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2008年 08月 02日

自社株取得-ヤフーのケース

「事業環境、急に改善しない」ヤフー井上社長に聞く 景気減速、ネット広告に影響
ヤフーの2008年4月-6月期は利益の伸びが大幅に鈍化した。井上雅博社長は「事業環境は急に改善しないだろう」と語り、急成長を続けてきたインターネット広告にも、景気減速の影響が及ぶとの見通しを示した。初めて実施した自社株買いについては「今後も株主配分の選択肢のひとつ」に加える考えを示した。(日本経済新聞 2008年8月2日 16面)
【CFOならこう読む】
記事の中で自社株買いについて、井上社長は次のように語っています。
―初の自社株買いをしたが株価の反応は鈍い。
「中長期できいてくるのだろうが、もう少し短期的にみてほしかった。今後もオプションの一つと考えている。当分いい投資先がないとしたら、株主配分として考える」
―配当性向10%を引き上げる考えは。
「常に選択肢の一つ。(株主配分として)今回は自社株買いをした」

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http://tchart.yahoo.co.jp/c/3m/4/4689.t.gif

自社株取得の本質はマイナスの時価発行増資又は配当支払い行為で、理論的には自社株取得は株価に影響を及ぼしません。しかし実務上株価上昇を動機とした自社株取得は、日米ともに日常的に行われています。自社株取得が株価に影響を与える理由の一つとしてシグナリング効果があげられます。
「企業の自社株買いのアナウンスが、企業経営者の自信の表明や株主尊重の姿勢と受け取られたり、現在の株価が割安であるというシグナルと受け取られると株価に有利に働くことがありうる。ただし、この場合、自社株買い以外に有望な資金使途(投資機会)がなくなったと解釈されると、株価にマイナスに働く可能性もある。」
(経営財務入門〔第3版〕 井手正介・高橋文朗著 日本経済新聞社)
ヤフーの場合、自社株取得が、市場に対し”有望な資金使途(投資機会)がなくなった”との逆シグナル効果を与えた可能性はあります。

いずれにしても、自社株取得が無条件に株価を上昇させるとの認識は改める必要があると思います。

【リンク】
「IR関連情報」 ヤフー株式会社
http://ir.yahoo.co.jp/jp/release/

経営財務入門〔第3版〕 井手正介・高橋文朗著 日本経済新聞社
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by yasukiyoshi | 2008-08-02 09:13 | 自社株取得


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