2008年 04月 18日
米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)に米証券取引委員会(SEC)から手紙が届いた。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になるなか、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。【CFOならこう読む】 手紙(リンク↓)はレベル3インプットを利用して公正価値を評価した場合の開示の 充実を要請する趣旨で書かれているのですが、中に次のような記述があります。 Under SFAS 157, it is appropriate for you to consider actual market prices,or observable inputs, even when the market is less liquid than historical market volumes, unless those prices are the result of a forced liquidation or distress sale. Only when actual market prices, or relevant observable inputs, are not available is it appropriate for you to use unobservable inputs which reflect your assumptions of what market participants would use in pricing the asset or liability.市場がゆがんでいる場合にはレベル3インプットに分類できる場合がある、ということが書かれているわけです。 3月28日のNew York Timesは、これに対し” If Market Prices Are Too Low, Ignore Them”と強烈な皮肉を込めた記事を掲載しています。FAS157は会計上公正価値をいかに測定し表示すべきかについて規定した会計基準です。そこでのポイントは、公正価値を、時価がある場合にはそれに基づき測定し、ない場合には内部データ(レベル3インプット)に基づき測定することを求めているところにあります。 サブプライムローン関連の証券化商品がどのように評価されるかについて、新日本監査法人の情報ポータルサイトに次のような記載があります。 「一口にサブプライムローン関連の証券化商品といっても、いろいろなものがあり、格付けがあるものと、ないものによっても状況が違います。格付けのある債券については、それと同一格付債券の気配値や、売買実績など、市場で根拠となるもの(レベル2インプット)が取れれば、それを使って評価することになります。格付け機関はこの問題の初期段階では格下げの必要はないといっていましたが、その後、全面的にこのコラムはSECからの手紙以前に書かれています。SECからの手紙は、このコラムでレベル2インプットを取れるものと位置付けられているものを、市場価格が歪んでいると認められる場合にはレベル3インプットを用いて公正価値の評価を行うことを認めると言っているわけです。これは4月12日に当ブログで私が指摘した(http://cfonews.exblog.jp/7724804/)ように、”状況が悪いときには、それを測るモノサ シを変えてやり過ごそう”ということに他なりません。 言うまでもなく、今は、実態をルールに従い正しく把握した上で、それに対し適切に対処していくことが求められている時です。場当たり的にモノサシを変えてやりすごそうという姿勢は全く持って間違っていると私は思います。 一方私自身は、全面時価会計が会計の正しい方向性であるとは思っていないので、これを機会に会計基準を見直すための議論はあってしかるべきであると考えています。 それにしても十字路の「市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。」とは一体何を言いたいのでしょうか? 少なくとも、私は市場原理主義者かもしれませんが(笑)、時価会計の信奉者ではありません。 情緒的なだけで中身がない議論を公の場ですることは厳に戒めてもらいたいものです。 【リンク】 SECからの手紙
by yasukiyoshi
| 2008-04-18 10:41
| 会計
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日々のニュースをCFOはどう読むべきか。CFOに役立つニュースをピックアップし、アカデミック&実務の視点から、そのニュースの本質をわかりやすく「解きほぐし」ます。 by yasukiyoshi ■このブログについて ●「CFOニュース」を始めた理由 ●このブログへのコメントについて ■マーケット情報 2月19日の東京市場 ●日経平均株価 7557.65円(前日比+23.21円) ●株価収益率(PER) 日経225種 前期基準8.70倍(予想68.87倍) ●円/ドル 93.56円~93.58円(前日比-0.98円) ●円/ユーロ 117.81円~117.85円(前日比-1.06円) ●長期金利(10年国債利回り) 1.260%(前日比+0.005%) 2月20日の米国市場 ●NYダウ平均 7,465.95ドル(前日比-89.68ドル) ●ナスダック指数 1,442.82ドル(前日比-25.15ドル) にほんブログ村ランキングに参加しています。 新規公開株情報サイト IPO 2.0 カテゴリ
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