吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 09日

米スティール 買収ファンド米で上場へ

米投資ファンドのスティール・パートナーズが企業買収を目的とした新しいファンドを米国市場に上場する準備を進めていることがわかった。最大で4億ドル(約460億円)を市場から調達し、集めた資金を日本を含む世界の企業に投資する計画という。
(2007年10月9日 日経新聞5面)

【CFOならこう読む】
このニュースの反応として、「スティールも日本で三角合併に乗り出す」といったものが予想されます。日経連が、これを材料にまたあれこれ言い出すことも十分に考えられます。

しかし、スティールが日本でTOBに成功していない事実を考えると、少なくとも日本においてスティール株式を使って三角合併を行おうとしているとは考えられません。三角合併を行うには取締役会が合併契約に承認した上で、株主総会の特別決議を経なければなりません。そのためにはTOBで2/3以上の議決権を取る必要があります。

2/3以上の議決権を目的としたTOBの場合、金商法上、応募者全部の株式を買い取る必要があり、そこで応募してこない少数株主をあえて三角合併により排除しなくても例えばレックスが行ったようなスクィーズ・アウトの手法を使えば容易に100%の議決権を握ることができるのです。

それではスティールは何のために上場するのでしょうか?

ファンドには期限が設けられますが、スティールの投資は必ずしもその期間内で十分な投資利回りが得られるとは限りません。特に日本の投資環境は5年前とは大きく様変わりしており、あと5年待てばさらに劇的に変わる可能性もあります。そこで、スティールは日本における長期投資を可能にするため、上場により返済期限のない資金を調達することにしたのだと思います。

ブルドック事件の高裁決定で、スティールを「短中期で株式を転売することで売却益を獲得しようとするもの」と断定しましたが、2003年にTOBをかけたユシロ化学工業の筆頭株主は今もスティールです(2007年3月末現在 13.68%保有)。

【リンク】
ユシロ化学工業株式会社
http://www.yushiro.co.jp/

株価
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=5013.t&d=c&k=c3&a=v&p=m130,m260,s&t=5y&l=off&z=m&q=c&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-09 08:10


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