吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 10月 31日

NOVA社長持ち株売り逃げか?

NOVA前社長の持ち株比率低下を発表
会社更生法の適用を申請した英会話学校最大手のNOVAは30日、猿橋望前社長と同氏が実質支配するノヴァ企画が保有するNOVA株の比率が大幅に低下したと正式発表した。両者の保有比率は異動前に71.5%だったが、9月30日時点では19.7%。NOVA側は「経緯などの詳細は確認できていない」として本格調査に乗り出す構え。破綻前の大規模な株式異動に問題がなかったかどうかも今後焦点になりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1D3000I%2030102007&g=S1&d=20071030

【CFOならこう読む】
NOVAは、10月10日に発行済株式総数の3倍に相当する新株予約権の発行を発表しています。

第1四半期の業績発表は8月26日、2007年6月末の純資産額は3億5千万円でした(2007年3月末28億2千万円)。貸借対照表項目を詳細に見ると、繰延駅前留学サービス収入(シビレル勘定科目ですね)が2007年3月末時点で長短合わせて255億円であったのが、2007年6月末時点には209億円まで減少しています。

本来負債に計上すべきものの一部を収益に計上することによりギリギリ純資産がプラスの決算を組んだ上で(つまり表面上債務超過でないことを装った上で)新株予約権の発行を決めたとの疑いが持たれているのです。

70%超の株式を保有していた猿橋前社長は、粉飾決算及び新株予約権の大量発行の前に持株を第三者に売却していた可能性があります。当然これだけの株式を市場で売却できず、相対で譲渡していたなら、本来TOBによるべきものをその手続きを欠いたことになり、そうだとすると重大な金商法違反です。

会社は「経緯など詳細は確認できていない」と説明していますが、額面通り受け取ることはできません。その証拠にNOVAは持ち株比率の増減を記載した大量保有報告書を1ヶ月以上提出していないのです。提出できない理由があるから提出していないと考えるのが自然でしょう。

いずれにしても今の日本にとって資本市場をまっとうに機能させることがとても重要です。一般投資家が恐くて近づけない市場しか持たない国がまともな資本主義国家であるわけがないのです。金融庁と証券取引等監視委員会には徹底した調査を望みます。

【リンク】
平成19年10月24日 第三者割り当てによる新株予約権の払込完了のお知らせ(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/yoyakuken_haraikomi_071024.pdf
平成19年10月10日 第三者割り当てによる新株予約権の発行に関するお知らせ(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/shinkabu_071010.pdf
平成20年3月期第一四半期財務・業績の状況(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/gaikyo_h20_1st.pdf
連結貸借対照表 平成19年3月31日現在(PDF)
http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/gaikyo_h19_mar.pdf


by yasukiyoshi | 2007-10-31 08:37 | コーポレートガバナンス


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