吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 02日

ソニー、純利益140億円押し上げ・今期、SFHの東証上場で

ソニーは1日、今月11日に東証一部に上場する金融子会社ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)株の売り出しに伴い、2008年3月期の連結業績(米国会計基準)で純利益が140億円増えそうだと発表した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2E0101K%2001102007&g=S1&d=20071001

【CFOならこう読む】
ソニーは、ソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)の上場により、持株比率の40%を市場に売却することになります(公募・売出合わせて)。これによって得た資金はエレクトロニクス事業に投下されるようです。このことは既存のソニー株主にとって良いことなのでしょうか?

SFHの株価は、SFHの収益性・将来性が評価されたもので、ソニー株価形成の中に反映されています。これを売却するということは、その時点でソニー株主はSFHの将来の成長による果実を受け取れなくなることを意味します。しかも株式売却益には通常の法人税率で課税が生じます。そうまでして現金化したSFHほどには成長の見込めない事業に投下することを望む株主が一体どれだけいるのでしょう。このグループ再編は本来スピンオフにより行なわれるべきです。

まず10%程度の持分を放出により上場した後、会社分割によりSFH事業を切り放し、その株式をソニーの既存株主に持分比率に応じ割当てるのです。そうすればソニー株主は未来永劫SFHの成長分を享受することが可能になります。無用な法人税も支払わなくてすみます。スピンオフによる企業再編にはこのように大きなメリットがあるのですが、日本では全く利用されていません。それは税法の壁があるからです。

通常の上場会社がスピンオフすると非適格組織再編となり譲渡益に課税が生じると同時に、株主にはみなし配当課税があるのです。株主にとってみればソニー株の一部がSFH株に変わっただけで経済的実体に何の変化もないのに課税が生じるのは納得が行かないので、現状の税制下では株主の賛同が得られないのです。

早急な税制改正が望まれます。
新会社法とM&A① ストラクチャリングに関わる主要な改正
http://mofo.jp/news/updates/pdf/imcnl8.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-02 08:44 | 税制


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