約が締結される。発行会社は、資金需要に応じて行使すべき新株予約権の数(ただし、一度に行使要請できる個数には上限がある。)等を割当先に対して通知する。割当先は発行会社が行使の要請を行ってから一定の期間(例えば、発行会社が行使要請を行った日の翌日から20取引日目までの期間)内に指定された個数の新株予約権を行使する義務を負う。なお、株価が下限行使価額(例えば、当初行使価額の50%)を下回った場合や発行会社の財政状態又は業績に悪影響を及ぼす事態が発生した場合等には発行会社は行使要請を行うことはできない。
割当先は、発行会社の行使要請がない限り、原則として新株予約権の行使はできない。かかるエクイティ・コミットメントラインにより、発行会社が要請したときに割当先は新株予約権を行使しなければならず、発行会社の資金需要に応じた調達が可能となる。」
(新株予約権の法務・会計・税務 安部健介・須藤一郎著 税務研究会出版局)
フルスピードのエクイティ・コミットメントラインも上のものとほぼ同様の設計になっています。ただし「新株予約権が行使された場合のフルスピードの調達資金は4月の発表時の株価換算で約40億円。2007年8月の上場時の公募調達額9億円を大きく上回る。」(上記新聞記事)と調達規模が大きいのが特徴です。

会社はMSCBとの違いを力説していますが、既存株主から引受先へ富の移転を行うことにより資金を調達する仕組みであるという本質的な部分に全く相違はありません。

しかも、株価が当初株価の半分を下回った場合には、新株予約権を発行価額で買い取る義務が会社にあり、証券会社の極めて限定したリスクで利益を得ることができます。

それにしても上場会社が(しかも将来が期待されるマザーズ上場会社が)、平然とこのようなスキームでしか資金調達できないというのは何とも情けない話です。

フルスピードの株価の推移は次の通りです。
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=2159.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on
何をかいわんや、です。

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(日本経済新聞 2008年5月20日 16面より)


【リンク】
平成20 年4月9日「新株予約権(第三者割当て)に関する説明資料」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586024

平成20 年4月9日「行使価額修正条項付第1回新株予約権(第三者割当て)の発行及びコミットメント条項付第三者割当て契約に関するお知らせ」株式会社フルスピード
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=586023

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by yasukiyoshi | 2008-05-20 11:50 | 資金調達
2008年 05月 09日

ソフトバンク、無議決権優先株を発行・上場

ソフトバンクが無議決権優先株、資金調達多様化へ動く
ソフトバンクは8日、議決権がない代わりに普通株より配当の多い種類株(無議決権優先株)の発行・上場に向け、定款変更などの準備に入ると正式発表した。地図大手のゼンリンも同様の定款変更を表明した。東証は種類株の上場に関する制度を7月に正式導入する。資金調達の多様化を目指した種類株の発行は年内に最大で10社程度に上りそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080509AT2C0801M08052008.html
【CFOならこう読む】
ソフトバンクの種類株は既存の普通株主に無償で割り当てられます。これは昨年9月
に上場した伊藤園と同じ手法です。
ソフトバンクと伊藤園の種類株の主な特徴は次の通りです。


e0120653_1136963.jpg

ソフトバンクは種類株式の発行の理由を次のように説明しています。
「本優先株式は、投資家の嗜好が多様化するなか、配当を選好する投資家に対しては本優先株式を、また、より議決権を重視される投資家には普通株をという形で、その嗜好に応じた投資機会の選択肢を提供するものであり、新たな投資家層を開拓し、我が国の証券市場のさらなる発展に貢献できるものと考えています。従いまして、現実に発行する場合には、まずは既存株主に対し、無償割当という形で実行し、既存株主にその選択の機会を提供すべきものと考えております。
 なお、将来的には本優先株式は、当社の企業価値の基礎となる経営理念・大きな志に基づいた中長期的な経営判断を可能とする株主基盤を維持しながら、当社における柔軟な資金調達や株式による買収等の選択肢を増やすものものでもあり、当社の企業価値の更なる向上に寄与するものと確信しています。」
また孫正義社長は、「M&Aなど攻めの経営の道具としても使える」と種類株発行の意義を強調しています。

無議決権優先株の市場株価が普通株の株価を上回る場合には道具として使え得ると思いますが、伊藤園の種類株のように普通株の株価を3~4割下回るようだとあまり種類株発行の意義は認められません。
http://cfonews.exblog.jp/7785958/

ソフトバンクの配当水準は普通株の2倍~5倍と伊藤園の1.3倍を大きく上回るので、これが種類株の株価形成にどう寄与するか注目されます。

【リンク】
2008年5月8日「定款の一部変更に関するお知らせ」ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/080508_0001.html
http://www.softbank.co.jp/news/release/2008/pdf/080508_0001.pdf

「優先株式の無償割当て及び優先株式の内容」伊藤園
http://www.itoen.co.jp/ir/class1/outline/index.html


by yasukiyoshi | 2008-05-09 11:15 | 資金調達