吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 17日

金1グラム3000円台、23年ぶり高値・国内小売り

金の国内小売価格が一段と上昇、1グラム3000円の大台を超え23年ぶりの高値となった。米国景気の先行き不透明感などから海外のドル建て金価格の上昇が続いているうえ、為替の円安傾向が円建て価格を押し上げた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1J13003%2015102007&g=E3&d=20071015

【CFOならこう読む】
ドルの信認がゆらいでいます。

「会社はこれからどうなるのか」「会社はだれのものか」の著者であり、東京大学経済学部教授の岩井克人氏は「貨幣論」の中で“貨幣は貨幣だから貨幣である“という内容の貨幣の自己循環論を展開しています。そして、「資本主義から市民主義へ」では、“基軸通貨ドルも自己循環論法で成立している“と述べています。

つまり世界中でドルが基軸通貨として使われているのはアメリカ経済が強大だからという理由ではなく、世界中でドルが基軸通貨として使われているからであると言っているのです。このことは、一旦世界の人々がドルの基軸通貨体制に疑問を持ち始めると、一気にドルの価値が暴落し、基軸通貨の自己循環論法が崩壊するリスクがあることを示しています。

さらに岩井克人氏は、「資本主義から市民主義へ」の中で次のようにも述べています。
基軸通貨国であるアメリカには基軸通貨国としての世界経済全体の立場に立った規律が求められているということです。たとえば、アメリカが不況であっても、世界中がインフレになれば、アメリカはドルの供給を減らしてデフレ政策をとらなければならないということです。
その意味で、アメリカは、基軸通貨国としての地位を保っているかぎり、世界経済の中央銀行的な役割を果たすように義務づけられている。だが問題は、アメリカという国は、かつてのモンロー・ドクトリンにもあるように、伝統的に内向きの国なのです。そして、その傾向は、冷戦が崩壊してから、ますます強まってきている。
基軸通貨国であることが要請する世界に向けた規律を、往々にして忘れてしまっているように思えるのです。ここに、現在の世界資本主義がかかえているもっとも根源的な危機の種がある。

昨今のアメリカの金融政策から、基軸通貨国としての規律を私は感じることができません。そして世界中の人々のドルへの信認が少しずつゆらぎ始め、リスク回避のためにドルから金への資金移動が始まっている、そんな風に私にはこのニュースが読めてしまいます。

このシナリオが行きつく先はドルの大暴落です。

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by yasukiyoshi | 2007-10-17 08:29 | 為替


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