吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 30日

完全子会社か吸収合併か-HOYA・ペンタックスのケース

HOYA、ペンタックスを吸収合併へ
HOYAは29日、ペンタックスと2008年3月末に合併すると発表した。HOYAは8月にTOB(株式公開買い付け)によりペンタックスを子会社化していたが、経営判断をより迅速に進めるには一体化することが必要と判断した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D29008%2029102007&g=S1&d=20071029

【CFOならこう読む】
HOYAは9月末時点でペンタックス株の90.8%を保有しています。当初、HOYAとペンタックスは合併による統合を目指していましたが、ペンタックス経営陣の内紛もあり、TOBにより経営権取得の後、株式交換によりペンタックスがHOYAの完全子会社となることになっていました。

ところが昨日来年3月末にHOYAがペンタックスを吸収合併するとの再度の方針変更の発表がありました。プレスリリースによるとその理由を次のように説明しています。
ペンタックスの主要事業を強化するためには、経営の機動力や柔軟性が重要であり、ペンタックスの各事業部が、HOYAの他事業部と同等の迅速な経営判断と行動を行うことを可能にし、また経営資源の配分を子会社の小さな枠組みではなく、HOYAグループ全体の枠組みの中で最適化するには、当初計画していた合併による統合が最適であるとの結論に至りました。

極めてまっとうな理由です。

事業統合を完全子会社化により行うのか、吸収合併により行うのかは統合を考える全ての企業が悩むところでしょう。しかしプレスリリースに書かれているような吸収合併の特徴を鑑みると、完全子会社化するメリットはあまりないように思います。

一般的に挙げられるメリットは、
①子会社の独立性を保持する
②子会社が経営陣にモチベーションを与える
③企業文化の異なる会社同士が時間をかけてゆっくりと統合していくための第1段階としてこの形を選択する
④買収リスクが高まっているときに、上場を維持したまま他社の傘に入る

といったところでしょうか。
日本では、③の理由から、持株会社の傘下に入ることも含め、子会社化による統合を選択するケースが多いように思います。

しかしグループとして迅速な経営判断が要求される現代の経営環境下においては、子会社化するよりも合併を選択すべき場合がほとんであるように思います。子会社として統合する方が良いのは、子会社と親会社の間に事業シナジーがほとんどなく、将来的に再上場、スピンオフ等の次の再編を視野に入れている場合に限られると思います。

「とりあえず(・・・・・)一緒になって、時間をかけてゆっくりとひとつになっていきましょう」

という日本的な統合のあり方はもはや通用しないと考えるべきでしょう。
そういう意味でHOYAの朝令暮改的な方向転換を私は支持します。

【リンク】

合併契約に関するお知らせ(PDF)
http://www.pentax.co.jp/japan/news/announce/20071029-02.pdf

Yahoo!ファイナンス:ペンタックス株式会社
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=7750.t&d=c&k=c3&z=m&h=on


by yasukiyoshi | 2007-10-30 08:43 | M&A


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