吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

cfonews.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2008年 08月 29日

ロックアップ条項

ベンチャーキャピタル(VC)など新規上場企業の大株主に対して、株式売却を一定期間制限する条項のこと。あらかじめ大口の売りを抑えて上場直後の株価を安定させる目的で設定する。
(日本経済新聞2008年8月29日 16面 なるほど株式 このコトバ)


【CFOならこう読む】
条項がある場合は上場目論見書の「募集または売出しに関する特別記載事項」に記載されます。

例えば、イナリサーチの場合、次のようなロックアップ条項が設定されています。
「ロックアップについて 本募集及び本売出しに関し、売出人である中川賢司及び中川博司並びに当社株主である八十二3号投資事業有限責任組合、杏林製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社及び若林弘一は、日興シティグループ証券株式会社(主幹事会社)に対して、本募集及び本売出しに係る元引受契約締結日から180日間(以下「ロックアップ期間」という。)は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、元引受契約締結日に自己の計算で保有する当社株式(潜在株式を含む。)を売却しない旨を約束しております。
 また、当社は、主幹事会社との間で、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得する権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却(株式分割及びストックオプション等に関わる発行を除く。)を行わないことに合意しております。
 なお、上記のいずれの場合においても、主幹事会社は、その裁量で当該合意内容の一部若しくは全部につき解除し、又はその制限期間を短縮する権限を有しております。」

今年上場した企業のうち、株価の下落が目立つものには、大株主による「ロックアップ条項」が緩い企業が多い(日経ヴェリタス2008年8月17日)と言えます。

7日に上場したベンチャーリパブリックは、柴田啓社長の出身母体である三菱商事が主要株主ですが、「ロックアップ条項」は設定されていません。ベンチャーリパブリックの公募価格3000円に対し8月28日の終値は2040円と大きく値を下げています。

また同じく7日に上場したトライステージには「ロックアップ条項」が設定されているものの、「創業メンバーの取締役3人が16万2000株を売り出した。「創業者利益の確定が早過ぎる」と悪材料視された。」(日経ヴェリタス2008年8月17日)ことにより、公募価格4000円に対し8月28日の終値は2290円と大きく公募価格を下回っています。

結局、オーナー経営者が自らの利得のみのためにIPOしたのではない、という姿勢が大事なのだと思います。

【リンク】
平成20年7月「株式発行並びに株式売出届出目論見書」株式会社ベンチャーパブリック
http://www.vrg.jp/ir/data/00071441.pdf


by yasukiyoshi | 2008-08-29 11:12 | IPO


<< 資本政策詳解ーサニーサイドアップ      PIPEs-田崎真珠のケース >>