吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 12月 20日

円高は悪か?

日銀、0.2%利下げ 白川総裁「最大限の貢献行う」
日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を年0.3%から0.1%に引き下げることを決め、即日実施した。長期国債の買い入れ増額やコマーシャルペーパー(CP)の買い取りなど、資金供給策も拡充する。海外経済の後退や円高の進行で景気がさらに落ち込むリスクが高まり、金融政策面で一段の下支えが必要と判断した。日銀の白川方明総裁は記者会見で「中央銀行としてなし得る最大限の貢献を行う」と企業の資金繰り支援策をさらに検討することも強調、景気の底割れ回避に全力で取り組む決意を表明した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1902L%2019122008&g=E3&d=20081219
【CFOならこう読む】
FRBがゼロ金利を決めた影響で、「相対的に金利が高くなった円が買われ、為替市場では約13年ぶりに1ドル=90円を突破する円高・ドル安が進んだ。頼みの輸出産業が大打撃を受けた日本経済にとって、一層の円高はまさに「弱り目にたたり目」である。
(前掲紙)

円高は悪なのでしょうか?

そもそもすべての輸出産業は円高によって本当に大打撃を受けるのでしょうか?
例えば輸入資源価格の高騰を受け、鋼材輸出企業である新日鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼は軒並み決算を上方に修正しています。円高の水準にもよりますが、円高=輸出産業大打撃ということには必ずしもなりません。

輸出産業にとって円高が望ましくないとしても、それが直ちに日本全体にとって望ましくないということにはなりません。この点、昨日に引き続き、野口悠紀雄氏「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)から引用したいと思います。
「円高こそが、経済成長の利益を日本人が享受するための自然なルートなのである。なぜなら、「円高」とは、日本人の労働価値が高く評価されることだからである。
(中略)
消費者の立場から見て望ましい変化が生じたときに、それを打ち消すような圧力が生産者(とくに輸出産業)から生じるのが、日本の経済政策の基本的バイアスである。こうしたバイアスは、最近時点に始まったものではない。
日本の経済論議や経済政策論議は、高度成長期以来一貫して、消費者無視のバイアスを持っていた。ただし、これまでは、それに一定の合理性があった。多くの人は消費者であると同時に生産者でもあるため、企業が発展すれば賃金が上がり、生活水準が向上するからだ。
しかし、いまや企業が成長すれば自動的に消費者の生活が向上するという保障はない。日本人は、企業人としての立場と消費者としての立場を、秤にかけて勘案すべき段階にきている。」
日銀白川総裁の会見要旨を見る限り、日銀としては、円高=悪との判断はないようで、少しだけほっとしています。

【リンク】
世界経済危機 日本の罪と罰
野口 悠紀雄

世界経済危機 日本の罪と罰
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2008年10月31日「2008年度第2四半期決算及び通期業績見通しについて」株式会社神戸製鋼
http://www.kobelco.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2008/11/07/ir_siryo.pdf

2008年10月24日「JFEグループ2008年度 上期決算 2008年度 業績見通し」JFE
http://www.jfe-holdings.co.jp/investor/zaimu/g-data/jfe/21/21-setumei081024.pdf

「実績と業績予想 2008年3月期連結業績実績」新日本製鐵株式会社
http://www.nsc.co.jp/ir/individual/finance.html

by yasukiyoshi | 2008-12-20 09:32 | 為替


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