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2008年 11月 27日

三洋・パナソニック


三洋電機の買収を巡り、パナソニックと米ゴールドマン・サックス(GS)グループなど三洋の大株主三社の交渉が難航している。パナソニックが1株120円の買収価格を24日に提示したのに対し、200円台後半を主張するGSは25日に交渉打ち切りを通告した。パナソニックは他の2社が合意すればGS抜きでもTOBを実施する構えで厳しいせめぎ合いが続きそう。
(日本経済新聞2008年11月26日11面)
【CFOならこう読む】
「パナソニックの提示額は現在の株価(25日終値は156円)を下回る120円。GSは三洋の企業価値からかけ離れていると判断。25日に三洋を通じ、交渉の打ち切りをパナソニック側に通告した。」
(前掲紙)
現在の株価が優先株の希薄化を織り込んでいると考えるか、織り込んでいないと考えるかでフェア・バリューは異なります。

この点11月5日の当ブログで、株価は優先株の希薄化効果を一部織り込んでいないと考えられることをお話しました。
http://cfonews.exblog.jp/8900738/

2009年3月13日までは、GS他が議決権ベースで34%の保有義務があることから、この分の希薄化効果は現在の株価に織り込まれていないと考えることができます。

そう考えると、パナソニックの120円という価格も説明がつきそうです。

ただし、GSが了解しないままTOBを実行に移すことは考えづらく、これからの交渉如何では価格の引き上げもあり得るとは思います。いずれにしても三洋のスタンド・アローンバリューをどう見るかという点で、売り手・買い手が合意するまでもう少し時間がかかるかもしれませんね。

【リンク】

 なし

by yasukiyoshi | 2008-11-27 10:09 | M&A
2008年 11月 22日

フジタ上場廃止へ

フジタ信用不安回避へ先手
準大手ゼネコンのフジタへの親会社によるTOBが17日に終了し、東京証券取引所第二部を上場廃止となる。支援企業による上場廃止という異例の事態の背景には、優先株の普通株への転換による一株利益の希薄化や不動産市況悪化を懸念した株安への危機感がある。このまま放置すれば信用不安を招くと判断。株式市場からの退場を自ら選択した。
(日本経済新聞2008年11月22日14面)
【CFOならこう読む】
「フジタは旧フジタの建設部門が分離して2002年10月に設立。2005年9月にフジタHDを引受先に第三者割当増資を実施。普通株と優先株の発行で410億円調達した結果、フジタHDはフジタの発行済み普通株の44.8%と優先株すべてを保有する。フジタが憂慮するのは約889万株にのぼる優先株の存在。すべてを転換すると普通株数は約3億7700万株と現在の約12倍に膨らむ。一株利益の希薄化や需給悪化から「短期的に株価が下落する恐れがある」(上田社長)。
(前掲紙)
もとをたどると2002年10月の分割スキームがまずかったのかもしれません。

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優良事業と思われた建設事業を分離するに当たり、分割会社が過半数の株式を保有するスキームを選択したため(みなし配当を回避するためと言われています)、その後の資本戦略に制約が生じるであろうことが、当時から指摘されていました。

その後、2005年9月にGS系投資会社フジタHDから410億円の出資を受ける際に、90%の無償減資、10:1の株式併合といった処理をせざるをないことになってしまいました。

そして今回の上場廃止です。2002年10月のときに中途半端な処理をしたばかりに、無駄に遠回りしてしまったと私には思えます。

【リンク】
平成17年6月8日「「新中期経営計画」の一部修正とスポンサーの決定について」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/00034423.pdf

平成20年9月25日「非上場の親会社である有限会社フジタ・ホールディングスによる当社株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/20080925160442.pdf

平成20年11月18日「非上場の親会社である有限会社フジタ・ホールディングスによる当社株券等に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」株式会社フジタ
http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10101806/20081118163583.pdf


by yasukiyoshi | 2008-11-22 11:22 | M&A
2008年 11月 19日

スキーム・オブ・アレンジメント キリンの買収提案 豪コカコーラ(CCA)拒否

豪コカ・コーラ、キリンの買収提案拒否 条件見直し検討へ
【シドニー=高佐知宏】オーストラリアの飲料大手コカ・コーラ・アマティル(CCA)はキリンホールディングス傘下の豪ビール大手ライオンネイサンからの買収提案を拒否した。買収額の約80億豪ドル(約4985億円)は「当社の価値を反映していない」(CCA)のが理由。キリンHDは「理解を得られるよう交渉を続ける」として今後、買収金額引き上げなど条件見直しの検討に入るとみられる。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D1807Z%2018112008&g=S1&d=20081118
【CFOならこう読む】
キリンの買収価額が「当社の価値を反映していない」(CCA)という理由で、CCA取締役会は買収交渉打ち切りを決めました。14日終値に対し31%のプレミアムを付した買収価格では安すぎる、ということでしょう。

今回の買収はスキーム・オブ・アレンジメントによることを、キリンHDはプレスリリースの中で公表しています。

スキーム・オブ・アレンジメントとは、
「英国法上の買収手続き。1)買収対象会社の取締役会決議を経たうえで、被買収企業の株主総会で参加株主の過半数かつ議決権で七五%の賛成による承認(2)英国裁判所の審問による承認(3)関連地域の競争法当局による承認――が必要。」
(日本経済新聞2007年3月9日)
日本板硝子の英ピルキントン買収、JTの英ガラハー買収の際にも同手続きが取られました。

つまり取締役会がYESと言わないかぎり、事は進まないということです。

ただし日本のどこかの会社のように濫用的買収者云々ということではなく、価格が問題だということなので、勝負はバリュエーションのコンテストで決します。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-11-19 11:11 | M&A
2008年 11月 18日

キリンHD 豪コカコーラ(CCA)買収

キリンHD、豪コカ・コーラに買収提案 4880億円投入
キリンホールディングス(HD)は17日、豪清涼飲料大手コカ・コーラ・アマティル(CCA)に買収提案したと発表した。傘下のオーストラリアのビール大手ライオンネイサンを通じた買収総額は80億豪ドル(約4880億円)で、国内食品会社による海外企業の買収では過去最大。少子高齢化などを背景に国内市場が縮小するのに対応し、海外での営業基盤を一気に拡大する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2F1700O%2017112008&g=S1&d=20081117
【CFOならこう読む】
本件の概要は次の通りです。
・ LN社が提示したCCA社買収金額は、総額約80億豪ドル(約4,880億円)。

・ CCA社株主に対する対価の支払いは、現金、LN社株式、現金とLN社株式の組み合わせのいずれか選択可能。

・ LN社は、CCA社株主の受取対価として、約45億豪ドル(約2,745億円)の現金およびLN社株式約346百万株を提示。

・ 買収対価のうち現金部分の調達は以下を予定:

LN社の株主総会における承認に基づく、KH社を引受先とする総額37.6億豪ドル(約2,294億円)の第三者割当増資により、大部分の現金を調達予定。この取引によりKHはLN社の普通株327百万株を取得予定。一部についてはLN社の負債による調達を予定。

・ 本件は、LN社およびCCA社の株主総会における承認、豪州およびニュージーランドの公正取引委員会、ならびに、外国投資審査委員会等の審査を含む規制当局の承認を必要とする。

・ なお、本件はLN社とCCA社間での統合であり、KH社の他事業会社は含まれない。1豪ドル=61円(2008年11月13日現在)
買収対価としてCCA株主は、現金、ライオンネイサン株、もしくは両方の組み合わせのいずれかを選択できるという方式はとても良いと思います。

M&Aでは、必ずしも株主の望む通りの結果にならない可能性があることが、「TOBによる敵対的買収の不可能性」として1980年にサンフォード・グロスマンとオリバー・ハートにより指摘されています。
この理論によると、多くの株主が次のように考えます。
「買収者は被買収企業の将来性について自分たちの知らない良い情報を持っているに違いない。買収者がマジョリティを握ることで株価は買収価格より上がるはず。ならばそのまま持っていよう。」
多くの個人株主がこのように考えるなら、このM&Aは不成立に終わります。

被買収者の株主が対価を株で受け取るか、現金で受け取るか選択できれば、「TOBによる敵対的買収の不可能性」の問題は解消されます。

ただし、国内法ではこのようなスキームが予定されておらず、実行は困難であると思われます。

【リンク】
2008年11月17日「ライオンネイサン社とコカコーラ アマティル社における全株式取得に向けた交渉について」キリンホールディングス
http://www.kirinholdings.co.jp/news/2008/1117_01.html


by yasukiyoshi | 2008-11-18 11:23 | M&A
2008年 11月 05日

優先株式の評価-三洋電機のケース

パナソニックの三洋買収 金融3社の売却価格 焦点
パナソニックが三洋電機の子会社化で大筋合意したことで今後、三井住友銀行など金融三社が保有する優先株の売却価格が焦点となる。4日の東京株式市場では両社とも株価が上昇したが、市場の株価を基に価格算出を主張する金融機関と、株価の希薄化リスクを考慮すべきだとするパナソニックとの議論が残っている。
(日本経済新聞 2008年11月5日 9面)
【CFOならこう読む】
「買い手側からみると現在のPBRやPERが同業他社より高いことから判断して、株価は希薄化を織り込んでおらず、実際より割高な状態だとみている。一方、売り手からすると優先株転換で発行済株式数が増える可能性は発行時から分かっており、現在の株価は希薄化を織り込んだ上で成長性などを評価してついているとみる。そのため現在の株価にプレミアムを付けて売却したい考えだ。」
(前掲)
理論的には売り手が言うように、発行時に希薄化は織り込まれたと考えるべきですが、このケースでは次のような株式保有義務が買い手側に課されている点を考慮すべきです。
「資本金払い込み後、二年間はGSと大和証券SMBCグループが議決権ベースで四九%の優先株を保有するよう義務づけている。しかし、その一年後には保有義務が三四%に下がり、さらにその後は〇%。つまり三年を過ぎた時点で出資者側は自由に普通株に転換し、売却できるようになる。」
(日経産業新聞 2006年2月1日 24面)
最初の2年間とは、平成2008年3月13日まで、その1年後とは平成2009年3月13日です。つまり、転換に制限を設けて希薄化が起こりにくい仕組みにしたのです。
発行時の市場価格(2006年1月25日終値348円)を大幅に下回る価格で優先株が発行(普通株に換算した発行価格は70円)されたので、希薄化を抑える必要があったのです。

2009年3月13日の期限を迎えていない現時点で、希薄化が完全には株価に織り込まれていないというパナソニック側の主張に分があるように思います。

【リンク】
平成17年12月21日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2005/di-1221-1.pdf

平成18年1月25日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0125-1.pdf

平成18 年2 月14 日「第三者割当による新株式(優先株式)の発行にかかる覚書締結に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0214-2.pdf


by yasukiyoshi | 2008-11-05 11:55 | M&A
2008年 11月 01日

TCI全株をJパワーに売却へ

Jパワー:英投資ファンドの保有株買い取り 対立終結へ
電力卸大手のJパワー(電源開発)は31日、筆頭株主の英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド」(TCI)が保有する発行済み株式の9・9%をすべて買い取ると発表した。Jパワー子会社の取り扱いに反対するTCIがJパワー側に保有株買い取りを要請してきたことに応じた。大幅増配の可否などを巡って展開された両者の対立も終結する見通しとなった。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20081101ddm008020022000c.html
【CFOならこう読む】
TCI・Jパワーの件について、「ズバリ先読み 日本経済」(竹中平蔵・田原総一郎 アスコム)の中の竹中氏の発言が的をえているので、紹介します。
田原 同じような話で、Jパワーの株買い増し問題というのもある。Jパワーは、全国に発電所や送電線網を持って、東京電力などへの電力供給をしている会社。半世紀以上前に国策会社として設立されたが、2004年に株式上場し、完全民営化された。この筆頭株主が、イギリスの投資ファンドTCIで、Jパワー株の9.9%を持っている。ところが、もっと買いたいと言ったら、日本政府はノーと言った。公益性が高いから、株取引は外為法で規制されており、外資が10%以上保有する場合は政府の認可が必要とされている。しかし、許可せず、買い増し計画の中止命令を出したと。どういうことですか?

竹中 これも、なぜ「ノー」なのか、よくわからない。財務省や経産省が、田中角栄を逮捕したときのように、別件逮捕みたいな法律を使って、投資できないようにしちゃった。そう決まった翌日だったか、英「フィナンシャルタイムズ」の一面はすごかったですよ。見出しが”Japan closed to investors”(投資家に閉ざす日本)でEUのコミッショナーが抗議している写真入りの、大々的な記事。世界から見ると「なんだこれは」ということをやっているわけです。

そもそも、会社が上場しているということは、広く株式も売っているわけですよ。上場を英語でいうとおもしろい。"place”と言うんですよ。置くんです。さあ、取引してくださいと置いているわけです。じゃあ、これを買おうかというと、「ダメだダメだ。イギリスのお前はダメだ」と言っているわけです。ビックリしますよね、普通は。空港設備でも原子力でも、守らなければならない公共の利益があるのは当然です。しかし、なぜ外資規制なのかが、まったくわからない。国内資本ならば何でもいいのか、連合赤軍のような過激派が買ったらどうするんだ、という問題でしょう。だからやっていることの説明がほとんどつかないんです。

田原 なるほど。

竹中 ちなみにソニーは外資です。キヤノンも三井不動産も外資なんですよ、今は。

田原 株主構成を見て、外国資本が50%を超えているから?

竹中 外資の定義は、そうですからね。私は担当者に聞いたんですよ。「ソニーはJパワーの株を10%を超えて買えるんですか」と。フーンと考えて「買えません」と言った(笑)。だからムチャクチャなことをやっているんです。

田原 そうか、ソニーもキヤノンも三井不動産も、投資できないんだ。じゃあ外資のキヤノンのトップが、日本の経団連会長でいいんですか?

竹中 知りません、そんなことは(笑)。

田原 無責任な天下り官僚ばっかりの空港会社や電源開発会社のほうが、よほど安全保障に差し障りがありそうですね。

竹中 とにかくやっていることが、ちょっとムチャクチャすぎるんです。かつての経済産業省は、ここまでヘンなことはしなかったと思いますよ。でも最近は、なりふり構わずです。

田原 なんで?

竹中 天下り先の確保でしょ。それしか考えられない。しかし、外為法という別件逮捕の手が使えるぞ、これで何でもできるぞとわかりましたから、これから同じような問題が噴出してくるでしょう。

連休初日のなので、今日はこれでオシマイ。
皆さん良い連休を!

【リンク】
ズバリ!先読み 日本経済 改革停止、日本が危ない!
竹中 平蔵

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by yasukiyoshi | 2008-11-01 08:45 | M&A
2008年 10月 27日

MBOにおける「公正な価格」を巡る司法の判断

レックスのMBO 高裁、少数株主の保護重視
焼肉店「牛角」を展開するレックス・ホールディングスの経営陣による買収(MBO)で、強制買い取り価格に不満を持つ個人株主が裁判所に価格決定を申し立てた。
会社側の主張を認めた東京地裁から一転、高裁は9月、会社の提示を上回る価格を妥当と判断し、波紋が広がっている。情報量の面で不利な少数株主に目配りした決定を評価する意見もあるが、M&A実務の現場では戸惑いの声も上がっている。

(日本経済新聞2008年10月27日16面)
【CFOならこう読む】
本件で高裁は、妥当なプレミアムを20%と判断しました。高裁はその理由を次のように説明しています。
「本件MBOと近接した時期にMBOを実施した各社では、公開買付公表前の3ヵ月または6ヶ月の平均株価に16.7&~27.4%のプレミアムを上乗せした価格を買付価格としている」
「プレミアムについては、これらの近接事例に加え、平成12年~17年に日本企業を対象とした公開買付事例85例のプレミアム平均値が27.05%であることなどから、20%のプレミアムを加算した金額が、最終的に株価上昇に対する評価額を考慮した本件株式の取得価格と認めるのが相当」
(出所:商事法務No.1844 51頁)
買収プレミアムを上乗せした価格とは、
「新たな経営者が支配権を獲得して従来と異なる新たな経営方針で経営する場合に予想されるキャッシュフローの現在価値総和である、あらたな「DCFフルバリュー」よりは低い値で、売り手である株主と合意できる程度のプレミアムを含んだ値」(実践M&Aハンドブック 服部暢達 日経BP社)
を言います。

買収プレミアムに影響を与える変数は、取得議決権割合、評価マルチプル、対価の種類、買収手法、案件の敵対性、のれんの大小、税務メリット等無数にあります。つまり個別性が非常に強いと言えるのです。

ですから、平均27.05%だから云々という議論は、売り手株主の判断材料にはなるとしても、公正な価格を決める司法の判断として相応しいとは思えません。

軽々しく20%などという水準を示すことの実務に与える影響を考えてもらいたいと思います。

【リンク】
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by yasukiyoshi | 2008-10-27 10:28 | M&A
2008年 10月 18日

敵対的買収へ? ノーリツ・スティールのケース

日米欧、時価会計一部凍結へ 金融危機封じへ非常手段
日米欧が一斉に、金融機関や企業が保有する債券や証券化商品などの金融商品を時価で評価する時価会計の適用を一部凍結する方向で動き出した。日本は民間の企業会計基準委員会(ASBJ)が16日、時価評価の対象外になる範囲を拡大するなど会計基準を見直す検討を始めた。市場の混乱を受けて時価会計凍結を検討する米国や、見直し策を打ち出した欧州に追随する。世界的な金融危機を封じ込めるため緊急措置に踏み切る。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081017AT2C1601T16102008.html
【CFOならこう読む】
新聞報道にある通り、ノーリツは、スティールの買収行為を、「大規模買付行為に関する対応方針」(以下大規模買付ルールという)の適用除外としないことを決めました。

したがって、今後はノーリツが事前導入にしている大規模買付ルールに従って事が進められることになります。具体的には次の通りです。

1.大規模買付ルール遵守表明書の提出
2.大規模買付ルール遵守表明書提出後10日以内に、大規模買付情報の提供とその開示
3.取締役会評価期間及び株主熟慮期間の設定等取締役評価期間ー情報提供後90日間(全部買付でない場合)株主熟慮期間ー取締役会評価期間満了後30 日間


特別委員会への諮問については次のように定められています。
「当該大規模買付行為が当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に反すると認められるか否かの検討及び判断にあたって、当社取締役会は、大規模買付者の提供する買付後の経営方針等を含む情報に基づいて当該大規模買付者及び大規模買付行為の具体的内容(目的、方法、対象、取得対価の種類・金額等)や当該大規模買付行為が当社株主共同の利益に与える影響を検討いたしますが、その客観性及び合理性を担保するため、当社取締役会が適切と判断する時点において、特別委員会に対して当該大規模買付行為が当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に反すると認められるかどうかにつき諮問し、その勧告に従うとともに、社外監査役全員の同意を得ることといたします。但し、当該特別委員会の勧告に従うことが、当社取締役の善管注意義務に違反することとなる場合にはこの限りではありません。
なお、当該特別委員会の勧告が、当該大規模買付行為は当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に反するとは認められないとする内容であって、当社取締役会が、これと異なる判断を行おうとする場合は、下記(3)の要領により株主意思の確認手続きをとることができるものとします。」
要するに特別委員会が、大規模買付行為が当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に反すると判断し、取締役会も同じ判断である場合には買収防衛策の発動が出来る設計になっています。

この点スティールはノーリツの大規模買収ルールについて、次のように批判しています。
「我々は、貴社取締役会が2007年に導入されている、貴社株式の大規模買付行為に関する対応方針(以下、「買収防衛策」といいます。)の内容を存じております。当ファンドは、過去の経験より、このような事前警告型の買収防衛策は、主に交渉の機
会の限定と経営陣の保身を目的としているため、欠点が多いと考えております。また、貴社の買収防衛策に基づく手続きは一応「独立した」特別委員会の監督を受けることとなっておりますが、当委員会の委員は内部出身者からなる取締役会により選任され、当買収防衛策においては貴社取締役会が最高の意思決定機関とされております。このように、明らかに独立性を欠き、利益が相反していることに鑑み、当ファン
ドは貴社に対し、一切対抗措置を発動せず、当ファンドの買付提案に応じるか否かを個々の株主の一存に任せられるよう、要請いたします。」
今後の展開は予断を許しませんが、スティールは買収を止めないとすると、買収防衛策の発動、それに対する差し止めの仮処分の申し立て、最終的には最高裁の判断に委ねる、という風に進んでいくのではないか、と私は思っています。

【リンク】
2008年7月14日「スティール・パートナーズ・ジャパン、 ノーリツに主力事業への集中と不採算事業の閉鎖を要請」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、
エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080714-noritz_j.pdf

2008年9月11日「スティール・パートナーズ・ジャパン、ノーリツに買収提案」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、
エル・ピー
http://www.spjsf.jp/pdf/080911-noritz_j.pdf

平成20 年10 月17 日「SPJSF からの書簡における当社大規模買付ルール適用除外同意の要請に対する回答について」株式会社ノーリツ
http://www.noritz.co.jp/news/2008files/081017_01.pdf

2008年10月17日「『当社の見解』に関する補足資料」株式会社ノーリツ
http://www.noritz.co.jp/news/2008files/081017_02.pdf

平成20年10月17日「SPJSF に対する回答書簡について」株式会社ノーリツ
http://www.noritz.co.jp/news/2008files/081017_03.pdf

平成19年2月13日「当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)について」株式会社ノーリツ
http://www.noritz.co.jp/news/2007files/070213.pdf




by yasukiyoshi | 2008-10-18 11:45 | 買収防衛策
2008年 09月 24日

ワークスアプリケーション、買収防衛策取り下げ

ワークスアプリケーションズ、買収防衛策を取り下げ
業務用ソフト開発のワークスアプリケーションズは22日、24日開催の定時株主総会の議案から買収防衛策(大規模買い付けルール)にかかわる事項を取り下げると発表した。半数以上の議決権が株主総会前に書面で行使された結果、反対が多数で、否決の可能性が高いと判断した。現在の防衛策は10月31日で失効する。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20080924AT2D2201G22092008.html
【CFOならこう読む】
ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、議決権割合が20%以上となる大規模買付の場合次の手順に従うことを要請するものです。

①大規模買付行為に関する意向表明書の提出
②大規模買付行為に関する情報の提出
③特別委員会の設置、対応
④取締役会としての意見の通知


買収者が上記ルールに従わない場合、必要に応じて対抗措置を講ずるとしていますが、その具体的な対抗措置については新株予約権の無償割当に限定されません。

ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、特別おかしなものではありません。これが会社が説明するように、企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、いわゆる2段階買収のように株主に対象会社株券等の売却等の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の株主や取締役会が大規模買収者の提案条件等について検討し、取締役会が代替案を提供するために必要な情報や時間を十分に提供しないもの、を排除するためだけに在るのなら問題はないと言えます。

しかしこのルールが経営者保身の道具となり得ることを、多くの株主は敏感に感じとり、反対票を投じたのでしょう。こういうニュースは、経営者をまたぞろ株式持合いに走らせるのでしょうね。

今必要なのは、岩井克人氏が「M&A 国富論」(プレジデント社)で強調しているように、買収防衛に関するルールを法制化することだと思います。

【リンク】
平成20年9月22日「定時株主総会における一部議案の上程取下げおよび『定款の一部変更に関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ
http://ir.worksap.co.jp/press/press/media_1222070235_j.pdf

平成20年7月30日「当社株件等の大規模買付行為に対する対応方針(買収防衛策)に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ
http://ir.worksap.co.jp/press/press/media_1217415707_j.pdf

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by yasukiyoshi | 2008-09-24 11:02 | 買収防衛策
2008年 09月 20日

TOBルール 改正から2年

実務面で課題多く 透明性向上 議論積み上げ必要
ライブドアによるニッポン放送株の大量取得などを契機にTOBルールが見直され、近く2年を迎える。株式の取得価格が市場に明示され、株主にとって透明性の高いM&A手法だが、実務面では細かな障害が多く、使い勝手が悪いとの声が根強くある。さらなる改正に向け問題点も浮上している。
(日本経済新聞 2008年9月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事の中に次の記述があります。
「敵対的買収をするならTOBは利用しない方がいい」と日興シティグループ証券の藤田勉マネジングディレクターはファンドなどに助言している。いったんTOBを始めると価格変更や撤回は買収企業の防衛策など例外を除き事実上困難で「買収側の負担が重すぎる」(藤田氏)。
TOB開始後、買付価格の引き上げは自由にできますが、引下げは原則として禁止されています(金商法27条の6 1項1号)。これは投資家保護及び相場操縦に悪用されないようにするための規定であると解されています。

この原則の例外として、買収防衛策の発動により、株価の希薄化が生じる場合、買付価格の引下げが容認されるという規定が、平成18年改正により新たに設けられています。引下げが容認されるのは、株式分割と新株又は新株予約権の無償割当の場合に限定されています。したがって、第三者割当増資により大きな希薄化が生じても、買付価格の引下げは認められません。

また、新株予約権の無償割当等により買付価格の引下げが認められるのは、TOB期間中にその決定があった場合ではなく、TOB期間中に実行された場合に限られます。相場操縦に悪用される懸念から、買付価格の引下げについて非常に厳しい要件が課されているわけですが、それにより行われるべきTOBがなかなか行えない、という弊害が生じているのも事実です。

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by yasukiyoshi | 2008-09-20 09:44 | M&A