吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 08月 29日

新日鉄、自社株買いで「筆頭株主」に。6月末7.5%に

新日本製鉄が保有する自社株(金庫株)数が6月末時点で、
筆頭株主を上回ったことが明らかになった。
株主への利益配分策として自社株買いを積極的に行っているためだ。
世界最大手のアルセロール・ミタルの誕生以来、鉄鋼業界は再編が進んでいる。
自社株買いにより、市場で流通する株式を減らし、
敵対的な買収に備える狙いがある。
(「日本経済新聞」2007年8月29日(水)朝刊11面)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070829AT1D2807V28082007.html



(CFOならこう読む)
敵対的買収防衛のために自社株買いを進めているというのが本当なら大問題です。

自社株買いにより、株価に反映されていない余剰現金を
株主に還元することにより株主価値を高め、
ファイナンシャルバイヤーの敵対的買収を防ぐというのならわかります。

しかし一般投資家の持株割合を減らし、
持合株式の比率を上げることにより敵対的買収を防ぐのは、
経営者が支配権の帰趨を決定することになるので、到底許されません。

市場がきちんと機能していれば
(つまり市場のプレイヤーのほとんどが一般投資家であるなら)、
株価が大きく下がり経営陣の責任が問われるので、
こういう市場無視の方策はとれないのですが、
日本の市場はまだまだそこまで行っていないので、
厳格な規制を設ける必要があるのかもしれません。

最近読んだ『株式会社はどこへ行くのか』(上村達男/金児昭著、日本経済新聞出版社)
という本の中で、上村さんが次のように述べています。

「アメリカの場合、最大限の自由を経済活動に認める一方で、
最大限の規律を求めるというアプローチがとられています。
日本の株主主権論者の多くは前者のみに注目して、
後者については無視または軽視しています。
しかし両者は表裏一体であり、切り離して考えられるものではありません。
規律とは自由への制約ではなく、市場の成立条件が大半です。
日本の制度の水準はアメリカ並みになったという人もいますが、
こういう意味での規律がない自由は、
ブレーキの弱い自動車ですから、それならないほうがよいのです。
そこをはき違えている場合が多いように思います。」


確かに強大な権力を握る経営陣及びその予備軍に
いくらあるべき論を論じても通用しないでしょう。
日本経済の進むべき方向性を見据えた上で
規制を課していくことが必要であると思います。

by yasukiyoshi | 2007-08-29 08:45 | 自社株取得


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