吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2007年 11月 06日

株式交換比率の決め方―日本製紙・三島製紙のケース

三島製紙の完全子会社化、日本製紙が株式交換比率を決定
三島製紙を2008年2月1日付で完全子会社化する日本製紙グループ本社は5日、株式交換比率を決定したと発表した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D05004%2005112007&g=S1&d=20071105

【CFOならこう読む】
日本製紙の11月2日終値をベースに算出した三島製紙の理論株価は203円程度になります。
これは三島製紙の11月2日の終値239円と比較し約15%下回る水準です。

この交換比率について、今日の新聞では、「市場では「過去の長期的な株価推移と照らし合わせると交換比率は妥当」(外資系証券)との見方が出ている。三島製紙株は10月末に思惑から株価が急騰した経緯があり、1ヶ月、3ヶ月の株価を単純平均した価格は200円程度」と報道されています(日経金融新聞2007年11月6日)。

シナジーゼロの評価が妥当との見方が私にはよくわかりません。11月1日のコラムでも書きましたが、合併や株式交換のように株式を対価とした買収の場合、交付後の株式を保有することにより、シナジーを享受できるので、交換比率は単純に公表前の市場株価によって決めればよいとの考え方がありますが、私はその考え方は間違っていると思っています。

対価が株式であろうが、現金であろうが、株式を即時売却することも交付された現金で買い手株式を買うこともできるのですから、いくらで買うかという評価には無関係であると思うのです(税金の影響があればそれは考慮する必要がありますーこの辺はマイロン・ショールズ他のタックス・アンド・ビジネス・ストラテジーという本に詳しく書かれています)。

最大の問題は、株式交換の際にどの程度シナジーを織り込んで比率決定をしているのか、本件も含め日本では単に比率しか示されないので、一般投資家にはよく分からないところにあります。

シティ・日興のケースのように、株式交換(合併)の場合でも買い手は売り手をいくらで評価したのか明確に示すことが望まれます。株式交換(合併)契約書の法定記載事項とすべきかもしれません。

いずれにしても三島製紙がお買い得価格で売りに出されました。O社さんもD社さんもTOBのチャンス到来ですよ。

【リンク】
平成19年11月5日「株式交換契約締結のお知らせ」三島製紙株式会社・株式会社日本製紙グループ(PDF)
http://www.np-g.com/news/news07110501.pdf

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by yasukiyoshi | 2007-11-06 09:06 | M&A


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