吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 05月 14日

ケンウッド、ビクター統合ーケンウッドが取得企業である理由は?

【CFOならこう読む】
昨日私はケンウッドが取得企業である理由を次のように説明しました。

「取得か持分の結合の識別について「企業結合に係る会計基準」は以下の要件の全てを満たしていない場合には、取得と判定する旨規定しています。

(1) 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること
(2) 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと(議決権比率が45%から55%の範囲内)
(3) 議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

本件の場合、(1)の要件は満足しています。(2)の要件については、ケンウッドがビクターの17%の持分を有していることを勘案すると、ケンウッド株主:ビクター株主=45:55となるので、これも満足していると思われます(もちろん1:2という統合比率はこれをクリアーするために恣意的に決められたという見方も出来なくはありませんが)。

ということは、(3)の要件を満足せず、つまりケンウッドがビクターを支配している一定の事実があるため取得と判定されたということです。これが具体的に何であるかはもう少し調べてみないとわかりません。後日またフォローしたいと思います。」

これについてM&A会計士様から次のコメントを頂戴しました。
「時価総額で考えるとビクター側が取得会社になりそうですが、やっぱりこれは、当初の第三者割当増資+株式移転という一連の流れから、ケンウッドによる取得とされたんでしょうかね?企業結合会計基準の注解2とか、適用指針の11、342あたりから、対価要件が満たせていないと判断されたのではないでしょうか?」
この点について今日は少しだけ掘り下げて考えてみたいと思います。

企業結合会計基準の注解2は対価が議決権のある株式であると認められるためには、同時に次の要件のすべてが充たされなければならないとしています。

1 企業結合は単一の取引で行われるか、又は、原則として、1事業年度内に取引が完了する
2 交付株式の議決権の行使が制限されない
3 企業結合日において対価が確定している
4 交付株式の償還又は再取得の取り決めがない
5 株式の交換を事実上無効にするような結合当時企業の株主の利益となる財務契約がない
6 企業結合の合意成立日前1年以内に当該結合目的で自己株式を取得していない

このうち本件で検討を要するのは1と6です。まず6ですが、適用指針第10号11項(6)が「一方の結合当事企業が他の結合当時企業の株式を取得する行為も同様に取り扱う」としていることから、昨年8月にビクターがケンウッドに対し行った第三者割当増資がこれに該当するか否かの検討が必要です。

6の趣旨は、「持分法の濫用という批判に耐えうる基準とするため」(Q&A M&A会計の実務ガイド あずさ監査法人編 中央経済社)というところにあるという見解もあります。つまり露骨に持分の結合の要件を満足することを目的として自己株取得は問題となることがある、という趣旨です。

しかしこれが本当なら対価要件ではなく、議決権要件の注釈でなければならないでしょう。そもそも本件の場合、議決権要件の潜脱であるということになれば取得企業はビクターということになってしまいます。

私は6の規定は、自己株の取得により一部の株主をスクィーズアウトする場合を想定したものと思っています。この場合実質的に対価の一部は現金であると見なすことができるからです。ただしそうであるとしても本件は第三者割当増資なので特に問題とならないように思います。

次に1です。1は、「企業結合取引を長期間にわたって複数回に分けて行うことにより、本来取得である企業結合を、持分の結合であるかのような状況を作り上げていくような潜脱行為を防ぐことが目的である」(同上)と一般に解されているようです。

しかしこの説明では、なぜ単一の取引でないといけないのか、そしてそれがどうして対価要件として規定されているのかよくわかりません。ここは複数回に分けて取引が行われ、かつその対価が現金であるような場合、取得と判定されることになると解するべきでしょう。そうであるなら、M&A会計士様の、「第三者割当増資+株式移転という一連の流れから、ケンウッドによる取得とされた」という指摘は当たっているように思えます。

もっとも、この規定を逆手に取ってプランニングに用いる余地もあるので、事前の第三者割当増資=取得(割当先が取得者)と考えるのは行きすぎのように思います。

本件の場合、ケンウッドが取得者であるという結論自体に問題はないと思いますが、その論理構成はどうもすっきりしませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-05-14 10:08 | M&A
2008年 05月 13日

ケンウッド、ビクター統合ー統合比率は1:2

ビクターとケンウッド、10月統合発表・営業利益、3年後4倍に
日本ビクターとケンウッドは12日、10月1日付で共同持ち株会社を設立し経営統合すると正式に発表した。両社が強みを持つ技術を融合し、カーエレクトロニクスや無線・防犯機器などを軸に収益を拡大。3年後の2011年3月期に連結営業利益を08年3月期のほぼ4倍の390億円に引き上げる。ただ統合後も規模で大手に劣り、中核事業の育成が急務。両社は提携の拡大にも意欲的で、今回の統合がさらなる電機再編の呼び水になる可能性もある。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080513AT1D120AD12052008.html

【CFOならこう読む】
昨日統合比率は1:2(ケンウッド株式1株に対し持株会社株式1株、ビクター株式1株に対し持株会社株式2株を割り当て)と発表されました。会計上取得か持分の結合か気になるところですが、プレスリリースには次の記載があり、取得として会計処理されるようです。
「本株式移転は企業結合会計基準における「取得」に該当し、パーチェス法を適用することになるため、共同持株会社の連結貸借対照表において「負ののれん」の計上が見込まれ、その償却にともなって営業外収益が増加する見込みです。これにより、当期純利益やROEなどが増加する見込みです。」
負ののれんが発生するということは、PBRが1倍を下回るビクターが被取得企業であることを意味します。時価総額ではケンウッドを大きく上回るビクターが被取得企業となるわけです。

取得か持分の結合の識別について「企業結合に係る会計基準」は以下の要件の全てを満たしていない場合には、取得と判定する旨規定しています。

(1) 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること
(2) 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと(議決権比率が45%から55%の範囲内)
(3) 議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

本件の場合、(1)の要件は満足しています。(2)の要件については、ケンウッドがビクターの17%の持分を有していることを勘案すると、ケンウッド株主:ビクター株主=45:55となるので、これも満足していると思われます(もちろん1:2という統合比率はこれをクリアーするために恣意的に決められたという見方も出来なくはありませんが)。

ということは、(3)の要件を満足せず、つまりケンウッドがビクターを支配している一定の事実があるため取得と判定されたということです。これが具体的に何であるかはもう少し調べてみないとわかりません。後日またフォローしたいと思います。

【リンク】
平成20年5月12日「日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドとの共同持株会社設立(株式移転)による経営統合について」日本ビクター株式会社
http://www.victor.co.jp/company/ir/pdf/info-080512a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-13 09:01 | M&A
2008年 05月 12日

ケンウッド、ビクター統合ー統合比率はどうなる?

ビクターとケンウッド統合、10月に持ち株会社で
日本ビクターとケンウッドは持ち株会社方式により10月1日付で経営統合することで最終合意した。持ち株会社の会長には河原春郎ケンウッド会長(69)、社長には佐藤国彦ビクター社長(63)が就任する。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D090BI%2009052008&g=S1&d=20080510
【CFOならこう読む】
ビクター株は移転比率をにらんで3月中旬から上昇傾向にあります。

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直近3ヵ月平均の株価はケンウッド114円、ビクター220円
9日の終値はケンウッド129円、ビクター265円

前者に基づき統合比率を算定すると、1:1.93
後者に基づき算定すると、1:2.05になります。

日経ヴェリタス5月11日の記事によると、

「ケンウッドは2007年8月にビクターの第三者割当増資、200億円を引き受けた経緯がある。「ビクターの業績低迷のリスクを負い、構造改革に貢献した」(関係者)との思いが強く、時価より高い比率を主張しているもよう。これに対して、ビクターは人員削減や国内テレビ事業の大幅縮小など構造改革を強調し、時価に近い比率を望んでいるようだ。会計上、ケンウッドがビクターを買収する形になるため、ビクター株にはプレミアムも付く。」
会計上ケンウッドが取得企業となる理由がよくわかりません。5月9日の終値ベースで、ケンウッドの時価総額は47,411百万円、ビクターの時価総額は95,910百万円です。ケンウッドはビクターの17.1%の議決権を保有する大株主(平成19年8月10日プレスリリース)ですが、これを勘案しても議決権比率はビクターの方が大きくなります。この点については後日またフォローしたいと思います。

いずれにしても今日12日の発表が注目されます。

【リンク】
平成19年8月10日「主要株主の異動に関するお知らせ」日本ビクター株式会社
http://www.victor.co.jp/company/ir/pdf/info-20070810a.pdf


by yasukiyoshi | 2008-05-12 07:59 | M&A
2008年 05月 03日

マイクロソフト対ヤフー 敵対的買収か友好的提携か

マイクロソフトとヤフー、買収額巡り交渉大詰め・米紙報道
【シリコンバレー=村山恵一】2日の米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)は関係者の話として、マイクロソフト(MS)とヤフーが買収合意に向け詰めの交渉をしている、と報じた。買収額を巡る溝を埋められるかどうかが焦点。ただ、2日中に合意に達するのは困難な情勢で、交渉が決裂する可能性もあるという。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080503AT2N0203603052008.html
【CFOならこう読む】
最新のニュースでは、「一時は敵対的買収に傾いていたMicrosoftだが、今行われている話し合いではYahoo!との友好的提携を探っている」ということです。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/03/news005.html

マイクロソフトのスティーブ・パルマーCEOは三つの選択肢、すなわち「友好的買収合意、敵対的買収、提案取り下げ」を検討していると社員集会で説明したそうですが、敵対的買収の可能性は低くなったようです。

敵対的買収ではヤフーの人材流出は避けられないとの見方があるようです。しかし、従業員にとっては、MS傘下の企業で働くことを良しとするかどうかが問題で、敵対的買収か友好的買収かは関係ないでしょう。大量の人材流出が危惧されるのであれば、”提案取り下げ”以外の選択肢はないと私は思うのですが…

【リンク】
 なし

※5月5日、6日は休刊します。


by yasukiyoshi | 2008-05-03 09:42 | M&A
2008年 04月 15日

株式買取請求権の行使の効果

合併反対派が株売却を拒否、日興が価格決定を申し立て
日興コーディアルグループと米シティグループとの三角合併に反対した4株主が、価格などの条件を不服として日興の自社株買い取りに応じていないことが 14日、明らかになった。4株主の保有分は約1万2000株(発行済み株式の0.001%)。日興は会社法の手続きに沿って東京地裁に適正な価格を決めるように申し立てた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1401T%2014042008&g=E3&d=20080414

【CFOならこう読む】
以下株式買取請求権の行使の効果について、江頭憲治郎教授の「株式会社法第2版」(有斐閣)756ページより抜粋致します。
「株主が適法に株式買取請求をしたときは、会社に、その株式を公正な価格(会社法116条1項)で買い取るべき義務が生ずる。
買取価格の決定について、株主と会社との間に協議が調ったときは、会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない(会社法117条1項・4項。会社法470条1項・786条1項・798条1項・807条1項も同じ)。効力発生日から30日以内にその協議が調わないときは、株主または会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる(会社法117条2項・868条1項・870条4号・872条4号。会社法470条2項・786条2項・798条2項・807条2項も同じ)。」
シティグループ株式の株価が大きく下がっている現状において、裁判所がどのような判断をするか注目されます。

【リンク】
「Citigroup Inc」Bloomberg.com
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=C:US



by yasukiyoshi | 2008-04-15 07:47 | M&A
2008年 04月 05日

英ファンドのJパワー株買い増し拒否へ

英ファンドのJパワー出資、株買い増し拒否へ・経産省
政府は11日に外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく審議会を開き、Jパワー(電源開発)株の買い増しを届け出ている英投資ファンドを呼び、株買い増しの意図について聴取する。経済産業省は外国資本による電力卸最大手への影響力拡大に安全保障上の懸念を示している。審議会の議論を経て、同省が初めて株買い増しの変更・中止を勧告する方向となった。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080405AT3S0401R04042008.html
【CFOならこう読む】
私が好きな映画に「太陽を盗んだ男」(1979年 キティフィルム製作)があります。沢田研二扮する高校教師城戸誠が東海村の原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自宅アパートで原子力爆弾を完成させ、日本政府を脅迫するという奇想天外な映画です。

もしJパワー株の買い増しで安全保障上の懸念が本当にあるなら、城戸誠が株主として登場する可能性を経済産業省はどう説明するのでしょうか? もし本当にそんな懸念が存在するなら、直ちに上場廃止すべきでしょう。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-05 09:24 | M&A
2008年 04月 04日

TOB価格ーイオン・CFSのケース

イオン、CFSへのTOB開始・4日から
イオンは3日、資本関係の強化で合意したCFSコーポレーションに対し4日から5月8日までTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。1株 600円で280万株(CFSの発行済み株式数の9.4%)を上限とする。CFSの創業者の石田健二会長らも応募する。上限まで買い付けた場合、イオンの出資比率は現在の15%が24.38%になる。その後、CFSが実施する第三者割当増資を引き受け、最終的に33.3%まで高める計画だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D0306K%2003042008&g=S1&d=20080403
【CFOならこう読む】
イオンは以下の要領でCFS株式のTOBを実施します。
(1)対象者の概要
省略
(2)買付け等の期間
(i)届出当初の買付け等の期間
2008 年4 月4 日(金曜日)から2008 年5 月8 日(木曜日)まで(22 営業日)
(ii)対象者の請求に基づく延長の可能性の有無
金融商品取引法(以下「法」といいます)第27 条の10 第3 項の規定により、対象者が買付け等の期間(以下「公開買付期間」といいます)の延長を請求する旨を記載した意見表明報告書を提出した場合、公開買付期間は30 営業日に延長され、2008 年5 月20 日までとなります。
(3)買付け等の価格
普通株式1株につき、600 円
(4)買付け等の価格の算定根拠等
(i)算定の基礎
当社は、市場株価法、類似公開買付事例におけるプレミアム分析法、及び類似公開企業乗数比較法の各算定手法を用いて、対象者の株式価値分析を行うことにより、公開買付価格の株式価値の範囲を算定しました。上記の算定手法によって算定された1株当たりの株式価値の範囲は以下のとおりです。

①市場株価法では、当社及び対象者による業務・資本提携(2008年3月17日付)の発表直前の営業日である2008 年3 月14 日を基準日として、対象者の市場株価の取引状況を分析しました。対象者の過去1 か月の株価は485 円から550 円で推移しており、過去1 か月の終値の平均値は519 円となっています。また、対象者の過去3 か月の株価は423 円から585 円で推移しており、過去3 か月の終値の平均値は503円となっています。また、対象者の過去6か月の株価は374 円から585 円で推移しており、過去6 か月の終値の平均値は488 円となっています。対象者の株価終値の1 か月平均、3 か月平均、及び6 か月平均を基に、1 株当たりの株式価値の範囲を488 円から519 円までと算定しています。

②類似公開買付事例におけるプレミアム分析法では、2000 年1 月1 日以降に公表された発行者以外の者による上場会社株式に対する公開買付事例の中から、公開買付けを行った後における公開買付者の予定保有株式数の発行済株式数に対する割合が33.3%以下となり本公開買付けと類似と考えられる事例を抽出し、公開買付け前一定期間の株価終値の平均値に対するプレミアムの状況を分析しました。発表日前の過去1 か月の終値の平均値、過去3 か月の終値の平均値、及び過去6 か月の終値の平均値に対するプレミアムの平均は、それぞれ18.7%、19.2%及び15.7%となりました。かかるプレミアムを対象者の該当期間の平均株価に適用し1 株当たりの株式価値の範囲を564 円から616 円までと算定しています。

③類似公開企業乗数比較法では、対象者と類似する事業を手掛ける上場企業の市場株価と財務指標との比較を通じて、対象者の1 株当たりの株式価値を評価し、1 株当たりの株式価値の範囲を439 円から474 円と算定しています。当社は、これらの算定結果により示された株価レンジを考慮するとともに、対象者との協議・交渉の結果や、対象者による本公開買付けへの賛同の可能性、更には、最近の株式市場の動向等を含むその他の要因を考慮し、本公開買付けにおける公開買付価格を1株当たり600 円と決定しました。

なお、本公開買付けにおける公開買付価格は、2008 年3 月14 日を基準日とする東京証券取引所市場第一部における対象者の普通株式の終値の過去3か月間における単純平均503 円に対して19.2%のプレミアムを、同1か月間の単純平均519円に対して15.7%のプレミアムを、同日の終値527 円に対して13.9%のプレミア
ムを加えた金額です。
(ii)算定の経緯
当社と対象者は、2008 年1 月22 日に開催された対象者の臨時株主総会以降、対象者の企業価値向上を早期に実現するため、両社の協力のあり方について協議を重ねてきました。その結果、両社は、2008 年3 月17 日、より強い協力関係を築き、対象者の企業価値を向上するため、業務・資本提携(以下「本業務・資本提携」といいます)に関する合意をしております。

本業務・資本提携の合意に先立ち、当社は、市場株価法、類似公開買付事例におけるプレミアム分析法、及び類似公開企業乗数比較法の各算定手法を用いて、対象者の株式価値分析を行うことにより、本公開買付けにおける公開買付価格の範囲を決定するとともに、本公開買付けに関して対象者との協議を開始しました。

当社は、上記の株式価値算定の結果に加え、対象者との協議・交渉の結果や、対象者による本公開買付けへの賛同の可能性、更には、最近の株式市場の動向等を含むその他の要因を考慮し、本公開買付けにおける公開買付価格を1株当たり600 円と決定しました。

なお、本公開買付けにおける公開買付価格の算定にあたり、第三者機関の算定書は取得しておりません。

2008 年4 月3 日、対象者の取締役会は、本公開買付けの買付価格、買付期間その他の条件、本公開買付けが対象者の企業価値に与える影響、その他諸般の事情を勘案した結果、本公開買付けに賛同を表明する旨を決議しております。なお、この決議に際し、対象者の取締役である岡田元也は、当社の代表執行役であることに鑑み、特別利害関係人としてかかる決議に参加しておりません。
何故600円なのでしょうか? イオン側はアイン・CFS統合の委任状争奪戦の中でCFSの理論株価は800円であると主張していました。それがいざ自らTOBをかける段になると25%もディスカウントする根拠はどこにあるのでしょうか? 評価方法としてDCF法を採用していないようですが、それで理論株価をどうやって主張したのでしょうか? 私には全く理解できません。

【リンク】
2008年4月3日「株式会社CFSコーポレーション株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」会社名イオン株式会社
http://www.aeon.info/ICSFiles/afieldfile/2008/04/03/080403R_2.pdf




by yasukiyoshi | 2008-04-04 09:34 | M&A
2008年 03月 21日

武田薬品、米合弁会社を完全子会社化へー続報

武田、米合弁の完全子会社化発表・4月中に会社分割
武田薬品工業は20日、米製薬会社アボット・ラボラトリーズとの合弁会社TAPファーマシューティカル・プロダクツ(イリノイ州)を完全子会社化すると正式発表した。4月中にTAPの会社分割を実施した上で、完全子会社化し、7月に米国の全額出資子会社と合併。4000人弱の営業体制を整備するなど米国の販売、開発機能を一本化し、競争力を強化する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080321AT1D2001620032008.html
【CFOならこう読む】
一昨日いかにタックスコストを最小化するかがポイントであるというお話しをしました(http://cfonews.exblog.jp/7549073/)。
昨日スキームの概略が発表されました。詳細がわからないので推測するしかないのですが、タックス・フリーのsplit-offの手法を利用するのではないかと思われます(あくまで私の推測です)。split-offとは次のような手法です。

すなわち、TAP社は前立腺癌・子宮内膜症治療剤「ルプロン・デポ」等に関する事業を分割しTAP社の100%子会社を設立します。次にこの子会社株式をアボット社に対して、アボット社の所有するすべてのTAP社株式との交換において分配するといった手法です。

武田とアボット社のTAP社に対する出資比率は50:50なので、split-offを実行するには分割事業の価値も50:50でなければなりません。プレスリリースではこの点、「なお、アボット社および当社にとって均等な価値での会社分割とするための調整については、本会社分割後、別途実施します」としています。

 米国で法人分割を非課税として認める理論の背後に次のような思想があります。
「法人資産が分割された法人のなかに留まる限り、(株主および法人の双方に対して)租税を課すべきないという考え方がある。つまりそれは、どのような組織で法人事業を行うべきかという経営上の選択に、税法が干渉すべきでないということである(課税の中立性)。もし法人分割をすることによって、株主および法人が課税されることになるなら、法人を分割することはそれだけ困難となり、事業に関する最適な資本構成への移行が阻害されることになるからである。」(「企業取引と租税回避」渡辺徹也著 中央経済社 133頁)。

「例えば、資産A、Bと株主a,bからなる法人が、資産A-aおよびB-bの法人に分割された場合、A-bおよびB-aの支配は切断されるという意見がありえるだろう。しかし、アメリカ法では、このような非按分型分割も、投資持分継続性と事業継続性を満たしていると考えられている。」(「企業組織再編成と課税」渡辺徹也著 弘文堂 285頁)
一方わが国ではこのような取引をタックス・フリーで行うことはできません。split-offどころかspin-offすらグループ内再編の要件を満足しないとできないのです(上場会社に50%超保有する支配株主が存在しないのが普通ですから、そうするとグループ内再編の要件を満たしません)。

またそもそも非按分型分割は、法人税法2条12号の11柱書き(分割承継法人の株式が按分的に分配されることを要求する規定)により非適格とされるのです。本件とは直接関係ありませんが、昨今、適格合併により1つになった会社が何らかの事情により2つに分かれたいというニーズが少なからずあるように思います。これを非課税で行うことができないことも大問題だと私は思います。

【リンク】
武田、米合弁の完全子会社化発表・4月中に会社分割
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080321AT1D2001620032008.html

企業取引と租税回避―租税回避行為への司法上および立法上の対応
渡辺 徹也
450279550X


企業組織再編成と課税 (租税法研究双書)
渡辺 徹也
4335320574



by yasukiyoshi | 2008-03-21 13:39 | M&A
2008年 03月 20日

HOYA・ペンタックスの買収-続報

HOYAは、昨年夏にTOB(株式公開買い付け)で子会社化したペンタックスを本年三月末に吸収合併する。当初はペンタックスを完全子会社化する計画でしたが、合併により経営統合を加速する。ペンタックスの社名は消えるが、ブランドとしては残す。 HOYAは昨年九月末時点でペンタックス株の九〇・八%(議決権ベース)を保有。残りの株主に「合併対価」としてTOB価格と同じ一株七百七十円を払う。
(2007年10月30日 日本経済新聞を加筆・修正)
【CFOならこう読む】
本件、昨年10月18日(http://cfonews.exblog.jp/6644277/)に取り上げてから、フォローの機会を逸していました。今日は休日で、いつもは休載するのですが、いつかやりますといつまでも先延ばしするのも気分が悪いので、今日取り上げることにします。

まずは子会社化したことによるのれんの取扱いについてですが、決算発表の際江間CFOは次のように説明しています。
「ペンタックス㈱との経営統合に絡み、9 月末のペンタックスのバランスシートを時価ベースで連結しています。今後ののれんの償却対象資産および償却期間をご説明しますと、ペンタックス㈱の純資産簿価451 億円、時価純資産の増加額は79 億円で、合計すると530 億円で、このうちHOYAの持分は481 億円(90.62%※)です。差額の49 億円が少数株主持分です。HOYA はTOB でペンタックス株式の90%超を948 億円で購入しましたので、これからHOYA の持分481 億円を引きますと、のれんが467 億円となります。償却対象資産は、のれん467 億円、特許権等を時価評価した135 億円、すでにペンタックス㈱で持っているのれん67 億円があり、合計すると669 億円となります(日本基準)。償却期間は、特許権等の時価評価の分が8 年、その他が10 年です。10 月1日以降、定額償却していきます。(※注:ペンタックス自己株式保有分を含む)」
当初20年で償却と発表していましたが、10年に変更になっています。最近の会計実務(監査法人の指導による部分が大きい)では、10年を超える償却は少なく、そういった傾向に合わせたものと思われます。会計上ののれんの償却費はEPSを悪化させるので、会社としてはできるだけ長い期間で償却したいというのが本音でしょうが、なかなかそれも通らないというのが現実です。私はのれんを償却すること自体が間違いだと考えていますので、のれんの償却期間は10年と20年のどちらが妥当かという議論には正直あまり興味がありません。

10月18日にも書きましたが、連結財務諸表上計上されるのれんは会計固有のもので、税務上認識されません。3月末に予定されている合併によりこののれんが税務上も認識されることになります。

まずこの合併は現金交付型の合併なので、税務上非適格合併となります。非適格合併の場合、HOYAはペンタックスの資産・負債を時価で受け入れることになるので、のれん相当額が資産調整勘定としてHOYAの税務上の資産に計上されます。

一方被合併法人であるペンタックス側ではのれん相当額の譲渡益が計上されるので、時間価値を考慮しなければこの部分で損得はないことになります。但し非適格合併の場合、抱き合わせ株式(つまりHOYA保有のペンタックス株式)に対して時価で合併新株の割当てを受けたものとして計算し、その後自己株式の償却を行ったものとして計算されることに注意が必要です(法人税法施行例①21(3))。

その結果、みなし配当と株式譲渡損益が発生することになるのです。親会社が保有する子会社株式の帳簿価額が子会社の資本金等の額に保有比率を乗じた金額を上回るときは株式譲渡損が発生します。みなし配当は全額益金不算入となるので、株式譲渡損の分だけタックス・メリットが生じることになるのです。適格合併の場合、みなし配当と株式譲渡損の両建て計上はされず、株式譲渡損のタックス。メリットを享受できません。HOYAが現金交付型の吸収合併を選択したのはこれが理由であると思われます。

なお会計上は合併後も連結上ののれん未償却残高相当額が個別財務諸表上に計上されることになります(企業会計基準適用指針第10号 207項(1))。但し償却期間は税務上5年間の均等償却(法人税法62の8④⑤)であるのに対し、会計上は20年内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する(企業結合会計基準三2.(4))点が異なります。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-03-20 11:49 | M&A
2008年 03月 19日

武田薬品、米合弁会社を完全子会社化へ

武田、米合弁を完全子会社へ・新薬投入、外資に対抗
武田薬品工業と米製薬大手アボット・ラボラトリーズは、両社が折半出資する米合弁会社を武田が完全子会社化する方向で最終調整に入った。武田は今春にも新薬開発権や事業の譲渡と引き換えにアボットが持つ50%の株式を取得。連結売上高の5割を米国で稼ぎ出す体制を築き、米国市場で攻勢をかける。医療費抑制で日本市場が縮小する中、米ファイザーなど世界大手に対抗するための国内製薬業界のグローバル化が加速する。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080319AT1D170BV18032008.html
【CFOならこう読む】
武田はどのようなスキームで完全子会社化を実行するのでしょうか? 現時点でスキームが公表されていないので、詳細は不明ですが、上の記事によると、「TAP株の全株式を取得すると同時にTAPを会社分割し、売上高の2割を占める前立腺がん治療薬事業を合弁相手のアボットに譲渡。さらに武田が持つ新薬候補化合物の一部の開発・販売権も譲渡し、現金の支払を最小限にする。」とのことです。

つまり、TAP株式譲受の対価を分割会社の株式、武田の持つ事業及び現金により支払うということです。しかしこれを字面通り行うと、株式譲渡の場面と会社分割&事業譲渡の場面で二重に課税が生じることになりそうです。タックスコストを最小化するためにどのようなスキームを選択すればよいか自分なりに考えてみるというのは頭の体操にもなります。

会社分割を無税で行うこと及び含み益のない事業を譲渡することで武田側の課税は回避できそうですがどうでしょうか。スキームの詳細が公表された時点でまた取り上げたいと思います。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-03-19 08:55 | M&A