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2008年 05月 08日

日本企業の利益構造に変化ー財務省「法人企業統計季報」

企業-利益構造 近年は経常利益優位に
近年、日本企業の利益構造に特徴的な変化が起きている。統計開始の1956年以降、常に営業利益が経常利益を上回っていたが、2005年から関係が逆転した。背景には、金利の低下や債務削減による支払利息減少がある。だが、それ以上に、受取利息などに反映される海外子会社からの配当や特許使用料の増加が影響している。このことは、日本企業の海外事業の収益性が向上し、海外現地法人の稼いだ利益の国内への還流が拡大していることを示す。国内の人口減少や高齢化を考えると、日本企業がグローバル化の対応をさらに進めることはさけられず、今後も経常利益が営業利益を上回る関係が続く可能性が高い。
(日本経済新聞 2008年5月8日 25面 統計で読む日本経済)
【CFOならこう読む)】
営業利益と経常利益を区分表示することから得られる情報のうち最も重要なことは企業の借入余力(財務上の安全性)が計れることにあります。経常利益が改善している理由の一つは、所謂バランスシート調整により企業の借入金の削減が進んだことによるものと思われます。

営業外損益が資金調達費用又は余剰資金の運用収益のみで構成されるなら、こういった傾向はより明確に把握できるのですが、記事にもあるように海外子会社からの配当や特許使用料も営業外損益に計上されるので、経常利益の持つ情報の価値は減殺されてしまいます。本来日本法人の獲得利益は海外法人の損益も含めた連結ベースで捉えなければその実態は見えてきません。

法人企業調査の目的を財務省は次のように説明しています。
「法人企業統計調査は、指定統計第110号として「法人企業統計調査規則」(昭和45年大蔵省令第48号)に基づいて行うもので、その目的は、我が国における法人の企業活動の実態を明らかにし、あわせて法人を対象とする各種統計調査のための基礎となる法人名簿を整備することにある。」
実態把握をその目的としている以上、連結ベースの数値も調査対象に加えることを検討すべきであると思います。

【リンク】
「法人企業統計調査 > 調査の概要」財政総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/ssc/gaiyou.htm


by yasukiyoshi | 2008-05-08 08:38 | 会計
2008年 04月 28日

第三者割当増資に規制論

株主保護 問われる実効性 東証・監査役協会など検討
特定の企業や投資ファンドに株式を割り当てて資金調達する第三者割当増資に厳しい目が向けられている。一株利益が減るため株価下落につながりかねず、既存株主に不利としてかねて問題視されてきた。ところが実施企業が急増しており東京証券取引所、日本監査役協会などが規制の検討を始めた。株主保護に向けた実効性の高い規制を打ち出せるか、注目される。
(日本経済新聞 2008年4月28日 16面 法務インサイド)
【CFOならこう読む】
2006年夏に、王子製紙が北越製紙に対し敵対的TOBを仕掛けた際に、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受け、24%強を出資する筆頭株主になることにより、敵対的TOBが阻止された事件を皆さんご記憶だと思います。日本では授権株数の範囲内であれば、第三者割当増資は取締役会の決議で行うことができます。したがって、第三者割当増資を買収防衛策として利用することが取締役会決議のみでできるのです。上記記事にもあるように、第三者割当増資の違法性が問われる場合もあります。
「一つは株主総会の特別決議を経ずに株式を市場価格より特に有利な価格で第三者に割り当てる「有利発行」。もう一つは発行の主要目的が資金調達でなく、企業の支配権の維持や移動を目的とした「不公正発行」の場合だ。いずれも会社法で禁止されている。」
つまり資金の使い道が決まっていて割当価格が大幅に安くないケースでは第三者割当増資が認められるのです。北越の事例でも、第三者割当増資は設備投資のために行われることが発表されていました。これを規制するために「東証の自主ルールで規制する」すなわちニューヨーク証券取引所のように20%を超える株式を発行する場合、株主総会決議にかけるようにするというのは、一つの方法であると思います。しかしこれだけでは、ブルドック事件以降加速している、株式持合いを含めた安定株主作りの流れを一層強めることになりかねません。

上場会社の増資は原則公募増資とすべきです。取引所は第三者割当増資を例外的なものととらえ、一定規模以上のものは個別に審査をするという位の規制をしないと日本では機能しないと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-28 08:59
2008年 04月 17日

買収防衛型ファイナンス?-住友金属鉱山のケース

割高な調達コスト 株主への説明難しく
「調達コストが高すぎないか」。住友金属鉱山が2月に調達した「新株予約権付ローン」に対して、市場関係者の間でこんな感想が聞かれた。
このローンでは、住友金属鉱山が三井住友銀行から1000億円を借り入れるとともに、同行に新株予約権2万個を割り当てた。金利は実質年1.45%で基準金利のスワップ金利に対する上乗せ幅は0.36%前後だった。
ある国内証券の担当者は「1000億円の巨額調達とはいえ、普通社債なら上乗せ幅は0.2%前後で済み、年利は1.29%程度になったはず」と解説する。
住友金属鉱山株式を取得できる新株予約権の価値を含めれば、実は普通社債より金利が安くなってもおかしくない。にもかかわらず、金利が高いのはなぜか。「自社の判断で自由に資本調達をコントロールできるようにしたかった」(田尻直樹常務執行役員)という住友金属鉱山側の要望が一因だ。

(2008年4月17日 日本経済新聞 14面 検証買収防衛型ファイナンス)
【CFOならこう読む】
私はこの日経の記事がよくわかりません。
2月1日に住友金属鉱山の新株予約権付ローンをこのブログでとりあげました。
http://cfonews.exblog.jp/7170502/

この日の日経はこのスキームについて「通常の借入金に比べ低利のため今回のスキームを採用することにした。」と報じていました。
それが今日の日経の記事は、「金利が高い」と評価しているのです。しかもその理由を「万が一のための用心棒代」と説明しているのです。

私には社債マーケットについての勘が備わっていないので、金利の高い安いを論じる能力はないのですが、あえて言わせてもらえば、そもそもCBを始めオプションが付与されているデットで資金調達をする理由は、一括法により会計処理をすることができるため表面金利を引き下げることができるからのはずで、”金利が高い”株式転換型のデットによりあえて資金調達をしようと考える企業があるとは思えないのです。

今日の日経17面は住友金属工業の7年債百億円の募集について報じています。利率は1.35%、国債利回りに対するスプレッドは0.4%。住友金属工業の格付けはダブルAマイナス、住友金属鉱山の格付けはシングルAプラス(JCR)であることを考えると1.45%という金利が特に高いという風には思わないのですが…

【関連過去記事】
2008年02月16日「社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も 」
http://cfonews.exblog.jp/7274985/
【リンク】
平成20年1月31日「新株予約権付ローンに係る第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付)」住友金属鉱山株式会社
http://www.smm.co.jp/release/2008/pdf/20080131-2.pdf

2008年04月16日「UPDATE2: 住友金属工業<5405.T>、期間7年国内SB発行条件を決定=利率1.35% 」ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK011854820080416?rpc=144


by yasukiyoshi | 2008-04-17 10:49 | 資金調達
2008年 03月 13日

有利発行か否か 「日本証券業協会の自主ルール」ーグッドウィルのケース

グッドウィル株が急落 増資嫌気、一転ストップ安に
12日の東京株式市場で、グッドウィル・グループの株価が一転して急落した。朝方は買い気配で始まったが、結局、制限値幅の下限(ストップ安)となる前日比3000円(11%)安の23400円で比例配分された。11日に第三者割当増資の実施を発表。発行済み普通株式数が約2割増加すると伝わり、一株利益の希薄化懸念から売り注文が膨らんだようだ。
同社は米大手ファンドのサーべラスと米大手証券モルガン・スタンレーの2社連合に対し45億円で50万株の普通株式を割り当てる。1株当たり発行価額は9000円。現在、株価は20000円台で推移しており、「発行価額の安さが再建見通しへの不安感を募らせた可能性もある」(外資系証券)。
グッドウィル・グループの株価は11日まで5営業日連続で急騰していた。「信用取引の売り残りが多く、潜在的な買い圧力は強い。ただ、指標面では明らかに買われすぎの水準」(日興コーディアル証券)。市場では「投機目的の短期資金売買が続いており、株価の先行きは全く見通せない」(国内証券)と戸惑う声が多く聞かれた。

(2008年3月13日 日本経済新聞 17面)


【CFOならこう読む】

プレスリリースで会社は普通株式の発行価額の根拠を次のように説明しています。
「普通株式の発行価額については、当該普通株式発行にかかる取締役会決議の直近取引日までの2 ヶ月(平成20 年1 月11 日から平成20 年3 月10 日)に株式会社東京証券取引所が公表した当社普通株式の普通取引の最終価額の平均値を参考として、9,000 円(ディスカウント率8.3%)と致しました。これは、当社グループにおける子会社コムスン等介護・介護関連事業からの撤退や子会社グッドウィルにおける労働者派遣法違反にかかる行政処分を受けている等の当社の置かれた事業環境や、これらの影響による最近の業績等を勘案し、割当先との交渉の結果決定いたしました。なお、上記の普通株式の発行価額は日本証券業協会の「第三者割当て増資の取扱いに関する指針」(平成15年3月11日付)に準拠し決定しております。」
証券業協会の「第三者割当て増資の取扱いに関する指針」いわゆる自主ルールは有利発行か否かの判断基準となる公正価額を次のように指示しています。

「発行価額は、当該増資に係る取締役会決議の直前日の価額に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から発行価額を決定するために適当な期間(最長6ヶ月間)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる」

これはすなわち次の通り要約できます。

「つまり有利発行か否かの判断の基準日が原則として『当該増資に係る取締役会決議の直前日』であることが明確化され、例外的にそれ以前の一定の期間における株価を基準として用いることができる場合にも、当該期間は「任意の期間ではなく、買占め等による株価の高騰等の事情にかんがみて、当該決議の直前日から遡って発行価額を決定するために『適当な期間』でなければならないこととなり、株価の高騰があった場合においても、発行会社経営陣が恣意的に公正価額算定のための算定期間を設定することによって有利発行該当性を回避することはきわめて困難になった」(商事法務No.1702 太田洋 「宮入バルブの新株発行差止申立事件東京地裁決定」)

これを今回のグッドウィルの増資に当てはめてみると、何故発行価額を取締役会決議日の前日終値23,400円としないことが是とされるのか、また仮に是とされるとしても何故2ヶ月間の平均を取ることとしたのか、大きな疑問があるといわざるを得ないように思います。

グッドウィル・グループ(株) 【東証1部:4723】
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【リンク】
平成20年3月11日「第三者割当により発行される普通株式及び優先株式の募集に関するお知らせ」グッドウィル・グループ株式会社
http://www.goodwill.com/gwg/pdf/20080311163151.pdf

グッドウィル、米系2社主導で再建・みずほ銀、債権売却
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080311AT2C1002E10032008.html


by yasukiyoshi | 2008-03-13 10:47 | 資金調達
2008年 03月 04日

武富士の実質的ディフィーザンス

武富士、仕組み債取引損失計上を発表・最大300億円
武富士は3日、欧米企業の信用リスクを扱う金融派生商品関連の金融取引で、最大300億円の損失を計上すると正式に発表した。メリルリンチ日本証券が組成した仕組み債による取引で、サブプライムローンに絡む信用収縮が響いて取引の清算に追い込まれる。2008年3月期の予想連結純利益(433億円)は下方修正する可能性があるという。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D03006%2003032008&g=S1&d=20080303

【CFOならこう読む】

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社債の実質期限前償還(実質的ディフィーザンス)は負債をオフバランス化することにより、バランスシートをスリム化することを目的に行われます。具体的には、企業が社債の元利金を信託銀行に払い込み、信託銀行は国債など安全資産でこの資金を運用し、社債投資家への元利金払いに充当される仕組みになっています。

オフバランスの為の要件を、金融商品会計に関する実務指針46項は、「取消不能で、かつ社債の元利金の支払に充てることを目的とした他益信託等を設定し、当該元利金が保全される高い信用格付けの金融資産(例えば、償還日がおおむね同一の国債又は優良格付けの公社債)を拠出することである」としています。上記記事は、メリルリンチが組成した仕組み債がこの要件を満足しているかどうかについて疑問を呈しています。

金融商品会計に関するQ&Aは、「わが国において、元利金が保全される高い信用格付けの金融資産とは、国債や政府機関債のほかに、例えば、拠出時に複数の格付け機関よりダブルA格相当以上を得ている社債が含まれると考えられます」としており、メリルリンチの仕組み債はムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズからトリプルAの格付けを取得していることから、この要件は満足していると一応は言えます。

しかし大きな損失が現実に発生しましたのです。武富士とメリルリンチはお互いに責任をなすりつけているようですが、そもそも4%の利率の社債を無リスクでオフバランスできると考えること自体常識から外れています。そういう意味では、武富士、メリルリンチのみならずオフバランスを容認した監査法人にも責任の一端はあると私は思います。

【リンク】
2007.5.24「実質的ディフィーザンスの実施について」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/070524_3.html

2008.3.3「実質的ディフィーザンス解消のお知らせ」
http://www.takefuji.co.jp/corp/irnw/detail/080303.html


by yasukiyoshi | 2008-03-04 09:58 | 資金調達
2008年 02月 29日

JFEのCB

JFEホールディングスは28日、新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で3000億円を発行する一方、1200億円の自社株買いを実施すると発表した。CB発行で得た資金で自社株を買うほか、残りの1800億円分は高級鋼の増産などに使う。CBはみずほコーポレート銀行など3メガ銀行が割り当て対象で、買収防衛策としての側面もあるようだ。
(2008年2月29日 日本経済新聞 17面)

【CFOならこう読む】
2月27日にヤマダ電機のリキャップCBをご紹介しましたが、本件も同様の性格をもっています。CB発行とこれにより調達される資金の一部を原資とした自社株買いをセットで実施することにより、負債比率が引き上げられます。一方、このCBは安定株主である3メガバンクに割り当てられることで、買収防衛策としての性格も合わせ持っています。ただし転換価格は8530円と28日終値4730円より約8割高い水準に設定されていること、及び「現金決済条項」と呼ぶ条件を付け加えることで希薄化を一定程度に抑える商品設計なっています。

「現金決済条項」は、JFEが持つ権利で、株式に転換される場合、一部を現金で渡すことが可能になっています。例えば、JFEの株価が1万円になったケースでは、1万円と転換価格8530円の差1470円の部分だけ、株式で渡すことができます。

このスキームでポイントとなるのは、会計上一括法(新株予約権を区分しない方法)が認められるかどうかです。これについては、「企業会計基準適用指針第17号 第23項(3)取得の対価が現金と自社の株式の場合」、に一括法が認められる要件として次の記載があります。

現金の交付がすべて社債部分の取得に充てられ、自社の株式の交付がすべて新株予約権部分の取得に充てられるように、現金と自社の株式を対価とするそれぞれの部分をあらかじめ明確にされ、これらの額が経済的に合理的な額と乖離していないこと。

本件は、この要件を斟酌して設計されたものと思われます。

【リンク】
平成20年2月28日「第三者割当による取得条項付無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行に関するお知らせ」ジェイエフイーホールディングス株式会社
http://www.jfe-holdings.co.jp/release/2008/02/080228-01.pdf


by yasukiyoshi | 2008-02-29 09:03 | 資金調達
2008年 02月 28日

2月新規上場ー7社中5社、初値が公募価格割れ

新規株式公開(IPO)銘柄の株価が低迷している。今年に入って新規上場した7社(1月はゼロ)のうち、5社の初値が公募価格を下回り、上場後の株価もさえない。業績の不透明感などから個人投資家の買い意欲が後退。29日にセブン銀行という大型銘柄の上場を予定していることも手控えにつながっている。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
今年新規上場した銘柄の初値とその後の株価の状況は次の表の通りです。
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最近の傾向としては、公募価格を類似会社PERのレンジの最低のところで設定していることが言えます。その中でインサイトは類似会社PERの水準が8.1倍~11.2倍(http://biz.yahoo.co.jp/ipo/html/d2172.html)であるのに対し、公募PERは11.07倍と比較的高めの水準で公募価格を設定しています。それでも初値騰落率は▲23%と、控えめに公募価格を設定した東洋ドライループの騰落率▲28%やスーパーバリューの騰落率▲26%と比べて特段初値騰落率が大きいということはありません。

現在のIPO市場は、「相場に不透明感が強くリスクの高い新規上場銘柄への投資を敬遠している(丸和証券調査情報部大谷氏)」ため、もはや適切な株価形成が行われていないと言っても良いかもしれません。27日に上場したモリモトは公募価格をPER3.74倍という非常に低い水準に設定したにも関らず初値はそれを6%下回りました。記者会見した森本社長は、「投資家の評価として受け止めている。株主に期待してもらえるようがんばりたい」と述べたそうですが、「市場の評価は間違っている」くらいのことを言っても良いと私は思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-28 08:53 | IPO
2008年 02月 27日

リキャップCBーヤマダ電機のケース

CB1500億円 自社株買い700億円 ヤマダ電、同時に実施
ヤマダ電機は26日、ユーロ市場で新株予約権付社債(転換社債=CB)を最大で1500億円発行する一方、700億円の自社株買いをすると発表した。CB発行で得た資金を自社株買いに充て一株利益を高めつつ資本効率の改善につなげる狙い。CB発行と自社株買いを同時に行う手法は米の有力企業の間で急速に普及しつつある。日本ではヤマダ電機が初めて。
(2008年2月27日 日本経済新聞 19面)

【CFOならこう読む】
CBによって調達する1500億円の資金使途を会社は次のように説明しています。
【調達資金の使途】
本資金調達による発行手取金(グリーンシューオプション分を含む。)の資金使途は以下を予定しています。

① 設備投資資金として調達した短期借入金の返済に約800 億円を充当する予定です。
② 自己株式取得資金に約700 億円を充当する予定です。本新株予約権付社債の払込日以前に自己株式を取得した場合、かかる取得資金として調達したブリッジローンの返済に充当する可能性があります。
ヤマダ電機の平成20年3月期第3四半期時点の自己資本比率は42.3%でした。これが700億円の自己株取得により33.7%まで下がることになります。D/E比率で見ると1.36から1.97へ上昇します。最近出版された「日本企業のコーポレートファイナンス」(砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳著 日本経済新聞出版社)によると、格付けは1ノッチ以上ダウンすることになります。節税効果がこの格下げによる資本コスト上昇の影響を上回れば、負債による自己株取得は合理的と言えます。

ただし本件は上の説明のような教科書的な財務戦略を志向したものではない可能性もあります。家電業界は今後M&Aによる再編が予想され、ヤマダ電機はその中心的なプレイヤーと目されています。TOBをかけるにはキャッシュが必要です。そのキャッシュを今回CBで調達したというのが本当の所かもしれません。それをキャッシュのままで持っていると業界他者の警戒心を必要以上にあおり、今後のM&A戦略に影響をあたえることにもなりかねないので、その意図を隠すために一旦金庫株で持つというのは十分考えられるところだと思います。

それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。

そして次のように転換可能性の低い商品設計にすることでエクィティ系の性格を相当程度緩和しているのです。
「時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定することで、発行後の一株当たり利益の希薄化を極力抑制するとともに、転換制限条項(※)の付与により、株式への転換可能性を抑制することで、既存株主に配慮した負債性の高い商品性としております。

※転換制限条項について
株価が転換価額の一定水準を一定期間上回らない限り、投資家が新株予約権を行使できない条項をいいます。本件においては原則として、前四半期の最終30連続取引日のうちいずれかの20取引日において、当社普通株式の終値が転換価額の125%を超えた場合に限って、投資家は新株予約権を行使することができます。ただし、償還期限の6ヶ月前の日以降、いつでも新株予約権の行使が可能となります。」
(2008年2月26日プレスリリース)

【リンク】
平成20年1月31日「平成20年3月期 第3四半期財務・業績の概況」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/kessan/2008/080131.pdf

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_yuro.pdf

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/ir/pdf/press/2008/news0226_kabu1.pdf

日本企業のコーポレートファイナンス
砂川 伸幸
4532133459



by yasukiyoshi | 2008-02-27 12:57 | 最適資本構成
2008年 02月 20日

モック端株株式の処分進まず

結婚式場を運営するモックは19日、昨年10月の株式併合で生じた一株未満の端数株式の売却が進まず、保有者への処分代金の支払ができていないと発表した。流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため、市場外での一括売却も検討している。
(日本経済新聞2008年2月19日16面)
【CFOならこう読む】
モックは昨年10月30日付で10株を一株に株式併合した上で、併合によって浮いた授権株式を利用して、理論株価から大幅にディスカウントした金額を行使価額とした新株予約権をファンドに発行しました。株式併合により80%の株式が端株となり、これを会社が集めて売却し、保有比率に応じて保有者に代金を支払うことになっていますが、いまだこの支払が実行されていないというのが、このニュースの要旨です。

その理由を会社は、「流動性が低いために市場で売却すると株価急落を招き、端数株の保有者への支払金も減少する可能性があるため」としています。酷い話です。こういったスキームが法的に可能であるとしても、一般株主の保護については慎重な配慮が求められます。流動性が低いのは最初からわかっていたはずで、それを考慮した上で速やかに現金化するのが会社の義務だと思うのですが…。

希薄化後の大幅に下落した現在の株価をもって端株保有者への支払を行うのも問題があります。株式併合発表前日の株価を基準に、会社が端株の買取に応じるべきであると私は思います。

【リンク】

2008年2月19日「株式併合に伴う端数株式処分代金のお支払いについて」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/080219.pdf

2007年9月7日「第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090705.pdf

2007年9月7日「株式併合に関するお知らせ」株式会社モック
http://www.moc.co.jp/ir/library/pdf/other/07090706.pdf
【関連過去記事】
2007年 09月 08日「モック、10株を1株に併合・新株予約権で59億円調達」
http://cfonews.exblog.jp/6422299/


by yasukiyoshi | 2008-02-20 10:14 | 資金調達
2008年 02月 16日

社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も

債券市場で社債の基準金利に対する上乗せ幅(スプレッド)が拡大している。
米金融保証会社の格下げなどを受けて、投資家が信用リスクを回避する動きを強めているためだ。社債の発行条件が折り合わず、起債を見送る企業も出始めた。今後もスプレッドが拡大すれば、こうした傾向が強まる可能性もある。

(日本経済新聞2008年2月16日 16面)
【CFOならこう読む】
新聞記事によると最近のマーケットは次のとおりです。

JR東海 2月15日条件決定

格付け ダブルA
表面利率 10年債100億円 1.69% スプレッド0.23%
20年債150億円 2.30% スプレッド0.20%
同社が昨年11月に募集した10年債200億円と20年債200億円のスプレッドに比べ、それぞれ0.06%、0.02%拡大

三菱商事 2月14日募集
格付け ダブルAマイナス
国債利回りに対するスプレッドは0.29%
昨年11月に募集した10年債250億円のスプレッドは0.24%
格付けがダブルAプラス銘柄の国債利回りに対するスプレッドの平均値は、14日時点で0.207%。1ヶ月前に比べて0.013%拡大。シングルAプラスは0.499%と同0.098%拡大。

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(日本経済新聞2008年2月16日)

【リンク】
平成20年2月15日「国内普通社債の発行について」東海旅客鉄道株式会社
http://jr-central.co.jp/news.nsf/news/2008215-132810/$FILE/syasai.pdf



by yasukiyoshi | 2008-02-16 08:55 | 資金調達