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2008年 09月 17日

日本電産、東洋電機製造に買収提案

日本電産、東洋電機製造に買収提案 「鉄道機器」に進出
日本電産は16日、鉄道用機器メーカーで東証1部上場の東洋電機製造に買収を提案したと発表した。TOB(株式公開買い付け)により子会社化し、モーターなど鉄道機器分野に進出する狙い。日本電産は多くのM&A(合併・買収)を手掛けてきたが、相手企業と合意する前に買収提案を公表するのは初めて。東洋電機製造は「対応を検討中」としており、買収が成功するかは同社の対応に左右されそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080917AT1D160CK16092008.html
【CFOならこう読む】
本件で今後想定されるシナリオは次の通りです。

①東洋電機製造経営陣はTOBに賛同し、TOBが実行される。
②東洋電機製造経営陣はTOBに反対する。

 ②の場合、日本電産は、
②-1 買収を諦める
②-2 敵対的TOBを実行する


 ②-2の場合、東洋電機製造は、
②-2-1 第三者割当増資等により安定株主を作る
(王子・北越のケース)
②-2-2 濫用的買収者として買収防衛策を発動する
(スティール・ブルドックのケース)
②-2-2 何もしない

ところで、②-2-2のケースでTOBは成功するのでしょうか?

東洋電機製造は、個人株主の比率が約5割と高く、TOBの成否は個人株主がTOBに応募してくるかどうかによって大きく左右されます。

TOB価格は1株635円で12日終値(305円)に約108.2%のプレミアムを上乗せした水準です。過去の株価の推移から見ても十分な水準のプレミアムであると言えます。

ですからこのTOBに多くの個人株主が応募してくるように思えます。ところがゲーム理論的なアプローチではこれが必ずしもそうはならないことが指摘されます。

日本電産の買収に賛同する株主は、日本電産は東洋電機製造のファンダメンタルズ価値がTOB価格以上であると考えているはずだと考え、保有株式を売らない、という選択をします。日本電産の買収に反対する株主も、保有株式を売りません。

したがって、支配株主がいない本件のケースでは、ゲーム理論的には日本電産の買収は成立しない、ということになります。

岩井克人氏の近著「M&A 国富論」(プレジデント社)は、次のようにTOB価格だけで買収の可否を決する方法を次のように批判し、新しい買収ルールを提案しています。

「ある買収者が市場を一生懸命リサーチし、買収して価値を高められそうな会社を見つけてTOBをかけた場合、既存株主は何もしない、つまり「寝て待つ」ことが最良の戦略となるのです。その結果、買収は成立しなくなる。このようにTOB価格だけで買収するかどうかを決めるという仕組みは、本質的な矛盾を含んでいます。
これはファイナンス理論の中の最も重要な命題の一つなのですが、そのような理論を無視して、教科書を表面的に勉強しただけの人が、TOBの価格だけで買収の勝負をつければよい、それが株主のためだと主張しているのを見ると、情けなくなります。」
私は、TOBの価格で買収の勝負をつけるのが良いと考えています。株主が欲するのは、良い経営ではなくキャピタルゲインです。十分なプレミアムを付せば、多くの個人株主はTOBに応募してくるのです。そしてそれだけのプレミアムを付けてもなおペイする自信のある株主に支配権が移動する、この仕組みが国富の点からも望ましいと、私は考えるのです。

岩井氏の提案する買収提案の詳細については、また別の機会にこのブログでとりあげます。

【リンク】
平成20年9月16日「東洋電機製造株式会社に対する資本・業務提携に関する提案書提出のお知らせ」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-001.pdf

平成20年9月16日「貴社との資本・業務提携のご提案について」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-002.pdf

M&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことか
岩井 克人

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by yasukiyoshi | 2008-09-17 09:03 | M&A
2008年 09月 08日

米スティール対日戦略転換

「日本の経営者を啓蒙します。」米投資ファンド、スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が昨年6月の記者会見で発した一言が、物議を醸したのは記憶に新しい。企業に事前了承なしのTOBを仕掛けるスティールは「こわおもて投資家」の代表格。だが意外なことに、最近は対話路線への転換を急いでいるという。なぜなのか。昨夏以降、メディアへの登場を拒んできたリヒテンシュタイン氏が日経ヴェリタスに胸の内を明かした。
(日経ヴェリタス 2008年9月7日 54面)
【CFOならこう読む】
リヒテンシュタイン氏は、インタビューの中で、
「昨年のブルドック案件から、投資先とのコミュニケーションがいかに大切かを学ん
だ」
「投資先企業にはまず、スティールが長期の投資を目指すファンドであることを理解
してもらいたい。そして我々が利益率やROEを高める具体的なアイデアを持ってい
る」
と語っています。

そして、そのアイデアについて具体的に次のように語っています。
「例えばコーポレートガバナンスの向上、中核事業への経営資源の集中、資本政策の最適化などです。こうした取り組みで株価が上がる余地は大きいはずです。」
そして投資ファンドの目的について、
「この仕事の最大の目的は、投資先企業を育てていくことです。その結果として、我々は株主を含めた企業のステークホルダーに価値をもたらすことができます。企業が良くなっていけば経済全体が良くなるし、税収が増え、株価上昇を通じて年金生活者など国民の利益にもつながる。そう信じて働いています。」
と話しています。

私には、未だ彼らが濫用的買収者である理由がわかりません。

しかしリヒテンシュタイン氏は、それをただ徒に非難するのではなく、日本市場での”土着化”を進めています。7月に代表にモルガン出身のマーク・オフリルが就任したのも”土着化”を進めるためです。
「オフリル氏は通算17年間にわたって日本に住んでいる日本通。モルガンでの経験も長く、日本市場を熟知しています。オフリルが代表になったことで、投資先企業との対話も加速していくでしょう」
「彼に期待するのは、日本政府との関係構築です。モルガン時代には大阪証券取引所の社外取締役を務めた経験もありますし。」
ブルドックの時に、さんざんコケにされた経済産業省と関係を構築しようと云うのでしょうか?

いずれにしても日本で”土着化”するには、官庁との関係が重要であることは間違いありません。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-08 08:39 | M&A
2008年 09月 05日

テクモ・スクエニのケース

テクモとコーエー、経営統合波乱含み 具体策は11月上旬メド
ゲームソフト会社でともに東証1部上場のテクモとコーエーは4日、経営統合に向け協議を始めると発表した。経営統合委員会を設け、11月上旬をメドに統合の具体策を詰める。テクモは同業のスクウェア・エニックスからTOB(株式公開買い付け)提案を受けていたが、経営陣はこれを拒否し、コーエーとの統合を選んだ。これを受け、スク・エニはテクモに質問状を提出、対応を今後考えるとしており、先行きはなお波乱含みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080905AT1D040AF04092008.html
【CFOならこう読む】
スク・エニからのTOB提案を拒否し、ホワイトナイト役をコーエーに求めた格好です。

スク・エニではなく、コーエーを選んだ理由をテクモ経営陣は明確に語っていません。
スク・エニは昨日、テクモに対し質問状を提出し、この点を照会しています。

今後の展開が注目されますが、仮にスク・エニが敵対的TOBに打って出た場合、テクモがコーエーとの経営統合を強行するのは、時間的な制約から、非常に困難であると言えます。その理由は次の通りです。
「簡易合併手続が利用できる場合を除き、会社が第三者と合併を行うには株主総会において特別決議を行う必要があるが、敵対的買収の手段として一般に用いられるTOBは、証取法上、買付期間が最短で20日、最高で60日とされており、これとの関係で、実際に防衛的な合併を行うには実務上困難な問題が生じる可能性がある。
まず、そもそも合併が敵対的TOB阻止のための手段として機能するためには、TOB手続中に対象会社の取締役会において他の会社との合併を決定し、TOB買付期間満了前の一定の日を基準日ないし株主名簿閉鎖日として、合併承認のための株主総会を招集しなければならない。
TOB完了後に基準日を定めて株主総会を招集しても、買付者側が多数の株式を取得して基準日までに名義書換をすれば合併承認決議はブロックされてしまうことになるからである。しかしながら、基準日等を定めるためには2週間前の公告が必要とされていることに鑑みると、最短20日間の買付期間内にここまですべて完了させるのは不可能ではないにせよ至難の業であろう。」
(「平時」の予防策と「有事」の対応策 太田洋・原田充浩著 商事法務)
いずれにしても、スク・エニとコーエーのいずれがテクモの株主価値を創造するのか(当然、従業員のモチベーションを高める施策も含まれます)、きちんと時間をかけて説明をした上で、テクモ株主がいずれかを選択する、という手続きが必要でしょう。そういう意味では、両社がTOB合戦を行うのが一番わかりやすい形であると私は思います。

【リンク】
2008年8月29日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けについて」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080829_133.pdf

2008年9月4日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けの提案に関する同社からの回答への対応」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080904_135.pdf

平成20年9月4日「経営統合にかかる協議開始のお知らせ」テクモ株式会社 株式会社コーエー
http://www.tecmo.co.jp/company/pdf/2008090402.pdf


by yasukiyoshi | 2008-09-05 09:09 | M&A
2008年 08月 28日

PIPEs-田崎真珠のケース

経営改善「PIPEs」広がる 上場維持しファンド活用 改革効率はMBOに軍配
上場企業が経営改善として投資ファンドから「PIPEs(パイプス、株式公開企業への私募投資)」と呼ぶ手法で出資を受ける事例が増えている。株式の非公開化前提のMBO(経営陣が参加する企業買収)と違い、上場を維持しながら支援を得られるのが特徴。経営改革にファンドの資金は活用したいが、上場廃止はしたくないという企業の間で広がっている。「経営再建にはファンドの力が必要」。7月末、3期連続の最終赤字で財務体質が悪化した田崎真珠は、投資ファンドのMBKパートナーズの出資受け入れを決断した。MBOも検討したが、最終的には「社員や取引先への影響が大きい」(明石靖彦常務)上場廃止を避けるためにPIPEs方式を選んだ。
(日本経済新聞2008年8月28日 14面)
【CFOならこう読む】
「PIPEsはPrivate Investment In Public Equitiesの略。ファンドは投資先と相対で私募増資や第三者割当増資などの条件を交渉、市場価格より安く株式の一部を譲り受ける。経営にも関与して企業価値を高め、保有株の売却益を狙う。企業側には公募増資などに比べて迅速に資金調達できる利点がある。上場企業のステータスを保ちつつ、一定の改革を期待できる手段として経営者も受け入れやすい。」
(前掲 日経新聞記事)
田崎真珠のスキームの概要は次の通りです。
第三者割当による種類株式の発行(A種優先株式)
発行期日 平成20年10月下旬(予定)
調達資金の額 6,900,000,000 円(発行価額: 200 円)(差引手取概算額)
当該増資による発行株式数  35,000,000 株
募集後における発行済株式総数  35,000,000 株
割当先  Watermunt Spare Parts B.V.(MBK パートナーズの投資目的子会社)
A種優先株式には議決権が付与されており、発行後におけるWSPの議決権比率は49.55%となります。

発行価額の200円は、本件取締役会決議日7月31日の終値142円に比し高い設定となっていますが、A種優先株式には、優先株式1株につき4株の普通株式の交付を請求することができる取得請求権が付与されており、これを勘案すると有利発行となるので、株主総会の特別決議を必要とします。

臨時株主総会は9月下旬又は10月上旬に開催され、①(i)発行可能株式総数の変更やA種優先株式の内容に関する規定の新設等A 種優先株式発行のために必要となる事項に関する定款の一部変更並びに(ii)社外取締役との間の責任限定契約に関する規定の新設を内容とする定款の一部変更、②A 種優先株式の有利発行、並びに③本増資実行後の発行可能株式総数等に関する定款の一部変更について決議されます。

更に、本増資を条件として現取締役5名中代表取締役を含む4名及び現監査役4名中3名が辞任し、同じ臨時株主総会において、新たな役員の選任について併せて承認を求め、経営陣を一新することが予定されています。

PIPEsは、株主総会の特別決議を要すること、株価が大きく希薄化するため一般投資家への影響が大きいと考えられること、上場を維持しながら経営改善に取り組むため、ファンドにとってもMBOに比しExitまで時間がかかる場合が多いと考えられること等を勘案すると、この方式を選択すべきケースはあまりないと思われます。

【リンク】
平成20年7月31日「第三者割当による優先株式の発行、定款の一部変更、代表取締役及び役員の異動、主要株主である筆頭株主及び親会社の異動、大規模買付行為への対応方針の取り扱い、並びに臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」田崎真珠株式会社
http://www.tasaki.co.jp/kessan/whats031.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-28 10:21 | M&A
2008年 08月 27日

取引所ルール創設により、経営者の保身目的の防衛策導入・発動排除へ

東証、買収防衛策の開示徹底 年内にも新ルール
東京証券取引所は年内にも、上場企業の買収防衛策に対する新たな規制ルールを作る。国内外の投資家から意見を聞いたところ防衛策について否定的な見解が相次いだためで、情報開示の徹底などにより経営者の保身目的の防衛策導入・発動を排除する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080827AT2C2601726082008.html
【CFOならこう読む】
東証は記者会見に合わせて、「M&Aをとりまく現状に関する投資家意見の概要― 買収防衛策を中心に ―」というレポートを公表しています。

このレポートは、以下の文章で締めくくられています。
「当取引所は、投資者の保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、上場会社の企業行動に対して適切な対応をとることを、上場制度の整備における基本方針の一つとしており、従来より、買収防衛策の導入に係る尊重事項を企業行動規範に定めているほか、詳細な開示事項を定めるなど、買収防衛策の導入時または導入後において、株主及び投資者の正当な権利を保護するために必要と考えられる事項を整備してきたところである。

当取引所では、現行の我が国の法制度の下において、買収防衛策自体を一律に否定するものではないが、議論の対象は企業一般ではなく上場会社の買収防衛策であることから、資本市場の視点を重視する必要がある。その意味でも、今回、買収防衛策の導入そのものを歓迎しない旨の投資家コメントが数多く寄せられたことについては、真摯に受けとめる必要があると考える。そこで、当取引所としては、買収防衛策が株式市場において投資者に与えうるネガティブな側面を上場会社に発信していくこととしたい。

また、このような投資家意見の背景には、投資者の権利への配慮が不十分な買収防衛策の導入や、実際の買収局面において、防衛策の発動や第三者割当て等の敵対的買収に対する対抗措置により、投資者が株式を売却する機会が奪われたり制約を受けたりするような企業行動が現実に見られることがあるように思われ、当取引所としても、投資者の保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、あらためて市場開設者として何ができるかについて、早急かつ重点的に具体的方策を打ち出していくこととした
い。」
個人的には、社外取締役の要件、濫用的買収者の定義、第三者割当増資の上限設定等を市場ルールとして厳格に規定することが必要であると考えています。

【リンク】
平成20年8月26日「定例記者会見資料」株式会社 東京証券取引所グループ
http://www.tse.or.jp/about/press/080826s.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-27 08:43 | M&A
2008年 07月 01日

M&Aに関する基準案公表

会計基準委 M&Aに関する基準案公表 年内に最終決定
企業会計基準委員会は30日、M&Aに関する一連の会計基準案と、投資不動産の時価開示に関する会計基準案を公表した。M&Aに関する新ルールでは、合併時に両社の資産や負債を簿価のまま合算する「持分プーリング法」の廃止などを決めた。8月20日まで一般から意見を募り、年内に最終決定する方針だ。M&Aに関する新ルールは、2010年4月以降に実施する案件から適用する。2009年4月以降に早期適用することも可能。
(日本経済新聞2008年7月1日 18面)
【CFOならこう読む】
新基準案の主な項目は次の通りです。

・企業合併時の持分プーリング法の廃止
・「負ののれん」は一括で利益計上
・買収で取得した研究開発は資産計上も
・株式交換時の株価算定時期はM&Aの実施日に

(上記新聞記事より)

のれん及び負ののれんについては、次のように規定されています。
のれんの会計処理
32. のれんは、資産に計上し、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる。

負ののれんの会計処理
33. 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。ただし、負ののれんの金額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することができる。
(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(第30 項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。

正ののれんの規則償却をやめるルールについては今回の新ルールには盛り込まれていません。コンバージェンスの期限である2011年6月ぎりぎりの改正になるのかもしれません。少数株主持分からものれんを認識するか否かについての判断も先送りされています。

負ののれんについては、ほぼ米国会計基準SFAS141Rと整合する改正になっています。しかし、6月25日(http://cfonews.exblog.jp/8191889/)にお話しした通り、私はこの会計基準に問題があると思っています。

PBR(株価/1株当り純資産)が1倍を下回る会社がごろごろころがっている今の日本でこの会計基準を適用すれば、負ののれん目当てのM&Aが山のように実行されるようになるのは間違いないと私は思います。

【リンク】
「企業結合に関する会計基準(案)」
http://www.asb.or.jp/html/documents/exposure_draft/ketsugou/ketsugou_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-07-01 08:34 | M&A
2008年 06月 25日

負ののれん代

「負ののれん代」業績かく乱 一括利益計上へルール見直し
三越と伊勢丹が経営統合し、4月に発足した三越伊勢丹ホールディングス。初年度の2009年3月期は連結経常利益が470億円と、本業のもうけを示す営業利益の340億円を大きく上回る見通しだ。この背景には「負ののれん代」の償却による利益押し上げ効果がある。
この統合では、伊勢丹が三越を買収した形で会計処理した結果、負ののれん代が700億円発生。これを5年で償却するため、経常利益を140億円押し上げる。
のれん代はM&A時の買収額と受け入れる時価純資産の差額を示す。本来割安な価格で企業を買うことは難しいはずだが、マイナスののれん代=負ののれん代を計上する事例が相次いでいる。

(日本経済新聞 2008年6月25日 16面 M&A会計 最前線 下)
【CFOならこう読む】
日本基準では、「負ののれんは、20年以内の取得の実態に基づいた適切な期間で規則的に償却する。ただし、負ののれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することができる。」(企業結合に係る会計基準第三の2(5))とされています。

一方米国基準では、取得資産と引受負債が正しく識別されたかどうかを評価し、当初の評価が正しく認識されていない場合には、取得企業は、負ののれんを減額し、それでもなお残額がある場合には、取得日の取得企業の損益として認識しなければならないことになっています(SFAS141R:2008年12月15日以降開始する事業年度から適用)
(「M&Aの会計実務 日米基準の具体的取扱い」長谷川茂男著 中央経済社) 。

負ののれんが計上されるのは、例えば次の2つのような場合です。

①PBR(株価/1株当たり純資産額)が1を下回る会社を株価で買収する
②PBR(株価/1株当たり純資産額)が1を上回る会社を1株当たり純資産以下の価格で買収する。

このうち①のPBR1倍以下という状態は、その会社のオンバランスの資産のNPV(正味現在価値)がマイナスであると株式市場は評価しているということを意味しています。そして、その状況はM&Aによって経営権が移動することによって直ちに改善されるとは限りません。

そうすると、果たして負ののれんを利益として計上するという会計処理が、本当に企業の実態を正しく表すことになるのか、私にはとても疑問に思えます。

【リンク】
M&Aの会計実務―日米基準の具体的取扱い
長谷川 茂男

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by yasukiyoshi | 2008-06-25 08:31 | M&A
2008年 06月 23日

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その5

協和発酵の株主配分に手詰まり感が漂い始めている。2009年3月期の年間配当は前期の2倍となる20円を予定するが、2010年3月期は減益が予想される配当据え置きが濃厚。足元の株価がキリンホールディングス傘下に入る際のTOB価格を大幅に下回っており、キリンHD株主への配慮などにより自社株買いも封じられている。
(日経ヴェリタス 2008年6月22日 19面)
【CFOならこう読む】
昨年、当ブログで協和発酵株式の希薄化問題を4回にわたりとりあげました。

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?
http://cfonews.exblog.jp/6665341/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その2
http://cfonews.exblog.jp/6671262/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その3
http://cfonews.exblog.jp/6676645/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4
http://cfonews.exblog.jp/6681686/

今日はこの続編です。

記事に次の記述があります。
「配当政策を明確に掲げていなかった同社は今期「連結配当性向30%(のれん償却前利益ベース)」を掲げた。5年ぶりの増配となる今期の20円配はそれに沿ったもの。
配当性向を厳密に守れば来期は減配だ。松田譲社長は「減配は考えていないが、増配も厳しい」と話す。
となると「機動的な自社株買いと自社株消却で株主配分を強化したい」(松田社長)ところ。キリンHDへの新株発行で協和発酵の発行済み株式数が44%増えており、自社株買いで消却するのが自然な流れだからだ。
しかし、両社は今後10年間キリンHDの協和発酵への出資比率を50.1%とする契約を結んでいる。協和発酵が自社株買い、消却をすれば発行済み株式数が減る。キリンHDの出資比率50.1%を維持するために「キリンHDに協和発酵株を売却してもらうようお願いすることになる(協和発酵幹部)というのだ。
キリンHDが買い付けた協和発酵株を売却しようとすると今度は別の問題が発生する。協和発酵株の株価はTOB価格を下回る水準で推移。キリンHDの株主から「1500円で買ったのになぜそれより安い価格で売るのか」と反発が出ることが予想されるのだ。協和発酵はキリンHD株主に「配慮」せざるを得ず、株価が1500円以上にならないと自社株買いできないジレンマに直面する。思うように株主配分できず低迷する株価にカンフル剤を打てない悪循環。経営陣はもどかしさ募らせている。」
そのジレンマは、協和発酵株式の大幅な希薄化を伴うディールに起因しており、自業自得と言えます。資本政策の失敗を後から修正するのは極めて困難なのです。

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”覆水盆に返らず”です。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-06-23 09:25 | M&A
2008年 06月 05日

ケンウッド・ビクターの統合効果

負ののれん代&節税で100億円
ケンウッドと日本ビクターが10月に統合して発足する持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」は、統合で発生する「負ののれん代」の償却にかかる利益や節税効果が当初3年間で100億円程度にのぼる見通しだ。現在は事業上の相乗効果の見通ししか発表していない。2009年3月期の連結純利益を15億円程度、2011年3月期は50億円程度押し上げる要因となりそうだ。
(日本経済新聞 2008年6月5日15面)
【CFOならこう読む】
5月14日の当ブログで、ケンウッドが何故会計上取得企業となるのかということについて書きました(http://cfonews.exblog.jp/7935121/)。
今日は、この案件の節税効果について書いてみます。

記事によると、
「節税効果も大きい。新会社はケンウッドが導入していた連結納税を継続する。ビクターは導入しておらず子会社が約10億円の税金を支払っていた。新たに導入すればビクター本体の税務上の欠損金を活用できるため税負担がなくなる。
同じように税務上の欠損金を抱えるケンウッドは2010年3月期に欠損金が解消されそうだが、引き続き、グループ会社となるビクターの欠損金を活用し20億円弱の節税効果が見込める。2011年3月期にはグループ全体で合計30億円の節税効果が発生する計算になる。」
とあります。

連結納税制度下では、連結納税前に生じた欠損金は原則としてすべて切り捨てられます。ただし特例としてみなし連結欠損金という規定が設けられていて、一定の場合に繰越控除の対象となります。

法人税法81条の9第二項二号イ及びロは、株式移転の場合に、次の欠損金について、連結欠損金とみなして繰越控除の対象とすることができるとしています。
「最初連結親法人事業年度開始の日の5年前の日から当該開始の日までに行われた株式移転にかかる完全子会社であった連結子法人の当該開始の日前7年内開始の各事業年度における青色欠損金額、または、最初連結親法人事業年度開始の日前7年以内に開始した連結子法人のその承認にかかる連結事業年度において生じた当該連結子法人の連結欠損金個別帰属額」(租税法 金子宏著 弘文堂)。
非常にわかり難い規定ですが、要するに、株式移転において完全子会社となった法人の単体納税の時期に生じた繰越欠損金と、もともと連結納税を行っていた連結グループの連結親法人が、株式移転により完全子会社となった場合に、その法人が有している連結欠損金は、連結所得計算に持ち込んで繰越控除できる、と言っているのです。

ビクターは前者、ケンウッドは後者に該当するので、両者の繰越欠損金の節税効果が見込めることになるのです。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-06-05 08:59 | M&A
2008年 05月 27日

CSK、コスモ証券を完全子会社化

CSKHD株が急反落、コスモ証を完全子会社化へ-交換比率にらむ
5月26日(ブルームバーグ):情報サービス大手のCSKホールディングの株価が売り気配で始まり、寄り付き後は一時前週末比175円(7%)安の 2320円まで下げた。23日に、現在発行済み株式総数の49%あまりを保有する子会社のコスモ証券について、株式交換などを通じて完全子会社化すると発表。株式交換比率をにらんで売りが優勢となった。コスモ証株は一時4円(3.9%)高の108円と反発。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003003&sid=aSvS6qOMpjzA&refer=jp_stocks
【CFOならこう読む】
株式交換の日程は次の通りです。

株主総会基準日(コスモ証券) 平成20 年3月31 日
株式交換決議取締役会(両社) 平成20 年5月23 日
株式交換契約締結(両社) 平成20 年5月23 日
株式交換承認株主総会(コスモ証券) 平成20 年6月25 日(予定)
取引所市場最終売買日(コスモ証券) 平成20 年7月25 日(予定)
上場廃止日(コスモ証券:大阪証券取引所)平成20 年7月26 日(予定)
上場廃止日(コスモ証券:東京証券取引所、名古屋証券取引所)
平成20 年7月28 日(予定)
株式交換の予定日(効力発生日) 平成20 年8月 1日(予定)
株券交付日 平成20 年9月 中旬(予定)


株式交換比率は、コスモ証券1株に対しCSKHD株式0.046株。

評価基準日である5月21日の終値で計算される交換比率は1:0.042
第三者機関の評価は次の通りでした。

ZECOOパートナーズ(コスモ証券側)
市場株価法 0.038 ~ 0.042
類似上場会社法 0.043 ~ 0.044
DCF法 0.034 ~ 0.043
ダフ・アンド・フェルプス(CSK側)
市場株価法 0.038 ~ 0.042
DCF法 0.031 ~ 0.049


若干のプレミアムを乗せて1:0.046に決めたものと思われます。

それにしても、CSKはコスモ証券を一体いくらと評価したのでしょうか?
買値がまず決まって、次に支払い手段を決めるというのがあるべき意思決定の順序であるはずです。ならば買値(コスモ証券株式の評価額)を明らかにすべきです。というか評価額を示さないM&Aに両社の株主は賛成・反対の意見表明なんぞできないはずです。

【リンク】
平成20年5月23日「株式会社CSKホールディングスによるコスモ証券株式会社の株式交換による完全子会社化に関するお知らせ」コスモ証券株式会社
http://www.cosmo-sec.co.jp/press_release/00000078.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-27 08:30 | M&A