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2008年 12月 04日

TOBにおける資金証明書-シャルレのケース

TOBにおける資金証明書
大証二部に上場しているシャルレのTOBが迷走している。TOBに対するシャルレ取締役会の賛同表明の不適切なプロセスが問題になった。さらに買収資金を融資する意向を示していた銀行が、融資をしないことを決定するという事態も発生した。
(日本経済新聞2008年12月4日17面 大機小機)
【CFOならこう読む】
シャルレのTOBの公開買付者は、有限会社サザンイーグルと有限会社オットーです。
「公開買付者らは、いずれもニューヨーク証券取引所上場会社であるMorgan Stanleyを頂点とするモルガン・スタンレーグループのアジア地域におけるプライベート・エクイティ部門であるMorgan StanleyPrivate Equity Asia(以下「MSPEA」といい、MSPEA並びにMSPEAがファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンド及び会社等を総称して「MSPEAグループ」といいます。)がファイナンシャル・アドバイザリー業務を提供する投資ファンドが直接又は間接に支配し、本公開買付けのために設立されたTomorrowが、本日現在において、直接又は間接に発行済株式の100%を保有する特例有限会社です。」
(平成20年9月19日 公開買付けに関する賛同意見表明)
金商法は、公開買付者が十分な決済資金を有することを公開届出書に開示することと、これを証明する書類を公開買付届出書の添付書類とすることを要求しています。

シャルレのケースでは、Tomorrowが、MSPETHから最大33億円の出資を行う用意がある旨の証明書を、また株式会社三菱東京UFJ銀行から最大116億円の融資を行う用意がある旨の証明書(平成20年11月末日までが期限)を取得していました。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は次のようなものでした。
「               融資証明書

弊社は、貴社に対し、現在貴社が計画中である株式会社テン・アローズ(現シャルレ:筆者注)の発行済普通株式に対する金融商品証券取引法(原文通り:筆者注)及び関連法令に基づく公開買付における株式買付資金及びその付帯費用として、融資条件に基づき116億円を限度として融資を行う用意のあることを証明致します。

なお、融資条件の詳細(時期、融資実行の条件、方法、利率及び担保等)については、貴社と当行との間で誠実に協議のうえ決定されます。

なお、この証明の有効期限は2008年11月末日までとし、有効期限経過により自動的に失効するものとします。
                                   以上」
ところが、「平成20年11月19日、株式会社三菱東京UFJ銀行から当該証明書の期限を延長せず、融資を行わないことを決定した旨の連絡を受け」(平成20年12月3日 公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について)、現在までのところ資金調達の目途が立っていません。

三菱東京UFJ銀行の融資証明書は、実務上極めて一般的なものですが、このケースからもわかるように融資の実行を法的に約束するものではありません。

今日の大機小機は、この点について次のような改善案を提示しています。
「シャルレのTOBは不成立の可能性が高そうだ。しかし市場関係者はこれを契機に資金証明書に関する実務の妥当性を検証すべきである。買付者の負担を考慮する必要もあるがより確実な資金証明書の提出を義務付けることは、成功の見込みの薄い公開買付を仕掛けて経営者をどう喝する濫用的買収者へのけん制にもなる。決済資金の公開買付代理人への預託や、国内に拠点を有する金融機関による決済保証の義務付けなども検討されるべきであろう。」
【リンク】
平成20年9月19日「当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」株式会社テン・アローズ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20080919-1.pdf
平成20年12月3日「公開買付者らからの「公開買付期間の延長及び公開買付開始公告等の記載内容の訂正に関するお知らせ」について」会 社 名 株式会社シャルレ
https://www.charle.co.jp/company/group/rel_pdf/20081203-1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-12-04 09:20 | TOB
2008年 11月 05日

優先株式の評価-三洋電機のケース

パナソニックの三洋買収 金融3社の売却価格 焦点
パナソニックが三洋電機の子会社化で大筋合意したことで今後、三井住友銀行など金融三社が保有する優先株の売却価格が焦点となる。4日の東京株式市場では両社とも株価が上昇したが、市場の株価を基に価格算出を主張する金融機関と、株価の希薄化リスクを考慮すべきだとするパナソニックとの議論が残っている。
(日本経済新聞 2008年11月5日 9面)
【CFOならこう読む】
「買い手側からみると現在のPBRやPERが同業他社より高いことから判断して、株価は希薄化を織り込んでおらず、実際より割高な状態だとみている。一方、売り手からすると優先株転換で発行済株式数が増える可能性は発行時から分かっており、現在の株価は希薄化を織り込んだ上で成長性などを評価してついているとみる。そのため現在の株価にプレミアムを付けて売却したい考えだ。」
(前掲)
理論的には売り手が言うように、発行時に希薄化は織り込まれたと考えるべきですが、このケースでは次のような株式保有義務が買い手側に課されている点を考慮すべきです。
「資本金払い込み後、二年間はGSと大和証券SMBCグループが議決権ベースで四九%の優先株を保有するよう義務づけている。しかし、その一年後には保有義務が三四%に下がり、さらにその後は〇%。つまり三年を過ぎた時点で出資者側は自由に普通株に転換し、売却できるようになる。」
(日経産業新聞 2006年2月1日 24面)
最初の2年間とは、平成2008年3月13日まで、その1年後とは平成2009年3月13日です。つまり、転換に制限を設けて希薄化が起こりにくい仕組みにしたのです。
発行時の市場価格(2006年1月25日終値348円)を大幅に下回る価格で優先株が発行(普通株に換算した発行価格は70円)されたので、希薄化を抑える必要があったのです。

2009年3月13日の期限を迎えていない現時点で、希薄化が完全には株価に織り込まれていないというパナソニック側の主張に分があるように思います。

【リンク】
平成17年12月21日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2005/di-1221-1.pdf

平成18年1月25日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0125-1.pdf

平成18 年2 月14 日「第三者割当による新株式(優先株式)の発行にかかる覚書締結に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0214-2.pdf


by yasukiyoshi | 2008-11-05 11:55 | M&A
2008年 10月 01日

TOB不成立-大日本印刷・インテリジェントウェイブのケース

18日。大日本印刷によるインテリジェントウェイブのTOBは応募総数が買い付け予定株数の下限の半分にも届かず失敗した。過半数を占める個人が議決権に目覚め、安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた。
(日本経済新聞 2008年10月1日 16面)
【CFOならこう読む】
TOBは8月20日から9月18日まで実施されましたが、買い付け上限を52.02%、下限を33.41%に設定し、応募株数が下限を下回った場合は一切買い付けないことになっていました。買い付け価格の29,740円は過去3ヶ月間の終値平均を45%上回るプレミアムを付したものでしたが、多くの個人投資家が応募を見送った結果、わずか12.19%の応募にとどまりました。

本件、そもそも友好的TOBでありながら、筆頭株主である安達会長がTOBに応募しておらず、本気度今ひとつのTOBでしたが、記事が言うように、個人株主が「安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた」、と解釈するのもどうかなという気がします。

TOBという制度は、必ずしも株主の望む通りの結果にならない可能性があることが、「TOBによる敵対的買収の不可能性」として1980年にサンフォード・グロスマンとオリバー・ハートにより指摘されています。

この理論によると、多くの株主が次のように考えます。
「大日本印刷はインテリジェントウェイブの将来性について自分たちの知らない良い情報を持っているに違いない。大日本印刷がマジョリティを握ることで株価はTOB価格より上がるはず。ならばそのまま持っていよう。」多くの個人株主がこのように考えるなら、当然TOBは不成立に終わります。

また、大日本印刷への支配権の移動に反対の株主もTOBには応じません。従って、こう考えるといずれにしてもTOBは成立しないことになるのです。さらに他の株主の行動をどのように予想するかということまで考えると、この結論は大きく変わり得ます。

大日本印刷への支配権の移動に反対の株主も、このTOBが成立しそうだと考えると、自分が支持しない経営者のもとで株主として取り残されるより、TOBに応募しようと考えるでしょう。

また、大日本印刷を支持する株主は、TOB不成立の可能性が高いと思えば、TOBに応募せず市場で売り抜けようと考えるでしょう。本件で、TOB期間の最終日付近でインテリジェントウェイブの株価が大きく下がったのは、このような要因によるものだったのかもしれません。

いずれにしても、TOB不成立=安易な経営支配嫌の移動に「待った」をかけた、ということではない可能性があることを我々は理解しておく必要があります。

【リンク】
平成20年8月19日「株式会社インテリジェントウェイブ株券に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」大日本印刷株式会社
http://www.dnp.co.jp/jis/news/2008/080819.pdf

平成20年8月19日「当社株式に対する公開買付けに関する参道の意見表明のお知らせ」株式会社インテリジェント ウェイブ
http://www.iwi.co.jp/pdf/pdf_080819_3.pdf

平成20年9月20日「大日本印刷株式会社による当社株式の公開買付けの結果に関するお知らせ」株式会社インテリジェント ウェイブ
http://www.iwi.co.jp/pdf/pdf_080919_1.pdf


by yasukiyoshi | 2008-10-01 10:17 | TOB
2008年 09月 20日

TOBルール 改正から2年

実務面で課題多く 透明性向上 議論積み上げ必要
ライブドアによるニッポン放送株の大量取得などを契機にTOBルールが見直され、近く2年を迎える。株式の取得価格が市場に明示され、株主にとって透明性の高いM&A手法だが、実務面では細かな障害が多く、使い勝手が悪いとの声が根強くある。さらなる改正に向け問題点も浮上している。
(日本経済新聞 2008年9月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事の中に次の記述があります。
「敵対的買収をするならTOBは利用しない方がいい」と日興シティグループ証券の藤田勉マネジングディレクターはファンドなどに助言している。いったんTOBを始めると価格変更や撤回は買収企業の防衛策など例外を除き事実上困難で「買収側の負担が重すぎる」(藤田氏)。
TOB開始後、買付価格の引き上げは自由にできますが、引下げは原則として禁止されています(金商法27条の6 1項1号)。これは投資家保護及び相場操縦に悪用されないようにするための規定であると解されています。

この原則の例外として、買収防衛策の発動により、株価の希薄化が生じる場合、買付価格の引下げが容認されるという規定が、平成18年改正により新たに設けられています。引下げが容認されるのは、株式分割と新株又は新株予約権の無償割当の場合に限定されています。したがって、第三者割当増資により大きな希薄化が生じても、買付価格の引下げは認められません。

また、新株予約権の無償割当等により買付価格の引下げが認められるのは、TOB期間中にその決定があった場合ではなく、TOB期間中に実行された場合に限られます。相場操縦に悪用される懸念から、買付価格の引下げについて非常に厳しい要件が課されているわけですが、それにより行われるべきTOBがなかなか行えない、という弊害が生じているのも事実です。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-09-20 09:44 | M&A
2008年 09月 17日

日本電産、東洋電機製造に買収提案

日本電産、東洋電機製造に買収提案 「鉄道機器」に進出
日本電産は16日、鉄道用機器メーカーで東証1部上場の東洋電機製造に買収を提案したと発表した。TOB(株式公開買い付け)により子会社化し、モーターなど鉄道機器分野に進出する狙い。日本電産は多くのM&A(合併・買収)を手掛けてきたが、相手企業と合意する前に買収提案を公表するのは初めて。東洋電機製造は「対応を検討中」としており、買収が成功するかは同社の対応に左右されそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080917AT1D160CK16092008.html
【CFOならこう読む】
本件で今後想定されるシナリオは次の通りです。

①東洋電機製造経営陣はTOBに賛同し、TOBが実行される。
②東洋電機製造経営陣はTOBに反対する。

 ②の場合、日本電産は、
②-1 買収を諦める
②-2 敵対的TOBを実行する


 ②-2の場合、東洋電機製造は、
②-2-1 第三者割当増資等により安定株主を作る
(王子・北越のケース)
②-2-2 濫用的買収者として買収防衛策を発動する
(スティール・ブルドックのケース)
②-2-2 何もしない

ところで、②-2-2のケースでTOBは成功するのでしょうか?

東洋電機製造は、個人株主の比率が約5割と高く、TOBの成否は個人株主がTOBに応募してくるかどうかによって大きく左右されます。

TOB価格は1株635円で12日終値(305円)に約108.2%のプレミアムを上乗せした水準です。過去の株価の推移から見ても十分な水準のプレミアムであると言えます。

ですからこのTOBに多くの個人株主が応募してくるように思えます。ところがゲーム理論的なアプローチではこれが必ずしもそうはならないことが指摘されます。

日本電産の買収に賛同する株主は、日本電産は東洋電機製造のファンダメンタルズ価値がTOB価格以上であると考えているはずだと考え、保有株式を売らない、という選択をします。日本電産の買収に反対する株主も、保有株式を売りません。

したがって、支配株主がいない本件のケースでは、ゲーム理論的には日本電産の買収は成立しない、ということになります。

岩井克人氏の近著「M&A 国富論」(プレジデント社)は、次のようにTOB価格だけで買収の可否を決する方法を次のように批判し、新しい買収ルールを提案しています。

「ある買収者が市場を一生懸命リサーチし、買収して価値を高められそうな会社を見つけてTOBをかけた場合、既存株主は何もしない、つまり「寝て待つ」ことが最良の戦略となるのです。その結果、買収は成立しなくなる。このようにTOB価格だけで買収するかどうかを決めるという仕組みは、本質的な矛盾を含んでいます。
これはファイナンス理論の中の最も重要な命題の一つなのですが、そのような理論を無視して、教科書を表面的に勉強しただけの人が、TOBの価格だけで買収の勝負をつければよい、それが株主のためだと主張しているのを見ると、情けなくなります。」
私は、TOBの価格で買収の勝負をつけるのが良いと考えています。株主が欲するのは、良い経営ではなくキャピタルゲインです。十分なプレミアムを付せば、多くの個人株主はTOBに応募してくるのです。そしてそれだけのプレミアムを付けてもなおペイする自信のある株主に支配権が移動する、この仕組みが国富の点からも望ましいと、私は考えるのです。

岩井氏の提案する買収提案の詳細については、また別の機会にこのブログでとりあげます。

【リンク】
平成20年9月16日「東洋電機製造株式会社に対する資本・業務提携に関する提案書提出のお知らせ」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-001.pdf

平成20年9月16日「貴社との資本・業務提携のご提案について」日本電産株式会社
http://www.nidec.co.jp/news/newsdata/2008/0916-002.pdf

M&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことか
岩井 克人

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by yasukiyoshi | 2008-09-17 09:03 | M&A
2008年 09月 05日

テクモ・スクエニのケース

テクモとコーエー、経営統合波乱含み 具体策は11月上旬メド
ゲームソフト会社でともに東証1部上場のテクモとコーエーは4日、経営統合に向け協議を始めると発表した。経営統合委員会を設け、11月上旬をメドに統合の具体策を詰める。テクモは同業のスクウェア・エニックスからTOB(株式公開買い付け)提案を受けていたが、経営陣はこれを拒否し、コーエーとの統合を選んだ。これを受け、スク・エニはテクモに質問状を提出、対応を今後考えるとしており、先行きはなお波乱含みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080905AT1D040AF04092008.html
【CFOならこう読む】
スク・エニからのTOB提案を拒否し、ホワイトナイト役をコーエーに求めた格好です。

スク・エニではなく、コーエーを選んだ理由をテクモ経営陣は明確に語っていません。
スク・エニは昨日、テクモに対し質問状を提出し、この点を照会しています。

今後の展開が注目されますが、仮にスク・エニが敵対的TOBに打って出た場合、テクモがコーエーとの経営統合を強行するのは、時間的な制約から、非常に困難であると言えます。その理由は次の通りです。
「簡易合併手続が利用できる場合を除き、会社が第三者と合併を行うには株主総会において特別決議を行う必要があるが、敵対的買収の手段として一般に用いられるTOBは、証取法上、買付期間が最短で20日、最高で60日とされており、これとの関係で、実際に防衛的な合併を行うには実務上困難な問題が生じる可能性がある。
まず、そもそも合併が敵対的TOB阻止のための手段として機能するためには、TOB手続中に対象会社の取締役会において他の会社との合併を決定し、TOB買付期間満了前の一定の日を基準日ないし株主名簿閉鎖日として、合併承認のための株主総会を招集しなければならない。
TOB完了後に基準日を定めて株主総会を招集しても、買付者側が多数の株式を取得して基準日までに名義書換をすれば合併承認決議はブロックされてしまうことになるからである。しかしながら、基準日等を定めるためには2週間前の公告が必要とされていることに鑑みると、最短20日間の買付期間内にここまですべて完了させるのは不可能ではないにせよ至難の業であろう。」
(「平時」の予防策と「有事」の対応策 太田洋・原田充浩著 商事法務)
いずれにしても、スク・エニとコーエーのいずれがテクモの株主価値を創造するのか(当然、従業員のモチベーションを高める施策も含まれます)、きちんと時間をかけて説明をした上で、テクモ株主がいずれかを選択する、という手続きが必要でしょう。そういう意味では、両社がTOB合戦を行うのが一番わかりやすい形であると私は思います。

【リンク】
2008年8月29日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けについて」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080829_133.pdf

2008年9月4日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けの提案に関する同社からの回答への対応」株式会社スクウェア・エニックス
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080904_135.pdf

平成20年9月4日「経営統合にかかる協議開始のお知らせ」テクモ株式会社 株式会社コーエー
http://www.tecmo.co.jp/company/pdf/2008090402.pdf


by yasukiyoshi | 2008-09-05 09:09 | M&A
2008年 07月 23日

解散価値によるTOB−コマ・スタジアムのケース

東宝がコマ・スタジアム買収へ 友好的TOBで
東宝は22日、東京・歌舞伎町の「新宿コマ劇場」を運営するコマ・スタジアムを完全子会社化すると発表した。株式公開買い付け(TOB)を実施し、友好的に買収する。劇場は年内で閉館する予定で、東宝が主導して跡地を再開発する。
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072201000610.html
【CFOならこう読む】
コマの7月22日終値1545円に比し、TOB価格は何とその4.8倍の7400円です。このTOB価格は何のバリューに基づくものなのでしょうか?

新聞記事によると東宝のTOBの目的を次のように説明しています。
「コマは演歌など興業の不振から主力の「新宿コマ劇場」閉鎖を決めたが、建物の解体から新しいビルの完成まで約4年間は事業停止となる。事業の継続が難しくなるため、東宝傘下で再建を図る。東宝はコマ劇場に隣接する自社の不動産と一体で再開発を進める。」(日本経済新聞 2008年7月23日 11面)
東宝は、この点公開買付開始公告の中で次のように書いています。
「当社は、対象者の所有する「新宿コマ劇場」建物の所在地(東京都新宿区歌舞伎町一丁目19 番1)を含む一帯の土地(以下「本件土地」といいます。)を所有しており、対象者は、本件土地5,385.33平方メートルの南側部分3,164.38 平方メートル(以下「本件土地南側部分」といいます。)を当社より賃借し、「新宿コマ劇場」建物の敷地として利用しております。また、当社は、本件土地の北側部分を、自社の所有する「新宿東宝会館」建物(地下4階・地上9階、テナントとして映画館・飲食店・レジャー施設等)の敷地として利用しております。ところが近年になり、演劇公演における観客ニーズの多様化から、特に対象者が得意とした演歌公演の観客動員の減少が続き、対象者は深刻な業績不振に陥りました。そのため、対象者は、平成15 年11 月には「経営再建計画」を策定し、平成17 年3月には「梅田コマ劇場」の資産売却により大阪地区の劇場経営から撤退いたしました。その後、対象者は、「新宿コマ劇場」を唯一の拠点として、話題性のある企画公演、他社との提携・貸館公演の実施等、時代のニーズに合った公演施策への転換を図ってまいりましたが、観客動員の回復には結びつかず、平成20 年3月期決算では2期連続の大幅な営業赤字を計上するに至り、再び抜本的な経営の見直しを迫られました。

また、「新宿コマ劇場」(昭和31 年築)及び「新宿東宝会館」(昭和44 年築)はともに、築後相当の年数が経過し、施設・設備の老朽化が激しくなっております。さらに、歌舞伎町一丁目地区は、演劇劇場2館、映画館計14 スクリーンが集積する一大映画・演劇興行街でありますが、昨今の周辺環境の変化や近隣競合地区へのシネマコンプレックス(複合映画館)の新規出店の影響を受け、映画・演劇興行立地の地盤沈下が急速に進んでいる状況にあります。

このような事態を踏まえ、対象者は、「新宿コマ劇場」建物の敷地を所有する当社に対して全面的な経営支援を要請し、「新宿コマ劇場」を閉館して当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組むことが、最善の選択との判断に至りました。また、当社にとっても、本件土地は、都内の主要繁華街では希少な大型物件でありながら、きわめて収益性・効率性の低い資産と化しており、当社の経営方針に照らして、本件土地の早期の再開発による有効活用が必要と考え、そのためには、何よりも本件土地南側部分の借地権を有する対象者の協力が不可欠と判断いたしました。」
要するに土地再開発のためにコマが有する借地権を取得する必要があり、TOBの目的はそこにあるというわけです。

こういうことですから、コマ・スタジアムの評価をもはや継続価値によって行うことはできません。東宝は時価純資産法に基づきTOB価格の決定を行ったことを開始公告の中で次のように説明しています。
「当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定する際の参考とするため、当社及び対象者から独立した第三者算定機関としての算定人であるアビームM&A コンサルティング株式会社(以下「アビームM&A コンサルティング」といいます。)に対し、対象者の株式価値の評価を依頼しました。アビームM&A コンサルティングは、当社からのかかる依頼に基づき、時価純資産法及び市場株価法により対象者の株式価値の評価を実施し、当社は、アビームM&A コンサルティングから平成20 年7月18 日付で株式価値算定書(以下「アビームM&A コンサルティング算定書」といいます。)を受領しています。それぞれの手法において算定された対象者の株式1株当たりの価値の範囲は、時価純資産法では7,057 円から7,401 円、市場株価法では1,555 円から1,728 円です。なお、アビームM&A コンサルティングは、対象者の株式価値の評価においては、対象者の本件土地南側部分の借地権には相当の含み益が存在しその重要性が高いことから、時価純資産法を採用するとともに、株式会社生駒データサービスシステム(以下「生駒データサービスシステム」といいます。)により実施されたかかる借地権の不動産鑑定に基づき、かかる借地権の適正な時価を対象者の株式価値に反映しております。また、対象者が唯一の事業所であり収益基盤であった「新宿コマ劇場」を閉館して、当社と協同して本件土地の再開発事業に取り組み、対象者の演劇事業が大幅に縮小されることが予定されていることから、対象者の事業資産から生み出される将来キャッシュフローに基づく株式価値の評価を行うことは難しいため、ディスカウンティッド・キャッシュフロー法は採用しておりません。当社は、本公開買付けにおける買付価格を決定するに際して、アビームM&A コンサルティング算定書の時価純資産法の評価結果を重視しつつ、対象者に対する事業・法務・会計・税務に係るデュー・ディリジェンスの結果、対象者による本公開買付けへの賛同の可否、対象者株式の市場価格の推移、及び本公開買付けの見通し等を総合的に勘案し、かつ、対象者と協議・交渉した結果等も踏まえ、平成20 年7月22 日の取締役会において本公開買付けにおける買付価格を7,400 円と決定いたしました。なお、本公開買付けにおける買付価格は、対象者株式の株式会社大阪証券取引所(以下「大阪証券取引所」といいます。)市場第二部における平成20 年7月18 日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値1,559 円(小数点以下を四捨五入)に対して約375%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20 年7月18 日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値1,680 円(小数点以下を四捨五入)に対して約341%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムを、平成20年7月18 日の終値1,545 円に対して約379%(小数点以下を四捨五入)のプレミアムをそれぞれ加えた価格となります。」
なお、TOBに先立ち、5月28日付で東宝はコマ・スタジアムと「新宿コマ劇場」跡地の再開発に共同して取り組む旨合意したことを公表しています。時価純資産法による評価の前提として、このような合意が必要であると考えたのではないかと推察されます。

【リンク】
「投資家の皆様へ」東宝株式会社
http://www.toho.co.jp/toho_ir/welcome-j.html

開示情報 平成20年7月22日「株式会社コマ・スタジアム株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」


by yasukiyoshi | 2008-07-23 08:42 | TOB
2008年 04月 11日

TOBルールの特別関係者と5%ルールの共同保有者

不明確な記載規定 共同保有情報など混乱
「買収防衛策逃れではないか」。日本ハウズイング幹部は、同社にTOBを提案した原弘産に疑問を投げかける。
日本ハウズの防衛策の発動基準は20%以上の買い付け。このため日本ハウズ株を11.77%保有するランドマーク(広島市)と同16.16%保有する原弘産の関係が日本ハウズには大問題だ。合計すると発動基準に達するからだ。
ランドマークは昨年2月に原弘産の子会社から日本ハウズ株4.4%を譲り受けた。親会社の合人社計画研究所は原弘産の分譲マンションの管理を請け負っており、取引関係はあるが、大量保有報告書では「共同保有者」ではない。合人社は「原弘産とは無関係に投資しており、連絡は取り合っていない」とするが、日本ハウズは一日、改めて両社の関係を問う質問状を送付した。
同様の問題は、ダヴィンチ・アドバイザーズによるテーオーシーの敵対的TOBでも起きた。
TOBに対抗し、大谷卓男テーオーシー社長らが18.74%、ホテル運営のニューオータニ(東京・千代田)が最終的に15.53%までテーオーシー株を買い増した。ニューオータニの大谷和彦社長はテーオーシーの大谷卓男社長のいとこでテーオーシー会長も兼務する。関係は深そうだが共同保有者ではない。
発行株の三分の一超を取得するにはTOBが必要。テーオーシー側の保有株合計は三分の一を超えるとみたダヴィンチ側から「TOBルール違反では」との声も出た。
(2008年4月11日 日本経済新聞16面 大量保有報告書残された課題)
【CFOならこう読む】
TOBルールの三分の一の計算及び5%ルールの計算は本人だけでなく、本人と共同して株券等の取得を行うことを合意している者も含めて行われますが、その者をTOBルールでは「特別関係者」、5%ルールでは「共同保有者」といい、定義されている条文が異なります。上の記事では、この両者さらに自主ルールである買収防衛策の発動の要件を明確に区別せずに書かれているため、一般の読者には何が書いてあるのかよくわからないのではないかと思い、今日は「特別関係者」と「共同保有者」について書いてみることにしました。

「特別関係者」については、金商法27条の2第7項にいわゆる形式基準(同項第1号)と実質基準(同項第2号)の2つの基準が定められています。

買付者が法人の場合の形式基準の「特別関係者」は、簡単に言うと以下の3つが該当します。
①当該法人の役員(取締役、執行役、会計参与・監査役・理事・監事またはこれに殉ずる者)
②当該法人が特別資本関係(20%以上の株式等を自己又は他人の名義で所有する関係)を有する法人及びその役員
③当該法人に対して特別資本関係を有する個人ならびに法人およびその役員
また実質基準の「特別関係者」は簡単に言うと以下の4つが該当します。
①共同して株券等を取得することを合意している者
②共同して株券等を譲渡することを合意している者
③共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者
④買い付け等の後に相互に株券等を譲渡し、もしくは譲り受けることを合意している者
一方5%ルールでは金商法27条の23第5項に共同保有者、金商法27条の23第6項にみなし共同保有者の基準が定められています。

「共同保有者」とは、株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における当該他の保有者をいいます。
したがってこの基準は、実質基準の「特別関係者」とほぼ同様のものです。

「みなし共同保有者」とは、一定の人的関係や資本関係(①夫婦②50%超の資本関係にある親子会社や兄弟会社)にある者をいいます。したがってこの基準は、形式基準の「特別関係者」の基準と異なっています。

実質基準の「特別関係者」(及び金商法27条の23第5項の共同保有者)の判定の上で、どのような場合に合意があったと見なされるのかが大きな問題となります。この点、「M&A法大全」(西村総合法律事務所編 商事法務)は次のように説明しています(67頁)。

「このような悩みは現実の取引の世界でしばしば発生する。仮に上記のような事案が裁判所に持ち込まれた場合には、当該取引に関するすべての事実・要素を総合的に勘案して判断されることになるであろう。取引の交渉から実行までの間にAとBの間で頻繁に話し合いが行われた場合、AとBに対して同一のアドバイザーがアドバイスを与えた場合、あるいは取引実行の直後にA、B間で株主間契約が結ばれた場合などには、これらの事実がAとBが特別関係者である(つまり、「共同して取得する合意」があった)と認定する際の根拠とされやすいであろう。もっとも、これらはあくまで認定の際の一つの判断要素にすぎず、たとえば、取引の実行前には、A,Bは互いの取引のことを知ってはいたがAB間での話合い等は一切なく、取引直後に始めて議決権行使の合意が行われた場合には、「共同して取得する合意」があったとはいえない
だろう。」

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-11 10:28 | TOB
2008年 02月 04日

エクスチェンジテンダーオファー(自社株対価のTOB)が日本で出来ない理由

NY株の続伸、ヤフーへの買収提案を好感
【ニューヨーク=財満大介】1日の米株式相場は続伸。ダウ工業株30種平均は前日比92ドル83セント高の1万2743ドル19セントで取引を終えた。マイクロソフトによるヤフーへの買収提案を受け、株式市場にM&A(合併・買収)資金が流入するとの期待が高まった。ただ、1月の雇用統計が弱含んだ影響で上昇幅は限られた。
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080202D2M0200M02.html

【CFOならこう読む】
先週ヤフーがマイクロソフトの買収提案を拒否した場合、TOBを行うこともあり得るとの報道がありました。その場合エクスチェンジテンダーオファー(マイクロソフト株式を対価としたTOB)を行う可能性があります。ところが日本では税制の問題があり、エクスチェンジテンダーオファーを行うことができない、というお話しをしました。税制の問題は確かに大きいのですが、実は会社法も実質的にエクスチェンジテンダーオファーを行えないような規定になっているのです。具体的には次の通りです。

(1)現物出資
買い手は買収対象会社株式を受入資産とする増資を行うことになり、これ自体現物出資とみなされる。現行会社法は、受入資産が時価のある有価証券である場合検査役検査は不要としていますが、これは対価として受領する有価証券の市場価格が十分な場合に限定されるので、プレミアムの支払いが前提となるTOBの場合問題となり得る。時価20ドルのヤフー株式を時価31ドル相当のマイクロソフト株式で取得するなら、マイクロソフトは31ドルの増資に見合う資産(ヤフー株式)を取得していないことになります。

(2) 有利発行
買い手がプレミアムを支払って買収対象株式を取得した場合、新株を特に有利な価格で発行したとみなされる可能性があり、株主総会の特別決議を要する。時価20ドルのヤフー株式を時価31ドル相当のマイクロソフト株式で取得するなら、マイクロソフトは自社株式を有利な価格でヤフー株主に交付したことになります。

エクスチェンジテンダーオファーが出来れば、株主価値を創造するようなTOB実行の機会が増加するはずです。これを阻害する制度は直ちに改正することを望みます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-02-04 08:06 | M&A
2007年 12月 12日

ディスカウントTOBーソリッドGHのケース

商工ローン最大手SFCGの大島健伸社長の資産管理会社ケン・エンタープライズが、ソリッドグループホールディングス(ソリッドGH)に対して進めてきたTOBが12日、期限を迎える。買付価格は市場価格を下回るが、事実上の筆頭株主であるリーマン・ブラザーズ証券がTOBに応募する可能性が浮上。TOBに反対するソリッドGHが有効な対抗策を打ち出せないでいるなかで、リーマンの出方が焦点となっている。
(日経金融新聞2007年12月12日 日経金融新聞)

【CFOならこう読む】
ソリッドGHとは旧ライブドアオート、その前はジャック・ホールディングスで、中古車売買を営んでいる会社です。この会社は今年1月にソリッドアコースティックス社の傘下に入ったのですが、このときソリッドアコースティックス社は買収資金150億円をリーマン・ブラザースから調達しています。リーマンは、融資の際、GH株過半数の売却権とソリッドGHの保有する現金120億円を担保にとっています。

ソリッドアコースティックス社のTOB反対意見表明書によると、リーマンは平成19年9月28日現在、114,592千株保有しており、これをケン・エンタープライズ社が取得するためにTOBを実施したということのようです。買付価格の26円はTOB開始日である10月31日の前日の終値43円を40%程度下回り、また年初来最安値33円(9月19日)を20%以上下回ります。

一般的にこのようなディスカウントTOB(市場価格を下回る価格でのTOB)は、大株主との間で株式譲渡の合意が出来ているときに、その大株主以外の株式の譲り受けをしたくないときに行われます。市場価格を下回る価格でTOBに応募する一般株主はいないからです。
この辺の事情をTOB反対意見表明書は次のように記載しています。
「現時点で最新の変更報告書である平成19年10月5日付変更報告書によりますと、LB社は当該株式を市場内取引で継続的に売却しており、LB社が担保として保有している当社株式数は平成19年9月28日時点で114,592,300株とされています。当社の調査によれば、SA社のLB社に対する債務残高は現在2,656,722,603円であり、LB社にとってはその担保として保有する当社株式を1株26円で売却すればSA社に対する債権を回収することができることになります。つまり、本公開買付けにおける買付価格はこのような状況下で最初に「26円」という数字ありきで計画されたものであり、「26円」という数字は当社の企業価値には何の関心もない当社の元親会社の債権者と、当社の株式を安価で買い取りたい買収者の論理に基づいてのみ決定されたものではないかとの疑念を強く抱かざるを得ません。」
事実のほどはわかりませんが、市場株価はTOB価格26円には大きな影響を受けずに推移しているようなので、一般株主への実害はないのかもしれません。

私がこの件で問題だと思うのは、SFCGのホームページにTOBの開示がないことです。東証の適時開示規則によると上場会社の非上場の親会社がTOBを開始した場合、その上場会社もそのTOBについて開示することが要求されています。

また、何故SFCG本体ではなく大島社長の資産管理会社(SFCGの親会社)がTOBを実施したのかよくわかりません。仮にソリッドGHを連結決算に組み入れたくないがためのスキームだとしたら、それはそれで大問題です。少なくとも会計監査では必ず問題になるでしょう。

【リンク】
平成19年11月12日「株式会社ケン・エンタープライズによる公開買付けの反対に関するお知らせ」株式会社ソリッドグループホールディングス
http://www.solidgroup.co.jp/ir/images/20071112000001.pdf

平成19年11月14日「株式会社ソリッド グループ ホールディングスによる意見表明報告書に対する当社の見解について」株式会社ケン・エンタープライズ
http://www.hd.tzone.co.jp/ann/ann071114_003.pdf


by yasukiyoshi | 2007-12-12 08:24 | TOB