吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース

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2008年 04月 18日

FAS157の適用について、SECが米国の全上場企業のCFOに送付した手紙

米国の全上場企業の最高財務責任者(CFO)に米証券取引委員会(SEC)から手紙が届いた。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になるなか、盛られていたのは実質的な時価評価の後退だった。
手紙が取り上げているのは米財務会計基準審議会(FASB)が2007年11月に導入した新会計基準「FAS157」。企業がこれに基づくSEC提出書類(フォーム10-K)を作る際の考え方を示している。
FAS157は有価証券を性質に応じて三つに分類。流動性が高く時価が測れるレベル1、参照できる指標があるレベル2、取引が薄く時価がないレベル3だ。
手紙は広範な有価証券をレベル3に分類できるとしている。本来レベル2に入るものでも今は市場がゆがんでいるとの解釈だ。そのうえでレベル3について、どういう方法で評価したかのモデルを開示するように求めている。
例えばサブプライムローンを組み込んだ証券化商品などレベル2の参照価格はトリプルA格でもとの価格の50%程度。それをレベル3と見なし、開示モデルによる評価を公正価格(フェアバリュー)として構わないというわけだ。開示モデルさえしっかりしていれば70%と評価することも可能になる。
これによって金融機関のサブプライム関連損失の抑制効果が見込める。レベル2には債務担保証券(CDO)やLBO(借入で資金量を増やした買収)融資などかなりの資産が入る。
一部の会計士はレベル2を市場の参考価格を使って厳格評価する姿勢だった。その場合、債務超過に陥る金融機関が出て、連鎖破綻がおきかねなかった。SECは会計士へのけん制も狙ったもようだ。
市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。

(2008年4月17日 日本経済新聞夕刊9面 十字路)
【CFOならこう読む】
手紙(リンク↓)はレベル3インプットを利用して公正価値を評価した場合の開示の
充実を要請する趣旨で書かれているのですが、中に次のような記述があります。
Under SFAS 157, it is appropriate for you to consider actual market prices,or observable inputs, even when the market is less liquid than historical market volumes, unless those prices are the result of a forced liquidation or distress sale. Only when actual market prices, or relevant observable inputs, are not available is it appropriate for you to use unobservable inputs which reflect your assumptions of what market participants would use in pricing the asset or liability.
市場がゆがんでいる場合にはレベル3インプットに分類できる場合がある、ということが書かれているわけです。

3月28日のNew York Timesは、これに対し” If Market Prices Are Too Low, Ignore Them”と強烈な皮肉を込めた記事を掲載しています。FAS157は会計上公正価値をいかに測定し表示すべきかについて規定した会計基準です。そこでのポイントは、公正価値を、時価がある場合にはそれに基づき測定し、ない場合には内部データ(レベル3インプット)に基づき測定することを求めているところにあります。

サブプライムローン関連の証券化商品がどのように評価されるかについて、新日本監査法人の情報ポータルサイトに次のような記載があります。
「一口にサブプライムローン関連の証券化商品といっても、いろいろなものがあり、格付けがあるものと、ないものによっても状況が違います。格付けのある債券については、それと同一格付債券の気配値や、売買実績など、市場で根拠となるもの(レベル2インプット)が取れれば、それを使って評価することになります。格付け機関はこの問題の初期段階では格下げの必要はないといっていましたが、その後、全面的に
格下げを行った結果、債券の保有者は大きな評価損を計上することになりました。投資家は、債券が売られ気配値が下がることと、格下げの両方で評価損の拡大に見舞われました。こうした市場価格を推計するデータも市場からまったく得られなくなった場合、レベル3インプットによって、評価することになります。」

http://www.a2msn.jp/portal/column/single/subprime/story/02.html
このコラムはSECからの手紙以前に書かれています。SECからの手紙は、このコラムでレベル2インプットを取れるものと位置付けられているものを、市場価格が歪んでいると認められる場合にはレベル3インプットを用いて公正価値の評価を行うことを認めると言っているわけです。これは4月12日に当ブログで私が指摘した(http://cfonews.exblog.jp/7724804/)ように、”状況が悪いときには、それを測るモノサ
シを変えてやり過ごそう”ということに他なりません。

言うまでもなく、今は、実態をルールに従い正しく把握した上で、それに対し適切に対処していくことが求められている時です。場当たり的にモノサシを変えてやりすごそうという姿勢は全く持って間違っていると私は思います。
一方私自身は、全面時価会計が会計の正しい方向性であるとは思っていないので、これを機会に会計基準を見直すための議論はあってしかるべきであると考えています。

それにしても十字路の「市場原理主義者から見れば時価会計の後退は許せない。しかし、会計士ショックによる金融メルトダウンは防がねばならない。いまは理想論をふりかざせるような生やさしい局面ではない。」とは一体何を言いたいのでしょうか? 少なくとも、私は市場原理主義者かもしれませんが(笑)、時価会計の信奉者ではありません。

情緒的なだけで中身がない議論を公の場ですることは厳に戒めてもらいたいものです。

【リンク】
SECからの手紙
http://www.sec.gov/divisions/corpfin/guidance/fairvalueltr0308.htm

New York Times 3月28日記事
http://norris.blogs.nytimes.com/2008/03/28/if-market-prices-are-too-low-ignore-them/


by yasukiyoshi | 2008-04-18 10:41 | 会計
2008年 04月 17日

買収防衛型ファイナンス?-住友金属鉱山のケース

割高な調達コスト 株主への説明難しく
「調達コストが高すぎないか」。住友金属鉱山が2月に調達した「新株予約権付ローン」に対して、市場関係者の間でこんな感想が聞かれた。
このローンでは、住友金属鉱山が三井住友銀行から1000億円を借り入れるとともに、同行に新株予約権2万個を割り当てた。金利は実質年1.45%で基準金利のスワップ金利に対する上乗せ幅は0.36%前後だった。
ある国内証券の担当者は「1000億円の巨額調達とはいえ、普通社債なら上乗せ幅は0.2%前後で済み、年利は1.29%程度になったはず」と解説する。
住友金属鉱山株式を取得できる新株予約権の価値を含めれば、実は普通社債より金利が安くなってもおかしくない。にもかかわらず、金利が高いのはなぜか。「自社の判断で自由に資本調達をコントロールできるようにしたかった」(田尻直樹常務執行役員)という住友金属鉱山側の要望が一因だ。

(2008年4月17日 日本経済新聞 14面 検証買収防衛型ファイナンス)
【CFOならこう読む】
私はこの日経の記事がよくわかりません。
2月1日に住友金属鉱山の新株予約権付ローンをこのブログでとりあげました。
http://cfonews.exblog.jp/7170502/

この日の日経はこのスキームについて「通常の借入金に比べ低利のため今回のスキームを採用することにした。」と報じていました。
それが今日の日経の記事は、「金利が高い」と評価しているのです。しかもその理由を「万が一のための用心棒代」と説明しているのです。

私には社債マーケットについての勘が備わっていないので、金利の高い安いを論じる能力はないのですが、あえて言わせてもらえば、そもそもCBを始めオプションが付与されているデットで資金調達をする理由は、一括法により会計処理をすることができるため表面金利を引き下げることができるからのはずで、”金利が高い”株式転換型のデットによりあえて資金調達をしようと考える企業があるとは思えないのです。

今日の日経17面は住友金属工業の7年債百億円の募集について報じています。利率は1.35%、国債利回りに対するスプレッドは0.4%。住友金属工業の格付けはダブルAマイナス、住友金属鉱山の格付けはシングルAプラス(JCR)であることを考えると1.45%という金利が特に高いという風には思わないのですが…

【関連過去記事】
2008年02月16日「社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も 」
http://cfonews.exblog.jp/7274985/
【リンク】
平成20年1月31日「新株予約権付ローンに係る第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付)」住友金属鉱山株式会社
http://www.smm.co.jp/release/2008/pdf/20080131-2.pdf

2008年04月16日「UPDATE2: 住友金属工業<5405.T>、期間7年国内SB発行条件を決定=利率1.35% 」ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK011854820080416?rpc=144


by yasukiyoshi | 2008-04-17 10:49 | 資金調達
2008年 04月 16日

買収防衛型ファイナンス?-新日鉄、JFEのケース

銀行に潜在株割り当て 「株主選別」に反発の声も
買収防衛策を意識した企業の資金調達(ファイナンス)が広がっている。銀行から資金調達すると同時に大量の新株予約権を割り当て、買収防衛の効果を狙う。特定の友好な株主のみに潜在株を渡す仕組みは企業による株主の選別につながるだけに、投資家からの反発の声も出ている。
(2008年4月16日 日本経済新聞 16面 検証買収防衛型ファイナンス)
【CFOならこう読む】
上記記事で取り上げられていたのは次の会社です。
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このうち私のブログでは、JFEについては2月29日
http://cfonews.exblog.jp/7387907/
住友金属鉱山については2月1日
http://cfonews.exblog.jp/7170502/
にそれぞれスキームの概要を紹介しました。

新日鉄のスキームは、その実施時期が2006年11月とこのブログをスタートする前であったので、とりあげる機会がありませんでした。
ここで簡単にどのようなものであったのか見てみたいと思います。

●スキームの概要
①新日鉄が海外子会社(ケイマンに設立した新日鉄の100%出資子会社"NS PreferredCapital Limited"。以下NS社)を割当先としてCB3000億円を発行し、NS社は、3銀行を割当先として交換権付優先出資証券総額3000億円を発行する。
②新日鉄は、この交換権付優先出資証券に係る配当等の支払いを保証する旨の契約(劣後保証契約)をNS社と締結する。
●スキームの特徴
<資本性>
当交換権付優先出資証券には、あらかじめ定められた償還期日がないこと(注:2012年1月20日以降、任意償還される場合がある)、弁済順位がすべての一般債権に劣後すること、一定の条件に抵触した場合に配当が制限されること等から、主要格付機関からも70%以上の資本性が認められるとの評価を得ている。
<交換権>
当交換権付優先出資証券には、新日鉄が発行する上記CBに交換することができる権利(交換権)が付されている。さらに、交換権には、新株予約権の自動権利行使条項が付されており、投資家が交換権を行使した場合には、投資家に普通株式が発行される。
<新株予約権>
新株予約権を付すことで金利コストの軽減をはかりつつ時価(取締役会決議前日終値497円)を50%上回るハイプレミアムな転換価額(740円)を設定することで、1株利益の希薄化を極力防ぐような設計になっている。
スキーム自体は異なるもののその狙いはJFEのものとほぼ同様であると言って良いと思います。

記事では新日鉄、JFEとも大きな潜在株式を有することで買収者の意欲をそぐこと及び安定株主としての銀行に潜在株式割当を行うことの2つの側面から買収防衛型ファイナンスと位置付けています。しかし私はそれは解釈としては間違っていると思います。両社の新株予約権の行使価額は非常に高いところに設定されており(つまりディープ・アウト・オブ・ザ・マネー)、発行時点では行使されることが予定されていないと思われるのです。

それでは何のための新株予約権か?

それはオプションを付することにより金利を軽減するというところにその本質的な意味があるのです。行使が予定されていない潜在株式を発行してもそれが買収防衛策になるわけがありません。この点今日の日経の記事は認識が間違っていると思うのです。

もっとも、調達した資金が、浮動株を減らすことを目的とした自社株買いに使われるのなら広い意味で買収防衛型のファイナンスと言えるのかもしれません。そしてそれが日本を代表する上場企業の資本政策として不適切であるという主張であるなら、その見解に私は全面的に同意できます。

【リンク】
「株主・投資家の皆様へ」新日本製鐵
http://www0.nsc.co.jp/investor/


by yasukiyoshi | 2008-04-16 12:48
2008年 04月 15日

株式買取請求権の行使の効果

合併反対派が株売却を拒否、日興が価格決定を申し立て
日興コーディアルグループと米シティグループとの三角合併に反対した4株主が、価格などの条件を不服として日興の自社株買い取りに応じていないことが 14日、明らかになった。4株主の保有分は約1万2000株(発行済み株式の0.001%)。日興は会社法の手続きに沿って東京地裁に適正な価格を決めるように申し立てた。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C1401T%2014042008&g=E3&d=20080414

【CFOならこう読む】
以下株式買取請求権の行使の効果について、江頭憲治郎教授の「株式会社法第2版」(有斐閣)756ページより抜粋致します。
「株主が適法に株式買取請求をしたときは、会社に、その株式を公正な価格(会社法116条1項)で買い取るべき義務が生ずる。
買取価格の決定について、株主と会社との間に協議が調ったときは、会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない(会社法117条1項・4項。会社法470条1項・786条1項・798条1項・807条1項も同じ)。効力発生日から30日以内にその協議が調わないときは、株主または会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる(会社法117条2項・868条1項・870条4号・872条4号。会社法470条2項・786条2項・798条2項・807条2項も同じ)。」
シティグループ株式の株価が大きく下がっている現状において、裁判所がどのような判断をするか注目されます。

【リンク】
「Citigroup Inc」Bloomberg.com
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=C:US



by yasukiyoshi | 2008-04-15 07:47 | M&A
2008年 04月 12日

金融商品の時価評価、G7で議題に・FRB議長「市場、不安定に」

【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は10日、バージニア州の講演後の質疑応答で「流動性の低い市場では時価評価の会計によって不安定になることがある」と述べ、証券化商品などの時価評価がもたらす損失の拡大で市場が揺さぶられているとの認識を示した。時価評価の問題は 11日にワシントンで開く7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で取り上げられる見通しとなった。G7会議の関係者が10日、明らかにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080411NTE2INK0311042008.html

【CFOならこう読む】

状況が悪いときに、それを測るモノサシを変えてしまおうという発想は日本の専売特許だと思っていましたがそうでもないのですね。
日本ではこんなことがあったのをご記憶の方も多いと思います。
「1998年3月期より銀行が保有する有価証券の評価方法について、それまで用いられていた低価法に加えて原価法による評価も認められることとなった。これは1997年から1998年の株価の大幅な下落に伴って、銀行が保有する株式の時価が簿価を下回る事態が続出し、これまでのように低価法を採用すれば評価損の計上によって収益の大幅な減少(すなわち自己資本の大幅な減少)が見込まれたことが背景にある。1998年3月期決算では都銀8行のうち東京三菱銀行を除く7行が株式について原価法に変更し、合計で約2兆円の評価損の計上を免れることとなった。」(郵政研究所月報2000.10)
このとき、「日本は国家ぐるみで粉飾をする国だ」と世界各国から袋叩きにあいました。今度のG7では日本が「時価会計見直し」を批判する番です。断固たる態度で反対意見を表明することを望みます。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-12 10:38 | 会計
2008年 04月 11日

TOBルールの特別関係者と5%ルールの共同保有者

不明確な記載規定 共同保有情報など混乱
「買収防衛策逃れではないか」。日本ハウズイング幹部は、同社にTOBを提案した原弘産に疑問を投げかける。
日本ハウズの防衛策の発動基準は20%以上の買い付け。このため日本ハウズ株を11.77%保有するランドマーク(広島市)と同16.16%保有する原弘産の関係が日本ハウズには大問題だ。合計すると発動基準に達するからだ。
ランドマークは昨年2月に原弘産の子会社から日本ハウズ株4.4%を譲り受けた。親会社の合人社計画研究所は原弘産の分譲マンションの管理を請け負っており、取引関係はあるが、大量保有報告書では「共同保有者」ではない。合人社は「原弘産とは無関係に投資しており、連絡は取り合っていない」とするが、日本ハウズは一日、改めて両社の関係を問う質問状を送付した。
同様の問題は、ダヴィンチ・アドバイザーズによるテーオーシーの敵対的TOBでも起きた。
TOBに対抗し、大谷卓男テーオーシー社長らが18.74%、ホテル運営のニューオータニ(東京・千代田)が最終的に15.53%までテーオーシー株を買い増した。ニューオータニの大谷和彦社長はテーオーシーの大谷卓男社長のいとこでテーオーシー会長も兼務する。関係は深そうだが共同保有者ではない。
発行株の三分の一超を取得するにはTOBが必要。テーオーシー側の保有株合計は三分の一を超えるとみたダヴィンチ側から「TOBルール違反では」との声も出た。
(2008年4月11日 日本経済新聞16面 大量保有報告書残された課題)
【CFOならこう読む】
TOBルールの三分の一の計算及び5%ルールの計算は本人だけでなく、本人と共同して株券等の取得を行うことを合意している者も含めて行われますが、その者をTOBルールでは「特別関係者」、5%ルールでは「共同保有者」といい、定義されている条文が異なります。上の記事では、この両者さらに自主ルールである買収防衛策の発動の要件を明確に区別せずに書かれているため、一般の読者には何が書いてあるのかよくわからないのではないかと思い、今日は「特別関係者」と「共同保有者」について書いてみることにしました。

「特別関係者」については、金商法27条の2第7項にいわゆる形式基準(同項第1号)と実質基準(同項第2号)の2つの基準が定められています。

買付者が法人の場合の形式基準の「特別関係者」は、簡単に言うと以下の3つが該当します。
①当該法人の役員(取締役、執行役、会計参与・監査役・理事・監事またはこれに殉ずる者)
②当該法人が特別資本関係(20%以上の株式等を自己又は他人の名義で所有する関係)を有する法人及びその役員
③当該法人に対して特別資本関係を有する個人ならびに法人およびその役員
また実質基準の「特別関係者」は簡単に言うと以下の4つが該当します。
①共同して株券等を取得することを合意している者
②共同して株券等を譲渡することを合意している者
③共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者
④買い付け等の後に相互に株券等を譲渡し、もしくは譲り受けることを合意している者
一方5%ルールでは金商法27条の23第5項に共同保有者、金商法27条の23第6項にみなし共同保有者の基準が定められています。

「共同保有者」とは、株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における当該他の保有者をいいます。
したがってこの基準は、実質基準の「特別関係者」とほぼ同様のものです。

「みなし共同保有者」とは、一定の人的関係や資本関係(①夫婦②50%超の資本関係にある親子会社や兄弟会社)にある者をいいます。したがってこの基準は、形式基準の「特別関係者」の基準と異なっています。

実質基準の「特別関係者」(及び金商法27条の23第5項の共同保有者)の判定の上で、どのような場合に合意があったと見なされるのかが大きな問題となります。この点、「M&A法大全」(西村総合法律事務所編 商事法務)は次のように説明しています(67頁)。

「このような悩みは現実の取引の世界でしばしば発生する。仮に上記のような事案が裁判所に持ち込まれた場合には、当該取引に関するすべての事実・要素を総合的に勘案して判断されることになるであろう。取引の交渉から実行までの間にAとBの間で頻繁に話し合いが行われた場合、AとBに対して同一のアドバイザーがアドバイスを与えた場合、あるいは取引実行の直後にA、B間で株主間契約が結ばれた場合などには、これらの事実がAとBが特別関係者である(つまり、「共同して取得する合意」があった)と認定する際の根拠とされやすいであろう。もっとも、これらはあくまで認定の際の一つの判断要素にすぎず、たとえば、取引の実行前には、A,Bは互いの取引のことを知ってはいたがAB間での話合い等は一切なく、取引直後に始めて議決権行使の合意が行われた場合には、「共同して取得する合意」があったとはいえない
だろう。」

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-11 10:28 | TOB
2008年 04月 10日

対外開放進め活力回復へ-本日の経済教室とJパワー問題

Jパワー株買い増し 「日本の安保脅かさず」 英ファンドアジア代表 公平な政府審査 期待
英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント(TCI)のアジア代表、ジョン・ホー氏は9日、日本経済新聞のインタビューで、政府に申請したJパワー株の買い増しは「国の安全保障を脅かさない」と述べた。「日本が海外からの投資に開かれていることが重要」(2008年4月10日 日本経済新聞7面)
【CFOならこう読む
ジョン・ホー氏は次のように主張しています。
「20%の株を保有しても、発電所の建設計画を中止させるような影響力はなく、原子力に関する機密情報を得ることもできない」
「(Jパワー問題が)会社やファンドにだけでなく、日本の市場にとっても重要な問題」
「(買い増しが拒否されれば)日本は海外の投資家を歓迎しないうえ、民営化株には投資すべきでないというメッセージを世界に送ることになる」

私には全て正論であるように思えます。
偶然でしょうが、本日の経済教室は「対外開放進め活力回復を」(宮崎勇氏 元経済企画庁長官)というものです。宮崎氏は”保護主義的な考えを改めよ”という趣旨で次のように書いています。
「さらに、対内直接投資の積極的受け入れも必要だ。日本は中国などとは対照的に、対外直接投資は活発であるのに対し、対内直接投資は米国とはかけ離れて小さく、またドイツの十分の一、中国と比べても二十分の一にすぎない。相互依存・相互補助の分業体制にある世界経済ではより積極的な対内直接投資は日本経済のためにも相手国にとっても好ましいことである。」
そして宮崎氏は日本が対外開放に消極的である理由として次のように説明しています。
「歴史的、風土的により深い要因が複合的に絡んでいると思われる。明治維新で日本は鎖国状態から解放され、その後日清、日露、そして第一次世界大戦と勝利が続く中で国際化を進めたが、太平洋戦争で再び「自分の殻の中」に入ってしまった。そして戦後再び開放体制の下で国際社会に仲間入りしたが、この歴史的な屈折の中でいまだ十分に「内向き」思考から抜けきれないということではないか。」
この理由が正しいかどうか私に判断する能力はありませんが、我々日本人のほとんどが「内向き」思考であることは間違いないように思います。だとするとこの問題は我々日本人ひとりひとり(もちろん私自身も含めて)の問題です。お役所は単に我々のそんな空気を嗅ぎ取り代弁しているだけなのかもしれませんね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-10 08:34
2008年 04月 09日

SPC連結ルール厳格化へ

特別目的会社、連結ルール厳格化・会計基準委、国際団体と合意

日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会は8日、金融機関や企業が設立、投資している特別目的会社について、連結決算の対象範囲を厳格化することで国際団体と基本合意した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080409AT2C0801F08042008.html


【CFOならこう読む】

上記記事によると、
「従来の国際会計基準や日本基準では、実質的な支配権を持っているかどうかを連結の判断基準としていた。新ルールでは、どの企業が実質的な支配権を握っているか判断が難しい場合は、特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業に連結を義務付ける方向で検討している。」
とのことです。

ASBJのウェブサイトに開示がないので、詳細は不明ですが、方向性としては正しいように思います。もちろん” 特別目的会社の活動から受ける利益や損失が最も大きな企業”以外の企業には持分法を義務付けるのでしょうね。

【リンク】
 なし

by yasukiyoshi | 2008-04-09 08:32 | 会計
2008年 04月 08日

株主優待制度と現物配当規制の関係

無配でも実施、投資家反発 違法配当の恐れも

株主優待制度が曲がり角に差しかかっている。導入企業は1千社を超え株主づくりの手法として定着した一方、目的と内容に厳しい視線が向けられ始めた。業績悪化の中で優待を続ける企業に株主が「ノー」を突き付ける。費用をかけた優待で、どのような成果があげられているのか企業の検証も十分とはいえない。
(中略)
優待にかかる費用は販管費、そのうち交際費の枠から支出されることが多い。優待金額が膨らめば費用が増え、営業利益を圧迫する。理屈上では利益配分面から見て優待は逆効果になる。

(日本経済新聞 2008年4月8日 16面)

【CFOならこう読む】
株主優待制度は、現物配当の規制や財源規制に服する配当として扱われるべきところ、これを潜脱するものとして許されないのではないかが問題となります。この点、新会社法実務相談(西村ときわ法律事務所編 商事法務)は次のように説明しています。
「現行の一般的な株主優待制度は、現物配当制度とは別個のものとして認められるという理解が有力であり、また株主優待制度は、多くの場合、個人株主作りや自社商品・サービス等の宣伝を目的として小額のものを分配するに過ぎず、株主に対する配当の性格は認められないのではないかと思われます。もっともかかる合理的な目的に相当な範囲を超えて、株主優待制度の下に多額の会社財産を払い戻す行為は実質的な現物配当として、会社法453条以下の配当規制に服することなくこれを行うことは許されないものと思われます。」
上記記事に掲載されている、無配でも株主優待が手厚い企業について配当可能利益を調べたところ次の通りでした。
e0120653_1665038.jpg


いずれの会社も配当財源がない中で手厚い株主優待を行っており、これが違法配当とみなされる可能性は少なからずあるように思います。

【リンク】

グッドウィル 財務諸表
http://www.goodwill.com/gwg/pdf/y1906.pdf


by yasukiyoshi | 2008-04-08 10:34 | 税制
2008年 04月 07日

適用期限が延長されなかった租税特別措置

期限切れの税制特例、混乱回避へ広報強化・政府
ガソリンなどの租税特別措置の期限切れを受けて、政府が広報体制を強化している。ホームページに専用サイトを開設したり、相談窓口を設けたりなど対応はさまざま。ガソリンや投資減税などの特例が4月からどうなったかを消費者や企業に情報提供し、混乱を最小限に抑える。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080406AT3S0402G05042008.html

【CFOならこう読む】
適用期限が延長されなかった租税特別措置には次のような実務上影響が大きいものが含まれています。

・試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(控除率の加算措置に係る部分)
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
・交際費等の損金不算入
・欠損金の繰戻しによる還付の不適用
・退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止

租税特別措置とは、なんらかの政策目的の実現のために、特定の要件に該当する場合に、税負担を軽減しあるいは加重することを内容とする措置のことで、その大部分が租税特別措置法により定められています。例えば交際費に関しては、これを無制限に認めると、いたずらに法人の冗費・濫費を増大させるおそれがあるとの理由で、資本金が1億円を超える法人については交際費等の損金算入を一切認めず、資本金がそれ以下の法人についてのみ、400万円の範囲内でその90%の損金算入を認めています。

”法人の冗費・濫費を増大させるおそれがある”というのがよくわかりませんし、本来こんなものは本法で規定すべきものです。良い機会なので、交際費も含めて、すべての租税特別措置項目についてその必要性を徹底的に議論したらよいと思います。中でも欠損金の繰戻しによる還付の不適用についてはぜひとも廃止してもらいたいと思います。

欠損金の繰戻し還付制度とは、欠損金の生じた年度において青色確定申告を行い、かつ過去の関係年度において青色確定申告をしていたことを条件として、欠損金を当該事業年度の開始の日前一年以内に開始した事業年度に繰り戻し、これらの事業年度の税額を計算しなおして、その差額の還付を求めることを認める制度です。

「法人の事業年度は、もともと事業成果を期間損益の形で算定するために人為的に設けられた期間であるから、企業の成果を長期的に測定するためには、ある年度に生じた欠損金は、その前後の事業年度の利益と通算するのが妥当」(租税法 金子宏 弘文堂)であり、これを担保する制度の一つを租税特別措置法という形でで停止している現状は大問題であると思います。特に平成18年の税制改正で、役員報酬を期中で改訂できなくなってしまったこととの平衡を保つためにもぜひともこのまま適用停止の打ち切りをお願いしたいものです。

【リンク】
「租税特別措置の課税関係について」財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200331.htm
「適用期限が経過した租税特別措置(条文順)」財務省
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200331/200331i.pdf




by yasukiyoshi | 2008-04-07 08:28 | 税制